アトリエ 籠れ美

絵画制作、展覧会、美術書、趣味、その他日常の出来事について
平成27(2015)年5月4日より

第28回 圏域美術家展

2015-12-09 18:30:59 | 展覧会、美術館、公募展、貸画廊、貸ギャラリー
圏域5市を代表する作家の競演
 第28回 圏域美術家展    至ルネこだいら(小平市民文化会館)
  12月8日(火)~12月13日(日)午前10時~午後6時
               入場無料  *最終日のみ午後5時まで

 正式には「多摩北部5市美術家展」。多摩北部5市とは、小平市、東村山市、清瀬市、東久留米市、西東京市のこと(いずれも東京都)。西東京市が合併前の、田無市と保谷市のときは、多摩北部6市美術家展と言っていた。
 年に1回、秋以降に各市が持ち回りで開催している。今年の開催は小平市。多摩北部5市在住の画家(または版画家)という基準以外に、出品作家をどのような選考基準で選んでいるかは謎。公募しているわけではないので、企画している圏域美術家展実行委員会と何らかの形でつながりのある人たちが選ばれているのだと思う。
 私は毎年見ているわけではなく、開催が小平市、つまりルネこだいらのときは見ている。理由は簡単、自宅から近いから。そもそもこの展覧会を知ったのは、美術教室に通っていたとき、先生から自分も出品しているからと教えられたから。そう言えば私の先生は出していなかったなあ(確か前回のルネこだいらのときも出していなかった)。
 油彩が大半だが、アクリルや水彩、日本画もある。今回初めて図録をもらった(もちろん無料)。図録なんて前はなかった。立派な図録である。
 会場の狭さを考慮してと思われるが最大号数は50号。でも50号だと画面全体を見るのにかなり後ろへさがってみないといけないので、会場の大きさを考えると最大30号が無難。その方が鑑賞者への負担が少ない。
 さて今回の出品作の中では高橋輝夫さんの「ファーのケープ」(F20号、油彩)が一番良かったと思う(図録だと色味がだいぶ違っているので注意)。何てことないようだが、作者の色彩感覚の良さがよく表れている。
 こうした試みは多摩北部5市に限らず、もっと行われてよいと思う。絵を身近に感じてもらうには絶好の機会だ。そしていったん始めたら継続してずっと行うこと。これも大事。長く続けていれば必ずいいことがある。無理せず細く長く続ける。成果や効果、結果をすぐに求めない。この圏域美術家展にしても、もう28回もやっている。これが50回、100回になったとき、おお、すごいねということになる。そうなると、いろいろなところから注目が集まってくる。そしてそれが思いもしなかったような結果を生むものだ。継続は力なり。急いては事をし損じる、である。
 この圏域美術家展は多摩北部5市の持ち回りなので、開催場所の近くに住んでいるなら、散歩がてらに見てみるのも悪くない。見終わった後に、ああだこうだと、あの絵が良かったとか、この絵のどこそこが良くないとか言えるようになれば、自分なりの審美眼ができているということになる。美術館の企画展を見て「いい絵だ」などと言うのは誰にもできること。こうした評価の定まっていない作品群を見て自分なりの判断が下せてこそ、ちゃんとした美術ファンと言えよう。

「美のバロキズム」

2015-12-09 06:40:09 | 画材、技法、芸術論、美術書全般、美術番組
MAUライブラリー
 美のバロキズム 芸術学講義 谷川渥著
          武蔵野美術大学出版局 定価3800円+税

 油絵制作と料理は似ているなあと随分前から思っていたのだが、すでに美学という学問ではそのようなことが言われていた。その美学の研究者が、この本の著者である谷川渥。
 実は谷川渥の著作をいくつか読んだのだが、以前に紹介した「図説 だまし絵」は別にして、どれも小難しく感心しない。ところがこの本は谷川渥が講演したものなどをまとめたものなので非常に読みやすい。大変ためになるし、面白い。ところが問題がひとつ、値段が高い。これが難点。だから強くは薦めにくい。確認していませんが、もし他社からでも文庫で出ていたら、文庫で十分です。本書に収められた図版はいずれも白黒ですし、あくまで文章を補完する程度のものなので。
 もし文庫で出ていたら読んでみて下さい。美学的観点から芸術を読み解いていくという行為はなかなか刺激的で新鮮です。