アトリエ 籠れ美

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平成27(2015)年5月4日より

「滝」 エッシャー

2017-03-08 05:58:23 | 画材、技法、芸術論、美術書全般、美術番組
 やっぱりエッシャーといったら、この「滝」。彼の最高傑作なのではないか。私はエッシャーの全ての作品を見たわけではないけれど、この「滝」を見てしまうと、他の全ての作品は色褪せて見えてしまう。それほどこの作品の完成度は高い。

 唯一無二という言葉があるが、この言葉は芸術家エッシャーにぴったりの言葉だ。あまりに画期的すぎて、後にも先にも彼しかいない。世界中にエッシャー好きはたくさんいるのに(私も大好きですが)、なぜか後継者もいないし、私淑する者も現れない。

 デ・キリコ(形而上絵画)の後にシュールレアリズムが起こったぐらいなのだから、エッシャーの後継者なり亜流なりが出現してもおかしくないのだが。形而上絵画ほど謎めいていなかったのがいけなかったのか、西洋では絵は読むものだから、そうした意味ではわかりやすいエッシャーの世界は、見た目以上の深み、面白さを提示できなかったということなのかもしれない。

 しかしながら、エッシャーの提示した図と地の、人間の認識力の曖昧さは、線遠近法の不確かさと表裏一体であることは自明である。人間の視覚の盲点を衝いた、新たなイリュージョン(幻影)の示唆と言ってもいい。そうした現象を発見、提起したエッシャーは高く評価されなければならない。世界的にまだまだ評価が低すぎるのではないか。

 彼の木版画制作能力の高さも評価されなければならない。画家で言えば、高いデッサン力があった上に、新しい物の見方を提案したのである。まさに巨匠、巨匠の名にふさわしい芸術家、それがエッシャーである。


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