名前は?
犬尾篤志
随分と苦労しているようだねぇ
母さんはつらい思いをしてきた
だからあんな風にふるまってしまうんだ
俺は母さんを責められない
可哀想な人なんだ だから…
本当に良いんだね?
ああ…地獄へ 流して
怨み聞き届けたり
【依頼者】犬尾篤志
【ターゲット】鷲巣輝貴
<脚本>根元歳三
≪私的評価≫☆☆☆☆☆
今回の話はとても共感できる内容でした。
珍しく至極全うな地獄流しでしたし。
7話感想。
◆◆腐っても親◆◆
言われた通りにしてただけなんだろ
悪いのは全部お前のお袋さんなんだから
ひでぇよ 自分が見栄張りたいってだけで嘘付かせるなんて
最悪だ!信じらんねぇよ!!
アホか(汗)。
親は言わば自分の分身のようなもの。
その分身をボロクソにけなされるのは自分を傷付けられるのと同じ。
特に篤志は母親の痛みを知っていた。
だからこそ、自分を押し殺して嘘つきを演じる事を受け入れたんですね。
その事情も知らずに赤の他人が正義漢ぶって割り込んできて自分の分身である母親を叩き潰そうとするなどKYにも程がある。
仮想敵を叩く事で一体感を得るという手法は国家間・個人間に関係なくよく使われるが、鷲巣は“敵”にする存在を明らかに履き違えています。
この時点で地獄に流されるのが鷲巣だという事がすぐに分かったので、後はどのように鷲巣が篤志に「母親の腐った姿」を直視させ糸を引かせる事になるのかを注目して見ていました。
あんたまであたしを裏切るって言うのかい…?
あの男みたいに…
私にはあんたしかいないんだから捨てないでおくれよ…!
一人にしないでおくれよ…篤…!
この段階で地獄通信にアクセスするのは早いのではないかと思われる方もいるかもしれませんが、話の流れからすればこのタイミングが妥当。
涙する母親の哀れな姿を見る事で、その母親を「大悪」として叩き潰そうとする鷲巣への憎悪の念が芽生えたのでしょう。
◆◆偽善◆◆
相談するだけで良いんだよ
あんなお袋の犠牲になる事なんて無いって
そりゃあ お前にも悪いところはある
あんなお袋の言う事聞いて嘘付いてたんだからな
俺だったらそんな事
まぁ とにかくそう深刻に考えるなよ
俺も力になるからさ な!
何じゃそりゃ(汗)。
篤志が母親の嘘を受け入れいている理由を考えようとしない事が愚かだ。
明らかに篤志の気持ちを理解する能力(と言うよりは篤志の心情を聞き出す能力)に欠けている。
自分が同じ立場になって同じ事を言われたらどういう気持ちになるだろうか?という想像力が全く無い。
しかも、力になると言っておきながら、どのような行動をする事によって篤志の力になれるのかが全く示されていない。
当然、篤志の目からは偽善者・口先だけの自己満足野郎という風に映った事でしょう。
視野が狭いから思い込みだけで突っ走ってしまい、このようなKYな発言をしてしまうのではないかと。
しかし、KYなのは鷲巣だけではなく町や学校の人間も同じ。
あの周囲のよそよそしい態度で篤志は「惨めな母親を持つ自分」という現実を直視せざるを得ない事になっていきますから。
そして、追い詰められた篤志は、、、
◆◆浮き彫りにされた現実◆◆
分かったろ ああいう人間なんだよ
スナックで酔いつぶれ男に抱きつく母親の姿を目の前で晒された篤志。
「男に捨てられながらも自分にすがり健気に生きようとする哀れな母親像」が崩れ去り、堕落した母親の姿を直視せざるを得なかった篤志の心の中に、その要因を作った鷲巣への憎悪の感情が高揚する。
犬尾!お前まだ分からないのか?
噂通りならお前も地獄いきになるんだぞ!
あんな母親のためにお前が犠牲になる必要無い!
相談すればみんな分かってくれるって!
呆れてものが言えません(汗)。
鷲巣は明らかに篤志の母親に対する憎悪を煽っておきながら、糸引きは止めようとしている。
何か矛盾していませんか(汗)?
「これが若さか」では済ませられない真性の赤っ恥KYですね。
◆◆地獄コント◆◆
今作で最もまともな地獄コントだったのではないでしょうか。
特に「テメエの事しか見てねえんだな」,「視野が狭いんだな」発言にはとても共感!
しかも、ボロクソにけなしまくった挙句、「私達はあんたの味方だからね」という骨女の発言は上手すぎる!
今まで篤志が鷲巣に受けてきた仕打ちをそのまま再現した格好になりました。
最後にきくりのふんどしにつかまって地獄に落ちるさまには笑わせて頂きました。
ってか、きくりノーパンやんwww
◆◆演じ切れなかった役割◆◆
今日は父さんが来るからたまには豪勢にと思ってさ
最後の最後まで自分を押し殺し嘘を突き通そうとする篤志。
だが、、、
駄目だ…今夜は外食にしよう
父さんと一緒に ねっ…母さん…
久しぶりだねぇ…みんなでご飯食べるの…
何が良いかなぁ…あっ…父さんお寿司好きだったよね…
どこかにおいしい店あるかなぁ…?
「偽りの自分」を演じていると次第に「本当の自分」が何なのか分からなくなってくる事はよくあるのですが、篤志は「偽りの自分」を作り出す事に対して自らのキャパを超えたみたいですね。
壊れた篤志の姿は正に自分を見失ってしまったように見受けられた次第です。
◆◆対話不足◆◆
今回の話の『うそつき』とは篤志自身と篤志の母と鷲巣の事。
篤志の母は世間体を気にする単なる嘘つきですが、篤志はその嘘を強要され巻き込まれた挙句、崩壊してしまった「偽りの自分」を演じ切れなかった嘘つきなのです。
一方、鷲巣は善人ぶった嘘つき野郎で周りが全く見えておらず、正義漢である自分の行動に満足し自己陶酔しているようにさえ見えました。
本人にはそのつもりはなかったのかもしれませんが、人の不幸を見て楽しんでいた偽善者と見られてもおかしくはないKYな行動のオンパレードでした。
ここのところでまたしても誤解によるすれ違いが生じましたね。
まぁ、今回は鷲巣のKYな行動が生み出した誤解だったので自業自得と言えばそうですけど。
今回の場合、篤志の気持ちを察する事ができなかった鷲巣の落ち度が悲劇を生む事になったのですが、その最大の原因となったのは両者の「対話不足」だったと思う次第です。
もう少し、両者が対話を交わし、互いに互いの気持ちを理解し合う事ができれば今回の悲劇も生まれなかった訳ですから。
やはり、今作のテーマは「誤解とそれを解くための対話」という事になってきそう。
このテーマをどのように昇華させるのかが興味深いところであります。
しかし、理不尽な地獄流しが多い今作の中で久々に見た全うな地獄流しでしたね。
物凄く後味の悪い話でしたけど。
以上、7話感想でした。