カケラノコトバ

たかあきによる創作文置き場です

3月31日

2014-03-31 19:38:29 | ついのべ三題ったーより
マナーモードでかかって来た電話の相手に合格を知らせようとしたが、ノイズが酷過ぎて話が通じず、とりあえず別の場所に移ろうと校門を出た直後に車が突っ込んで来た。
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天使の在る場所

2014-03-30 19:44:34 | 即興小説トレーニング
天使の在る場所
 昔は、あんな人ではなかった。
 良く聞く言葉だから、昔はそうでなかったのに『あんな人』になってしまう人間など珍しくないのだろう。
 だが、それが自分の身内で、更に『あんな人』になった結果、様々な好ましくない変化が発生した場合、周囲の人間はこう呟くしかない。
「昔は、あんな人ではなかった」

 彼の叔父は若い頃から神殿に入り、僧侶として神に仕える日々を送っていた。この時代、貧しい家に生まれた才能有る少年がそれなりに立身出世を目指すなら、神殿に入るか傭兵になるかのどちらかが手っ取り早い方法であったが、叔父はただ純粋に神の愛を信じ、それを人々に示すために僧侶を目指した。少なくとも周囲は誰一人それを疑う事はなかった。

 彼は五つの時に流行病で家族を亡くし、叔父の援助もあって神殿の施設で暮らすことになった。読み書きを覚え、学問方面で才能を示すに従って彼の叔父は優しい保護者から厳しい教師、そしてやがては同じ夢を語る親友となった。その頃の叔父は彼にとって揺らぐことのない灯火であり、己の目標でもあった。

 十六になった頃、彼は神殿の礼拝堂で説法を行う叔父を熱心に見詰める若い娘の姿に気付いた。その瞳には純粋な敬愛だけでなく、その奥底に熱い思いが秘められている気がして、彼は何となく不安を覚える。だが、叔父は神と信仰に己の全てを捧げた身として、そんな娘の視線に対しても常と変わらぬ慈愛の視線を向けるばかりだった。それからも娘は叔父を見詰め続け、叔父は神の使徒としての勤めを果たし続け、そんな風に季節が一巡した頃。

 叔父が暮らす教区に再び流行病が発生して多くの人々が苦しみ、死んでいった。そして、その中には叔父を見詰め続けていた娘も含まれていたのだ。

 彼は今でも叔父が戒律を破ったとも、あの娘に対して淫らな想いを抱いたとも思っていない。ただ、病に対して祈りがあまりに無力であったこと、そして、己の信仰心で娘を救えなかったことは叔父を酷く打ちのめし、その結果として叔父は少しずつだが歪んでいった。禁書、偽典とされる古い書物を読み解き、その中に登場する『天使』の記述に憑かれた如く文献を漁り、遺跡を巡り、その過程で習得した怪しい技で神殿内で己の権力を確立し、やがて十数年もの間不在だった大神官の地位に就いた叔父は、『天使を迎える準備』と称して信徒の中から特殊な血筋の持ち主を幾人も選び出しておぞましい実験を始めた。人道的な立場から叔父を糾弾するものもあったが、そういった良識のある僧侶は中央から地方に飛ばされるか、神殿を追われることになった。

 叔父がそんな風に変わっていく中、彼は叔父を諫めることも止めることも、かと言って積極的な協力をする事もなく、ただ叔父の側で雑用をこなしていた。
 彼は叔父が間違っていることは薄々感じていたが、同時に叔父の行いによって多数の信徒が救われている現実をどう受け止めて良いか判らないでした。それ故に、彼は叔父の側から離れないと決心したのだ。

 叔父の所業が間違っているのなら、いずれは神が叔父に鉄槌を下すに違いない。
 叔父の所業が間違っていないのなら、叔父の行う『福音』で人々が救われるだろう。

 どちらに転ぼうと叔父はいずれ終わりを迎えるだろう、そして、その時こそ彼は叔父の本当の思いを果たすのだ。
 人々を救いたいという、その思いを。 
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3月30日

2014-03-30 18:35:25 | ついのべ三題ったーより
現場では保護色に隠された姿は見えない筈たが、眼前のパネルに示される温度センサー画像は明確に戦友たちの温もりが目標を囲むように展開していく様子を示していた。
「突入開始だ」
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洒落にならない読み違い(3月20日より)

2014-03-29 18:00:13 | 即興小説トレーニング
 僕の携帯に彼女からメールが届いたが、既に読む気は欠片もなかった。どうせ『これが最後のチャンスです』という書き出しと共に延々と復縁を迫る内容が上から目線で限界字数まで綴られているに決まっているからだ。

