風の向こうに  

前半・子供時代を思い出して、ファンタジィー童話を書いています。
後半・日本が危ないと知り、やれることがあればと・・・。

風の向こうに(第三部)六小編 其の拾五

2010-04-25 15:00:56 | 大人の童話

「何しに来たの?今頃。会いに来てねって言ったでしょ。夢ちゃんも、会いに

来るって言ってたのに。今頃になって、やっと会いに来るなんて。36年もたってから

来るなんて。今まで何やってたのよ。」

六小は、夢が急に来て驚いたのとうれしいのとで、頭が混乱していました。本当は

すごくうれしいのに、夢に向かって半分怒ったような顔になっています。それだけ、

夢が会いに来てくれるのを、首をながくして待っていたのです。夢は微笑みながら

六小に優しく言いました。

「待たせてごめんね。」

「も・う、夢ちゃんのバカ!いつまで待たせんのよ。わたし、ずっと・・・ずっと・・・

待ってたんだから、も・・・う。・・・・ウッ・・・・ウッ。」

いつのまにか、六小は泣き声になっています。夢が、クスッと笑って言いました。

「フフッ・・・六小さんたら、あの時から泣き虫だね。」

「だって・・・・だって・・・・いいじゃないの。ウワ~~ン・・・・・」

と、突然六小が言いました。

「夢ちゃん、にらめっこしよう。夢ちゃんが勝ったら、わたしに会いに来るのが

こんなに遅くなったこと、許してあげる。」

「え、また。」

「うん。」

六小は、にっと笑いました。夢は思い出していました。卒業まであと二ヶ月という

あの日、六小に「卒業文集に四小さんのことを書いていい?」と聞いた時、

「にらめっこで、夢ちゃんが勝ったら許してあげる。」と言われたことを。夢は

答えました。

「よし、いいよ。負けないから、っていうか、負けてもいいけど。」

「何よ、それ。」

「ウフフフ・・・・・アハハハ・・・・・」

二人は、いっしょになって笑いだしてしまいました。

「あ~あ、にらめっこする前に笑っちゃったね。」

六小が笑いながら言います。

「うん、そうね。」

夢が返します。

「まっ、いいか。」

「うん、まっ、いいんじゃない。」

「何、それ。」

「ウフフフ、アハハハ・・・・・」

二人は、またいっしょに笑っていました。