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マタイ受難曲 みました

2009-04-07 08:46:43 | 作品研究
ジョン・ノイマイヤーの『マタイ受難伝』友達にお家に来てもらって鑑賞会しました。

宗教的バレエって日本人には難しいですね?

白い衣装のモノトーンな世界。厳かな雰囲気・・・。
ノイマイヤー氏自らが踊るキリスト…。

これは西洋人の精神性の核に触れるような作品ですね。
でも、日本人はキリスト教になじみがないのでストーリーが追えないね。

なんだかね、アンドレ・ジイドの『田園交響楽』を思い出しました。
キリスト教世界の重苦しさ、人間性の抑圧感が…。
『ベニスに死す』と違って、ほんのちょっとのおちゃらけたところがない
感じで見ているほうが息苦しい感じ。この息苦しさが狙いだと思うのですが
日本人も内面的葛藤って色々あって大変だけど、ヨーロッパ人も大変ね、
みたいな感じでした。私たちはキリスト教的観念の傍観者なので、どうしても
そう思っちゃいますね。心の中が色々複雑そう。これが同じヨーロッパ人が
みたら色々と心中複雑に共感するのかもしれません。

罪悪感、という感情は、人間感情の中でも相当ややこしい部類ではないかと思います。

というのは、とりあえずキリストの受難って”信者の救い”のためになされたって
ことになっていますもんね。あっちでは。キリストが処刑されたのはみんなのために死んでくれた、ってことになってるんですよ。キリスト教もややこしい説明をしたもんです。ですからキリスト教徒と罪悪感というのは切っても切れない仲って
いうか、生れ落ちたときから罪を背負って生きているんですよね。

そういうややこしさを秘めたバレエのようでした。

でも人魚姫、椿姫でおなじみになったダンサーが別の踊りを踊っているのを
みるとなんだか親近感が・・・。こういう役も踊れるのね、みたいな。

ともかくとってもシリアスなバレエでした。

バレエに苦悩ではなく、喜びの表現や人生の躍動感の再現、
日常を忘れて夢のひと時を…と考えるより、どちらかというと今ツライ目に
あっている人が見ると心が癒されるバレエかもしれません。

レーラ・アウエルバッハへのインタビュー 要約

2009-03-01 08:31:34 | 作品研究

① 人魚姫の作曲ではノイマイヤーの意向に大幅に従ったのですか?
A:ノイマイヤーの言葉はこうです「テキストをインスピレーションの源として、構想の原案として自由に使うように。そうすれば音楽は再び振り付けにも刺激になるだろうし、それが音楽の刺激として戻っていくでしょう」
時には何時間も海を越えて電話で語り合った。常に精神的に結びついていた。作品=子供を育てる親という立場だったが、結局出来上がった子供はジョンのオリジナル台本と似ているところはほとんどない。

② 初めてのバレエ音楽ですが、これまでの経験はどうですか?
A:演劇の仕事が好きで、子供の頃、ストラビンスキーとディアギレフやバランシン、プロコフィエフやラヴェルが参加したプロジェクトについての本は全部読んだ。偉大な振り付け家と仕事ができる日はないかと望んでいた。この希望が叶ってうれしい。『人魚姫』は色々な点でこれまで書いたものの中でもっとも難しい作品だった。人魚姫が一歩歩くごとに血を流すごとく、私の音符が血をながしているようだ。

