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65オヤジのスタイルブック

65才茶々丸のスタイルブック。様々なカルチャーにふれて養ったライフスタイルを紹介

展覧会 岡本太郎 愛知県美術館

2023年02月16日 | 【美術鑑賞・イベント】

今回の展覧会レビューは、異彩を放つ芸術家三人の美術展を鑑賞しましたのでご紹介します。先ずは愛知県美術館で開催中の「展覧会 岡本太郎」です。

史上最大の岡本太郎展と銘打ち開催中の本展、昨年からの中之島美術館、東京都美術館に続き愛知県美術館で現在開催中です。

岡本太郎と言えば、現在も万博記念公園に鎮座する「太陽の塔」や芸術家集団チンポムにより追加された「明日の神話」が思い浮かぶでしょうが、僕の記憶には小学生の頃の太陽の塔や同時期に描かれた原発へのアンチテーゼ作品である明日の神話は断片的な岡本太郎へのイメージしかなく、一番に感じるのはマクセルビデオテープでの「芸術は爆発だ」と叫ぶ奇々怪々な芸術家のイメージが強く残っています。当初は岡本太郎の存在を素直に受け入れることができない状況が続いていました。

しかし、岡本太郎を深く知るにつけて、その類まれなる画家としての技量を秘めながらも他人を介さず自らの意志を作品に注入するからこそ、現在も若者の強い支持を受けアヴァンギャルドの情熱めらめらと噴き上げてくるのでしょう。そんな芸術家の生き様が今回の展覧会に現れているようです。

会場には序章としてなじみの深いまた誰もが愛するパブリックの彫刻作品が、第1章ではパリ時代の幻の油彩画作品と共に初期のドローイング作品を展示、第2章では日本文化を挑発する太郎独特の油彩画作品がずらりと展示、また初期の肖像画やデッサン画は芸術家一家に生まれた太郎の隠された画家の技量を感じます。

第3章では太郎の芸術のルーツとである縄文、弥生文化をベースにした記録写真や作品、第4章では大衆芸術に根差した様々な作品が、第5章では太陽の塔と明日の神話ふたつの太陽をテーマに展開されいます。そして第6章では、大阪万博を境にメディアでの露出がふえ人間、岡本太郎の存在がクローズアップされた時期に描かれた知られざる芸術家・岡本太郎の芸術の眼がが黒い眼として象徴的に居並んでいます。

現代美術の世界において日本の芸術家にも注目が集まっている現在、国際的に通用したであろう岡本太郎。時代を突き抜けて疾走する太郎の精神が脈打つ展覧会に今訪れるべき時ではないかと感じます。

東京都美術館「展覧会 岡本太郎」


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ゲルハルト・リヒター展 豊田市美術館

2023年01月10日 | 【美術鑑賞・イベント】
 
よほどの美術ファンでない限りゲルハルト・リヒターを知る人はいないかと思います。先ずはゲルハルト・リヒターについて紹介したいと思います。
ゲルハルト・リヒターはドイツ東部ドレスデン出身の現代美術家で、ベルリンの壁による東西分断の前に西ドイツに移住し60年に及ぶ芸術活動を行い90歳にしてドイツ最高峰の画家であり、おそらくは、現存する画家の中でも世界最高峰の画家だと思います。
また、2012年にエリック・クラプトンが所有していた抽象画がサザビーズのオークションで生存する画家としては史上最高額で落札されたことで知られ広く一般にも認知されたのではと思います。
 
今回の展覧会は、東京国立近代美術館からの巡回展で豊田市美術館での展覧会で1月29日まで開催され最後となります。おそらくは今回の展覧会がリヒターの全貌を知ることができる重要な展覧会ではないでしょうか。
 
展覧会場は、制作年から順に並べられ、1階から3階、4階の展示スペースにより構成されています。1階では雑誌や家族の写真を撮影した写真をキャンパスに正確に写し取りフォーカスを取り入れた「フォトペインティング」の技法を用いた初期作品から始まり、キャンパスをグレイに塗りつぶした「グレイペインティング」やガラスと鏡などの抽象的な作品や古典的にはモチーフを用いた作品や家族の肖像画などの写実的な表現でありながら心理的な意味合いを持つ作品などリヒターの多彩な表現活動が紹介されています。
 




