風の向こうに  

前半・子供時代を思い出して、ファンタジィー童話を書いています。
後半・日本が危ないと知り、やれることがあればと・・・。

風の向こうに(第三部)四小編 其の四

2010-04-10 22:15:05 | 大人の童話

「四・・・小・・・さん、わたし、変。四・・小・・さんの姿が、声が、見える、聞こえる。

わたし、もう子どもじゃないのに。大人なのに。ねえ、四小さん、わたし、変だよね。」

夢は、ともすれば、大声で泣いてしまいそうな自分を、必死で抑えながら四小に

聞きました。四小は涙ぐんだ眼のまま、四十三年前、始めて夢に語りかけた時と

同じように、優しく夢を見つめて言いました。

「いいえ、ちっとも。わたしは、あなたを見てうれしくて話しかけたの。気づいて

もらえるかどうかはわからない、それでもいい、そう思って。半分諦めてもいたわ。

でもあなたは、わたしの声に答えてくれた。そう、あの時と同じようにね。ありがとう、

気づいてくれて。うれしいわ、夢ちゃん。」

それを聞くと夢は、四小の体から放たれるまばゆいほどの光のなか、とうとう

泣き崩れてしまいました。

「わたし、ラジオであなたの名を聞いて、いてもたってもいられなくなって

会いたかったの。すぐにでも会いに来たかった。でも、いろいろあって今に

なっちゃった。会いたかったよ、四小さん。」

夢は、涙でぐしゃぐしゃになった顔を拭きもせず言いました。

「わたしもよ。でも、会うことはないなと思って、諦めていたの。それなのに、会えて

うれしい、本当にうれしい。今日は、ゆっくりしていけるの?」

「うん。」

「そう。じゃあ、ゆっくりお話しましょうか。いい?」

「うん。」

夢と四小はお互いに見つめあい、四小の放つ光のなか、長いことうれしそうに

微笑んでいました。