四小の光に包まれた夢は、校庭側に行き、校舎の前にある階段に腰かけて、
まぶしげに四小を見上げながら話し始めました。
「懐かしいな、ここ。あの頃と変わってないね。変わったことといえば、桜の木が
植わり、その木が大きくなって、四小さんの体を隠しているってことくらいかな。
四小さん自身も、あの頃と全然変わってないし。」
四小は、ふっとため息をついて言いました。
「変わったわよ。あれから、もう四十三年もたったんですもの。だいいち、わたしの
ところにいる子どもたちが減ったわ。夢ちゃんの頃は八百人くらいいたけど、今では
七十八人よ。」
それを聞いて、夢は驚いたようにかえしました。
「七十八人?なんで、そんなに少なくなっちゃったの?団地の建て替えのせい?」
四小は、横に首を振って淋しそうに答えました。
「それもあるけど、それだけじゃないと思うわ。まずは少子化、それから、わたしの
通学区の狭さね、きっと。」
夢は、『ああ。』と納得しました。実は、夢が高校生の時、市の人口はピークに
達していました。四小も、子どもの数が増えて満杯状態だったのです。そこで、
市は四小の近くに、もう一校小学校を造ったのです。ところが、あまりに四小に
近すぎて、四小の通学区が狭くなってしまったのです。
「まあ、でもこれも社会の変化で、しかたないことかもしれないわね。」
「四小さんのところの子が減ってしまったこと?」
「ええ。」
四小は、まだ何か言いたげでしたが、何も言わずにそれだけ言うと、夢に向かって
淋しそうに笑いかけました。夢は、四小の淋しげな笑顔が気にはなりましたが、
四小が何も言わないので、そのまま黙っていました。