※前回の山口の記事はこちら(18節・清水戦、2-0)
※前回の鹿児島の記事はこちら(21節・大分戦、3-0)
<山口スタメン> ※()内は前節のスタメン
- 下堂がJ3・富山から完全移籍で加入決定。(選手登録は7/14以降)
- サーラット・ユーイェンがタイ・BGパトゥム ユナイテッドFCからレンタルで加入決定。
- 酒井がJ1・名古屋からレンタルで加入決定。
- 奥山洋平がJ1・町田からレンタルで加入決定。
- 加藤がJ3・今治へ完全移籍となる。(登録抹消は7/14)
- 梅木が仙台へ完全移籍となる。
<鹿児島スタメン>
- 端戸の負傷が発表され、6/19に手術実施して全治約2か月との事。
「薩長ダービー」と呼ばれるこのカード。
鹿児島ゴール裏に西郷隆盛の肖像画が写された断幕が掲げられれば、山口ゴール裏にも吉田松陰の「諸君、狂いたまえ」という名言の断幕が際立つ、薩摩・長州の関係性を感じさせるスタジアム内。
近隣の地域同士では無く、日本史に基づいたダービーマッチの典型例となりましたが、リーグ戦ではこれが通算6試合目と試合の歴史自体はまだ浅く。
そのため、wikipediaのページにもまだ記載されていない現状。
2014年にJFLで初の開催となったものの、先んじて山口がJ2にまで上り詰めたのが一因であり、鹿児島がそれに追随する事が定着への道ですが果たして。
この日の舞台は山口のホーム・維新みらいふスタジアム。
しかしその芝の状態は剥げ具合が画面でも目立つ程でかなり悪く、コンディションに気遣いながらのサッカーを余儀なくされ。
とりわけナイーブとなっていたのはやはりアウェイの鹿児島サイドで、普段の地上での繋ぐスタイルを薄めざるを得なく。
つまりはロングボール中心の攻撃ですが、慣れるのに時間を要して中々攻撃機会を得れない立ち上がりとなります。
そんな相手を尻目に、山口のロングパス攻勢は普段からのものであり。
それ故大きな変化は必要無い……と思いきや、前半7分でのゴールキックで、センターバックの平瀬がターゲット役となり前線に上がるという大きな変化を見せ付け。
そして左サイドで彼がフリックしたボールを繋ぎに掛かると、そのパスワークに本来逆サイドの吉岡が加わり、さらに野寄のスルーパスを左奥で受けるという終点にもなり。(奪われてクロスは上げられず)
かつての町田の「ワンサイドアタック」を彷彿とさせる圧縮ぶりで、この悪条件を制しようという姿勢だったでしょうか。
そんな絵面で自分のみに度肝を抜かせると、続く8分には、前がボランチへ可変してのビルドアップの体勢を採り。
前回の清水戦とは明らかに違うそのスタイルに、「何か変化を付けよう」という思考が見え隠れしていた感があり。
夏の移籍市場で大幅な入れ替えが必至な編成もあり、補強選手の出場前に色々と試していたでしょうか。
しかしサッカーそのものは、清水戦で威力を発揮した「相手を引き付けてその裏を取る」意識を貫き。
ロングボール一本を取っても、十分に待って相手が前に出た所を見計らって出されるので有効打に結び付きやすく。
11分GK関の左へ開くパスを、ヘナンがキープで引き付けて送ったロングパスにより迎えた好機。
それを走り込んで落とした新保からアタッキングサードで展開し、河野のスルーパスを左ワイドで受けた小林がポケットに入り込みクロス。
クリアが小さくなった所を中央から野寄がシュート、藤村がブロックするも尚も池上が拾ってペナルティアークからシュート(枠外)と、チャンスと見るや果敢に連撃を放ち。
一方の鹿児島も、ロングボール攻勢に加えて田中渉のロングスローも活用する等、パワーサッカーのスタイルで対抗姿勢を見せるも苦戦は免れ得ず。
山口は15分に再びの好機、最後方での平瀬のサイドチェンジを新保落とし→ヘナン浮き球パス→野寄フリックとワンタッチでの繋ぎを経て、新保がドリブル突破に入り。
左ハーフレーンから直進してポケットを突き、入れられたクロスは眼前の戸根のブロックでディフレクションした結果、ゴールに向かうも右ポストを直撃。
そして詰めにいった小林は合わせられず、その股を抜ける際どいボールとなり先制ならず。
続く16分にも同じく新保の左ポケットからのクロス、グラウンダーでニアに入った所を小林がダイレクトでシュート(岡本がブロック)と、ピッチコンディションを物ともせずにストロングポイントを発揮していきます。