 最初は明るくてさばさばした性格の取っつきやすい子だと思った。それなりに社会経験も積み、常識的で優しい子だと思った。
『明るくてさばさばした性格の取っつきやすい子』が、実は『無神経で酷い暴言を殆ど無意識に繰り返す子』であり、それなりに積んだ社会経験の理不尽によって性格が歪み、常識を語りながら同時に非常識な言動も顧みない問題人物であるとようやく気付かされたときは、既に交際開始から数年が経過していた。
 そろそろ結婚という文字を彼女がちらつかせ始めた頃、流石に危機感を覚えた僕は友人に相談し、最終的に『結婚してからでは遅い』という実に有益なアドバイスを貰って彼女と別れる決心をした。最近の彼女は僕のことを明らかに格下認定していて、その時の気分によって罵倒や繰り言を僕にぶつけてきたので、僕もあくまで下出に徹しながらタイミングを見計らい、彼女が激しく感情を暴発させた時を狙って謝り倒し、自分が如何に無能かを並べたて……、
『だから僕は君に相応しい相手だとはどうしても思えない、どうか君に相応しい相手を見付けて今度こそ幸せになって欲しい。今まで有難う』と捲し立てて彼女に背を向け、全速力で走り出した。決して感情的にならず、相手のペースに絶対に合わせることなく要点だけを述べ、速攻で立ち去れと忠告してくれた友人に感謝しながら。

 それから彼女が僕に会いに来ることはなくなった。下僕だと思っていた相手をわざわざ自分から尋ねるのはプライドが許さなかったのだろう。その代わり、今までは業務連絡と変わらない用件のみだったメールがどんどん届くようになった。

「好きです」
「今まで厳しかったのは貴方に更なる高みへのステップを踏んで欲しかったからです」
「人間は素直になることで全ての苦しみから解放されます」
「私は少しだけ急ぎすぎたのかもしれませんが、それも貴方を思うが故です」

 そういったメール内容に対して、昔ならともかく今となっては既に何一つ感銘を受けなくなっていた僕は、更に友人に相談してみたところ、『事態が拗れたときのために一応は保存しておけ』と言われてその通りにした。そして、連続して送られてくるメールの着信音があまりに煩いので常時マナーモードにしておくことにした。
 だから、煮え詰まった彼女がナイフ片手に僕を襲いに来た時の予告メールも未開封のままだった。

 結局は警察沙汰になった騒動もようやく終焉を迎え、この件について最初から最後まで世話になりっぱなしだった友人と二人で呑みに行くことにした。杯を重ねながら酔いが回ったらしい友人は、半分くらい据わった目付きで僕に説教を始める。
「大体お前はひとを見る目がない。あんな女に引っかかるのがその証拠だ」
 そこから『あの女』がどれだけ非常識で、会ったこともない友人ですら話を聞いただけで嫌いになったとか、そんな時にオレを頼ってくれたのは嬉しかったとか話が流れていった。
 何となく不穏なものを感じながら傾けたグラスをテーブルに置くと、友人は口元を歪めた笑顔で僕の手に自分の掌を重ねながら言った。
「ところで、あの女と別れたと言うことは、現在のお前は独り身だよな」
 奇妙に熱い視線を向けられながら、僕は再び襲いかかってきた厄介事に対して呆然とするしかなかった。   
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3月29日

2014-03-29 14:50:58 | ついのべ三題ったーより
TVの録画どころか、手順が理解出来ないままカセットレコーダーを接続して番組を録音するよう強制され、当然ながら不首尾に終わった責任を追及された遠い昔。そんな記憶もいずれは掛け替えのない「薔薇色の日々」になるのだろうか。
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3月28日

2014-03-28 21:29:05 | ついのべ三題ったーより
二人が行った激しい殺し合いレベルの戦闘理由は、三時のおやつをタルトかせんべいにするかで揉めた結果だった。絆創膏を使って怪我の手当てを終えた二人を待っていたのは、おやつではなく延々と続く説教だ。
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3月27日

2014-03-27 22:21:22 | ついのべ三題ったーより
農業を営む者に化粧品は要らぬと息巻いた夫の母親の言葉に従って家伝の塗り薬を使うのを止めたら、案の定見た目が凄い事になったので、その姿のまま迫って見せたら泣いて謝られたので一応絆創膏を使って隠してみた←今ここ。
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3月26日

2014-03-26 20:56:55 | ついのべ三題ったーより
桜の花弁が降りしきる並木道を一緒に歩きながら、螺旋のように捻くれた、だが一定の周期で変態と化すクラスメートの委員長に「俺の支えになって欲しい」と頼まれた時、僕は笑顔で「嫌だ」と即答した。
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3月25日

2014-03-25 18:45:54 | ついのべ三題ったーより
くされ縁の幼なじみが結婚相手を募集中なのだが、元気でおおらかで美人で乳がでかくてムカデや虫が平気で…と条件が並んだ辺りで、とりあえず殴り飛ばしておいた。
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3月24日

2014-03-24 20:57:43 | ついのべ三題ったーより
人生ゲームという名のすごろくをやっていると、ときどき白昼夢のようにゲーム内容の風景が頭に浮かんで来る事がある。しかし、その終末はいつだってノイズがかかっていて見る事が出来ない。
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