 
今回のリヒター独自の表現方法の中で突出しているのは、キャンパスに絵具をまき散らしたような「アブストラクト・ペインティング」でしょう。様々な色の絵具をキャンパスの中で自在に動き出す世界は、まさに抽象的なものそのものです。ひとつとして同じものがなく展示された抽象画の作品は未だ見ることのない小宇宙のように感じます。
 
現代美術家のなかで多彩な表現力と思想性を持った画家はゲルハルト・リヒター以外に存在しないと思います。多様な絵画表現を体験するだけでも必見の価値があり、豊田市美術館の展示に最もふさわしい現代の巨匠・ゲルハルト・リヒターの世界を体現してみてください。










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クマのプーさん展 名古屋市美術館

2022年11月24日 | 【美術鑑賞・イベント】


11月27日が会期終了となる本展、あいにくの雨にも関わらずたくさんの親子連れを中心にすばらしい賑わいです。
 
100年以上にわたり世界中で愛される絵本「クマのプーさん」の世界をくまなく紹介する展覧会は、会場に入るとプーさんAtoZと題された26のキーワードが文章や写真、オブジェなどに紹介、物語の舞台となったイングランド内部の映像やアメリカのエリック・カール美術館に所蔵されている原画100点が物語を紡ぐように展示され、ネイチャーでファンタスティックな世界は広がります。
 
特に僕が注目してみたのは100点の原画です。E.H.シェパードが描く挿絵は、物語の自然や登場人物のやさしさが育まてれたような繊細で美しい水彩画で、イギリス伝統の水彩画の特徴を感じる作品です。
 
今回の展覧会は、先に行われた立川での展覧会に続き、名古屋での展覧会のみとなります。11月27日が会期終了日、ジブリで賑わう名古屋の地で世代を超えて楽しむことができる「クマのプーさん」展をぜひ鑑賞してみてください。


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横山大観展 名都美術館

2022年11月18日 | 【美術鑑賞・イベント】


 
横山大観と言えば、富士の大観として名を馳せる近代日本画の巨匠として知られています。業界でも大観の富士は名品としてもっとも評価が高いですが、今回の展覧会は、横山大観の画業を様々な作品を通して振り返る回顧展でもあります。作品の構成は、横山大観記念館の名品を中心に全国各地から選りすぐりの作品を集め、日本画コレクションでは有数の個人美術館のひとつである当館の35周年記念する展覧会となっています。
 
今回訪れた日は、前期展示の最終日で仏画や歴史画などの作品も展示されており、東京国立近代美術館所蔵の白衣観音や美人画作品の阿やめなどあまりなじみのない作品を鑑賞でき個人的は収穫でした。後期展示では、パンフレットを飾る或る日の太平洋など戦前、戦中に描かれた富士山の作品や初期に描かれた花鳥画の数多く見受けられます。
 
横山大観と富士については戦中の国威掲揚の意味合いを強く、戦後には負のイメージが強くありますが、大観自身が水戸藩士の家に生まれ勤皇思想の中で育ったことに一因し当時の時代背景を考えられば至極当然のことではないかと感じます。また、違う側面で観れば、師匠である岡倉天心が「アジアはひとつである」と謳った不二一元の東洋的な思想の象徴として描かれていることから、平和的な一面もあると考えます。
 
ともあれ自然愛し、富士を愛し技術を磨く以上に人間としての素養を高める「唯だ何処までも心で描かねばならぬという一事を忘れてはならぬ。心よりて筆生ずだ」の言葉通り、どの作品にも巨匠の気概を感じることができる回顧展であると感じます。


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河鍋暁翠展 一宮市三岸節子記念美術館

2022年11月10日 | 【美術鑑賞・イベント】

今回の美術展レビューは、一宮市三岸節子記念美術館で開催中の奇想の画家として知られる河鍋暁斎を父に持つ「河鍋暁翠展」です。

幕末から明治にかけて活躍した河鍋暁斎(きょうさい)は浮世絵師歌川国芳や狩野派に学びその独特な画風から北斎や若冲と並び奇想の画家として知られています。今回の展覧会は娘である暁翠(きょうすい)初の本格的な展覧会です。父から画業を学び内弟子として父の作品にも関わった暁翠、思えば北斎の娘の応為と似た境遇のように感じます。彼女の生涯を描き直木賞を受賞した澤田瞳子の「星落ちて、なお」では、彼女の波乱に満ちた生涯が伺い知れます。

