Akatsuki庵

後活(アトカツ)中!

『寛永の雅』展は今日まで

2018年04月08日 10時18分45秒 | 美術館・博物館etc.
写真が前回とまったく同じアングルになってしまった。

でも、寛永文化を凝縮した世界がこのポスターにはあるような気がして、
感想をイメージで示せと言われれば、やっぱこのポスターが思い浮かぶと思うから。

この展覧会だけで4回目の訪問。

前の3回はいずれも前半(1期2回と2期1回)だったので、
後半は今回限りのワンチャンス。
(後半は旅行もあって、その合間に仕事をするという感じで、お茶会も行ったし、暇がなかった)

最近、記憶力や鑑賞力に自信がなくて、
今回もっと心配だった。

前半との展示替えにちゃんと気がつけるかしら。

前にあったものを覚えているかしら~。

ドキドキ。

仁清の水玉透かし鉢は全期公開。やっぱり、これはいい。

あらら、探幽の鳳凰も全期公開だったのねぇ。

そして、屏風。ここだけが期間中に2度、つまり計3回訪れないと全部見ることができない。

序盤は三井記念館所蔵の東福門院入内図屏風があった。
行列がいかに長かったを表した描き方で徳川家の威光の高さが際立っていた。

中盤には洛中洛外図屏風(サントリー美術館所蔵)。
桃山期のものだから、東山の南の方。方広寺のあたりが目立っていたなぁ。
位置関係がずっとキープされていることがよくわかる。

そして、終盤は徳川美術館所蔵の東福門院入内図屏風。

行列が協調されているけれど、左端に二条城。右端に御所が描かれている。
つまり、二条城を発した行列が堀川を渡り、通りを東へ進んで御所に到着するところが描かれている。

図中の人物の大きさが、三井の屏風の倍以上になっているので風俗がよくわかるし、
通り沿い、おそらく丸太町通の生活ぶりリアルに感じられる。

ただ公武合体の友好の証のような屏風。

ただ、少し進むと後水尾天皇の宸翰。こちらも後期は替わっている。
「忍」とか「一貫」と徳川家との軋轢を感じさせるような意味深な字がそこにあった。

それにしても、後水尾天皇に第15皇子がいたとは。(そんなに子だくさんだっけ?)

前半は池坊の立花図が並んでいたあたりは源氏物語や伊勢物語の絵巻物に替わり、
指人形は近江八景の歌書箪笥に替わっていた。箪笥の漆芸がすごく豪華だった。

滴翠美術館の修学院焼は全期展示。

蛤香合は東福門院和子が描いた兎文橙香合に替わっていた。

独立ケースには枝菊蒔絵香合。(前半、ここに何があったか、ちょっと記憶にない)
大ぶりで、梨地の蒔絵が見事な香合で、徳川美術館所蔵。
これが徳川家和子が入内する際の調度品の中で唯一現存する道具だという。

つまり、他のお道具も全て“御印”は枝菊のこのデザインで彩られていたというわけ。
(天皇家も財力的に豊かではなかっただろうから、嫁入り道具なんて散逸しちゃうんだろうなぁ)

尾張徳川家に伝わったのは、初代の義直と和子は叔父姪の関係だったから~。
こういう血筋って、親しかったのが形式的だったのか、ちょっとわからないなぁ。

階段をおりて、3階へ。

北村美術館の「桜散るの文」は小堀遠州像に替わっていた。(孤蓬庵所蔵、春屋宗園賛)
3年前、孤蓬庵を訪れたこともあり、「うんうん、わかる」的な感想。

文はなくとも、油滴天目と芙蓉台は展示あり。膳所光悦茶碗2つも。

和蘭陀の筒茶碗の替わりは高取面取茶碗(三井記念美術館)。

   ここまできて、展示替えに記憶がしっかりついていきている自分にホッとした。

湯木美術館に遠州好みの茶入は全期展示で代わり映えしないなぁと思ったけれど、
茶碗は六地蔵やひずみ高麗から紅葉呉器茶碗(根津美術館)や祥瑞洲浜茶碗(個人蔵)に替わっていた。

根津美術館で紅葉呉器茶碗を観た時はその華やかさが印象に残った。
やはり、当時に流行った茶碗だったようで。

古胴の像耳花入や染付荘子香合が引っ込んだなぁと思った。
替わりは青貝布袋香合、それから遠州作の茶杓。煤?両サイドが黒くて、中心だけ線のようにすっと枯れた竹。華奢。

