ヨシノアザミ〈吉野薊〉(キク科 アザミ属) 花期は9~12月。
採集者吉野善介にちなむ名。ナンブアザミの変種。
近畿地方や中国地方に普通に見られる0.6~2mの多年草。
茎葉は羽状中裂、まれに鋸歯状で鋭い刺針がある。頭花は紅紫色で枝先にま
ばらにつき、直径2.5~3㎝。総苞外片と中片は披針形で反り返るか開出する。
ナンブアザミやタイアザミに比べて、頭花がやや小さく、葉や総苞片の刺が短い。
林縁やドリーネ、洞穴そばなど、やや湿り気のある場所で9月初めから長い間
咲き続けるヨシノアザミですが、少し遅れて草原に咲き始めるアザミのアキヨ
シアザミ・モリアザミに目が行きがちで、日記にもなかなか書けませんでした。
【洞穴近くの湿地で】
06年11月29日撮影
【林縁で】
06年11月25日撮影
【頭花を横から】
06年11月21日撮影
「白い葯筒から伸び出した花柱にある丸くふくらんだ部分は集粉毛で、
葯筒から花粉を押し出す働きをする」
06年11月29日撮影
フサナキリスゲ〈房菜切菅〉(カヤツリグサ科 スゲ属) 花期は8~10月。
密についた房状の小穂に基づく。
林下や渓畔の多少湿気のあるところに生える高さ40~60cmの多年草。
小穂は多数あって、やや密につき、線形で、まばらに雌花を、上部に雄花がつく。
果胞は長さ3.5~4mm、楕円形で、特に縁に小刺毛があり、嘴はやや長い。
柱頭は赤褐色、糸状で長さ6~8mmもあり、果胞よりも長い。
【フサナキリスゲは洞穴近くの湿地、岩場に生えています】
06年8月29日撮影
【小穂を】
06年8月29日撮影
ピンぼけなので撮り直すことに。
【晴れているのに、ここは陰なのです】
06年11月29日撮影
【もう果胞になっています】
06年11月29日撮影
【上の画像を拡大しました】
06年11月29日撮影
「柱頭は赤褐色、糸状で長さ6~8mmもあり、果胞よりも長い」
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【センダイスゲの果胞】
06年11月29日撮影
フサナキリスゲのあと、センダイスゲ・コゴメスゲ・ナキリスゲの果胞を撮りました。
自信を持って出せるのは、姿の特徴が分かるフサナキリスゲとセンダイスゲで、
ナキリスゲとコゴメスゲの果胞の形は区別できなかったので、宿題ということに。
センダイスゲ〈仙台菅〉(カヤツリグサ科 スゲ属) 花期は8~10月。
発見地の仙台にちなむ。
岩石の多い疎林や海岸の草地に生える高さ10~35cmの多年草。
ナキリスゲの変種。地下匐枝を出して増えるので、茎がまばらに出るのが特徴。
小穂は3~4個つく。
【センダイスゲは大株にならず、一面に広がって生えています】
06年9月11日撮影
ポツポツと生え、高さも20cmほど。ナキリスゲ・コゴメスゲと区別しやすいのです。
【昨年、自分で見つけたセンダイスゲです】
05年10月24日撮影
コゴメスゲのあと、真崎先生を案内して見ていただいたら、合っていました。
その翌日、ずっとセンダイスゲを探していた“秋吉台のやまんば”さんに、
初めて私がスゲを教えてあげた記念すべきスゲ、センダイスゲなのです。
【小穂を】
06年9月11日撮影
【上の画像を拡大しました】
06年9月11日撮影
コゴメスゲ・ナキリスゲ・センダイスゲは、花期が8~10月と遅いこと、
小穂は上部に雄花、下部に雌花をつける雄雌性であること、
柱頭が2個で、果実が扁平なレンズ形であることなどが特徴。
コゴメスゲ〈小米菅/別名コゴメナキリスゲ〉(カヤツリグサ科 スゲ属)
花期は8~10月。
小穂が稲の穂に似ているので、小さな果胞を小米に見立てたもの。
海岸近くに生える高さ40~80cmの多年草。茎は3稜形で、上部はざらつく。
葉は黄緑色~鮮緑色でややかたく、幅2~3mmの線形。茎の上部から長い柄を
出し、小穂を多数つける。ナキリスゲに似ているが、小穂は幅2~3mmと細い。
果胞は鱗片より大きく、長さ約2.5mmの扁平な楕円形で刺状の毛が多く、
しばしば濃褐色の斑点がある。
【ナキリスゲの穂を手にして、比べて見つけたコゴメスゲです】
06年9月11日撮影
昨年秋の真崎博先生の観察会に同行した時、コゴメスゲを知りましたが、
