新聞に見るオーストラリア

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「社説」豪政権交代―朝日・読売・毎日

2007年11月27日 | 政治
朝日新聞07.11.27.社説
豪政権交代―「米国追従」からの脱皮
 オーストラリア総選挙で野党の労働党が自由、国民両党の保守連合に圧勝し、11年ぶりに政権奪還を果たした。
 新首相となるラッド労働党首は外交官出身で、50歳という若さだ。96年から政権の座にあったハワード首相は自らの選挙でも落選し、政界引退を表明した。
 選挙戦で争点として注目を集めたのは地球環境問題とイラク戦争だった。
 ハワード政権は地球温暖化対策には消極姿勢が目立ち、温室効果ガスの排出規制をめぐる京都議定書に署名しながら批准を拒否した。その意味では、議定書から離脱した米国のブッシュ政権にとっては「非京都」の力強い仲間でもあった。
 しかし、豪州は去年、今年と2年連続で激しい干ばつに見舞われ、小麦やコメなどの穀物生産が大打撃を受けた。住宅の断水も続いている。
 これに対し、労働党は地球環境問題での政権の無策ぶりを批判し、京都議定書の批准を公約に掲げた。多くの先進国が温暖化対策への取り組みを強めるなかで、有権者の意識も高まりつつあり、労働党の大きな追い風になった。
 ラッド氏は年明けから京都議定書の批准作業に入る方針だ。アジア太平洋の有力国であるオーストラリアが議定書に復帰することを歓迎する。今後の「ポスト京都」の枠組みづくりに向けても大きな弾みになるのは間違いない。
 もう一つのイラク戦争についても、ラッド氏は「過ち」と明言し、イラクに駐留させる約1500人の豪軍の段階的撤退を主張した。まず約550人の戦闘部隊の引き揚げについて、米国と協議する意向だ。
 先ごろの総選挙で政権交代したポーランドでも、トゥスク新首相が約900人の部隊をイラクから完全撤退させる方針を表明した。今回の豪州の政権交代を含め、ブッシュ米政権が打ち出した「有志連合」の凋落(ちょうらく)はもはや覆いがたい。
 ラッド氏は「米国追従」とハワード政権を批判したものの、米国との同盟を「中軸」と位置づける基本路線は変えないとしている。アジアにもっと目を向ける一方、前政権ほどの「対米傾斜」は脱皮しようということだろう。
 経済政策でも大胆な軌道修正は掲げなかった。こうした穏当さが政権交代への有権者の不安を除き、支持を広げることにつながったようだ。
 米国、アジアとの共鳴外交をうたっている福田首相とも通じるところがありそうだ。ともに米国の同盟国であり、この地域の安定と繁栄に共通の利益を持つ。両国が協力することで成果を上げられるテーマは少なくない。東アジア共同体構想の推進はその一つであり、日豪の連携が求められている。
 地球環境問題に熱心な政権が生まれるのも心強い。来年の洞爺湖サミットの重要テーマでもあり、米国や中国、インドを引き込んでいく日本の環境外交のパートナーとして協調を深めていくべきだ。

豪州政権交代 戦略的な関係の維持に努めよ(11月26日付・読売社説)
 オーストラリアの新政権と日本は、強固な関係の維持に努めなければならない。
 豪州総選挙で、ケビン・ラッド党首率いる最大野党・労働党が圧勝し、11年半ぶりの政権奪還を決めた。
 政権交代は対米協調の目立った外交、環境政策の転換につながる、との見方が強い。安保面での国際貢献を通じ、アジア・太平洋地域で存在感を強める豪州の政権交代が、地域全体にどんな影響を及ぼすのか。各国が注目している。
 保守連合を率いて5期目を目指したジョン・ハワード首相は、政界引退の可能性も出ている。
 ハワード政権下の豪州経済は、資源ブームを追い風に快走してきた。これといった失政もなかった。最大の敗因は、豪州史上では2番目となった長期政権への「飽き」だろう。
 対するラッド党首は、選挙期間中、財政黒字の維持や減税策といった「ハワード路線」に近い政策を打ち出すことで国民に安心感を与え、支持を広げた。財界など保守票の取り込みにも成功した。
 全般に争点不足となった選挙で、焦点となったのが外交政策である。
 ラッド党首は、イラク駐留豪軍の段階的な撤退と、ハワード政権が拒否してきた地球温暖化防止のための京都議定書の批准を外交公約に掲げてきた。
 しかし、ラッド党首は親米派としても知られている。外交政策では現実に即した柔軟な対応をとる可能性が大だ。
 選挙中も、「米国との同盟維持」という根幹は揺るがないことを再三、強調してきた。イラクからの軍撤退についても米政府と緊密に連絡しながら進める姿勢を示している。対米摩擦を最小限に抑えたいのが、本音だろう。
 大きな政策転換となる京都議定書批准も、豪州を襲った干ばつに対する現実的な対応という側面がある。農業被害が深刻化し、国民の意識が変わっていた。
 元外交官で中国通という経歴から、ラッド政権のアジア外交は、日本から中国に重心が移るとの観測が出ている。豪州の貿易相手国は今年、中国が日本を抜き1位となる。中・豪が関係を深めるのは自然のことだろう。
 だが、日豪は、長年にわたって築いてきた経済関係に加えて、民主主義や人権といった共通の価値観に基づく政治的な信頼関係を着実に固めてきた。
 3月の日豪首脳会談では、戦略的な協力関係の構築をめざす安保共同宣言で合意している。日本政府は新政権との間でも、互いに不可欠なパートナーであることを確認する外交努力が求められる。
(2007年11月26日1時22分 読売新聞)