今回の展覧会で作品を観るにつけ、父であり師匠でもあった暁斎から絵師として学び取る姿勢や画風や表現力に父に劣らない一面が伺い知れ、父とは違う女性ならではの表現も感じ取れました。作品は歴史画や古典、七福神などの縁起ものに、美人画、浮世絵やポスターと幅広い作品が並びますが、とりわけ七福神をお多福を題材にした個性的な作品や会場を飾る猫と遊ぶ二美人などは浮世絵の艶と日本画の流麗さを併せ持った豊かな表現力が光ります。

暁斎の陰に隠れ、女子美術学校初の女性教授となるも控えめな性格のためにあまり表に出ることのなかった暁翠、今回の展覧会を通して一人の女流画家として再評価されることを願ってやまないです。暁斎ありて暁翠あり、そして暁翠ありて改めて暁斎の凄さを知る展覧会でもありました。

 

※こちらの展覧会で紹介された作品も多数展示されています。参照:東京富士美術館「河鍋家伝来・河鍋暁斎記念美術館所蔵 暁斎・暁翠伝」


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まるごと馬場のぼる展 刈谷市美術館11月6日まで

2022年11月04日 | 【美術鑑賞・イベント】
 
昨日3日文化の日に漫画家であり11ひきのねこの生みの親、馬場のぼる展を観てきました。今回の展覧会は「まるごと馬場のぼる描いたつくった、楽しんだニャゴ!」と題して馬場のぼる先生の魅力がまるごと詰まった展覧会です。
午後3時に到着すると、いつもとは違う賑わいで入場待ちのご家族連れが10数組入口で待機、館内に入るとすごい賑わいで混雑してました。ちなみに、文化の日の入場無料かと思いきや通常通り入場料金を払って観覧されてます。
 
今回の展覧会の中心は、1967年の第1作誕生からシリーズ全6作のロングセラー絵本「11ひきのねこ」の原画や版下、アニメセルがなどの並ぶ展示室。絵本の世界を辿りながら足を運ぶ展覧会は、ここ刈谷市美術館の特色でもあります。絵本を通して親子のふれあいを大切に育んでいる美術館に敬意を表します。
 
次の展示室では、馬場のぼるの生い立ちから漫画家へのルーツとなる資料や作品、制作ノートなどがあり、戦中、戦後の歴史が克明に記されています。予科練生だった馬場のぼるが、除隊後幼少期に親しんだ漫画の世界に転身し、手塚治虫、福井栄一と共に児童漫画界の三羽カラスと呼ばれた歴史が垣間見れる展示は、漫画ファンにも楽しめる内容です。
 
2階の展示室では、児童漫画から大人漫画と幅広い活躍の作品がずらりと並びます。なかでも漫画家の絵本の会の仲間たちと旅の道中を俳句や川柳をモチーフに描いた作品は必見です。他にも仲間たちの描いた馬場のぼると題してやなせたかし、長新太、手塚治虫など戦後漫画の先駆者たちの作品は馬場の人柄と求心力を感します。
 
刈谷市美術館での巡回展を最後に終了となる本展、残り二日となりましたがせひ鑑賞してみてください。





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日本画の巨匠 前田青邨展 岐阜県美術館

2022年10月25日 | 【美術鑑賞・イベント】

本日の美術レビューは岐阜県美術館開館40周年を記念して開催中の近代日本画の巨匠として知られる「前田青邨展」です。

前田青邨は岐阜県中津川市出身の日本画家で、再興日本美術院の重鎮として長年活躍され文化勲章を受章するなど、弟子には平山郁夫がおり、日本画の巨匠として広く知られる画家です。今回の展覧会は岐阜県美術館開館40周年記念展として開催、青邨の代表作の早稲田大学・会津八一記念博物館所蔵の大作「羅馬使節」や重要文化財の「洞窟の頼朝」などの大作を含め100点以上の名品が一堂に介しています。