今年自分で見つけるまで、ナキリスゲとの区別が分からないままでした。
【上の株の小穂を】
06年9月11日撮影
【コゴメスゲを確認後、並べて撮りました】
06年9月11日撮影
下がコゴメスゲ、上がナキリスゲです。
【上の画像を拡大しました】
06年9月11日撮影
【10月29日、真崎先生にコゴメスゲと確認していただいた小穂】
06年10月30日撮影
この時、先生が「秋吉台にセンダイスゲがあれば、その可能性も」と。
「大株状態でしたから、センダイスゲではありません」と、私。
* * * * *
コゴメスゲを確認して以来2ヶ月以上になりますが、スゲが目に入るたびに
全体の見た感じと果胞の感じで「これはナキリスゲ」「これはコゴメスゲ」と、
数だけはたくさん見てきましたが、はっきりした決め手が分かりません。
来年のコゴメスゲの同定も、ナキリスゲを持って歩かないと無理でしょうね。
秋吉台で見つけているスゲのうち、秋に開花し熟すのは、ナキリスゲ・コゴメスゲ・
センダイスゲ・フサナキリスゲの4種。これを画像整理を兼ねて書くことにしました。
ナキリスゲ〈菜切菅〉(カヤツリグサ科 スゲ属) 花期は8~10月。
葉のふちがざらつき、菜も切れるという意味。
平地から山地の疎林に生える高さ40~80cmの常緑の多年草。
茎や葉は密に叢生して大きな株を作る。 葉は暗緑色でかたく、
幅2~3mmの線形。茎の上部から長い柄を1~3個出し小穂を多数つける。
小穂は長さ1~3cm、幅3~4mmで、上部に短く雄花を、下部に雌花をつける。
果胞は鱗片より長く、長さ3~3.5mmの扁平な広卵形で、刺状の毛が密生する。
柱頭は2個。
【茎や葉は密に叢生して大きな株を作る】
06年8月31日撮影
【茎の上部から長い柄を1~3個出し、小穂を多数つける】
06年8月31日撮影
【上の画像を拡大しました】
06年8月31日撮影
「上部に短く雄花をつけ、下部に雌花をつける」
【ナキリスゲ(上)とコゴメスゲ(下)の小穂】
06年9月11日撮影
コゴメスゲを見つけるためにナキリスゲを持って歩き、確認後に撮った画像です。
【ナキリスゲにピントを合わせた画像を拡大しました】
06年9月11日撮影
「果苞は鱗片より長く、長さ3~3.5mmの扁平な広卵形。刺状の毛が密生する」
【10月29日、真崎博先生に確認していただきました】
06年10月30日撮影
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きょうは、山口市徳地で「森の案内人養成講座」を10時~15時受講しました。
今回は4回目で、テーマは、「健康増進―歩くことから始めよう」
自分にとって50%の運動強度に相当する脈拍数を計算したら、私は115。
これに到達するまで歩く速度を段階的に上げて行き、段階ごとに脈拍を数えます。
「あ、ペースにのってきたぞ」と思ったら終わるので、とうとう最後まで汗もかかず、
脈も乱れず・・・、普通の人が「きつい」と言っても、私にはまだ序の口状態でした。
秋吉台を歩きながら、見るものがない時には時間が惜しくて速歩きしているのが、
苦労もせずに、結構健康増進に役に立っているのだということが分かりました。
ヒメツルソバ〈姫蔓蕎麦〉(タデ科 タデ属) 花期はほぼ周年。
中国南部~ヒマラヤ原産の多年草。観賞用に明治中期に導入され、
1960年代以後都市部を中心に野生化するようになった。
茎は匍匐し、分枝して四方に広がり、赤褐色の粗毛を密生する。
葉は互生し、長さ1~3.5cmの楕円形~卵円形で、
上面に逆V字形の暗紫色斑がある。
花序は直径6~8mmの球形で、茎頂に1~3個つき、多数の花を含む。
花被は淡紅色~白色で、長さ約2mm、5浅裂する。
住宅地近くで野生化した姿を何度か見てきて、図鑑で名前を調べていたのに、
今回見つけた時「『ツル』や『ヒメ』がついた名前だった・・・」と、思い出せないまま
帰宅し、パソコンで見たらタデ科と分かり、それからは簡単、ヒメツルソバでした。
06年11月24日撮影
【一枝を】
06年11月24日撮影
【上の画像を拡大しました】
06年11月24日撮影
「花序は直径6~8mmの球形で、多数の花を含む。
