山は動いた

　その日、ある場所へ誘われた。


　内職仕事をもらっていた出版社から、土井たか子さんの会に来ないかと言われ、先日述べた友人B子と出かけた。


　当時のフエミニズム運動の先陣であり、評論家である一番ケ瀬康子、樋口恵子、吉武輝子などが中心になり、土井たか子さんが巻き起こしたマドンナ旋風を祝う会でもあった。


　「山は動いた」という土井さんの言葉が信じられ、純粋に、単純に、私はうれしかった。
　そのような場に自分がいられることで、夢中で写真を撮った。


　このスーツはお気に入りだったらしく、テレビでもよく見かけたし、よくお似合いだった。


　社会党委員長にもなり、史上初の女性衆議院議長に選出された。


　いま、理念や政策よりも、権謀術数・個人的な野望ばかり目立つ女性に、私は引いてしまう。希望はたくせない。
　民進を解体するため、自民の大物との裏取引、茶番劇ではないかと考えると、背中がうすら寒くなる。
　こんなことを考えるのは、歳を取り、自分が穢れてきたからだろうか。


　あのころは、よかった。単純に喜ぶことができて。
　
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