カケラノコトバ

たかあきによる創作文置き場です

竜飼いその93・誇り高き食材

2020-11-29 17:20:03 | 幻想世界の竜飼い
たかあきの竜は黄金色の烈火デミドラゴンという品種名です。気性はお利口で、用途は食用です。

 様々な用途の為に品種改良が重ねられてきた竜は、ごく稀に先祖返りの個体が発生する。悲惨なのは食用種が古代竜の知性を持って産まれた場合で、賢さ故に己の運命を悟った時の絶望は計り知れないものとなる。幸いうちの竜はそうなる前に引き取られた個体だが、それでも人間に対する隔意は消し去れないようだ。
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竜飼いその92・今はもう何処にも無い空と大地

2020-11-25 22:19:50 | 幻想世界の竜飼い
たかあきの竜は紅葉の虚空ドラゴンという品種名です。気性は聡明で、用途はペットです。

 最近流行している愛玩用小型竜を購入して一緒に暮らし始めた。紅葉を思わせる体色の竜は賢く従順だが、時折どこか遠くを見るような視線を彷徨わせる。そんな竜を見ていると何故か、かつて彼らの先祖が野生種だった頃に暮らしていた筈の二度と戻れぬ世界と広い空を探しているように思えてならないのだ。
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竜飼いその91・風に靡く羽根のように

2020-11-22 17:08:46 | 幻想世界の竜飼い
たかあきの竜は漆黒の薫風オールドドラゴンという品種名です。気性は強情で、用途は仕事の相棒です。

 俺の相棒は人間形態を取れる竜だが、何故か耳の後ろ辺りに羽飾りのようなものが生えている。当人が言うには竜の髭らしいが、出会って間もなくに、やたらと目立つので隠すなり切るなりしたらどうだと言ったら、猫だって髭を切らないだろうがと激怒され、暫くの間口をきいてもらえなかったことがある。
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竜飼いその90・共鳴する祈り

2020-11-14 20:50:45 | 幻想世界の竜飼い
たかあきの竜は紅葉の共鳴ドラゴンという品種名です。気性は闘竜で、用途は朗読役です。

 脚の筋を痛めて引退することになった闘竜を引き取ってきた親父は、コイツの鳴き声には深みを感じると朗読を仕込み始めた。しかし竜は声が良くても滅多に鳴き声を上げず、そのうち持病で入院した親父の教育は無駄になったと誰もが思った。あの日親父の葬式で、竜が坊さんに合わせて読経を唱え始めるまで。
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竜飼いその89・植えられた竜

2020-11-11 22:12:09 | 幻想世界の竜飼い
たかあきの竜は若緑の鋼鉄オールドドラゴンという品種名です。気性は臆病で、用途は愛玩用です。

 うちの竜は臆病なので普段は狭い場所に隠れているが、最近は母が買ってきた鉢植えがお気に入りスペースらしく体を丸めて収まっている事が多い。ただ、体色が緑で天鵞絨のような質感をしているせいで、傍からの外見は竜というより、ちょっと変わった外観のサボテンか多肉植物の鉢植えにしか見えない。
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竜飼いその88・滑稽なる悲劇

2020-11-08 15:51:19 | 幻想世界の竜飼い
たかあきの竜は若緑の共鳴ムカシトカゲという品種名です。気性はお馬鹿で、用途は朗読役です。

 老眼で活字を追うのが難しくなったからと父が買ってきた朗読竜は綺麗な声をしていたが、どんな悲しい話を読ませても明るく元気な雰囲気にしてしまうので、どうしたものかと悩んでみたがどうにもならないと結論付けた父は、最近シェイクスピアの三大悲劇を竜に朗読させ、どれだけ明るい話になるかを試している。

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竜飼いその87・あれも愛これも愛たぶん愛きっと愛

2020-11-07 19:56:16 | 幻想世界の竜飼い
たかあきの竜は亜麻色の流水オールドドラゴンという品種名です。気性は乱暴もので、用途はペットです。

 私の叔父の竜は、叔父が新聞を読んでいると新聞紙真ん中に乗り仕事に行こうとすると玄関前に陣取り就寝時には布団の上を占領するといった形で抜かりの無い嫌がらせを遺憾なく発揮するが、当の叔父はこれを愛だと確信できるようになってからが本当の竜飼いだと言って心底から楽しそうなので構わないようにしている。
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竜飼いその86・黄金の誘惑と破滅の予兆

2020-11-06 20:29:15 | 幻想世界の竜飼い
たかあきの竜は黄金色の鉱石竜という品種名です。気性は少し意地悪で、用途はペットです。

 うちの竜は、はっきり言ってしまうと性格が悪いのだが全身くまなく黄金色をしているので縁起が良いと父のポーカー仲間には人気がある。だから酒に酔った父がポーカーに負けて竜を持っていかれる事も珍しくない。まあ大概は竜の扱い辛さにポーカー仲間の細君がブチ切れて返品されるのだが、竜を溺愛している母もそろそろ自分の夫を返品する気でいるようだ。
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