彼は人間よりも真理を愛した。人間は裏切るが真理は裏切らないと言うのがその理由だ。やがて彼は真理を振りかざして他人を傷つけて憚らなくなり、それ故に人々は彼の元から去って行った。さらに他人を顧みなくなった彼は、やがて真理と刻まれた印章を押印した手紙の前で刺殺された。
彼は人間よりも真理を愛した。人間は裏切るが真理は裏切らないと言うのがその理由だ。やがて彼は真理を振りかざして他人を傷つけて憚らなくなり、それ故に人々は彼の元から去って行った。さらに他人を顧みなくなった彼は、やがて真理と刻まれた印章を押印した手紙の前で刺殺された。
健康で商才があり多芸で友人も多く家族愛に溢れた父だが、唯一無二の欠点は絶望的に楽才のない身で竪琴の演奏をしたがる事だった。同じフレーズの同じ場所で何度も弦を弾き損ねる演奏は酷く耳障りだったが、父が商売の印章に竪琴の意匠を使うに至って家族を含む周囲は色々と諦めた。
ムーミン屋敷みたいねと、キルンハウスの刻印が刻まれた印章を見ながら彼女は言った。例え家主が不在でも全ての来訪者に扉が開かれる安息の地であり、それぞれが己を見詰め直す気付きの場でもあるという屋敷は、つまり現実には存在しない理想郷であり、それ故にひどく懐かしい。
爽やかな夏の風を詰めて保存しておくガラス瓶が登場する物語に感銘を受けた彼は、自分の専攻学問である錬金術で初夏の草原を渡る風を封じ込めた菓子器を作り上げ私にプレゼントしてくれた。とても素敵な器なのだが、砂糖菓子を入れると漏れなく風味が青臭くなるのが唯一の悩みだ。
入学のお祝いにと姪にボンボニエールをあげようとしたら大して喜んでくれなかったので彼女には早すぎる贈り物だろうかと悩んだら、義姉さんが大丈夫、絶対に喜ぶからと慰めてくれた。そして実際、渡されたボンボニエールに色とりどりのボンボンが沢山入っているのを確認した姪は大歓声を上げた。
たかあきは失恋した日、教会で、ちょっと溶けた感じに見える洗濯ものの幽霊に出会い、コレを渡して下さいと泣かれました。
付喪神という概念を考えればモノの幽霊っぽいものが存在してもおかしくはないと思うが、何で教会の神父様の着るカソックが化けて出るのだろうかと悩んでいだら一度濡れてから乾いた風の封筒を渡された。子供の字で神父様の名前が書かれたそれを見て大方の事態を理解した気になった私は、失恋したばかりの身で他人の恋路に頭を悩ませる。
付喪神という概念を考えればモノの幽霊っぽいものが存在してもおかしくはないと思うが、何で教会の神父様の着るカソックが化けて出るのだろうかと悩んでいだら一度濡れてから乾いた風の封筒を渡された。子供の字で神父様の名前が書かれたそれを見て大方の事態を理解した気になった私は、失恋したばかりの身で他人の恋路に頭を悩ませる。