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アイヌ民族 暮らしの場 イオル、進む再生(朝日新聞)

2008-01-07 00:00:00 | アイヌ民族関連
アイヌ民族 暮らしの場 イオル、進む再生
2008年01月07日



■平取でも来年度 文化継承へ光


 アイヌ民族の祭事、狩猟など暮らしの場となる林や草原は「イオル」と呼ばれる。祭事に使う樹木や薬草を栽培し、「アイヌのふるさとの空間」を再生しようという国の事業が胆振支庁白老町で進み、08年度からは日高支庁平取町でも始まる。


 オンコやハルニレなどアイヌ民族が祭事で使う植物の栽培をはじめとするイオル再生事業が白老町で始まったのは06年度。07年度には実際にイオルを活用、体感する事業が始まった。


 「生きているものの命を食べていることを実感した」。同町の浜辺で炭火焼きのサケをほおばりながら中学2年の辻航汰君(14)がつぶやいた。


 町は昨年10月、地元の小中学生と父母を対象に、アイヌ民族の信仰や食文化とつながりの深いサケについて学ぶツアーを開催、予想を上回る150人が参加した。国土交通省などの外郭団体、アイヌ文化振興・研究推進機構(札幌市)の委託事業としての企画だ。


 子どもたちは山中の孵化(ふか)場と浜を訪れた。アイヌの人々がサケを「カムイチェプ=神の魚」と呼んでいること、清流に生まれて川を遡(さかのぼ)り、死骸(しがい)が山の動物の命を養っていることなどを学んだ。浜では正装で豊漁と安全を祈るカムイノミの儀式を見学。地引き網でサケに触り、料理を味わった。


 同町ではオヒョウ、シナ、ミズキ、カツラなどの樹木を植え、浜では薬草として用いられるハマボウフウ、ハマヒルガオ、ハマナス、穀物はアワ、ヒエ、イナビキなどを栽培している。


 同機構によると、白老のようにアイヌの人たちが多い地域でさえ材料収集に苦労しており、他の地域と融通しあって祭事を続けているという。イオル再生事業は植物を育てて祭事継承を支え、民族文化を伝える狙いで、ツアーもその一環だ。


 企画した同町の能登千織学芸員は「民族を問わず、子どもたちが郷土の文化としてアイヌ文化を誇りに思うきっかけになったのではないか。森や草原が元の姿になれば文化体験観光などにも活用できる」と話す。


 町は06年3月、「アイヌの伝統的生活空間(イオル)の再生事業・白老地域計画」を策定。特区制度を使った川での漁労や狩猟、儀式用どぶろく製造の規制緩和なども求めている。伝統や文化を解説できる人材を養成しようと体験指導員育成事業も始まった。


 国の08年度予算案では、同機構の事業にほぼ07年度並みの3億3800万円が計上され、平取町のイオル再生事業も盛り込まれた。白老は海と平地のアイヌ文化を代表する地だが、平取では山間部のアイヌ文化の再生に取り組む。


 だが、平取町では国土交通省などが進めた二風谷ダム建設で、アイヌの聖地とされた一帯が水没。08年度予算案では上流の平取ダム関連事業に35億2800万円が計上された。国がイオルの「復活」と「破壊」を同時に続けているという奇妙さも浮かび上がる。



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