トラウマ治療に、CBT認知行動療法は効かない、と考えた方が良いですね。下山晴彦さんはお困りでしょう。
ヴァン・デ・コーク教授のThe body keeps the score : brain, mind, body in the healing of trauma 『虐待されたら、意識できなくても、身体は覚えてますよ : 脳と心と身体がトラウマを治療する時どうなるか?』の第13章 Healing from trauma : Owing your self 「トラウマから癒されること :本当の自分を生きること」p.223の、第5パラグラフから。
トラウマを負わされる、ということは、過去にはり付けにされている、と言うだけではありません。トラウマを負わされる、ということは、≪いまここ≫で満足にイキイキ生きることが出来ないという課題を抱えたも同然なんですね。ある種の暴露療法は、ヴァーチャル・リアリティーのセラピーでして、そのセラピーでは、ハイテクのゴーグルを付けて、ファルージャの戦いを、まことしやかに、繰り返し戦うことが出来ます。私が知る限り、アメリカの海兵隊は、よく戦いました。問題は、海兵隊は自宅にじっとしていることに耐えられない、ということです。オーストラリア人の退役軍人の最近の研究によれば、退役軍人らの脳が、緊急事態を警戒をすることにバッチリ結びついたものに変形している、ということなんですね。ですから、彼らは、日常生活の細々したことに気を払うこともできないのです(私どもは、このこと、すなわち、ニューロフィードバックについては、第19章で、詳しく触れます。)。ヴァーチャル・リアリティーのセラピーよりも、トラウマを負わされるクライアントは、「現実世界」のセラピーが必要です。その「現実世界」のセラピーがあれば、トラウマを負わされるクライアントも、地元のスーパーで歩き回っている時も、子どもたちと遊んでいる時も、イキイキ生きていると感じることが出来ます。それは、ちょうど、バクダッドの町で、彼らがイキイキ生きていたのと同じです。
繰り返しで申し訳ありませんが、≪いまここ≫をイキイキ生きることが、どこまでも、大事なんですね。ヴァン・デ・コーク教授のご指摘どおり、ヴァーチャル・リアリティーのセラピーをやっても、効かないでしょうね。日本のトラウマ研究者がやってる心理教育と同じで、リアルな感じがないからでしょう。クライアントの心の実感からは、遥か彼方、という感じなんですね。これじゃぁ、効き目は限定的、いや、むしろ、ほとんど効果がありません。
ヴァン・デ・コーク教授のおっしゃる「現実世界」のセラピーが何なのか、愉しみですね。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます