このひとは、高いところに座っている。トラジャ地方の伝統様式の家トンコナンの2階の壁に、彫刻をほどこしている。
4人組で、3人は若者、1人は親方のようだった。熱心に、黙って壁に向かって掘り続けていた。
トンコナンの彫刻はとても繊細だ。そして美しい。花や植物のつる、太陽や水牛の角を表すカーブを、器用にのみで刻んでいく。
根気のいる仕事だ。
極めて装飾的なトンコナンハウスが今も新築され続けていることにも驚いたけれど、こんな若い人達がその彫刻の仕事をしていることに心打たれた。彼らにとってこの仕事のステイタスはどれぐらいなのだろう。私から見れば、すばらしい仕事だが、彼らは決して芸術家気取りではない。ごく普通の若者だ。
カメラを向けても、いやな顔もせず仕事を続け、ときどきこちらを見て、シャッターを切らせてくれた。
やがて休憩時間が来て地上に降りてくると、親方を中心にコーヒータイムとなり、私も招き入れてくれたのだった。
写真/スラウェシ島タナ・トラジャ(2008年)
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