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制御できない円安の恐怖(日経ビジネス)

2013-02-01 | 政治

昨年11月上旬、米国が景気回復に伴って金融政策を引き締めれば円安となり、日本は未曾有のインフレに直面、日本国債の価格は暴落し日本経済は破綻の危機に直面するという厳しいシナリオを『円安恐慌』という本にまとめた菊池真氏に聞く。

 為替レートは日本だけでコントロールできるものではない。相手の米国がどういう状況かで決まる。現在、安倍政権がやっているのは、米国の事情が変わらないことが前提だ。しかし、僕が当初、想定していた円安へのきっかけは本に書いた通り、米国の景気回復だった。米国の景気が回復してくれば、米連邦準備理事会(FRB)は2008年の金融危機以降続けてきた金融緩和策をやめ、引き締め策に転じる。米国が資金の供給量を引き締めれば当然、円はドルに対して安くなる。これは日本にとって、制御不能な円安が進行する可能性を意味する。ところが今浮上してきているのは、米国が、景気が回復しなくてもこの金融緩和策を縮小する可能性が出てきているということだ。
昨年12月11~12日、米国の金融政策を決めるFRBの米連邦公開市場委員会(FOMC)が開かれ、昨年9月に始めた金融緩和策第3弾(QE3)の強化を決めた。FRBは市場に資金を供給すべく毎月、400億ドルの住宅担保ローン証券(MBS)を買い取っていたが、加えて毎月、期間の長い米国債も450億ドル買い取ることを決めた。つまり、毎月850億ドルもの規模の資産の買い取りを実施するというわけだ。加えて、失業率が6.5%程度に定着するまでQE3を続けるという数値目標まで掲げた。ただ、FRBはこのFOMCの直後に発表した声明で、失業率が6.5%程度に下がるまで金融緩和策を続けるとしながらも、「1~2年先の物価上昇見通しが2.5%を超えない範囲で安定することが前提だ」との文言を入れた。
 FRB は昨年9月の段階では、「失業率が十分に改善した段階でQE3はやめる」という漠然とした言い方だったが、12月には、それまで全く言ってこなかったインフレ見通しに言及した。
 そして、驚いたのが今年1月3日、このFOMCの議事録が発表され、米国がこのQE3を年内にもやめる可能性が高いことが分かった。FRBのベン・バーナンキ議長を含め出席した19人の委員のうち、既に5人がインフレに対する懸念を表明していた。懸念を表明した5人の委員のうち「2人が金融緩和策を2013年中にやめるべきで、残る3人が2014年中にやめるべきだと考えている」とも記録されている。つまり、5人ものメンバーが既にインフレ懸念を持ち始めているということは、今年の後半には相当の委員がインフレに対する懸念を感じ始める可能性が高いということだ。中央銀行の最高の使命はインフレのコントロールだ。失業率が6.5%に下がるには時間がかかるとFRBも認識している。それでもインフレリスクが出てしまったら、中央銀行としてはインフレを抑えるべく積極緩和策はやめざるを得ない――。
 つまり、今年中にQE3が終了するという議論が始まることはほぼ確実な状況だということだ。
そもそも米国では2008年9月のリーマンショックが起きる1年ほど前から、サブプライムローン問題が浮上し、FRBは金利をどんどん下げた。しかし、それでは足りず2008年11月以降、金融緩和策をQE1、QE2、QE3という形で進めてきた。その結果が、1ドル=120円から75円まで上昇したという円高ドル安、円が高くなったのではなく、ドルが安くなった結果、つまり、ドル安が牽引する形での円高だった。
 従って米国が今後、積極金融緩和を縮小することになれば、異常に安くなったドルの価値が正常化していく。つまり、日本が何もしなくてもドル高円安になる。これが恐らく今年の10~12月に始まる。
本では、米国の引き締めが始まる前に、もし日本が円安待望論のようなものに対応する形で円安誘導をした場合には、さらに悲惨な事態を招くと指摘した。
 為替の影響はタイムラグを置いて発生するので、今の円安傾向の影響は3~4月頃から徐々に表面化してくる。ガソリン料金の値上げから、LNGの輸入価格上昇による電力料金の値上げ、輸入食品の値上げまでその影響は広く及ぶ。円安によるインフレというのが確実に起きてくる。問題は、輸入物価の上昇によって起こるインフレは、いわゆるコストプッシュ型のインフレで、給与や可処分所得の上昇につながらないという点だ。望ましいのは、給料が上がる、使えるお金が増える、だから「少し高くても買おう」という形でものの値段が上がっていくディマンドプル型のインフレだが、そうはならない。
10~11月には企業各社の中間決算発表が出てくる。輸出企業の決算にはそれなりの円安の恩恵が出てくるが、あくまでも「それなり」にとどまる。その一方で、円安のデメリットは顕在化してくる。
 安倍首相の周りにいるリフレ派と呼ばれるエコノミストの方々は、基本的に為替レートは通貨供給量の増減の差によって引き起こされる、と考えている。それは正しい。だからリフレ派の人たちは、円高を円安にするにはお金をじゃぶじゃぶにすればいいし、円安に行き過ぎたと思ったら、アメリカよりも供給量を絞ればいいと思っている。理論的には正しいが、問題はそんなことが現実にできるのかという話だ。
 
 日本経済は今年後半、あるいは来年、金融引き締めに対応できるほど回復しているとは考えられない。金融引き締めとは金利を上げることで、そんなことをすれば中小企業の倒産が相次ぐ。
 金利を上げる前に、日銀が買い上げてきた国債を売るという対応策もある。その場合、短期金利はすぐに上がらないにしても、5年以上の長期金利は確実に上がってくる。日本国債の価格は急落する。日本の金融機関は、今や膨大な国債を保有しており、巨額の含み損を抱えることになる。 50兆円の国債を保有する大手金融機関の場合、国債の流通利回りが1%上昇するごとに1.5兆円の損失が発生する。自己資本を10兆円抱えていても、利回り3%に上昇すれば、自己資本の3分の1が吹き飛ぶ。国際決済銀行(BIS)が定めるBIS規制では、金融機関は自己資本比率が8%を割り込むと国際業務はできなくなる。
 そこで国が銀行に資本注入をするとなっても、それにはさらなる国債の発行が必要となる。一体誰が国債を引き受けることができるのか。日本の国債は、90%以上が国内で買い支えられてきた。日本の純金融資産のほとんどは50歳以上が保有、特に60歳以上で全体の8割を持っている。従って引退後は、自らの資産を取り崩していくことになるわけで、国債を国内だけで買い支えていくという構造はもはや限界を迎えている。

 安倍政権の口先介入だけで10円以上の急激な円安。やはり、アメリカの実体経済の改善がその背景にあるようだ。為替相場はその先見性でシェールガス革命などによるアメリカの景気回復を予想し、いち早く反応した。口先介入だけで10円以上も円安になる為替市場の狂乱ぶり。アメリカの回復が顕在化すれば、150円など通過点かもしれない・・・・・・円の暴落が視野に入る・・・・・


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