風の向こうに  

前半・子供時代を思い出して、ファンタジィー童話を書いています。
後半・日本が危ないと知り、やれることがあればと・・・。

風の向こうに(第三部)四小編 其の拾弐

2010-04-20 23:54:17 | 大人の童話

四小は、しばらくちょっと考えているような感じでしたが、やがて、決心したように

静かに話し始めました。

「あのね、夢ちゃん。」

「うん、なあに?四小さん。」

夢は一所懸命、四小の思いを汲み取ろうとしながら四小の言葉に耳を

澄ませました。

「あのね・・・・・・・。」

四小は、まだ言いよどんでいます。夢は今までにない四小の様子に、『四小さん、

よほどのことなんだな。わたしに言おうかどうしようか考えたり、なかなか

言えなかったり。』と思いながら、四小が話せるようになるまで、気長に待つことに

しました。そんな夢を見て、ようやくはっきりと決心がついたのか、四小は、また

話し始めました。そして話し終わると、「ふぅ」と小さくため息をついたのです。夢は、

四小の話を聞き、驚いて声も出ませんでした。四小の話したことは、夢が今まで

考えもしなかったこと、いえ、考えたくもなかったことだったのです。夢は、がっくりと

肩をおとし、泣きだしそうになりました。しかし、夢はそれはぐっとこらえていました。

実際、本当に泣きたいのは四小のはずです。それを、四小はこらえて

いるのですから、夢が泣くわけにはいきません。夢は、やっとの思いで四小に

言いました。

「そっか。まあ、しかた・・ないか。でも・・・・。」

四小が言います。

「ええ。まあ・・・そうね。ふふ・・・・でも、まあ、夢ちゃんに話したら、少し気が楽に

なったわ。」

「そう?」

「ええ。」

夢と四小、二人はそれっきり黙ったまま、長いこと見つめあっていました。四小は、

チカッチカッと小さく何度も光っています。夢は、その光を見ながら、始めて四小と

心通わせた日のことを思い出していました。あれから長い年月がたち、夢も四小も

変わって来ています。しかし、これから先また、どのように夢と四小、二人の姿形が

変わろうとも、二人の間は変わることはありません。そう、夢と四小の絆は、

あの日から既に固く結ばれているのです。夢が言います。

「四小さん、わたし、そろそろ帰るから。またね。」

四小も言いました。

「ええ、今日は来てくれてありがとう。うれしかったわ。」

四小が、最大限の大きな光で夢を見送ります。夢はその大きな光の中、ゆっくりと

歩きだしました。『その時になったら、また必ず来るからね。』と、心の中で

誓いながら。

                                             完