「何じゃこりゃー!!」と心の中で叫んでしまう程、これまでの23話分の展開とは真逆の展開にサプライズの連続だった『地獄少女』最終章・種明かし編。
閻魔あいの豹変・柴田親子との因縁・地獄少女誕生の経緯・真の黒幕等、23話をかけて張っていた伏線がこのラスト3話で一気に回収される様は圧巻でした。
作中テーマであった『復讐の是非』も、閻魔あいと柴田親子の因縁の決着によって見事に結実。
オチとしては大体予想通りだったが、期待以上の出来でした。
久々に感涙してしまった(泣)。
怒涛の最終章感想。
◆◆罪と罰◆◆
罪には罰を
地獄少女こと閻魔あいはこの理論の下、依頼人に“恨み”の感情を抱かせる「罪」を背負ったターゲットに地獄流しという「罰」を与えてきた。
その彼女の行為の是非を問うたのがこの最終章の3話だったのです。
最終的には制作者側の考えを押し付ける事無く、視聴者に判断を委ねる形に落ち着いた訳なのですが。
◆◆閻魔あいと柴田親子の因縁(あらすじ)◆◆
400年前、閻魔あいがほのかな恋心を抱いていた相手が従兄の仙太郎という人物。
そして、この仙太郎の子孫が柴田親子だったのです。
つまり、閻魔あいと柴田親子には血のつながりがあるという事になります。
つぐみがトリップして閻魔あいと心を通わせる事ができるのも、この為かと。
400年前のあいは大人しくて泣き虫だったが、不思議な力を持っていると思われ、村人達からは“もののけ”と揶喩され忌み嫌われていた。
そんな彼女をかばっていたのが柴田仙太郎だけだったのです。
そんなある日、村の五穀豊穣を願う伝統の「七つ送り」の儀式(=七歳の子どもの命を山神に捧げる儀式)にあいが生け贄として捧げられ、山の祠に閉じ込められる事になった。
仙太郎は涙を流して抵抗したが、彼の想いが届く事はありませんでした。
彼はあいの両親と相談した結果、祠に閉じ込められたあいに差し入れをして生き長らえさせる決意をするのですが…。
6年後、その事が村人達にばれて、あいとその両親は見せしめとして村人達に撲殺され埋められる事になります。
その時、まだ息の残っていたあいが見たものは自分を埋める仙太郎の姿だったという訳なのです(←無論、仙太郎は村人に強制されていたのですが…)。
私を守るって…
信じてたのに…!
その後、憎悪と怨念に囚われて復活したあいは村を焼き払い、村人達を抹殺。
その復讐の「罪」に対する「罰」として地獄から彼女に与えられたのが、地獄少女の仕事だったという訳なのです。
彼女が賽の河原の石を積むのも、地獄へ流した魂に対する弔いの情があるからかもしれません。
何とも哀しい話ですが、あいを自らの手で埋めた罪悪感に耐えられず、あいの暴走時に村を去る途中だった仙太郎は、七つ送りの儀式の犠牲になった子ども達を供養する七童寺を建てる事を決意するのです。
それが自分にできるせめてもの償いである、と。
この最終章であいが地獄少女になる経緯が語られたのですが、あいと柴田親子の血がつながっていたとは想像もできませんでした。
しかし、つぐみの年齢が七歳という設定も因果なものだと思いますね。
そして、柴田親子が仙太郎の子孫である事を知った閻魔あいは、我を忘れて暴走し柴田親子を抹殺しようとするのです。
忌まわしい血は途絶えていなかった…!
そう叫ぶあいの姿には23話までの冷徹な地獄少女の姿は微塵もありませんでした。
「地獄少女の力を使うのは赤い糸が解かれた時だけ」という掟を破り、彼女は柴田親子に襲いかかる事になる。
それを阻止しようとしたのが手下である三藁達。
◆◆三藁との絆◆◆
感情で人を殺してはいけない!