花被は淡紅色~白色で、長さ約2mm、5浅裂する」
【葉は】
06年11月24日撮影
「長さ1~3.5cmの楕円形~卵円形で、両面に赤褐色の粗毛を散生し、
上面に逆V字形の暗紫色斑がある」
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11月も下旬になって、もう新しく花を見つけることはないと思っていましたが、
気温が高いためか、ムラサキホウキギクに続いてヒメツルソバを見つけました。
ただいま1019種、切りがいいところでもう1種見つけたいと欲が出てきました。
ムラサキホウキギク〈紫箒菊〉(キク科 シオン属) 花期は8~10月。
ホウキギクとヒロハホウキギクとの間にできる雑種はムラサキホウキギクと呼ばれ、花は淡紫色3倍体であるため種子は熟さない。西日本ではホウキギクより普通に見られるようになっており、九州では休耕田、水田、イグサ田に発生する。
11月22日、休耕田で遠くからでも花が目立つホウキギクを見つけました。
草丈50cmほど。ホウキギクとヒロハホウキギクの特徴を合わせたもので、
帰化植物図鑑にあるムラサキホウキギクと同定しました。
【高さ50cmほど】
06年11月22日撮影
【花序の枝の角度は小さい】(ホウキギク)
06年11月24日撮影
【葉は幅が広く、約1cm、先がとがる】(ヒロハホウキギク)
06年11月24日撮影
【葉の基部は少し茎を抱く】(ホウキギク)
06年11月24日撮影
【舌状花が目立つ)】(ヒロハホウキギク)
06年11月24日撮影
【頭花は直径約1cm】(ヒロハホウキギク)
06年11月24日撮影
昨日、11月22日、ムラサキホウキギクを確認しました。
これを新しく見つけた花に加えるために、これまで見てきたはずのホウキギク・ヒロハホウキギクが間違いなくそうなのかか調べることとし、画像を点検しました。
ホウキギク〈箒菊〉(キク科 シオン属) 花期は8~10月。
細かく分かれた上部の枝をほうきに見立てたもの。北アメリカ原産の1年草で、
明治末期に大阪で発見され、現在では各地に雑草化している。
茎はよく分枝し、高さ50~120cmになる。花序の枝は30~50度で斜上する。
葉は基部から先端までほぼ同じ幅の線形で、基部は少し茎を抱く。
頭花は直径4~5mm。舌状花は白色、まれに淡紫色。冠毛は筒状花より長い。
頭花にあいまいな画像が多く、冠毛の長さで同定できなかったものの、
頭花が非常に小さいことと、葉の特徴からホウキギクと確認しました。
【花序の枝は30~50度で斜上する】
04年8月17日 撮影
05年9月22日 撮影
【頭花は直径4~5mm、総苞は円筒形】(上の画像を拡大しました)
05年9月22日 撮影
【葉は基部から先端までほぼ同じ幅の線形で】
05年8月26日 撮影
【基部は少し茎を抱く】(上の画像を拡大しました)
05年8月26日 撮影
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ヒロハホウキギク〈広葉箒菊〉(キク科 シオン属) 花期は8~10月。
北アメリカ原産の1年草で、ホウキギクの基本種。1960年代に北九州で気づか
れ、80年代以降に増加し、関西ではホウキギクと置き変わっている場所が多い。
ホウキギクに似ているが、花序の枝が広がり60~90度、頭花が大きく、葉は幅が広く、先端がとがり、基部は茎を抱かない。冠毛は筒状花より短い。
花序の角度が不足気味ですが、頭花が大きかったことを覚えているし、
葉の特徴からヒロハホウキギクと確認しました。
【ヒロハホウキギクの画像は、全て同一株のものです】
05年8月25日 撮影
05年8月25日 撮影
【舌状花が淡紅桃色で冠毛より長い】
05年8月26日 撮影
【葉は幅が広く、中央部が最も広い】
05年8月25日 撮影
【基部は茎を抱かない】(上の画像を拡大しました)
05年8月25日 撮影
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新しく見つけたムラサキホウキギクは、ホウキギクとヒロハホウキギクの雑種です。
