カケラノコトバ

たかあきによる創作文置き場です

骨董品に関する物語・ドイツ製天文古書「天空の驚異」

2023-10-28 20:36:03 | 突発お題

 とある物語に登場する彗星は、一人ぼっちで頭が変になっていて、尾を引きながら転げ回っている星だと称されていた。こういう存在は意思があろうが無かろうが、大概は周囲に無意味で甚大な被害を撒き散らし、人々に恐れられながら世界を行ったり来たりすることしか出来ないものだ。
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骨董品に関する物語・図説 フランス聖母巡礼の歴史

2023-10-28 20:34:12 | 突発お題

 一説によるとイエスの母マリアは普通の母親として息子の宗教的活動を快く思っていなかったという。だが、やがて教会は唯一神の男性原理だけでは信者を救済し切れないと聖母の概念を生み出し教義として広めていった。神が天に実在しないとしても地上の人々は神の存在を自ら育むのだ。
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骨董品に関する物語・1910年のミラスコープ

2023-10-28 20:32:22 | 突発お題

 その古い幻燈機はどの様な写真を設置しても画像の傍らに別の何かが映り込む。もちろん器内やレンズに異常が有るわけではないのだか、その何かは傍若無人に画像を移動しつつ声なき声を発しているように見える。それが祝福か、それとも呪いであるかは幸か不幸か読み取る事は出来ない。
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骨董品に関する物語・裁縫鋏のセット

2023-10-15 00:38:17 | 突発お題
 
 理髪店を営む叔父に言わせると、脂を含んだ細く柔らかい毛は鋏にとって非常に切りにくい材質なのだそうだ。故に研ぎ直しを含む定期的なメンテナンスは必須なのだが、その正しい扱い方を知らないと刃の裏面を研いで鋏そのものを完全に使いものにならなくしてしまう場合もあるという。
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骨董品に関する物語・イギリス製のモノクル

2023-10-15 00:36:35 | 突発お題

 子供の頃に暮らしていた屋敷で働く執事は片眼鏡を嵌めていた。その姿が不思議で何度も見詰めていた僕の視線を彼は極めて儀礼的に無視しながら職務を行っていた。だから僕の父が破産して屋敷を出て行く日、彼が最後にと外した片眼鏡を僕に手渡して元気でと微笑んだ時、初めて泣いた。
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骨董品に関する物語・テナーサックスのアクセサリー

2023-10-09 17:24:04 | 突発お題
 流石にこれだけ小型だと操演に依る音声は望めないので直接に音楽精霊を憑依させたと奴は得意げに言う。しかしそれでは万が一に制御術式が外れたら延々と音楽が止まらなくなるのではと突っ込みを入れると、まあ百年くらいで止まるからいいだろと無責任極まりない事をぬかしやがった。
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骨董品に関する物語・葡萄色の祈祷書

2023-10-09 17:22:14 | 突発お題
 江戸時代に大流行した変わり咲き朝顔は、花が咲いた大量の鉢を一箇所に集めて受粉後に採れた種子から発生した変種を更に掛け合わせるという実に気の長い方法が行われていたが、遺伝法則も不明確な時代の、結果は神のみぞ知る方法で、何と現代でも幻とされる金色の朝顔が存在した。
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