③ なぜフルオーケストラで書いたのですか?
A:根本的に『人魚姫』はとても奥深い作品。創造主と創造物の関係が物語になっている。大部分は室内楽的に構成した。愛、死、自己同一性、時間、時間の超越、という等身大よりも大きな物語になった。3つの次元、海の中、人間界、超自然である空中、が必要になり、大きなキャンバス、つまりオーケストラが必要になった。海だけでも、様々な深さ、層、色、変化、動きがあり、それを表す音のパレットが必要だった。
もともとコペンハーゲン版のオーケストラに満足していて、キメラ(Chimera)、という名前の交響曲にした(http://www.leraauerbach.com/catalogue/chimera.html)。舞台作品では、いくつかのニュアンスが失われたような気がした。演奏会の観客の反応は演劇で用いられたときとまったく違う。演劇に使う場合はもっとニュアンスを削り明確化しないといけなくなる。メインになるソロ楽器、テルミンとバイオリンは人魚姫の二面性を反映している。バイオリンは人間的な面を、テルミンは人魚姫の本質=あの世を表現している。
ハンブルグ版を作った目的はオーケストラの編成を小さくすること。コペンハーゲン版は100人編成のオケだが、ハンブルグ版は70人編成。チェンバロとオルガンがない。作品を短くし、密度がさらに濃くなり、いくつかのシーンは異なる感じがする。
ジョンは作者アンデルセンを詩人としてバレエ作品中に入れることを創作過程の最後のほうで思いついたため、コペンハーゲン版では音楽スコアの最後のほうにアンデルセンの音楽的モチーフを入れることができただけだったが、ハンブルグ版での改訂で、音楽的なモチーフを見直し、より洗練された構成にできた。他には魔法使いの音楽的な題材がある。
コペンハーゲン版では、1幕以外は登場しているが、ここで過去、現在、未来の人魚姫、セイレーン、ルサルカが何の事情も知らない結婚式の招待客を万華鏡のような不気味な芸を演じると3幕で戻ってくる。

④ 1幕の甲板の上で、ブレヒトとヴァイルの『三文オペラ』『大砲の歌』を引用していますがこれはどの程度重要ですか?
私は音楽では引用はほとんど使わず、使う場合は限定して使う。「ルサルカ、セイレーン、ウンディーネ、人魚姫との魔法のおしゃべり」がそれで、とても早いテンポで過去の作品から様々な引用を折り重ね、過去、現在、未来を表現した。水兵のダンスには引用がありますが、ヴァイルではなく『鳥の丸焼き』というオデッサの民謡で、酔っ払いや犯罪者の歌で、人魚姫の世界と船乗りの品のない世界の対比をなしている。クルト・ヴァイル(ドイツの作曲家)も同じ歌を聴いて『三文オペラ』に使用したのではないか?

⑤ テルミンを取り入れるに至った経緯は?

A:アンデルセンの原作では人魚姫は忘れがたい美しい声を持っているのでそれをテルミンで表現している。幽霊のようで壊れやすく同時に力強い、奇妙で印象的なものが必要だった。世界中の童話で人魚姫は船乗りを不幸に陥れます、それは人魚姫の歌を耳にすると声に聞き入って時間が止まり、妖しい声に夢中になって死んでしまうから。
また重要な点は人魚姫が孤独だということで、人間界にも海にも属していない。同じことがテルミンにも言える。

⑥ どのシーンが印象的か?
A:最後の人魚姫が姿を変えるところ。人魚姫は不死鳥のよう。死んで過去は消失するが、非凡な力によって新たに生まれる。

⑦ アンデルセンの魅力は何か?
A:アンデルセンは人間の本質が分かっていたこと。シンプルで詩情があり、メタファーで悲劇的な、それでいて一般的なテーマを扱っている。死ぬこと、夢を見ること、惹かれあうこと、それらに対する恐れや不安、アンデルセンはこれらを語っている。アンデルセン自伝も読み、アンデルセンが生涯ずっと自伝を構成し、多くが悲しい物語だが、現実からは完全に逸脱した童話、という事実は非常に興味深い。

⑧ 作曲家として、あなたは物語にどう考えていますか?
A:作曲家としての意見は、詩人や小説家としての私の意見と同じです。アンデルセンについて考えていることは同じです。

人魚姫プログラムの要約

2009-02-27 08:26:16 | 作品研究
①デンマークロイヤルバレエとの共同作業の馴れ初めについて。なぜ人魚姫だったのか?
A:デンマークロイヤルとは1974年『ロミオとジュリエット』以来のつきあい。
当時でディレクターフレミング・フリントが私の『ロミジュリ』をハンブルグで見て、気に入りコペンハーゲンに招いた。当時は若くダンサーと同年齢だった。当時からデンマークバレエとは親しく付き合っている。
05年にアンデルセン生誕記念行事があり、それに際してバレエを依頼された。バレエを作ることと、「アンデルセン大使」であることが依頼の内容だった。

