風の向こうに  

前半・子供時代を思い出して、ファンタジィー童話を書いています。
後半・日本が危ないと知り、やれることがあればと・・・。

風の向こうに(第二部) 其の弐

2010-02-17 23:24:00 | 大人の童話

夢は、しばらく校門の脇に佇んで、六小を眺めていました。すると、四小との

初めての出会いの時のように、突然、校舎がキラキラ光りだし、校舎全体が

大きな輝きに包まれていきます。夢が”え、”と思っていると、まもなく声が

響いてきました。

「キャー、夢ちゃんね。始めまして。これからよろしくね。」

声の主は六小でした。四小とは全く違う何とも騒々しい声に、夢は

めんくらいながらも、

「始めまして六小さん。わたしの方こそよろしくね。」

と言って、六小にむかって笑いかけました。六小は夢の言葉を聞いて、うれしくて

たまらないというように、更に大きな光を放ちました。そして、また、

「キャーキャー、返事してもらっちゃった。キャー。」

と、騒ぐのでした。夢は、六小のあまりの喜びように、ただ唖然としていましたが、

しばらくして、はっと我にかえると言いました。

「あ、あのね、六小さん。わかったから、もう少し静かにお話しようよ。」

「何でぇー。わたし、夢ちゃんと会えてとってもうれしいのに。夢ちゃんは、わたしと

会えてうれしくないの?」

「ううん、わたしもとってもうれしいよ。」

「じゃあ、いいじゃなぁーい。」

夢は、はぁーっと小さく溜息をついて呟きました。

「六小さん、四小さんと全然違うなあ。四小さんは、静かに優しくお話していたのに。」

「何か言ったあー。」

「ううん、何も。あ、もう行かなきゃ。六小さん、今日はもうすぐ式が始まるから、また

この次にお話しよう。」

「うん、いいよ、わかった。もっとお話したかったけど、またね。」

六小はそう言うと、キャーキャー言いながら消えていきました。夢は六小が

いなくなると、四小のいる方に向かって、語りかけるように言いました。

「四小さん、六小さんって四小さんと全然違うよ。なんかすごい。一人でキャーキャー

言って帰って行った。ハァ、これからどうなるんだろう。」

一瞬、夢の上を、一陣の風がサーッと吹きぬけていきました。夢には、それが

何となく、四小が「ウフフ」と笑っている声のように感じられたのでした。

 

 

 



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