そして、仁清。

仁清も好きだから随分鑑賞してきて、ようやく生きた年代によって作風の変化があることがわかってきた。

指導役の金森宗和の存命期と没後では、クライアントの変化もあったようで作風に変化があるとかね。

前半の白釉耳付水指は優雅でいかにも公家好みだったけれど、
展示替えになった後期は鉄釉輪花口水指は渋くて、大名家の書院に似合うデザイン。

あ、でも信楽写兎耳付水指は長い兎の耳が優美。
本歌の信楽焼より荒いざっくりした土見せで焼かれていて、ゆえにデザインとのギャップがすごい。

唐物写建水も意欲的な作風。鯨皮の釉薬の流し方とドーナツを重ねたようなフォルムがすごい。これは武家好みかな。(京都・曼殊院所蔵)

そうそう。訂正を一つ。
唐物写の茶入。前半は静嘉堂文庫美術館所蔵ではなく、泉屋博古館分館所蔵の唐物写十九茶入だった。
(誤って記載していたので、修正した)

どちらも観たことはあるけれど、私は静嘉堂の方が好き。
だから、前半は「あれ?」と心の中に不満が残っていた。
後期はパッと見て、なぜか安心するような形だなぁと思った。
展示プレートを見て「静嘉堂文庫美術館所蔵」を見て、「やっぱり、こちらの方が好きだ」と改めて思った。

泉屋博古館のはシャープなフォルムでもしかすると本歌に近いのかもしれない。
だけど、静嘉堂の方は丸みを帯びていて、日本人好みになっているような気がする。

個人像の尺八花入は鍬形花入に。出光美術館で仁清と乾山の展覧会がかかった時に拝見しているけど、これは好きだなぁ。

御室焼の陶片が重要文化財の釘隠しに替わったのも心憎い。再訪してよかったと思わせてくれる。

寛永文化展の大トリは探幽。

高弟が描いたという探幽像に圧倒された。京博所蔵で、これも後期展示。

あれ?茶道具があると注目して観に行くと、仁清のお茶碗と茶杓。
色絵菊紋茶碗は使い込まれた感あり。探幽が所持していたものだという。
茶杓は探幽自作。

探幽も茶道を楽しんでいたんだーということがよくわかった。

そのあとの作品もほぼ全てが前期から替わっていた。
(専門じゃないので、細かく書けないけれど~)

というわけで、仕事帰りの土曜日放課後。

お腹空いたなぁと思いながら、4回目だし一人だしサラっと見終わるかと思いきや、
50分も滞在して、けっこうじっくり鑑賞していたことに、出口でビックリした。

それにしても、お腹が空いた~ 血糖値不足でフラフラしながら地下に降り夕食。


ヒラメの刺身のお茶漬けは、珍しく待たされたが、その分ふんだんに盛られていて、堪能。

 ★サントリー美術館バックナンバーリスト
2018年3月 『寛永の雅 江戸の宮廷文化と遠州・仁清・探幽』(前期)
2017年11月 『狩野元信』(再訪)
2017年9月 『天下を治めた絵師 狩野元信』
2017年8月 『おもしろびじゅつワンダーランド2017』
2017年6月 『神の宝 玉手箱』
2017年4月 『絵巻物マニア列伝』
2017年3月 『コレクターの眼 ヨーロッパ陶磁と世界のガラス』
2016年9月 『KIITSU 鈴木其一 江戸琳派の旗手』 
2016年 『エミール ガレ』
2015年11月 『逆境の絵師 久隅守景 親しきものへのまなざし』
2015年8月 『藤田美術館コレクション―東洋美術の至宝―』
2015年6月『乾山見参!』
2015年1月『天才陶工 仁阿弥道八 のびのびと、まじめに。』
2014年7月『徒然草 美術で楽しむ古典文学』
2014年4月『のぞいて びっくり 江戸絵画 科学の眼、視覚のふしぎ』
2014年1月『天上の舞 飛天の美』
2013年8月『谷文晁』
2013年5月『「もののあはれ」と日本の美』

2012年8月『おもしろびじゅつワンダーランド展』 
2012年5月『毛利家の至宝 大名文化の精粋』
2012年2月『悠久の光彩 東洋陶磁の美』
2011年7月『不滅のシンボル 鳳凰と獅子』
2011年4月『美を結ぶ。美をひらく。』「夢に挑む コレクションの軌跡」
2011年4月 開館50周年記念『美を結ぶ。美をひらく。』
2010年9月『誇り高きデザイン鍋島』
2010年2月『おもてなしの美 宴のしつらい』
2009年4月『一瞬のきらめき まぼろしの薩摩切子』
2009年1月『japan蒔絵ー宮殿を飾る東洋の煌めく燦めき』
2008年4月『ガレとジャポニズム』
2007年12月『鳥獣戯画がやってきた』

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