カケラノコトバ

たかあきによる創作文置き場です

『指切り』と【メルヘン】より・約束の再会

2015-08-31 20:00:01 | 物書きさん、お題です
 私がずっと小さかった時、君を必ず迎えに来るよと指切りして約束した相手がいる。
 それが誰であったのか思い出せないまま私は成長して様々な出会いと別れを繰り返し、結婚して家庭を持ち、やがて子供達が巣立っていった。平凡で慎ましい、それ故に掛け替えのない程に大切で幸せだった日々。
 そして今、年老いた私の前に再び現れた彼に、わたしはとっておきの笑顔で挨拶した。
「ようこそ、死神さん」
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『言葉』と【たとえば】より・コトバ、コトノハ

2015-08-28 22:57:59 | 物書きさん、お題です
 例えば貴方が理解して使うことが出来る言葉は、貴方が今まで読んできた本、語ってきた内容、学んできた人生、そして言葉を向ける相手に対する敬意によって決まる。それを認識しないまま徒に乱暴な単語を振り回したり、逆に己にそぐわない難解で血の通っていない言葉を使うのは、この国に産まれて言の葉の力を知る権利を有した民、立派な言霊使いのすることでは無い。
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『覗き(見た?)』と【切ない】より・ありふれた出来事

2015-08-27 22:11:34 | 物書きさん、お題です
 良くある話だが、意見の対立から疎遠になった昔の友人がWeb上に上げていた作品に気付いてしまった。
 良くある話だが、センスはあるので技術を磨けばモノになるかもと思っていた絵は、十年以上の歳月を経ても全く上達していなかった。
 良くある話だが、通信教育で作画を学びながら夢に向かって前進していきたいそうだ。

 本当に、どこでも聞く良くある話なのに、どうしてここまで哀しい気分になるのだろう。

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『紅茶( hotでもcallでも可 )』より・錬金術師とお茶を(冒頭下書き)

2015-08-26 23:24:46 | 物書きさん、お題です
 まずは一番最初に錬金術が金を造り出す為の技術では無いと認識しなければいけないと、銀狐は紅茶を出してくれた少年に語った。
 錬金術とは世界の仕組みと謎を紐解く為の学問で有り、それ故に現世的な利益に執着して金の錬成のみを追い求める術者は「ふいご屋」と呼ばれて軽蔑される存在でしか無いのだと。
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『他人の視線』と【今】より・今、貴方の後ろにいます

2015-08-25 21:38:47 | 物書きさん、お題です
 自室で机に向かっていたら背後に気配を感じたので、「だーるまさんが転んだ!」と叫んで振り返ったら猫が毛を逆立てて硬直していた。コレは悪いことをしたと思いながら再び机に向かうと、今度は別の気配が覗き込んできた様な気がしたので同じようにやったら、見知らぬお姉さんが硬直した表情で浮かんでいた。

 ちなみにうちはペット不可のワンルームで、当然ながら本日は来客の予定も無い。
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『紅茶( hotでもcallでも可 )』より・それは愛故の過ち

2015-08-24 23:20:47 | 物書きさん、お題です
 彼女は紅茶を入れるのがとても下手だ。いつだって僕に出してくれる紅茶は酷く薄いか酷く濃い。
 だから、ある日どうしてなのだろうと思って理由を訊ねてみると、紅茶派を蒸らす際に僕のことを考えてつい時間を過ごしてしまったり砂時計のセットを忘れて蒸らし時間が判らなくなる、つまり僕に対する愛故になのだそうだ。

「いやその、音の出るキッチンタイマー使ったらどうにかならない?」と言ったら物凄く怒られた。
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『言葉』と【笑顔】より・伝えたいモノ

2015-08-21 22:36:51 | 物書きさん、お題です
 むかしむかし。PCも携帯もスマホも、当然スカイプもラインもメールも無く有線電話が概ね家族共用だった時代。
 主に趣味の雑誌で知り合ったペンパルや文通相手と呼ばれる、遠くに住む未だ見ぬ相手と手紙をやり取りするのが楽しかった。
 自分の手紙が相手に届くまでに数日、相手の返事が自分に届くまで更に数日という気の長いやり取りだったが、送る手紙の便箋や封筒、それに字を書くペンや使う切手の柄まで厳選したあの頃の自分は、どう考えてもスタンプやデコメを駆使してメールやラインを送る現代のお嬢さんと何ら変わりなく、結局昔も今も『向こう側』にいる相手への想いは変わらないのだと思った。
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『弟』と【偽り】より・乳姉妹

2015-08-20 23:29:45 | 物書きさん、お題です
 最近、妻と一緒に昔の連続ドラマを観るのにハマっているらしい息子が、わざわざ市役所で戸籍謄本を調べてきて姉も自分も確かに実子だったと残念そうに言った。
 別に家庭に不満はないがドラマもないのでつまらないという言葉に、その連続ドラマが本放送中に自分も同じ事をやって同じように考えたなあと懐かしく思っていたら、いきなり長女が弟にヘッドロックを掛け、身内じゃなかったら貴様のような可愛くない奴と一緒に暮らせるかと散々に責め立てた。

 怒鳴る娘、許しを請う息子、あらあら姉弟喧嘩ねと笑って流す妻。
 我が家は今日も平和だ。
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『ケータイ』と【別れ】より・See you again

2015-08-19 22:17:20 | 物書きさん、お題です
 僕の携帯の留守電に『それじゃ、今度また会いましょう』と言葉を残したきり、彼女とは二度と会えなくなった。車の事故だった。
 だから僕は彼女の最後の言葉を保存して事あるごとに再生した。そうやって彼女を忘れまいとしながら自分を慰めていた。
 でも、もう止める。彼女が今いるのは過去ではなく多分、僕にとっては遙か先の未来に当たる場所なのだから。
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『プレゼント』と【のんびり】より・花嫁衣装

2015-08-18 19:54:31 | 物書きさん、お題です
 どこかで聞いた話だが、イタリアのある地方では女の子が生まれると母親や家族が白い布地に刺繍をはじめるのだそうだ。
 少しずつ、それこそ年単位の時間をかけて刺繍された膨大な布地はやがて成長した娘のウエディングドレスに仕立てられ、花嫁の門出を祝う何よりの餞となる。歳月と家族愛、それに少しばかりの技術が必要ではあるが、何物にも代えがたい素敵な贈り物だろう。

  
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