カケラノコトバ

たかあきによる創作文置き場です

骨董品に関する物語・ドイツはラウシャ製のアンティーク義眼

2023-08-26 01:00:51 | 突発お題

 昔、奇妙な懐かしさを感じさせる瞳を持つ少女の存在が周囲の人間を徐々に狂わせていくが、実は彼らが見ていたのは少女の瞳に映る己自身の惨めな姿に他ならなかったという物語を読んだことがある。果たして本当に自分が見ているのは眼前に存在する相手の瞳そのものなのか、或いは。
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骨董品に関する物語・青いモーニングロケット

2023-08-18 21:16:47 | 突発お題

 病床の母から形見分けだと青いロケットを渡された。何が入っているのかと尋ねると、お前が入れたいものを見つけた時に開けなさいとだけ言われた。やがて亡くなった母の遺髪を入れようとロケットの蓋を開くと、そこから母の瞳と同じ青い色をした蝶が舞い上がり宙に飛び去っていった。
 
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骨董品に関する物語・ドイツ製のビスクドール

2023-08-11 20:48:30 | 突発お題

 とある人形師は、正しい人形の姿を自身の魂は死んでいる状態と言った。また別の人形師は、神に死を捧げるのと引換に永遠を生きるのが人形だと信じていた。つまり人形は本来、人間からの愛と奉仕を一身に受けながらも決して自ら人間を愛したりはしないのが正しい姿なのかもしれない。
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骨董品に関する物語・ケチな老商人パンタローネの仮面

2023-08-11 20:47:03 | 突発お題

 私の暮らす屋敷で執事を勤めていた男は常に顔の上半分を仮面で覆っていた。何でも酷い傷を隠しているらしく、この屋敷で働いているのも他に行く場所が無いからだと父は言う。やがて私は男と死んだ母が嘗ては恋人同士で、男の傷は父に拠って負わされたのだと知ることになるのだった。
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骨董品に関する物語・イタリアの道化師アルレッキーノの仮面

2023-08-11 10:02:16 | 突発お題

 その宮廷道化は派手な衣装に鈴付き帽子を纏った姿で尖った靴を履き、その姿故に埒外の存在として侮られ嘲笑われ、同時に主君に対して際どい冗談を装った諫言を行うことを許されていた。人々はそんな哀れで愚かな道化の仮面の下に隠された素顔を知らず、むしろ知ろうともしなかった。
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骨董品に関する物語・三日月の振り子

2023-08-04 23:20:55 | 突発お題

 呆れる程に多情な月は常に目移りしながら恋する相手を探していて、新しい相手に対して一方的に抱いた恋心に身を焦がして痩せ細り、やがて破れた恋を忘れようと肥え太る。ちなみにこの間、恋心を抱かれた相手は全く月からの思いに気づいていないというから目も当てられないのだった。
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