カケラノコトバ

たかあきによる創作文置き場です

骨董品に関する物語・スカラベのブローチ

2019-05-31 21:56:49 | 突発お題

「スカラベ(フンコロガシ)には屈辱的な思い出があってな」
「一応は聞いてやろう」
「ファーブル昆虫記で読んだスカラベが洋ナシ形にして卵を産み付けたフンを不覚にも美味そうだと思ってしまった……どうしたものだと思う?」
「シートン動物器でも読んでろ」
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骨董品に関する物語・フランスの真鍮の髪飾り

2019-05-31 21:55:28 | 突発お題

 会に出かける母は、いつも着飾った姿で結い上げた髪に豪奢な髪飾りを挿していた。そんな母をエスコートする父は何故か普段より機嫌が悪く、逆に母は普段からは想像もつかぬ誇らしげな表情をしていたが、両親の間に横たわる秘められた物語を私が知るのは大人になってからだった。
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骨董品に関する物語・ナポレオン・トワの優雅なインクウェル

2019-05-31 21:53:57 | 突発お題

 本当の事は何一つ書けないペンとインクとやらを古道具屋で面白半分に購入した僕は、とりあえず日記をつけることにした。葡萄色の日記帳の頁は何故か順調に日常の出来事で埋められていったが、この場合嘘つきなのは古道具屋の主人なのか、それとも僕の感じている日常とやらなのか。
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骨董品に関する物語・新緑色のボンボニエール

2019-05-31 21:51:08 | 突発お題

 父が事業に失敗して緑の茂る穏やかな屋敷を離れ、狭い石造りの部屋でいがみ合いながら暮らすようになって以来この世には魔法など無いと信じるようになった私に、夫が結婚十五年目のお祝いだと渡してきた新緑色の菓子器は間違いなく屋敷共々競売にかけられた筈の祖母のものだった。
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旅路その14・魚たちは追憶の彼方に

2019-05-31 20:22:17 | 旅人の記録
たかあきは北国の地方都市に辿り着きました。名所は古い水族館、名物は野菜料理だそうです。

 記憶ではその田舎町には小さな水族館があって、水族館と言うよりは生け簀に魚を放しているような場所だったが、子供だった頃には十分に面白い空間だった。やがて成長して山菜料理目当てに再びその田舎町を訪れた時、自分が水族館だと思い込んでいた場所が実は養魚場だと知って愕然とすることになった。
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旅路その13・鮮烈なる味覚の罠

2019-05-29 21:47:44 | 旅人の記録
たかあきは真昼の大都市に辿り着きました。名所は駅、名物は貝料理だそうです。

 お昼は此処でと言われて駅から数分歩いて着いた店は牡蠣をメインに出す海鮮料理屋だった。いやいやいや子供の頃に酷い目に遭って以来貝が怖いと話した事があるよねという抗議は即座に却下されて店に連れ込まれ、覚悟を決めて食べた牡蠣は美味しかった。何だ、それ程に怖がる事でも無かったかと思った次の日、食事をした店のすぐ近所にある海鮮料理屋で牡蠣の集団食中毒があったとニュースで聞いた。
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旅路その12・冬の海辺と肺魚焼き

2019-05-28 20:33:31 | 旅人の記録
たかあきは冬の王都に辿り着きました。名所は古い水族館、名物は焼き菓子だそうです。

 いかな有名水族館でもシーズンオフなら空いている筈だ、開館時間より駐車場の開場時間を狙えという目論見は半分当たって半分外れた。有名水族館にシーズンオフは無く、駐車場に車を滑り込ませた後に発生したのは駐車難民の作る渋滞だった。とりあえず水族館名物の肺魚にしか見えない鯛焼きを購入する。
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旅路その11・それぞれの旅

2019-05-27 21:15:48 | 旅人の記録
たかあきは北国の田舎町に辿り着きました。名所は王立図書館、名物は煎餅だそうです。

 当初からの約束通りに北国の駅で彼女と別れた私は、ずっと昔から訪れたかったお目当ての図書館で一日を過ごした。その後予約しておいた宿に行くと彼女は既に部屋に戻っていて、本日の戦利品らしい山ほどの土産をベッドの上に広げつつ、この地方名物の煎餅を頬張りながら来た甲斐があったと喜んでいた。
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骨董品に関する物語・すみれ色のガラスのエンブレム

2019-05-26 23:44:22 | 旅人の記録

 叔母は生涯独身を貫いたが、好きな人がいなかった訳ではないという。ただ、どんな人で何故結ばれることが無かったのかは叔母を含めた誰もが口を閉ざし、尚も追求すると頭文字と年号だけが刻まれた石留の加工がされていない硝子のエンブレムを綺麗でしょうと見せてくるだけなのだ。
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骨董品に関する物語・すみれ色のガラスの印章

2019-05-26 23:42:55 | 突発お題

 我が家の長男は代々頭文字の綴りが同じ名前が付けられていて、それに伴う優雅な印章も昔から書斎の引き出しに入れてある。ただ、子どもの頃に悪戯をして印章を壊してしまい途方に暮れた時、実は曽祖父も同じように印章を駄目にして新調させ、その印章も何代目か不明だと教わった。
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