特定の植物園で金網越しなら日本でも見られるのだと、彼は私に阿片芥子を見せてくれた。豪華に花弁が重なり合った深紅の丸い花は、きっと嘗ては阿片を得る為ではなく純粋に美しさを愛でる為にも植えられたであろう罪の無さのまま、その裡に潜む毒で人間を地獄に誘い続けてきたのだ。
特定の植物園で金網越しなら日本でも見られるのだと、彼は私に阿片芥子を見せてくれた。豪華に花弁が重なり合った深紅の丸い花は、きっと嘗ては阿片を得る為ではなく純粋に美しさを愛でる為にも植えられたであろう罪の無さのまま、その裡に潜む毒で人間を地獄に誘い続けてきたのだ。
嘗て海の中で生き物だった筈の貝は、ある日大量の泥中に沈み、貝としての生涯を終えた後にも姿を変えぬまま、やがてその身に虹色の光を纏うようになった。泥から掘り起こされて地上に連れて来られた嘗ての貝は身に纏った虹色の光と引き換えに、二度と温かく懐かしい海には戻れない。
『薔薇の冠を編むように』回すからロザリオだと由来を聞いた彼女はロマンティックだわと呟いた。けれど僕が思い浮かべたのは指を容赦なく傷つけてくる、キリストの茨を思わせる冠だった。そんな彼女から僕が教わったのは棘のある花の美しさだったのか、その棘で傷付かない強かさだったのか。