社説:豪州政権交代 南から新しい風が吹いてきた 
 オーストラリアの総選挙で野党・労働党が勝利し、ジョン・ハワード首相が率いる与党・保守連合(自由党と国民党)から11年ぶりに政権を取り返した。次期首相に就任する労働党のケビン・ラッド党首は、京都議定書の批准とイラク駐留豪軍の撤退を公約にしている。豪州国民が選択した新しい風向きは、気候変動やイラク戦争だけでなく世界の潮流にも影響を与えそうだ。
 豪紙によると6%の有権者が今回、労働党に投票先を変えたため、労働党が大勝した。小選挙区制で2大政党制の民主主義国と同じように、比較的わずかの有権者が投票行動を変えれば、政権交代につながる実例となった。
 ハワード首相は安定した経済成長や低い失業率など実績は評価されたが、最大の敗因は、国民が長期政権にあきたからだ、とみられる。本人も落選し、政治家の進退の判断が難しいことを示した。
 一方、労働党のラッド氏は、継続と変化を巧みに使い分けた。与党の減税策と同じ内容の政策を発表し、「ミー・トゥー」(私も同じ)と批判されても、経済政策が争点となることを避けた。業績を引き継ぐことで、政権交代への不安感を打ち消した。
 一方で変化を印象づけることも必要だ。二つの重要な政策転換で新しさを打ち出した。京都議定書批准を約束したのは、記録的な干ばつで国民に不安が高まった気候変動問題に対応するためだ。ポスト京都の枠組み作りに積極的に参加する姿勢を歓迎したい。
 豪軍はイラクと周辺国に駐留するが、ラッド氏は国民の不人気を見てとり、イラク南部の戦闘部隊550人を来年、撤退させる方針だ。ただ、親米の基本路線が変わると見るべきではない。撤退の具体化については米国と協議すると約束したし、アフガニスタンには逆に増派の可能性もある。
 かつては白豪主義で知られたが、いまは多文化主義が豪州社会の価値となった。国民の4分の1は外国生まれの移民であり、英語以外のことばを日常会話で使う人口は6人に1人近くいる。ラッド氏は中国語を上手に話し、長女は中国系と結婚している。こうしたエピソードは選挙戦でマイナスにはならなかった。むしろ、社会の変化が政治に反映したともいえ、アジア太平洋国家である豪州にふさわしいと受け止めたい。
 日本と豪州のつながりは急速に深まっている。日本が輸入する石炭、鉄鉱石の半分以上、ウランの3分の1は豪州に頼る。輸入牛肉の9割近くは豪州からだ。今年、安保共同宣言も発表した。福田康夫首相は10月、日豪経済合同委員会で「包括的な戦略的関係と呼べる段階に入った」と重要視する姿勢を述べた。新政権と経済連携協定(EPA)交渉を促進させ、関係強化を具体化する時期だ。
 一方、豪州にとって中国の存在感は大きい。中国は今年、日本を抜き、豪州の最大の貿易相手国となった。ラッド次期首相が米中日と新たな信頼関係を作り、共存共栄の道を築くよう望みたい。
                   毎日新聞 2007年11月27日 0時20分





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