ここで、近代日本画について説明したいと思います。日本画と言うと水墨画や平安から江戸時代に亘る大和絵を想像される方も多いと思います。明治以降の近代日本画においては、そうした日本の古典絵画の伝統を踏まえながらも西洋絵画にも影響を受けながら新たな日本画を模索しています。

青邨と言えば大和絵に始まり多彩な歴史絵巻を描いた人物画の世界が有名です。そんな中で今回の目玉と言える「羅馬使節」は天正の遣欧少年使節団のヨーロッパ留学でルネサンスの壁画に触発された作品で、青を基調とした色彩と構図は西洋絵画の趣を強く感じます。また、線描を極力省き濃淡だけで描かれた魚や鳥の群れが描かれた作品は水墨画の技法を用いながらもどこかモダンな雰囲気が漂っていました。日本はもとより、中国、韓国、ヨーロッパなどの様々な美術に触れながら多彩な表現で独自の世界を描く青邨、老若男女を問わず広く親しみを感じ、日本画の可能性を感じると思います。

会期は11月13日まで、すでに後期展示がスタートしています。また、同時開催の「岐阜県美術館名品尽くし」も美術館を代表するルドンや山本芳翠など美術館を代表する名品がずらりと展示された見応え十分のコレクションですので、ぜひこの機会に訪れてみてはどうでしょう。


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碌山館 天逝の彫刻家・荻原守衛

2022年10月16日 | 【美術鑑賞・イベント】

JR穂高駅にほど近く線路沿いに佇むヨーロッパの田舎町に佇むような蔦の絡まる教会風の洋館。碌山館は30才で病により壮絶な死を遂げた近代彫刻の始祖とも言うべき荻原守衛(碌山)を称える美術館として1958年(昭和33年)に30万人に寄付と支援で生まれました。
 
日本における近代彫刻家と言えば、智恵子抄でも知られる詩人、画家でもあった高村光太郎を思い浮かべる方も多いかと思います。その光太郎と碌山の出会いは、印度式カレーやクリームパンの元祖として知られる新宿中村屋にありました。
 
新宿中村屋は、若き芸術家の集まる中村屋サロンとして、戸張弧雁、斎藤与里、中村彜などの大正期の芸術家を生み、その中心にいたのが荻原守衛でした。碌山館も以前は新宿中村屋にあり残された彫刻作品15点が故郷の地に収められました。
 
彼が信望したキリスト教にならい建てられたレンガつくりの教会風の建物の室内には淡いステンドグラスの丸窓から射す光の中で、碌山の彫刻作品が点在します。その短い生涯に中で2点が重要文化財に指定されおり、重厚かつ深遠な佇まいを感じます。また、碌山の壮絶な死を思うと命を削るような情熱が迸っているようです。
 
敷地内は、碌山の油彩、デッサンと資料室からなる杜江館、第一と第二展示棟では、碌山の友人である高村光太郎、戸張弧雁、中原悌二郎の彫刻作品と柳敬助、斎藤与里の油彩画、彼に関係する作家の企画展や特別展が開かれています。さらに地域の人々のボランティアによって建てられたグズベリーハウスは鑑賞後の寛ぎの場となっています。
 
幾多の人々の力の結集によって生まれた長き歴史を持つ碌山館、人々の碌山への思いが詰まった美術館にぜひ訪れてみてください。美術館の新しい発見が待っています。





碌山館は、クラウドファンディングにより募った改修費用で11月8から12月11日まで改修工事の予定だそうです。足場を組むため外観が観れない状況になるそうです。改修期間を避けて来館してみてはどうでしょう。


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鹿児島市立美術館名品展 松本市美術館

2022年10月14日 | 【美術鑑賞・イベント】


松本・安曇野アート旅、今回は松本市美術館で開催の鹿児島市立美術館名品展のレビューです。鹿児島市と松本市が文化・観光交流協定10年を記念して開催中の本展、僕にとって未知の美術館だった鹿児島美術館の名品展とあって楽しみに鑑賞しました。
 