何とか巻き返したい鹿児島、19分に山口がコーナーキックから、ショートコーナーののちクロスを収めた河野からエリア内で細かく繋ぐという具合にここでも変化を付け。
しかし野寄にアタックを掛けた山口卓己が奪ってカウンターに持ち込む事に成功。
ここは山口卓のドリブルが敵陣浅めで止められて終わりますが、これで山口のベクトルの逆を突く腹が据わったでしょうか。
22分には山口のロングボールを跳ね返し、拾った圓道がドリブルで推進、相田に倒されるも鈴木が拾い引き続きドリブル。
そしてミドルシュートを放ちますが、GK関がキャッチ。
24分に飲水タイムが挟まれ第2クォーターになると、パワーサッカーで対抗すると覚悟を決めた鹿児島により、山口ペースは影を潜め。
31分に左スローインから、相田がロングスローと見せかけて短く繋ぎに入り。
ここから野寄⇐野嶽への反則でフリーキック→左CK→左スローイン→右CK→右からロングスローと、目まぐるしくセットプレーを続けた山口ですが、FKからフェイントを交えて放たれた池上のシュート(壁に当たる)を除いて有効打は生まれずに終わり。
おまけにその直後(36分)、中心選手の新保が足を痛めて倒れ込むという危機的状況が生まれてしまいます。
筋肉系トラブルを予感させたその光景でしたが、幸い軽度だったようで治療も受けず継続する新保。
以降も目立ったアクシデントは無く終わり、山口サイドは一安心といった所。
試合の方は、山口のセットプレーを凌ぎ続けた鹿児島が終盤に引き戻しに掛かり。
その中で39分、外山の左サイド手前からのクロスが流れた所、ファーに誰も走り込んでいなかった事に外山が怒りを表すという場面も作られ。
続く40分、再び左サイドから好機を迎えると再び外山のクロス、今度はファーに上がったボールを藤本が合わせヘディングシュート。
しかし強引に撃ちにいった結果、野寄を倒してしまった事で反則を取られて終わり。
中々波に乗れないなか、こうしたベテラン選手の姿勢と奮闘が目立つ絵図となります。
結局スコアレスのまま前半が終了。
ともにハーフタイムでの交代は無く、後半もロングボール中心の我慢の展開という流れは変わらずとなります。
山口は後半に入っても、ゴールキックの際に平瀬が上がる手法は継続。(飲水タイムの後辺りから取り止められる)
しかし前のボランチへの可変は見られず、逆にCBが思いきりサイドに張り出して押し上がる状態が目立ち、時にはヘナンがワイドからクロスを上げる事もあり。
つまりはボールサイドに大きくスライドする状態に。(サイドバックが中央辺りに位置)
フォーメーションはあくまで参考、と言わんばかりに攻める山口。
5分には池上の縦パスを受けた野寄がドリブルに入ると、中央→右と逆のサイドへ前進していき吉岡にパス。
受けた吉岡はカットインからミドルシュートを放ちますが、巻ききれずゴール左へと外れ。
11分には新保が右サイドでのパスワークに加わり、受けたのち中央→左へ展開。
野寄のエリア内へのミドルパスを吉岡が戻し、繋ぎ直して左からクロスを上げたのは前述の通りヘナン。
そしてファーで小林がヘディングシュートを放つ(枠外)、という具合。
前半同様にフィニッシュに持ち込む流れを構築した山口ですが、14分に先んじてカードを切り。
吉岡・小林→末永・山本へと2枚替えを敢行します。
前年鹿児島で昇格を決定付けるゴールを齎した山本、この場面で古巣に牙を向く存在に。
15分に左スローインから繋ぐ山口、池上のクロスの跳ね返りを拾い、ミドルシュートを放ったのは末永。
この強烈なシュートに対し、鹿児島は戸根が頭部でブロックと、決死のディフェンスで防ぎきり。
山本・田中渉がピッチに揃い、古巣対戦の要素が強まった事でお互いハイテンションと化したでしょうか。
続く16分には、鹿児島陣内で鈴木がショルダーチャージで野寄を倒してボール奪取、笛は吹かれずにそのままドリブルする鈴木に対し山口も相田がショルダーチャージを敢行。
そして奪いきって敵陣で継続させると、新保のボールキープに対し戻った鈴木が倒してしまうと、ようやく反則の笛が鳴るという具合に激しいデュエル・トランジションが展開され。
この後、先程のブロックで出血した戸根がピッチ外で治療する事となり後に復帰。
(鹿児島ベンチは18分に田中渉→ンドカに交代、鈴木が左サイドハーフに回る)