②『人魚姫』で描く愛について
A:2つのことに魅了された。
1つは異例な愛の形(報われない愛)で、これは多くの人の共感を呼ぶ。アンデルセンが教えているのは、一方的な愛は、報われるとは限らないということだ。
2つめは童話の構成。つまり矢車草のように青い海中の世界の美しさ(理想郷)と人魚姫の手の届かない世界(人間界)の対比。人魚姫は手の届かない世界を追い求めて死ぬ。未知の世界を発見しようという憧れと愛によりその未知の世界へ達しようという勇気が人魚姫にある。
彼女が王子を殺せないのは愛ゆえであり、そのことが、彼女をさらに高い世界へ(=空)と変える。しかし煉獄を受けなくてはならない。人魚姫はアンデルセンが書いた物語の中でもっとも自叙伝に近いという主張があることを知り、アンデルセン自身をバレエに投入した。バレエ中のアンデルセンと人魚姫の関係は、『ベニスに死す』のアッシェンバッハとフリードリヒ大王の関係と同じ。作者の心が反映された存在。

③描かれる世界について
A:海の世界は理想の世界で、美しく何不自由ないもの。アンデルセンもそう描いているし私もそう思う。しかしキリスト教的な考えでは海は否定的なものなので、レーラ・アウエルバッハの音楽も最初は重く、スコアを変えてもらった。海の世界=「ああ、とても素晴らしいところ、そこで暮らしたい」

④ラストシーンの新しい世界はどこにあるのか?
A:星空をイメージしている。私にとって星空はどこかポジティブで遠く離れていて同時に近くにあるイメージだ。

⑤登場人物にシンパシーを感じているか?

A:もちろん。でも好き勝手に感じたことを表現しているのではない。自分自身の中に題材と同一の部分を見つけたときに作品が生まれる。アンデルセンを読まずに作品を作ることはありえない。だたしバレエではアンデルセンは詩人だ。アンデルセン専門家以外の人にも分かるようにするため。

⑥アンデルセンは人魚姫の歩き方を「ふんわりと軽やかな歩き方」と書いているがこれは振り付けに影響したか?

A:確かに影響した。人魚姫のイメージ作りは『ハムレット』のイメージ作りより難しくなかった。ハムレットは内面的なため肉体的な変身をあきらめた。

人魚姫は、脚がなく踊り、次に脚を得て踊り、車椅子に乗せられ、最後にトウシューズを履いて踊る、けれどもきちんと動けない。どの瞬間も痛みを伴った洗練された踊り。愛がすべてを可能にしたということになっているが、これは、まさにバレエダンサーが挑んでいること(バレエへの愛のために肉体的な苦痛を乗り越える)と同じだ。
⑦エピローグではお互いがお互いの影のように見える。この暗喩は重要な点か?

A:アンデルセンと人魚姫の分身をほのめかしている。

この影はポジティブで白いもの。2人は運命共同体で、2人をまちうけているものは何か分からないが、2人ともそれぞれの世界から逃亡し、夢を膨らませている。この瞬間を表すためシンクロして踊る。このとき2人が裸足であり、靴を身に着けていないのは平行性の表現だ。

⑧ハンブルグ版とコペンハーゲン版の違いは?
A:常にバレエ作品は変化している。アトリエ的要素があり、振り付けは会話だからだ。
ハンブルグ版はコペンハーゲン版の振り付けを元にし、リハーサル初日にダンサーたちにビデオを見せたが各シーンは新しく解釈し稽古をつけた。ダンサーと一緒にオリジナルのテキストに各変更点を加えた。脚色には変更なし。振り付けでも情熱でもコペンハーゲン版よりもっとインテンシィブになるようにと望んだ。音楽はハンブルグ用にさらにスコアの透明性を高め、いくつかコンセプトの変更があった、ソロのバイオリンの位置づけなど。

⑨作曲家との共同作業のなりそめは?

