アトリエ 籠れ美

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平成27(2015)年5月4日より

倉田角次(のち改め光雲)

2016-05-11 05:40:56 | 画材、技法、芸術論、美術書全般、美術番組
倉田角次画集     定価5000円  限定1000部(写真左)

上州・むさし野の四季 倉田角次画集 
          定価20000円 上毛新聞社出版局(写真右)

 今日は取っておきの話を。洋画家(と言っていいかどうかわからないが)倉田角次の名前を知っている人がいたら、おそらくそれは彼の油絵を所有している人だろう。
 倉田角次(のちに光雲と雅号を改める)は、日本画家小室翠雲の子息で、若い頃には藤田嗣治に師事したこともある。もう亡くなって10年ぐらい(いやもっとか)経つかな。写真の2冊は生前に出版されたもの。写真左の「倉田角次画集」は、自然発生的に誕生した「倉田角次ファン友の会」が編集した、自費出版物。限定5000部なので、今では入手困難。写真右の「上州・むさし野の四季 倉田角次画集」は、彼の出身が群馬県ということもあって、上毛新聞社が出版したもので、定価は20000円もするが、現在でも買えるかもしれない。
 さて父親が巨匠だからとか、師事したのが巨匠だからとかいって、本人が巨匠になるとは限らない。むしろそうなる可能性は低い。ところが倉田角次は例外中の例外。知られていないだけで既に巨匠であり、その作品は既に高額になっている(そしてこれからもっと高額になるとわかっているので、コレクターもまだ手放さない状態)。その作品の大半は風景画で、林を描いたものがほとんどだ。実績は十分で、平成6年に世界芸術協議会評議員推挙、平成10年にUSA文化栄誉賞(アメリカ版文化勲章のこと)、また同年にタイ王室より文化功労者の叙勲。
 なぜこの2冊の画集がわが家にあるのかというと、知り合いに倉田角次のコレクターがいて、その方から頂いたから。だから倉田角次の話はいろいろと聞いてます。貧乏で1週間食事できなかったとか、藤田嗣治に描き上げた絵を見せたら全て破り捨てられたとか、ダイエー八坂店で自分の絵を売っていたとか、数ヶ国語話せるとか、などなど。
 倉田角次は、病気療養のためヨーロッパから帰国、そして日本の風景、武蔵野の四季の美しさに感動して、自らの絵に開眼した。人生わからんもんですね。ここで彼の絵を載せてもいいんですが、勝手にそんなことをやっていいのかどうかわからないので止めにしました。そのうち「美の巨人たち」で取り上げるんじゃないかと思っているんですが、まだみたいですね。
 倉田角次、名前だけでも是非憶えて下さい。

 付)これで少しは2冊の画集を頂いた恩返しができたかな。彼にはお弟子さんが数人いて、彼と似た絵(そっくりとはいかないようですが)を描くことができるので注意されたし。そのうち贋作が出回るかもしれません。

 蛇足)倉田角次の油絵は一度だけ「開運!なんでも鑑定団」に出たことがあります。そのときの評価額は、号1万の20万円(確かF20号だったはず)でした。鑑定団はそのときの市場価格でしか評価しないのが最大の問題で弱点。確か市場に出回っていないので、号1万としか評価のしようがないとか言ってました。おやおや「見てわからなければおしまい」とか言ったのは誰でしたっけ? この言葉、そっくり番組レギュラーの鑑定家の面々にお返しします。


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