蝸牛の歩み

「お話」を作ってみたくなりました。理由はそれだけです。やってみたら結構面白く、「やりたいこと」の一つになっています。

避雷針

2015-09-12 10:28:49 | 日記
 最初は、点のように見えていた。空の上から、何かがゆっくりと降りてくる。人間だという事はだいぶ経ってから分かった。全身白い服を着ている。顔だけは見えるのだが、性別は判然としない。横になっている。

 私の住んでいるマンションから10mほど離れたところに立っているビルの屋上に設置されている避雷針の上にその人物は横たわった。しばらくは何事も起こらなかった。というより、何事も起こらなかったように見えた、と言った方がいい。
 白い服のお腹のあたりから避雷針の先端が姿を現した。そのまま突き刺さって行く。

 血が噴き出して、白い服を真っ赤に染めはじめた。

 血は、そのビルの屋上を伝って流れ、白い外壁に幾筋かの赤い線を描いていった。