A:バイオリニスト、VadimGluzmanが私のバレエ『バーンスタインダンス』を演奏し、その数年後に彼から手紙がとどき、若い女性が彼のバイオリンのために曲を作ったがこれが私のバレエに合うのでないかと書かれていた。彼はその後、その曲を演奏して聞かせてくれた。それが気に入りレーラ・アウエルバッハに別の曲を依頼し『プレリュードCV』が生まれた。
 コペンハーゲンの仕事をすることにきまってから、デンマーク生まれの作曲家を探したがすでに時期が遅かったため適任者がおらず、レーラに依頼。彼女は03年にハンブルグでフィルハーモニーにバイオリン曲を書いておりそれが気に入っていたので、長編バレエ向けに書いてほしいと頼むとすぐにOKしてくれた。04年8月にリハーサルを始めたときにはすでに1幕用のピアノスコアが完成していた。振り付けと音楽制作は同時進行だった。

⑩振り付け家と作曲家の関係について

A:振り付け家の意思と作曲家の意思が最初はかならずしも一致していない。
たとえば、ピアノだけで聞いた場合海の世界を美しく表現していた音楽もオーケストラで聞いた場合、重くてびっくりした。そこで話し合い、変更してもらう。細部までは指示しない。つねに電話で話していた。彼女はすぐには私の提案を受け入れないが、音楽的により良い結果になると分かると受け入れてくれ、お互いに信頼関係を築いている。

⑪人魚姫では舞台演出はどのような機能をもっていますか?

A:舞台演出は厳密にコントロールされている。例えば海の世界は流れるような照明のラインで表現し、ここはどこなのかという場面なのかを伝えている。照明は、場面が調和なのか、緊張なのかシグナルを送るもの。舞台演出が厳密にコントロールされているのはそのため。
人魚姫には空間を制限して閉じ込められた感覚を見せる瞬間がある。他の舞台芸術家が気に入っている要素を変えるときは気を使う。空間や雰囲気や状況という場面を自分がどのように変えたいのか分かるまで時間がかかることがある。

⑫特徴的な衣装について

A:衣装は人魚姫の一部として作られた。脚がない人の表現法に対する答えだ。
発端はバレエ『ウンディーネ』(オンディーヌ?)で、94年にこの作品に取り組んでいたときで日本ツアー中だった。歌舞伎や能に強い印象を受けた。日本で、長い袖や裾の服を着て動くにはそれにふさわしい動きを習得しようとしたこともある。
人魚姫では脚の形は隠すべき、としたのでさらに動きは難しくなった。日本でこの提案をさらに広げ、女性ダンサーをリフトして脚を動かすことで、これまでと異なる肉体的な表現が可能になった。私にとって重要なのは型にはまらないこと。

⑬舞台、衣装、照明などのステージワークのチークワークについて。振り付けに影響はあるか?

A:振り付けがすべてをリードするもの。振り付けが前面に立つ。
衣装のユルゲン・ローゼとはクラシックの仕事をしている段階で、時短法について一緒に取り組んだ。私たちが検討したのは『くるみ割り』や『親指姫』の2幕のイメージと『椿姫』。舞台芸術家と新しい次元を発見し、自分の視点を客観的に見れたり、教えられることがあるととても実りが多いが、『人魚姫』では時間がなかった上に作曲も同時進行だったので、空間プランの専門家とインスピレーションのやり取りをするような余裕がなく、振り付けをしながら、衣装のイメージを発展させた。最初に全バレエを振付けてしまいその後に衣装を考える、ということはしない。照明も同じ。
私は作曲家や舞台芸術家、衣装の“仲介人”になるつもりはなく、全体像を作り出すための“中央オフィス”でありたい。

⑭『人魚姫』は『ウンディーヌ』を発展させたものといえるか?

A:はい、間違いなく。同じテーマを別の機会に振付けることは始めてだった。しかし『ウンディーヌ』からの振り付けの拝借はない。大きな違いは、『人魚姫』では、アンデルセン役が本質的な役割を果たしていること。能や歌舞伎の要素を取り入れることは『ウンディーヌ』が下敷きになっている。

⑮『人魚姫』の”寓話”と水の女神の”神話”ではどちらが重要か?

