竜飼いその100・龍脈を知るもの

たかあきの竜は雪色の流水ドラゴンという品種名です。気性はお調子もので、用途は仕事の相棒です。

　造園業を営む親父から預かった竜は、その特性として大地の気の流れが読める。故に資産家からの風水絡みの依頼をこなすには欠かせない存在だし、実際に幾つもの実績を重ねてきた身ではあるのだが、普段は何かにつけて尻尾を振りながら短い手足を振り回して踊っている良く分からない物体にしか見えない。

竜飼いその99・不動の竜と懲りない俺

たかあきの竜は焦茶色の幽玄竜という品種名です。気性は強情で、用途は仕事の相棒です。

　拝み屋兼祓い師を生業にしている俺の相棒は竜だが、コイツときたら強情がヒトの皮を被って歩いているような奴で自分が納得しない依頼内容は決して受けない。それでは食っていけないと勝手に受けた仕事は毎回想定外の厄介が発生して、結局俺は危ない所を奴に助けられ散々に怒られる羽目に陥るのだ。

竜飼いその98・あの日の飛べなかった竜へ

たかあきの竜は紅葉の烈火トカゲモドキという品種名です。気性は臆病で、用途は飛翔用です。

　うちの初代飛竜は飛べなかった。交配に失敗した結果らしく売り物にならなかった仔竜を処分されるくらいならと父がうちに連れ帰ったのだ。別に飛ばなくても良いじゃないかと家族全員が考えたおかげで平穏に暮らしていた初代竜は、やはり同じような環境で暮らしていた竜と番になり、やがて産まれた竜は世界の空を縦横無尽に駆け抜けることになった。

竜飼いその97・小さな息子とシュヘラザート

たかあきの竜は紅葉の疾風トカゲモドキという品種名です。気性は少し意地悪で、用途は朗読役です。

　集中力の無い息子が全く本に興味を示さず途方に暮れていたら、読み聞かせ役にどうかと朗読竜を紹介された。店頭の竜と違って途中で朗読を止めがちの竜が、実は息子の呼吸を読みながら話の内容の興味を引っ張っているのに気付いたのは、やがて成長した息子自らが面白がって本を読み始めてからの事だ。

竜飼いその96・ご主人様の命ずるままに

たかあきの竜は漆黒の共鳴ムカシトカゲという品種名です。気性は冷酷で、用途はペットです。

　友人の飼う竜は極めて優美な漆黒の外見に相応しく凄まじく冷酷で気紛れな性格をしていて、うちの竜はツンデレだから仕方ないと言いつつ友人は散々に振り回されてばかりいる。よそのうちの事情だからと俺を含めた仲間は誰も何も言わないが、こういう所謂「竜奴隷」は決して珍しい存在ではないそうだ。

竜飼いその95・大空を旋回する

たかあきの竜は白銀の流水オールドドラゴンという品種名です。気性はお調子もので、用途は飛翔用です。

　うちの飛竜はお調子者で、自由に空を飛ばせると宙返りや急上昇下降、果ては螺旋回転を繰り返す。地上で見ているこちらは気が気ではないが、面白がった兄が取り付けた小型カメラには通常視点では到底体感し得ないエキサイティングな画像が山ほど録画されていて、大画面で再生したら見事に酔った。

竜飼いその94・ナビゲーションとナビゲーター

たかあきの竜は焦茶色の水晶トカゲモドキという品種名です。気性は聡明で、用途は移動用です。

　壊滅的に方向認識が出来ない俺を心配して妻がプレゼントしてくれたナビ竜は、連れ歩くようになってすぐに俺の癖を覚えて道案内してくれるようになった。急いでいる時は近道を、だらだら進みたいときは状況に応じた遠回りをしてくれるので、子供が大きくなったら一緒に散歩しながら近所の探索をしたい。

竜飼いその93・誇り高き食材

たかあきの竜は黄金色の烈火デミドラゴンという品種名です。気性はお利口で、用途は食用です。

　様々な用途の為に品種改良が重ねられてきた竜は、ごく稀に先祖返りの個体が発生する。悲惨なのは食用種が古代竜の知性を持って産まれた場合で、賢さ故に己の運命を悟った時の絶望は計り知れないものとなる。幸いうちの竜はそうなる前に引き取られた個体だが、それでも人間に対する隔意は消し去れないようだ。

竜飼いその92・今はもう何処にも無い空と大地

たかあきの竜は紅葉の虚空ドラゴンという品種名です。気性は聡明で、用途はペットです。

　最近流行している愛玩用小型竜を購入して一緒に暮らし始めた。紅葉を思わせる体色の竜は賢く従順だが、時折どこか遠くを見るような視線を彷徨わせる。そんな竜を見ていると何故か、かつて彼らの先祖が野生種だった頃に暮らしていた筈の二度と戻れぬ世界と広い空を探しているように思えてならないのだ。

竜飼いその91・風に靡く羽根のように

たかあきの竜は漆黒の薫風オールドドラゴンという品種名です。気性は強情で、用途は仕事の相棒です。

　俺の相棒は人間形態を取れる竜だが、何故か耳の後ろ辺りに羽飾りのようなものが生えている。当人が言うには竜の髭らしいが、出会って間もなくに、やたらと目立つので隠すなり切るなりしたらどうだと言ったら、猫だって髭を切らないだろうがと激怒され、暫くの間口をきいてもらえなかったことがある。