風の向こうに  

前半・子供時代を思い出して、ファンタジィー童話を書いています。
後半・日本が危ないと知り、やれることがあればと・・・。

風の向こうに(第三部)六小編 其の弐拾六

2010-05-08 23:03:00 | 大人の童話

十月、夢は今時の運動会を見てみたいと思い、また六小を訪ねました。着いて

六小を見ましたが、六小は、子どもたちの競技を見るのに夢中で、夢が来たことに

全く気づいていません。夢は、六小に声をかけようとしましたが止めました。そして、

黙って六小といっしょに、子どもたちの競技を見ていました。少しして、夢に

気づいたのか、突然六小が大きな声をあげました。

「あれぇ、夢ちゃん、来てたの。全然気づかなかった。声かけてくれれば

よかったのに。」

六小は、夢に会えた喜びを表すようにチカッチカッと光っています。

「うん、そうしようと思ったんだけど、六小さんがあんまり夢中になって競技を

見ているから、悪いと思って声かけなかったの。」

夢が答えると、六小は、

「ふーん、そう。気つかわなくてもよかったのに。今日はゆっくりしていけるの?

ゆっくりできるんだったら、最後まで運動会見てってよ。ね!」

と、絶対最後まで見てって、と言わんばかりに夢に言いました。

「今日は、そのつもりで来たからいいよ。」

夢が言うと、六小は、

「わぁ、よかった。」

と言い、そして、うれしそうに何回もチカッチカッと光を放つのでした。