A:私が振り付けできるのは自分が理解できることだけ。
作品づくりでもっとも重要なことはコミュニケーションだ。ダンサーに向かって「今日は神話になりましょう」ということはできません。例えば『プレリュードCV』では音楽を出発点として、ダンサーとシチュエーションの練習をした。そのシチュエーションの連続が後から、書いてみたらバレエのスコアになっていた。別の言葉でいうと、シチュエーションの累積が、創作過程の中で、神話化しエコーとして余韻としての残り、後で私に伝わってくるのだと思う。

ノイマイヤーさんの好み

2009-02-10 20:48:11 | 作品研究
ノイマイヤーさんの好みです。

芸術監督就任20周年記念でのインタビューから抜粋。なーんか答えたくないのに
答えたのかなぁ(笑) でもなんとなく人柄が分かるのがいいですね。

Neumeier specified some of his preferences:
Where would he like to live? どこに住みたいですか?
"Where I'm working."仕事があるところです。

Who is his favorite legendary hero?  子供時代のヒーローは
"King Arthur."  アーサー王

and who in history?  歴史上の人物は
"Jesus Christ."  キリスト

And in the present? 現在の人物では
"Mother Teresa."  マザーテレサ

And in fiction?  小説上の人物では
"Jeanne d'Arc, Juliet, Marguerite Gautier."  ジャンヌダルクとマルグリット・ゴーチエ

Who are his favorite painters? 好きな画家は
"Piero della Francesca, Matisse, and many others." フランチェスカとマチス、ほかにたくさん

Composers? 作曲家は?
"Mahler, Bach, Chopin, and many others. マーラー、バッハ、ショパン、その他

" What is his favorite activity? 好きなことは?
"To work."  仕事

And what would he like to be? 何になりたい?
"What I am!" 自分

(Twenty Years at the Helm in Hamburg:
John Neumeier's Expatriate Gains
by Horst Koegler  )

レーラ・アウエルバッハへのインタビュー

2009-02-08 08:29:38 | 作品研究

① 人魚姫の作曲ではノイマイヤーの意向に大幅に従ったのですか?
A:ノイマイヤーの言葉はこうです「テキストをインスピレーションの源として、構想の原案として自由に使うように。そうすれば音楽は再び振り付けにも刺激になるだろうし、それが音楽の刺激として戻っていくでしょう」
時には何時間も海を越えて電話で語り合った。常に精神的に結びついていた。作品=子供を育てる親という立場だったが、結局出来上がった子供はジョンのオリジナル台本と似ているところはほとんどない。

② 初めてのバレエ音楽ですが、これまでの経験はどうですか?
A:演劇の仕事が好きで、子供の頃、ストラビンスキーとディアギレフやバランシン、プロコフィエフやラヴェルが参加したプロジェクトについての本は全部読んだ。偉大な振り付け家と仕事ができる日はないかと望んでいた。この希望が叶ってうれしい。『人魚姫』は色々な点でこれまで書いたものの中でもっとも難しい作品だった。人魚姫が一歩歩くごとに血を流すごとく、私の音符が血をながしているようだ。

③ なぜフルオーケストラで書いたのですか?
A:根本的に『人魚姫』はとても奥深い作品。創造主と創造物の関係が物語になっている。大部分は室内楽的に構成した。愛、死、自己同一性、時間、時間の超越、という等身大よりも大きな物語になった。3つの次元、海の中、人間界、超自然である空中、が必要になり、大きなキャンバス、つまりオーケストラが必要になった。海だけでも、様々な深さ、層、色、変化、動きがあり、それを表す音のパレットが必要だった。
もともとコペンハーゲン版のオーケストラに満足していて、キメラ(Chimera)、という名前の交響曲にした(http://www.leraauerbach.com/catalogue/chimera.html)。舞台作品では、いくつかのニュアンスが失われたような気がした。演奏会の観客の反応は演劇で用いられたときとまったく違う。演劇に使う場合はもっとニュアンスを削り明確化しないといけなくなる。メインになるソロ楽器、テルミンとバイオリンは人魚姫の二面性を反映している。バイオリンは人間的な面を、テルミンは人魚姫の本質=あの世を表現している。
ハンブルグ版を作った目的はオーケストラの編成を小さくすること。コペンハーゲン版は100人編成のオケだが、ハンブルグ版は70人編成。チェンバロとオルガンがない。作品を短くし、密度がさらに濃くなり、いくつかのシーンは異なる感じがする。
ジョンは作者アンデルセンを詩人としてバレエ作品中に入れることを創作過程の最後のほうで思いついたため、コペンハーゲン版では音楽スコアの最後のほうにアンデルセンの音楽的モチーフを入れることができただけだったが、ハンブルグ版での改訂で、音楽的なモチーフを見直し、より洗練された構成にできた。他には魔法使いの音楽的な題材がある。
コペンハーゲン版では、1幕以外は登場しているが、ここで過去、現在、未来の人魚姫、セイレーン、ルサルカが何の事情も知らない結婚式の招待客を万華鏡のような不気味な芸を演じると3幕で戻ってくる。

