アトリエ 籠れ美

絵画制作、展覧会、美術書、趣味、その他日常の出来事について
平成27(2015)年5月4日より

SIGHT ART(サイト・アート)VOL.3

2015-12-17 09:14:56 | 美術書全般、美術番組
 今月の12月7日発売。たまたま新聞広告で知り、早速買って読んでみた。今号はドガの裸婦、ロダンの水彩画、古九谷が特集されている。
 VOL.1とVOL.2がやや教科書的内容だったので、読みではあるものの物足りないと言えば物足りなかったのに対し、VOL.3はかなり意欲的な内容なので良かった。
 もうね、ありきたりの内容なら他で間に合うわけで(だいたいこの本を買う人はそうした定型など求めていない)、せっかく美術関係ではない出版社が出すんだから、もっと突っ込んだ、あまり裏づけのない仮説を振り回すぐらいでないと意味がないし、価値もない。それをちゃんとやってくれているから嬉しい。
 美術評論家や美術史家、あるいは学芸員などの専門家が何か新しい説を発表するなら、ちゃんとした裏づけが必要とされる。しかしこの雑誌の責任者の渋谷陽一は美術関係者ではないから、そんなことに捉われる必要はない。調べてふと思いついたことを、自分なりの考えや意見を、専門家を相手に対談という形でぶつけることができる。
 今号で何となくこの雑誌の方向性は見えたんじゃないか。今回の渋谷陽一のドガに対するある仮説は別段過激だとも暴走だとも私は思わない。十分ありでしょう。
 問題はこの雑誌がどれぐらい売れているのか、ちゃんと続けられるのか。編集後記によると、かなり感触が良かったそうである。個人的にはまだ物足りないなあ。もっと自由な視点が欲しい。まだ真面目すぎる。もっと真の意味での笑いが欲しい。読んでて「馬鹿だねえ」とか「そんなこと考えているの」とかそう思わせておいて、「いや待てよ、それもありかも」とふと立ち止まって考えさせる。そんな内容だったらと思う。だからある意味無責任でいいと思う。専門家は責任ある立場なので無責任な発言はできない。
 もうね、芸術だから高尚、みたいな日本の風潮はなくなった方がいい。欧米では芸術は非常に身近な存在である。日本人が漫画を読んで友達とあれこれ話し合うのと同じくらいの感覚である。そのための突破口、先鞭をつける雑誌に、この「サイト・アート」がなってほしい。
 もうありきたりの美術雑誌に飽きた方、一度読んでみて下さい。

 付)言い忘れましたが、定価は税込1200円です。画集代わりにもなります。それと今回の特別付録はドガのクリアファイルです。