それぞれの美術館のコレクションは、郷土の画家たちの作品を中心に収蔵されていますが、鹿児島美術館は黒田清輝、藤島武二、和田英作と近代洋画家を輩出、さらに東郷青児、海老原喜之助の現代洋画へと続く洋画コレクションの宝庫でした。
 
今回の展覧会でも、第1章で郷土ゆかりの画家たち作品がずらりと並びます。なかでも日本画から洋画に転じ木版画の世界にも優れた才能を発揮した橋口五葉の作品が美術館の中核として紹介されています。
第2章では黒田清輝が影響を受けたラファエル・コランに始まり、モネ、セザンヌの印象派、シュルレアリスムのダリ、キュビズムのブラック、カンジンスキー、マチスやルドンジム・ダイン、ステラなどのモダンアートと珠玉の洋画コレクションが披露されています。
そして第3章では、鹿児島名物の桜島をテーマに多種彩々の画家たちの桜島が並び、桜島の噴火のごとく芸術の噴き上がりを感じました。
 
薩摩藩主嶋津氏の居城跡に建つ鹿児島市立美術館、レンガ色に緑の冠を付けた桜島のような美術館にいつか訪れてみたいと感じた美術展でした。


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国際芸術祭あいち2022 総評

2022年09月26日 | 【美術鑑賞・イベント】
尾西エリア・塩田千春作品
 
 
2010年から3年ごとに開催されたあいちトリエンナーレが前回の「表現の不自由展」が契機となってか、今回から名称を変え「国際芸術祭あいち」となりました。負のイメージを払拭したい思いがあるかと思うのですが、僕はあいちトリエンナーレで良いと思ってます。
 
あいちトリエンナーレは、過去には芸術監督(総合プロジューサー)として芸術分野での監督が2010年、13年、16年と担ってきました。19年にジャーナリストの津田大介氏が監督になり良くも悪くも、あいちトリエンナーレを世間に広めました。しかしながら、表現の不自由展ひとつに矛先が向けられ、他の展示に目が向けられなかったことは個人的には残念でした。
 
そして今回の国際芸術祭あいち2022は、芸術監督に森美術館館長の片岡真実氏を迎えたことで、現代美術のイベントして美術ファンは注目したのではないでしょうか。僕は氏の起用が全般的は功を奏していたと感じています。また、荒川修作や河原温、塩田千春や奈良美智など日本を代表する新旧のアーチストが顔を揃えたことだけも、氏らしい演出を感じます。
 
また、愛知県美術館を核に一宮、尾西エリアと有松絞で有名な有松地区、製陶業と中部国際空港を構える常滑市の各エリアの展示の地域の特色を生かした展示となっており個性の際立つものでした。2025年の開催は、今回をモデルとして新たな歴史を刻んでほしいと思いますし、新しいエリアでの開催による地域一体となったイベントになってほしいと思います。アートが持つ社会的な貢献と意義を期待します。
 

愛知県美術館・ローマン・オンダックの作品


愛知県美術館・荒川修作作品

一宮エリア・奈良美智作品


 

有松エリアより




常滑エリアより


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ボテロ展 名古屋市美術館

2022年09月08日 | 【美術鑑賞・イベント】


先日の休日に、名古屋市美術館で開催中のボテロ展と名称を変え新たなスタートを切った国際芸術祭あいち2022にアート巡りをしてきましたのでレビューしていきます。
 
東京では大盛況だったボテロ展、フェルナンド・ボテロは南米コロンビアを代表する画家で彼が描く対象が丸くふくよかなのが特徴です。その作風は、どこか馴染みのあるもので親しみがあるのですが、彼の描く世界はどこか皮肉めいたユーモアを持っています。
 
例えば守護天使やキリスト、神父などの聖職者の姿にも独特なユーモアがあり、人間臭さがあります。また、色使いもメリハリがあり原色と中間色を融合させながら親しみのあるふくよかなりリテールを際立たせています。
 
また、作品のモデルとして何度も描かれた「モナ・リザ」はダヴィンチのモナ・リザを踏襲しながら描き本物では見逃しがちな風景やひじ掛け椅子などを細部にわたって描かれています。また、陰影や遠近を極力抑えながら無表情な人物の顔と対照的な動きが強く印象付けられています。
 
