オータムリーフの部屋

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トランプ大統領

2016-11-11 | 政治

米大統領選はドナルド・トランプ氏が勝利したが、得票数ではヒラリー・クリントン氏が僅差で上回っている。にもかかわらず、トランプ氏が接戦を制したのは米国独特の「選挙人制度」が背景にある。各州に割り当てられた選挙人を選び、その選挙人が大統領を決める仕組みだ。大半の州は1票でも多く得票した候補がその州の選挙人を全て獲得する「勝者総取り方式」を採用するため、選挙人の獲得ではトランプ氏が289人とクリントン氏の218人を大きく上回っている。2000年の大統領選でも、得票数で上回ったゴア氏(民主党)に対し、大票田フロリダ州で537票差で選挙人を総取りしたブッシュ氏(共和党)が当選した。

EU離脱に続いて、また予想しない事態が起きた。まさかのトランプ大統領である。全米の出口調査によると、白人の55%、黒人の8%、ヒスパニック系の27%がトランプ氏に、白人の37%、黒人の87%、ヒスパニックの65%がクリントン氏に投票したという。

昔の良き時代に戻せというトランプはアメリカ孤立主義者で排外主義者。

「アメリカはアメリカの繁栄だけを考えていればよい。もっとアメリカを豊かにしよう。偉大なアメリカにしよう。アメリカ人の生活さえ良くなれば、あとは知ったことじゃない。」

世界の警察官を止め、アメリカが出てこなくなるなら、中国やロシアは大歓迎。意外と平和外交になるかもしれない。

日本との関係も、「なんで、オレたちがあいつらのことを命を懸けて護らなきゃいけないんだ。自分の身は自分で護れ。」ということになる。

「TPPもやめる。日本のクルマにも家電にも思い切り関税をかけてやる。アメリカだけ良ければいいんだ。」

白人の貧困層に受けたという。しかし、考えてみれば、クリントン大統領になっても議会は共和党が安定多数、重要な施策はまるっきり実現できなかったろう。オバマに始まる8年間の決められない政治が継続し、民主党がさらに信頼を失うのは明白だった。そう考えると、トランプになった方が4年後のアメリカには良いかもしれない。

保護貿易主義で白人困窮者を救えるのか。外に出て行った製造業を元に戻せるのか。白人の雇用を増やそうと思ったら、人種差別、またはニュ-ディ-ル政策のように公共投資を大規模にするしかない。最初の演説で減税と公共投資と言う相容れない政策を同時に実施することを明らかにした。

トランプは、市場に任せれば経済はうまく回るとアメリカが30年間にわたり主導してきた「グローバリズム」と「新自由主義」を、真っ向から否定した。その訴えがアメリカ国民の心をとらえた。格差の元凶はグローバリズムだ。一握りの富裕層だけが富み、中産階級が崩壊した。トランプが『中国が雇用を奪っている』『雇用を奪うTPPを止める』と自由貿易を批判すると、聴衆は拍手喝采し、熱狂した。これは“サンダース現象”にも通じる。サンダースも、新自由主義を否定し、TPPを『破滅的な協定だ』と批判して支持を集めた。

行き過ぎた新自由主義とグローバリズムが当のアメリカで限界に達しつつあることを今回の大統領選は示した。安い労働力を求めて企業が海外に進出したために雇用は減り、その一方、安い商品が海外から流入し、アメリカ製は競争力を失ってしまった。それにもかかわらず、安倍首相のTPP信仰は揺るぎないようだ。TPPはグロ-バリズムを進める政策だ。例外なき関税撤廃、自由貿易が大前提のTPPに参加したら、日本の産業と雇用が破壊される。世界の企業と戦って生き残れる企業が日本に多いと政治家も産業界も錯覚しているのか。日本が強い自動車産業だって、全メーカーが生き残れるはずがない。まず農業、林業、漁業は、外国産に太刀打ちできない。第1次産業が壊滅し、地方経済は成り立たなくなる。新自由主義とグローバリズムの本質は、一般国民を犠牲にしてグローバル企業を儲けさせることだ。世界的な大企業は潤うが、庶民には縁がない。だからアメリカも、産業界、特に金融業と製薬会社はTPPに賛成し、多くの国民が反対している。

日本製品が世界市場を席巻している時だったら、TPPのメリットがあったかもしれない。国際競争力が低下している今、参加するのは狂気の沙汰だ。「異次元の金融緩和」で経済対策に何十兆円もの税金をつぎ込んでもデフレはおさまらない。安い製品が入ってくるグロ-バル化を進めているのだから、当然だ。
 日本のGDPの6割は個人消費。一部のグローバル企業を強くし、多少輸出を増やしたところで、景気が良くなるはずがない。
アメリカの代弁者として経済学者やエコノミストが、新自由主義、規制緩和、構造改革をはやし立てる。年功序列、終身雇用、系列といった日本型経営をアメリカ型に変えて日本は豊かになったのか?雇用が守られることなく、派遣労働者が増え、結婚、子育て、マイホーム取得と言った当たり前の人生設計を立てられなくなった。将来不安で消費も低迷する。

 アメリカ大統領選でなぜ、「トランプ現象」や「サンダース現象」が起きたのか?まだアメリカほどの超格差社会になっていない日本はよく考える必要がある。

 

トランプ大統領誕生後、各地で反対デモが起きているのを見て、改めてアメリカの超格差社会はすさまじいと気づかされた。

金持ちの子弟しか、ハーバードには入れない。年間の授業料が7万ドルだという。アメリカのほとんどのエリート大学の授業料は高すぎて庶民は入れない。そして、エリート大学を出た者だけが投資銀行などで年収2000万~3000万からのスタートになると言う。

それ以外のアメリカ人は就職口がない。あるいは、大学を卒業してもアルバイトで食いつなぐ人生だ。格差がどうにもならないところまで拡がってしまっている。

今回の選挙戦で面白かったのはマスメディア、有力新聞が殆どクリントン支持を公表したにもかかわらず、国民はクリントンにそっぽを向いたことだ。ウォール・ストリートの代弁者のようなマスコミに国民が反逆したのは実に痛快だ。トランプは土建屋だから、実業は重んじるけど、金融業の大金持ちには増税するかもしれない。予測可能性が乏しい状況を市場が好むことはほとんどなく、トランプ氏は投資家にとっては悪夢だ。

バーニー・サンダースと部分的に通じるものもある。

バーニー・サンダースは社会主義的な方法、トランプは独裁的な方法で社会改革をやろうとしている。新自由主義やグロ-バル化が進めば、民主主義国家では国民が過激なチェンジを求めて意思表示を始める。そういう意味ではアメリカはとても健全な国だ。この4年間がアメリカでグロ-バリズムの転換点になることを祈りたい。少なくとも共和党の本質が露わになり、信頼を失うことを望みたい。

 


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