④ 1幕の甲板の上で、ブレヒトとヴァイルの『三文オペラ』『大砲の歌』を引用していますがこれはどの程度重要ですか?
私は音楽では引用はほとんど使わず、使う場合は限定して使う。「ルサルカ、セイレーン、ウンディーネ、人魚姫との魔法のおしゃべり」がそれで、とても早いテンポで過去の作品から様々な引用を折り重ね、過去、現在、未来を表現した。水兵のダンスには引用がありますが、ヴァイルではなく『鳥の丸焼き』というオデッサの民謡で、酔っ払いや犯罪者の歌で、人魚姫の世界と船乗りの品のない世界の対比をなしている。クルト・ヴァイル(ドイツの作曲家)も同じ歌を聴いて『三文オペラ』に使用したのではないか?

⑤ テルミンを取り入れるに至った経緯は?

A:アンデルセンの原作では人魚姫は忘れがたい美しい声を持っているのでそれをテルミンで表現している。幽霊のようで壊れやすく同時に力強い、奇妙で印象的なものが必要だった。世界中の童話で人魚姫は船乗りを不幸に陥れます、それは人魚姫の歌を耳にすると声に聞き入って時間が止まり、妖しい声に夢中になって死んでしまうから。
また重要な点は人魚姫が孤独だということで、人間界にも海にも属していない。同じことがテルミンにも言える。

⑥ どのシーンが印象的か?
A:最後の人魚姫が姿を変えるところ。人魚姫は不死鳥のよう。死んで過去は消失するが、非凡な力によって新たに生まれる。

⑦ アンデルセンの魅力は何か?
A:アンデルセンは人間の本質が分かっていたこと。シンプルで詩情があり、メタファーで悲劇的な、それでいて一般的なテーマを扱っている。死ぬこと、夢を見ること、惹かれあうこと、それらに対する恐れや不安、アンデルセンはこれらを語っている。アンデルセン自伝も読み、アンデルセンが生涯ずっと自伝を構成し、多くが悲しい物語だが、現実からは完全に逸脱した童話、という事実は非常に興味深い。

⑧ 作曲家として、あなたは物語にどう考えていますか?
A:作曲家としての意見は、詩人や小説家としての私の意見と同じです。アンデルセンについて考えていることは同じです。

椿姫の音楽について

2009-02-05 20:41:27 | 作品研究
椿姫の音楽、こんな風に使われているそうです。(ダンスマガジンより)
すべてピアノ独奏曲。

■プロローグ ピアノソナタ第3番第三楽章 偶然のように印象的な旋律を奏でる       今は亡きマルグリットの旋律のように

■1幕 ピアノ協奏曲第二番 CONCERTO FOR PIANO AND ORCHESTRA NO.2 IN F MINOR OP.21

■2幕 ピアノ独奏曲ワルツ2番 
三つのエコセーズ 3 Ecossaises
ワルツ4番
ピアノソナタ第3番第三楽章 
       →マルグリットのパトロンを拒絶し、アルマンとの愛を貫こうと
       いう意思の表明として用いられる
前奏曲第二番 →父の登場
前奏曲第十七番 →マルグリットとアルマンの父の対立
前奏曲第十五番(雨だれ) Prelude No.15 In D Flat
              →茫然自失のマルグリット
ピアノソナタ第三番第三楽章
前奏曲第二十四番 →アルマンがさる