お嬢が地獄に流されるぞ
いけねぇ…憎しみに心を支配されちまってる
必死にあいを止めようとする三藁達。
掟を破って感情で人を殺すとなると、あい自身が地獄へ流されてしまう。
そうはさせまいと柴田親子を守り、柴田一を異世界に拘束する事にした一目連。
それだけ、あいと彼らの絆は深いという事なのでしょう。
そんな三藁達の制止を振り切って閻魔あいは絶叫する。
私は構わない
この怨み 地獄へ流すがいい!
そう叫ぶ彼女の頬には涙が流れていました。
◆◆黒幕◆◆
実は黒幕の一人は1話から登場していたあの人面蜘蛛だったのです。
と言っても、完全な黒幕ではなく、あいが地獄少女の役目を果たすかどうかを監視していただけだったのですが。
結局、掟を破ったあいは人面蜘蛛によって地獄へ流される事になったのですが、感情を抑え切れない彼女は人面蜘蛛の拘束を解き放って再び現実世界に舞い戻る事になるのです。
こう見ても、人面蜘蛛よりも閻魔あいの方が明らかに力を持っているので、あいの背後から糸を引いている黒幕は別にいるのではないかと思います。
ここら辺の人間関係は『二籠』で明かされる事を期待する次第です。
個人的にはお婆さんが黒幕だと思っていたのですが、復讐の念に駆られた閻魔あいを止める為に三藁に拘束された一を現実世界に引き戻した事を考えても、実はまっとうな人物なのかもしれませんね。
◆◆暴走する閻魔あい◆◆
この怨み 地獄へ流すがいい!
このシリーズは演出が巧い事もあってサプライズも多かったのですが、この閻魔あいの豹変ぶりが最大のサプライズでした。
23話まではあれだけ感情を押し殺して地獄流しに徹していたのに、ここまで人間らしく自分の気持ちを晒け出すとは…。
つぐみの心の中に入り込んでいく閻魔あいの姿には激しい憎悪の念に執り憑かれた妄者の如く鬼気迫るものを感じ得た次第です。
それだけ、彼女は仙太郎の事件で深い傷を負ったという事なのでしょう。
そして、また、閻魔あいを演じる能登麻美子氏の演技が強烈でした。
今までとは全く別人の閻魔あいを表現できるその演技力に乾杯★
大好きなお父さんが あなたからお母さんを奪った…
辛いでしょ… つぐみ…
苦しいでしょ… 心が引き裂かれて
助けてあげる 楽になれるわ 糸を解いて 心を解き放って…
つぐみに復讐の糸を引くように懇願する母・あゆみの幻影を創り出した閻魔あい。
そして、あゆみの事故現場で『俺のせいじゃない』と呟く柴田一の姿も見せつけた。
そのあまりに生々しい光景につぐみは混乱状態に陥り、糸を解いてしまいそうになるのですが、それに「待った」をかけたのが、三藁の拘束から逃れた柴田一。
それならばと、あゆみの事故現場を一にも見せつけてとどめを刺そうとするあい。
彼女の狙いは一に『俺は悪くない』と言わせる事によって、つぐみの一への復讐の心を煽り立てて糸を解かせるという事だったのでしょう。
現にこれまで彼女が地獄へ流してきた人間達は皆、口を揃えて『自分は悪くない』と言っているのだから。
しかし、一は閻魔あいの想像を越える意外な言葉を口にする事になるのです。
◆◆自責の念に駆られる柴田一◆◆
俺が死ねば良かったんだ…
つぐみ…ごめん…!