ふくよかな女性を描いた画家としてはルノアールが浮かびますが、ルノアールの場合は個人的な趣味があると言われています。ボテロの場合は、老若男女から静物、生き物にいたるまですべてが丸くふくよかです。ふくよかな魔法と題したタイトル通り、彼のマジックにより誰もが穏やかな気持ちになり忘れられないものとなるでしょう。
 
会期は9月25日まで。あなたも、ボテロマジックにかかってみませんか。


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ピカソひらめきの原点 佐川美術館

2022年08月24日 | 【美術鑑賞・イベント】
 
夏季休業期間を利用して、先日佐川美術館で開催中の「ピカソーひらめきの原点」を鑑賞してきました。
感染対策のため、ウエッブでのチケット予約をしたことでスムーズに入場できましたが、スマホでのQRコード入場が美術館でも普及していくと思います。
 
さて目的の展覧会は、イスラエル博物館所蔵のピカソ作品によるものです。ピカソはご存知の通りユダヤ人で平和主義者でもありました。また、セルフプロデュースにもたけており、その時代の最先端アートを意識しながら作風を変えたことでも知られます。実はピカソは、作風においては産みの親ではありませんが、時代のアートを嗅ぎ取り独自化する天才と言えます。
 
また、ピカソは若い頃からプレーボーイとしての資質を持っていて、まあ、あの時代の画家たちはプレーボーイばかりですが、何せピカソは生涯浮名を流し、出会い愛した女性から芸術へのインスピレーションを得て意欲的に作品をは発表し続けました。
 
今回の構成はイスラエル博物館が所蔵するグラフィック作品800点の中から、版画作品を中心に油彩画、ドローイングの選りすぐりの作品によりもので、初期の夜のキャバレーのパステル画に村の闘牛の油彩画、青の時代とバラ色の時代の銅版画作品にキュビズムの時代、原点回帰の新古典主義作品と続くピカソが愛した女性たちを通じてピカソ絵画の変遷の歴史を辿る「愛の作品史」となっています。
 
佐川美術館での展示は9月4日まで、その後11月11日より長崎県美術館の展示が巡回の最後となります。琵琶湖畔に建つ水面に囲まれた美しい美術館でピカソの愛を感じながら夏の暑さを忘れさせてくれる空間で癒されてみませんか。


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フェルメール 窓辺で手紙を読む女の私的考察

2022年07月23日 | 【美術鑑賞・イベント】

先日の大阪市立美術館で開催中のドレスデン国立古典絵画館所蔵のヨハネス・フェルメール作「窓辺で手紙を読む女」の作品解説や修復作業などを知って僕なりの考察をしてみました。


皆さん御存知の通り、この作品はX線検査によって1979年に壁に塗られた奥にキューピットの画中画が発見され2017年から塗られた壁の絵具を取り除く作業が行われ2019年当初の姿が蘇りました。そしてドレスデン国立古典絵画館に次いで世界で初めて日本でお披露目となりました。このことは、世界の中でもっともフェルメールファンが多いからではと勝手に推測してます。

僕もフェルメールファンの一人ですが、この絵画の不思議な巡り合いを知るにつけて、ますますこの作品が魅力的になりその経緯から想像力を掻き立てられました。

先ずは修復前の作品の塗られた壁についてですが、この作品の来歴から明らかになっています。この作品はザクセン選帝侯のコレクションであり当館に収蔵されることになるのですが、数多いコレクションの中の一枚に過ぎず、後に鑑定家によりレンブラント作とされました。後にピーテル・デ・ホーホ作となり、1860年に初期のフェルメール作として真贋されます。塗られた経緯は定かではないですが、おそらくレンブラントの作品としてはキューピットの存在に違和感があり、よりレンブラント作に近づけるために塗りふさいだのではないかと思います。

この作品のフェルメールの特徴として挙げられるのは、フェルメールがしばし用いるレンズの凹面のような光の表現と初期に観られる点描技法ですが、もうひとつ前面の右にある緑色のカーテンです。このカーテンはルプソワールと言われる絵画技法で作品に奥行きを与えるものですが、現実にはありえない存在です。このカーテンが僕の想像を掻き立てました。