■3幕 ポーランド民謡による大幻想曲
     CHOPIN: Piano Concerto No. 1 / Fantasia on Polish Airs /
         Andante Spianato 絢爛豪華な曲
バラード第一番 →オリンピアで仕返しを見せ付けるところ アンダンテ・スピアナートと豪華な大ポロネーズ
ピアノ協奏曲第一番第二楽章 →死に瀕したマルグリット
ピアノ・ソナタ第三番第三楽章

ピアノソナタの3番がマルグリットのテーマなんですね。
こちらで聞けます。

この作業を通して、のだめの『正しいカレー』を思い出したのですが(笑)

History of 椿姫

2009-01-30 18:18:23 | 作品研究
ちょっと「ダンスマガジン」から抜粋してみました。
3つの流れがあります(ヨーロッパ大陸、イギリス、その他)

■ヨーロッパ
1951 アンソニー・チューダーNYCBで『椿姫』初演
   特徴:肩を出した衣装
   音楽:ヴェルディのオペラ

1957 ベルリン・バレエで新演出 

しかし、定着せず以後40年ノイマイヤー版の出現を待つことに。

■一方イギリスで
1963 アシュトン版 ロイヤルバレエの『マルグリットとアルマン』初演
    ・キャスト:フォンティンとヌレエフの決定版
    ・音楽:リストのピアノソナタ
    ・特徴:小粒ながら必殺の効き目を持った丸薬のような作品
    ・構成:プロローグと椿姫の死の間に、出会い、田舎、侮辱の3つの情景
    ・衣装:大きく肩を開いたドレスのデザインが効果的
    ・その他:フォンティンの規範的な古典美と抑制の効いた淑女の
         イメージをぶち壊しにした、との声も上がった。

2000 ギエムがフォンティンの椿姫を塗り替え、蘇演。

■ヨーロッパで40年ぶりに
1978 ノイマイヤー版『椿姫』シュツッツガルトバレエ団で初演
    ・キャスト:ハイデとリスカ
    ・手法:フラッシュバック手法
        劇中劇 
    ・構成:全3幕 3時間 パドドゥを3幕にたくみに配置
    ・音楽:ショパン(主人公と同時代人)
        ピアノの一音一音が零れ落ちる愛のしずくのよう。
    ・特徴:言葉をそれと等価の演技にしてたくみに視覚化。
    ・演出:当日客席に踏み入れるとすでに幕が開いており舞台では
        競売の下見が始まっている…という新演出
    ・見所:バドドゥで物語が進行
        1幕:紫のパドドゥ → 出会い 愛の芽生え
        2幕:白のパドドゥ → つかの間の幸福
        3幕:黒のバドドゥ → 破滅のふちへ自らを追い詰めていく
                    二人の極限心理
        ・劇中劇主人公マノンとマルグリットの人生の相似
        ・両ヒロインが両手の平を合わせるようにして立つ瞬間の
         マルグリットの言いようもない怯えは活字によっては表現
         不可能なバレエならではの表現

■新潮流    
2007  牧阿佐美版 新国立劇場バレエ団『椿姫』
    ・音楽:ヴェルディのオペラ曲
    ・構成:全2幕
    ・初演:ザハーロワ
    ・特徴:全体的に淡白な味わいの作品
        振り付けよりダンサーの体が語る音色に耳を傾けさせる
    ・もし19世紀に後世に残るバレエがあったとしたらこうであるかも、と
     思わせる

■ノイマイヤー版3つのパドドゥの感想サイト
http://robertobolle.at.webry.info/200810/article_1.html

http://mabeballet.blog89.fc2.com/blog-category-15.html

http://www.musicpenclub.com/world-200808.html

■椿姫あらすじ
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%A4%BF%E5%A7%AB_(%E3%83%90%E3%83%AC%E3%82%A8)
■原作 フリーテキスト
http://www.gutenberg.org/files/1608/1608.txt

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