これまで見ていたホウキギク・ヒロハホウキギクは、純粋なものではないにしても、
両者の特徴が入り混じっているとまでは、思いませんでした。
道ばたや草地に生える高さ10~50cmの多年草。
葉は大小不ぞろいの深い鋸歯があり、下方の葉は羽状に裂けるものもある。
花は黄色の十字形花で直径4~5mm。
果実は長さ1.6~2cmの細長い円柱形で、上方に湾曲する。
イヌガラシは、3月に開花したあと年を越して咲き続けた年もありましたが、
昨年秋に咲き終わり、今年3月27日に開花を確認し、今もこんなにきれいです。
06年11月22日 撮影
【上の画像を拡大しました ― 葉】
06年11月22日 撮影
「大小不ぞろいの深い鋸歯がある」
【果実をつけながら花も咲き続けています】
06年11月22日 撮影
「果実は長さ1.6~2cmの細長い円柱形」
【花を 】
06年11月22日 撮影
「花は直径4~5mm」
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スカシタゴボウ〈透し田牛蒡〉(アブラナ科 イヌガラシ属) 花期は1~12月。
水田や道ばたの湿地に生える高さ35~50cm2年草。根生葉は羽状に裂け、裂片はさらに粗く切れ込む。茎葉は上部のものほど裂け方が浅い。花は黄色い十字形花で直径約3~4mm。果実は長さ5~8mm。
スカシタゴボウは、イヌガラシと比べて葉の裂け方が深く、花が小さめです。
花は厳寒の冬には小形ですが、いつもどこかで咲き、1年中見ることができます。
06年11月22日 撮影
【葉】
06年11月22日 撮影
「根生葉は羽状に裂け、裂片はさらに粗く切れ込む」
【果実と花】
06年11月22日 撮影
「果実は長さ5~8mm」
【上の画像を拡大しました】
06年11月22日 撮影
「花は直径約3~4mm」
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【おまけの花 ― ゲンゲ】
06年11月22日 撮影
公園内にある田のそばで咲いていました。
コハコベ・ウシハコベ・ナズナの仲間・トキワハゼ・オオジシバリ・ノゲシ・オニノゲシ・オニタビラコ・ヒメジョオン・セイヨウタンポポなどは春から咲き続けています。
夏に終わったホトケノザ・オオイヌノフグリ・ムラサキサギゴケ・キランソウ・ヤマ
アイ・シロバナタンポポ・ノミノフスマ・なども再開花。冬の寒さ次第で咲き続け
る花と消えるものがありますが、図鑑にある花期とは随分違うことは確かです。
アカメヤナギ〈赤芽柳/別名マルバヤナギ〉(ヤナギ科ヤナギ属) 花期は5月。
湿地に生える高さ10~20mになる落葉高木。雌雄別株。
平野部を流れる大きな川沿いに普通に見られる。
葉が展開したあとに開花する。日本のヤナギ属の名かでは最も花期が遅い。
この木を目にして4年目、やっと「このヤナギは何ヤナギ?」と、調べました。
ヤナギとは分かっても、見てきたサイコクキツネヤナギ・ジャヤナギ・ヤマヤナギ
の特徴を把握していなかったので、ほかのヤナギに向かい合えなかったのです。
【アカメヤナギの古木です】
06年11月21日 撮影
「高さより枝張りのほうが大きく、樹冠は平たい円形になる」
【葉身は長さ5~15cmの楕円形】
06年11月21日 撮影
「ふちには先端が腺になった小さな鋸歯がある。裏面は粉白色で無毛」
【冬芽】
06年11月21日 撮影
「日本のヤナギ属のうち、アカメヤナギだけは冬芽の芽鱗が帽子状ではない」
【托葉】
06年11月21日 撮影
「円形で大きく、遅くまで残りよく目立つ。ふちには鋸歯がある」
【樹皮】
06年11月21日 撮影
「灰褐色で縦に割れる」
開花確認に追われる日々から解放された今、まだ確認していない植物がない
か見て回る作業を始めて、まず葉を落とす前の落葉樹を見て歩いています。
先日のニシキギ・コリヤナギに続いて3種目、春までに貯金を増やさないと。
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【おまけ ― 今日の秋吉台(午後4時過ぎ)】
06年11月21日 撮影
この暖かな日差しも今日までで、明日からしばらく雨や曇りの日が続くそうです。