風の向こうに  

前半・子供時代を思い出して、ファンタジィー童話を書いています。
後半・日本が危ないと知り、やれることがあればと・・・。

風の向こうに(第三部)六小編 其の拾八

2010-04-29 23:01:15 | 大人の童話

台の上に置いたアルバムには、開校・三周年記念式典、一周年・三周年記念

運動会等、当時のいろいろな学校の様子を写した写真がありました。その中には、

夢が見覚えのあるものもあります。それは、『開校記念誌』に載っている各学年

各クラスの写真でした。撮ったのは、そう、確か、新校舎に移って間もない

昭和四十一年の九月末頃のことだったと思います。夢は、「すみません。ちょっと

写真を撮らせて下さい。」と言って教室に来た人が、教室の後ろから何枚か写真を

撮っていったことを覚えています。当時は、『何、撮ってるんだろう。』ぐらいにしか

思わなかったのですが、今になってその訳がわかりました。夢はアルバムの写真を

見て、『ああ、あの時の、開校記念誌に載ってるやつだ。』と、なぜかうれしくなり

知らないうちに顔が微笑んでいました。資料室には、他にも懐かしいものが多く

ありました。当時使っていた教科書・校歌制定の時に児童ももらった校歌の楽譜・

各周年記念誌・当時の学校周囲地域の写真等です。夢が、懐かしさからそれらを

夢中になって見ていると、急に六小の大きな声がしました。

「何、ずっと見てんのよ。さっさと見ちゃってよ。わたしと話す時間がなくなるじゃない。」

六小はどうやら、夢がいつまでも自分をほったらかしにして、一人で昔を懐かしんで

いることに不満のようです。夢は、急に大きな声で話しかけてくる六小に、

『相変わらずだな。』と思いながら、

「はいはい、わかったわよ。今、行くから。」

と言って、六小の言葉を軽く受け流していました。



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