勝手にお喋りーSanctuaryー

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このメッセージが伝われば

2006-05-16 | 映画のお喋り
お友達Mちゃんが去年の夏に絶賛していたので、久しぶりに邦画を見た。

 『星になった少年』 2005年・日本
   監督:河毛俊作
   出演:柳楽優弥、常盤貴子、賠償美津子、高橋克美、蒼井優

実話だそうだが、原作は未読。
象が出るのと(動物ものでも滅多にない)、柳楽くんに興味があった。
残念ながら河毛監督はTVドラマ時代、可もなく不可もなくの印象。
私が木村拓哉さんのドラマの中でもっとも好きな『ギフト』のメイン監督さんなのだが、ゲスト監督の中江さんの回がベストだった。

話はそれるが、『ギフト』はいいドラマだったのに、例の事件で木村さんの黒歴史みたいに葬り去られているのが残念でならない。
木村さんドラマでは、中江功監督の『眠れる森』と並ぶ秀作と、私は思っている。

さて映画のほうだが、題名がすでにネタバレしている。
スターになって引っ張りだこ・・・なんて風には誰も思わないから、まずお空のお星さまになりましたって話しだという覚悟は出来る。
そこ入りなのは、原作で知っていると言うお約束のせいだろうが、なんかちょっと残念。

この映画、語る部分は3つしかない。
まず柳楽くんの、これぞ思春期と言う微妙な時代の危うさの魅力だ。
自分で自分を持て余す時代。
その思春期独特の暗さと、未成熟なゆえの無限の可能性。
光と影を併せ持つ複雑な彼の存在そのものに、私はしばし圧倒されてしまった。
このまま大人にならずに、と言うより俳優を続けずに思い出だけを残して欲しいと思ってしまったほどだ。

2つめはタイのロケーションの素晴らしさ。
そこでの人間関係は、日本でのそれより遥かにわかりやすい。
ポーの言葉から、タイの貧しい子供たちが確実に収入を得られる「象使い」の養成所に、金持ちニッポン人がやってきたのが気に食わないことは容易に察しられる。
あんた、国に帰れば家庭があるんだろう?金になる仕事にも就けるんだろう?だから帰れ、と言う彼らの気持ちは痛いほどわかる。

それでも'テス’は頑張る。
初めは弱音を吐いたり、食べ物も食べられなかったり、通じると思った象の気持ちがつかめなかったり。
でも頑張り続けた結果、彼は大切な真実を手に入れて帰国するのだ。

3つめは、もうここだけでこの映画は見る価値がある。
帰国した哲夢は、ちゃんとしつけを受けていない小象のランディの調教を始める。
もともと像使いになろうとした切っ掛けがランディだったので当然だ。
だがプロの像使いであるテツの調教は厳しい。
見かねた母親(常盤貴子)が止めようとする。

「可哀想じゃない。これまでだったうまくやってきたんだから、そんなに厳しくすることはないわ」
(台詞は正確ではないけど、意味はこういうことだと考えてください)

そして哲夢はこう言い返すのだ。

「ランディが仕事をするようになってから、抑えられなくなったらどうするんだ。
人を傷つけてしまったら?場合によっては殺してしまうかもしれないんだ。
その時にどうやってランディを助けてやれる?今やるしかないんだよ」

この時の柳楽くんは、完全に大人の目をしていた。
そして観客にこう訴えかけたのだ。

ー可哀想だと言って、子供の頃に甘やかしたらどんな人間に育つと思う?
 何でも言うことを聞いてやって、叱りもしないで、守ってやって、
 辛いことも経験させなかったら、どんな大人になると思う?
 困るのは社会に出てからなんだよ?
 もし社会に適応できなかったら?
 万が一犯罪者になってしまったら?
 その時、いったい親に何が出来るって言うんだ。
 守ってもやれないし、罪を代わりに償ってもやれない。
 だから本当に子供の為を思うなら、厳しくしつけてやらなければダメなんだ。

このメッセージが少しでも伝われば、映画は報われる。

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