朝起きてすぐに3日前に漬け込んだ杓子菜を覗く。しっかりと水が上がっていて、一安心。気温が下がったから明日あたりから屋外管理に移行しようと思うのです。
それから、朝ご飯を食べに前橋駅へ行きました。
駅前通のケヤキはすっかり色づいて、たくさんの落葉を降らせています。日曜日、9時前でしたが、人通りはほとんどありませんでした。
朝食は、駅構内にあるパン屋「ハースブラウン」です。久しぶりでおいしかったです。空いてました。
朝食をすませて駅を出てくると、駅前の前橋STビルに暮らす鳩たちが話をしてました。<最近すっかり話題にならなくなったね>、<そう、誰も写真撮りに来なくなって…>、<寂しくなったね…>だってさ。そうなんですね、静か過ぎるんですね…
前橋駅前のイトーヨーカドー前橋店の閉店は去年の10月3日の讀賣新聞で最初に報道されました。そして、曽我製粉が所有するこの前橋STビルからイトーヨーカドーは消えました。今は空き家、鳩たちも閑げでした。
讀賣の報道からしばらく静かでしたが、年が明けたら急に新聞各紙が賑やかになりました。1月30日、朝日新聞は「県都の顔 建物活用焦点に」という見出しで書きました。そして2月12日の上毛新聞は「ヨーカドー8月閉店」という記事で、「企業側の意向もあるが、駅前立地という公的性格を持つだけに、行政や商工会議所など地元が一体となり知恵を絞る必要だ」とのの意見を表明しました。この記事の内容は極めて奇妙でおかしなものでした。
そして7月29日、なぜか讀賣、朝日、上毛の3紙が、日本経済新聞のあとを追って、同じ日にイトーヨーカドー撤退後の前橋STビルの見通しを書いたんです。フレッセイの出店は決まり、スズランが出店検討中って…。中でも、上毛新聞は、「前橋商工会議所の曽我孝之会頭は『駅前は大変大事な場所であり、しっかりとした店が出店してくれることは、まちづくりの点からも、大きな意味がある。ぜひ実現してほしい』と話している」となぜか会頭のコメントを載せました。
そして、8月10日に上毛新聞は「後継店に補助金」という大きな見出しの記事を掲載したんですよね。
「大型商業施設出店補助金制度」、通称「曽我製粉に対する家賃収入補助制度」をつくって、1億円を上限とする補助を行うことを、前橋市が決めたという記事でした。「相次ぐ大型店の閉店で買い物難民が出るのを防ぐために、期間を空けずに主要なテナントを誘致することが必要である」というのが制度創設の理由だと書いてありました。
そして、曽我製粉の曽我隆一社長はフッレッセイの社長とスズランの社長を伴って、賑々しく、11月19日に新装開店することを記者会見で発表したんです。それが…
10月5日、曽我製粉が新装開店を白紙撤回したことを上毛新聞が報じました。他の新聞は翌6日でした。簡単に言えば、儲けが出ないから止めたということだったんです。それ以来、前橋STビルは空き家です。
でもさ、最初に鳩たちが言っているように、それ以来、前橋STビルについて、誰も何にも言わないのです、みんな沈黙を守っているんです。どうしてなのでしょう。
新聞各紙も沈黙を続けています。取材をしてないのでしょうか。
特に気になるのは、前橋STビルが単なる曽我製粉の所有建物に過ぎないのに、「公的性格をもつ」と定義し、「行政や商工会議所など地元が一体となり知恵を絞る必要」があると意見を表明した上毛新聞です。
紙上に意見まで載せた上毛新聞は、この建物がほんとうは何なのか、行政や商工会議所は何をしたのか、曽我製粉の経営責任はどうなのか、しっかり調査検証して、読者にきちんとした事実を提供する義務がある、沈黙は許されないと思います。
それと前橋市もそうです。ものすごく多弁に喋っていた高木市長も完黙しています。 「大型商業施設出店補助金制度」はどうするの、「買い物難民の救済策」はどうするの、こないだ前橋工科大学が市の委託アンケートなんかやってたけど、ほか市では具体策がもう動き始めてます。緊急性を再三言っていたのですから、早く具体的な仕事を始めてください。
前橋商工会議所の曽我会頭さん、いろいろお話になってましたよね。続きのお話を聞きたがっている市民がたくさんいますよ。
「駅周辺再生」提案をした前橋街づくり協議会の皆さん、曽我製粉が白紙撤回した状況を受けて、サイド緊急提案をしないのですか。5月の提案はあんなにすばやかったのですから、一度できたことは二度できるはず、新しい提案を期待しています。
いろいろ言ってきた皆さんは、前橋STビルについて知っていることを、調べたことをみんなに知らせてください。
あれだけ賑々しく、ウソ八百も含めてお話しになっていた皆さんが、みんなして黙ってしまっているのがとっても寂しいです。
朝飯帰り、駅前通の欅の落葉を踏みしめながら、ヒゲクマは一人で考えていました。簡単に忘れてはいけないって…
次回の「ヒゲおじさん厨房に入る」(朝日新聞群馬県版)は、11月27日掲載予定です。
駅前ロータリーを「ナントカ資源」が幕を張ってひっかいてます。確か駅前を一体的に整備する、とか何とか聞いた覚えがあるのですが、STビルは不気味に静まりかえってました。
クロサワ監督が生きてれば、ここで「新・蜘蛛の巣城」とか「乱・乱」とか撮りそうです。
「アラシの前の静けさ」なんだか、「ウタゲの後のむなしさ」なんだか、関係者一同の存念を伺いたいものです。
レッツゴー!洋楽研究会(http://ameblo.jp/nihonyogaku/entry-10687074123.html)という前橋出身のおじさんのブログを見つけました。「壊された町」という記事。
前橋STビルが「こわされたまえばしを象徴する廃墟のように見え、私の記憶の中の故郷とのギャップはあまりにも大きい」と書かれています。
そうなんですね、このまちは壊れてきたのではなくて、壊されてきたんだ。
誰が壊したんだ!