投入された山本は、19分に新保のクロスを合わせてのヘディングシュート。(ゴール右へ外れる)
24分には敵陣での細かなパスワークを経て、相田のラストパスをエリア内で受けてシュート(GK泉森キャッチ)と、古巣相手にゴールを奪わんと積極的にFWの役目を果たしにいき。
その傍らで激しさは留まる事無く、23分には鹿児島のCKから、クロスの跳ね返りを圓道がミドルシュートにいくもジャストミート出来ず。
ここからクリアボールを末永が繋いだ事で山口のカウンターになると、新保のスルーパスを受けた野寄がエリア内へ突撃。
そして右ポケットからカットインでゴールを窺ったものの、藤村のディフェンスで倒され奪われると、笛が鳴らずに終わったのみならず逆に鹿児島のカウンターに。
ンドカが右サイドをドリブルで持ち運び、山口は素早い戻りで遅らせた事で大事には至らなかったものの、ペースを握りきれないその展開に不気味さを感じる事にもなり。
そして25分、池上が足を痛めたというタイミングで後半の飲水タイムに。
ブレイク明けに彼に代わり田邉を投入した山口ベンチ。
スコアが動かないまま迎えた第4クォーター、緊迫した状況から一転してのオープンな展開が予想されましたが、それとは裏腹にお互い攻撃機会が減る事に。
ロングボール重視の攻撃とそれによる肉弾戦により、疲労度は攻撃面に影響を及ぼしていたようでした。
それに伴い、鹿児島は32分に圓道・藤本→河辺・有田へと2枚替え、山口は34分に野寄→若月へ交代と前線の駒を代えに掛かり。
山口は最後の交代により、これまで最前線のターゲット役で奮起してきた河野が左SHへシフト。
前節(水戸戦、1-1)のスタメン2トップが揃った事による采配ですが、結果的にこれが大当たりとなります。
36分山口は田邉のボールキープにより敵陣で溜めを作るも、鹿児島の素早い寄せを受けた事で、右へ展開してからのアーリークロスを選択。
前のクロスはファーサイドのターゲットとなった河野に上がるものとなり、野嶽のクリアミスもあり綺麗に収まった事でボックス内で迎える好機。
そして最初に放たれたシュートこそ野嶽がブロックし、ミスを挽回という絵図になったと思われた刹那、すかさず反応して再度シュートした河野。
豪快にゴール右上へと突き刺さり、とうとう均衡が破れる事となったこの試合。
ベンチの狙いを見事にピッチ上に表した先制点となりました。
追う立場となった鹿児島ですが、本来のパスサッカーを繰り広げるには厳しい状態故に、反撃の流れを構築できず。
焦りが顔を出す展開となり、38分にはカウンター阻止気味に若月を倒してしまった山口卓に反則・警告。
41分にも最終ラインで末永にボール奪取され、その刹那彼を倒してしまった外山が反則・警告と膨らむ被害。
そんな中で浅野哲也監督が採った手段は、完全なパワープレイへの移行でした。
43分に野嶽・藤村→井林・千布へと2枚替えを敢行すると、井林がFWの位置に入ってターゲット役となり。
そして右SBの穴埋めはせずと、リスクを承知の上でゴールを目指す体勢に入ります。
45分にはまたも、カウンター阻止で山本のドリブルを倒してしまった岡本が反則・警告を受けましたが、多少の被害には構っていられず。
期待に応え、送られる(主にGK泉森の)ロングフィードを次々と頭でフリックしていく井林ですが、エリア内での決定機までは齎せず。
スローインの際はロングスロー役が山口卓に代わったものの、放られたボールは低い弾道に終わるなど、付け焼刃感は否めず。
そして2度目は近場へのスローに切り返る山口卓、ここから外山のクロスが上がり、ファーで戸根が折り返したもののフィニッシュには繋がりません。
逆にクリアボールを敵陣で河野が拾い、溜めを作ってからのパスワークでィフェンスを剥がした末に若月がエリア内左を突く決定機を迎えた山口。
カットインで自ら撃つと見せかけてパスを送り、田邉のシュートが放たれるも枠を捉えられず。
駄目押しこそなりませんでしたが、勝利への進軍は止まる事は無く。
そして試合終了の時を迎え、文字通り難しい試合を制した山口。
今後は編成面でのやり繰りがピッチ上に影響する、この日よりも難儀な対応が迫られると思われますが、その苦境を跳ね返し昇格争いを制する時は来るでしょうか。
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