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カケラノコトバ

たかあきによる創作文置き場です

第八十景・花と散る

2019-04-15 23:09:53 | 桜百景
たかあきは、真昼の初恋と桜の造花に関わるお話を語ってください。

 運動会の入場門を飾るお花を作る係に選ばれた私は、入場門を作っていた男の子たちのところに紙で作った沢山のお花を届け、ついでに飾りつけを手伝っいるうちにて一人の男の子と特に仲良くなった。男の子は手先が器用で頭が良かったが、それ故か他の男子に冷やかされると眉をひそめながらあんな大女は好みじゃないと答え、そんな訳で私の初恋は実にあっさりと終わった。
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第七十九景・彼の思い出

2019-04-14 21:54:28 | 桜百景
たかあきは、初夏の初恋と桜の菓子に関わるお話を語ってください。

 彼とは当時話題になったチェリーパイが好きな捜査官が出てくるドラマの話で盛り上がり、仲良くなった。お互い少しだけ世間の流行から外れた興味の対象もよく似ていたが彼が一番好きなのは自分自身で、彼の賛美者になることを選ばなかった私は彼にとって必要のない人間となり、だから彼が現在どうしているかは知らない。
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第七十八景・禁じられた遊び

2019-04-10 21:33:38 | 桜百景
たかあきは、朝の友達と桜の根に関わるお話を語ってください。

 友人が早朝から公園の桜の根元に何かを埋めていたので声を掛けたら、飼っていたハムスターを埋葬しているという。それならと近くに咲いていたタンポポとシロツメクサを摘んで私、一緒に埋めて貰った。その時の自分は何となく良いことをした気分になったが、友人の埋葬はそれからも断続的に続き、埋葬する遺ペットも徐々に体が大きくなっていった。
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第七十七景・紅の記憶

2019-04-09 19:44:07 | 桜百景
たかあきは、風の公園と桜の狭間に関わるお話を語ってください。

 満開の桜に容赦なく吹き付ける凄まじい暴風が全ての花を散らしてしまう少し前。枝から離れて飛び去って行く薄紅とは別の紅色が桜の花弁や枝の狭間に見え隠れしながら揺れていたので何だろうと思って近付いたのまでは覚えているのだが、その紅が一体何だったのかを全く思い出せず、一緒にそれを見た筈の兄も何故か沈黙するばかりだ。
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第七十六景・女心と花の菓子

2019-04-08 20:45:01 | 桜百景
たかあきは、初夏の裏切りと桜の菓子に関わるお話を語ってください。

 妹が今朝までは親友と呼んでいた相手と絶交すると息巻くので何事かと思ったら、ダイエット中の妹の前で桜餅と牡丹餅を食べた上に一つどうと勧めもしなかったという。アレは絶対に当て付けだと断言する妹に俺はその相手との友人付き合いをやめるように忠告した、もちろん妹ではなく相手の将来を思ってのことだ。
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第七十五景・あいつが喰いたかった春の餅

2019-04-06 19:57:05 | 桜百景
たかあきは、厳冬の友達と桜の葉に関わるお話を語ってください。

 餅菓子が好きな友人は季節に合わせた餅菓子を選んで食するのが人生の楽しみだと言っていた。だから入院することになった時にも餅菓子を持って行きたかったが食事制限があるとかで断念した。病室でも春になったら桜餅か牡丹餅を食いたいとぼやきまくっていたので、今も友人の墓前には必ず季節の餅菓子を供えることにしている。
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第七十四景・秋に生まれた彼女の名前

2019-04-05 20:49:09 | 桜百景
たかあきは、秋の友達と桜の花に関わるお話を語ってください。

 秋桜は元々「コスモス」とは読まなかったけど昭和の頃に流行した歌の題名から呼称が一般化したらしいねと彼女は苦笑いを浮かべた。「コスモス」自体は花弁が整然と並ぶ様子を星が綺麗に並ぶ宇宙と同じ呼び方で記したものだし元々ギリシャ語で美しいって意味だけどさ、それでもさ、などと言葉を続ける彼女の笑いは更に苦味を増す。
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第七十三景・夜桜女郎

2019-04-04 19:58:06 | 桜百景
たかあきは、夜の異郷と桜の髪飾りに関わるお話を語ってください。

 旅の空だ、せいぜい羽を伸ばそうぜと半ば無理やり連れていかれた色街で出会った女からは何処か懐かしい香りがした。淫楽の場に相応しくない清冽で僅かに苦味を帯びた香りが一体何であるのかもわからぬまま共に一夜を共にした朝、闇夜では気付かなかった桜の髪飾りに目が留まる。散り際の潔さが好きなのだと女は寂しげに笑った。
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第七十二景・桜取引

2019-04-02 22:58:59 | 桜百景
たかあきは、白昼の忘れ物と桜の葉に関わるお話を語ってください。

 昼寝をしたら変な夢を見た。小さな女の子を連れた女の人が鞄に付けた桜のストラップを譲って欲しいと頼んでくるのだ。特に思い入れもない品だったので承知したら小さめの封筒を差し出してきた辺りで目が覚めて、傍らに落ちていた封筒には綺麗な桜の葉が入っていたので葉脈標本を作って栞に仕立てた。
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第七十一景・雪の惑星の花伝説

2019-04-01 20:24:41 | 桜百景
たかあきは、雪の異星と桜の根に関わるお話を語ってください。

 惑星全土を覆う白く冷たい氷雪の下には、かつてこの星を覆っていた自然の名残が埋まっていると言われている。鮮やかな緑草、華やかな色彩の花々、そんな伝説の中で人々が一番心を躍らせるのは、雪が溶ける程に暖かくなった季節になると背の高い樹木を薄紅に変えて咲き誇るという可憐な花の話だった。
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