お母さんが死んだのは俺のせいだ…
全部俺の…
許してくれ…
妻・あゆみの事故現場を見せつけられ、その場に崩れ落ちて号泣する柴田一。
それまでは、(内には抱え込んでいたのでしょうが)決して表立って口にする事は無かったあゆみの死に対する後悔の念。
意固地だった彼が初めて自分の感情を吐露したのです。
そんな彼を優しく抱き締めるつぐみ。
◆◆つぐみが見せた許し◆◆
お父さんがいてくれたから 私 大丈夫だったよ…
号泣する一を強く抱き締め、涙を流したつぐみ。
「罪には罰を与える事が正義である」とする考えを曲げなかった彼女が罪を「許す」という行為を取ったのです。
このシリーズの本当のテーマはこれだったんだな、と。
また、普段、一を「ちゃん」付けする彼女が一を「お父さん」と呼んだ事は印象的でした。
つぐみの抱擁シーンは母親が子どもを抱き締める様な感じにも見て取れたのですが、意固地な一の全てを許容したという事を表現したかったのでしょう。
つぐみが年齢の割には大人びていたり、一が頑固で子どもっぽい一面を持っているという設定も、ラストのこの演出の為だったのかもしれませんね。
全ては父と子の関係を越えてつぐみの母性と“許し”を表現する為に組まれた設定だったのではないかと。
復讐の是非を巡って崩れかかっていた親子の絆が再構築された瞬間でした。
第11話『ちぎれた糸』で家族の絆を崩壊させられて復讐に手を染めた依頼人が、『壊れたものはもう元には戻らないんだ あんたにも家族はあるだろう 分かるはずだ…』と一に言ったのですが、柴田親子はその壊れかけていた絆を再構築させましたからね。
こういった何気無く張られていた伏線の回収もきっちり行われたと思うと脱帽してしまう次第です。
そして、つぐみの“許し”は憎悪に塗り固められた閻魔あいの心にも風穴を開ける事になるのです。
◆◆憎しみの心に風穴が開く瞬間◆◆
柴田親子のやり取りを目の当たりにして仙太郎と過ごした幸せな日々を回想するあい。
「罪と罰」の理論の下、復讐を肯定してきた彼女が、初めて【罪を許す】という行為を知ったのです。
好きだったんでしょ
仙太郎さんの事…
つぐみは黒藁人形を返しながらあいに話しかけた。
気が付くと、一同は桜の花弁が舞い散る七童寺の境内にいました。
そして、あいは再び石を積み始める。
この行為は彼女が仙太郎を理解し、許したという事を意味するのでしょうね。
仙太郎も(柴田一の様に)自分を救えなかった事を後悔していたのかもしれない。
だから、この七童寺を建てたのだ、と。
あいは仙太郎に対する怨念を掻き消す為に想い出の桜の花弁が舞い散る七童寺を焼き払いました。
その瞳からは涙がこぼれ落ちていたのですが。
◆◆復讐の是非◆◆
『地獄少女』が訴えたかった事は【復讐=悪】という事ではなく、復讐する事が正しいか否かを視聴者各人で考えて欲しいという事なんじゃないかな、と。
その証拠に閻魔あいは今も尚、地獄少女の仕事を続けているのです。
後は あなたが決める事よ
そう呟きながら…。
そう、後はこの一連の愛憎劇を見た視聴者自身が復讐は正しい事なのかどうかを決めて下さい、と。
決して、制作者側から善悪の針を押し付ける事はせずに、視聴者に判断を委ねるという形で物語の幕は下りました。
閻魔あいのPCの画面には『ツヅキマス』の文字が…。
これは『二籠』を意識しての演出なのでしょう。
終わり良ければ何とやら
傷も塞がりゃそれっきりさ
でも気がつきゃ新しい傷でまた同じように苦しんでいる
結局 終りなんてものはねえのさ
人間はつくづく哀れな生き物だなぁ お嬢
新しい傷は前よりも…
『地獄少女 二籠』は更に黒くなるらしいので期待大ですな。
一つの終止符が打たれた『地獄少女』、私的には想像を絶する衝撃作でした
よ。
ドラマは私的にツボにこなかったのですが、アニメ一期は史上最高傑作だと思う次第です。
三期は映画化してくれると最高に嬉しいですねw