これは僕の想像ですが、ベッドの上に散在する果実、キューピットにより踏みつけられた仮面と握り潰された蛇、そしてもの悲しげに見える女性が読む手紙、これらから想像できるのは道ならぬ恋に落ちた女性の情事の後に、置いていった別れの手紙のように思えます。そして、その物語は緑のカーテンにより静かに幕を閉じていくように感じます。

フェルメール作品にはそれぞれに想像を掻き立てる物語が潜んでいるのが魅力ですが、かつてない想像力は掻き立てられたのは、現在に技術により明かされた真実の姿に他なりません。むろん塗られたかつての作品にも魅力がありましたが、さらに奇跡ともいえる一枚によってフェルメールの魅力が深まりました。


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フェルメールと17世紀オランダ絵画展 大阪市立美術館

2022年07月22日 | 【美術鑑賞・イベント】

神戸、大阪アート旅のレビュー2件目は大阪市立美術館で開催中の「フェルメールと17世紀オランダ絵画展」です。

※動画は東京都美術館のものが見やすいので参照しています。

今回の展覧会は、ドイツのドレスデン国立古典絵画館所蔵作品展ですが、なんと言ってもヨハネス・フェルメールの「窓辺で手紙を読む女」でしょう。1979年のX線調査で壁面にキューピットの画中画が発見され、2019年からの修復プロジェクトによりキューピットが蘇った作品が世界初出展となります。日本でのコロナ禍により、一時は幻に終わると思えた巡回展覧会が開催されていることは美術ファンにとっては朗報です。

今回は、いつもはあまり使わない音声ガイドを聴きながら展覧会をゆっくり鑑賞しました。音声ガイドは主にオランダ絵画についての作品解説で知名度が低い作品について解説してますので今回は良かったなと思います。中でも「窓辺で手紙を読む女」の詳細な解説もあり、消されたキューピットについて私的考察も後日したいと思います。

展覧会は7章から構成されており、第1章では17世紀のザクセン選帝公爵たちが愛した作品で構成され当時の社会風俗を反映した風俗画が並びます。最初に登場するのはレンブラントの弟子ヘラルド・ダウの「老齢の教師」と「歯医者」石作りの窓からのぞく老齢な男、年老いたぎこちない男から当時の風刺が漂います。レンブラント弟子らしい光の演出も見事です。当時の生活が如実に伝わる風俗画は観ていても楽しいです。また、神戸での展覧会に続き印象に残った画家フランス・ファン・ミーリアスの「化粧をする若い女」出会えたのは幸運でした。

第2章はレンブラントとオランダ肖像画作品が、レンブラントの「若きサスキアの肖像」はレンブラントの妻の21才の頃のもので、その謎めいた微笑みがレンブラントの運命を握っているかのように感じます。第3章では当時のオランダでブームを呼んだ風景画の名品が、第4章では聖書の登場人物と市井のヤン・ステーンの宗教画に始まり農民などの生活が生き生きと描かれているのですが、火災で娘を亡くしてから火事の現場を描いた「村の夜の大火」は燃え盛る炎に対する憎しみと怒りを感じます。他にも静物画や当時流行した複製版画などが展示されています。

オランダ絵画の詳細がわかる魅力的な展覧会ですので、お近くの方はぜひ訪れてみてはどうでしょう。


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スコットランド国立美術館 美の巨匠たち展 神戸市立博物館

2022年07月21日 | 【美術鑑賞・イベント】

※スコットランド国立美術館を代表する「アメリカ側から見たナイアガラの滝」と「エディンバラの三美神」

先日、神戸と大阪にて東京からの巡回展となるスコットランド国立美術館展とドレスデン国立古典絵画館所蔵品展とリニューアルとなった藤田美術館に出かけてきましたので順次レビューしたいと思います。

今回の絵画レビューは神戸市立博物館で開催中の「スコットランド国立美術館 THE GREATS 美の巨匠たち」です。

ヨーロッパ屈指の規模を誇るスコットランド国立美術館、西洋美術史の歴史を飾る巨匠たちや地元スコットランドやイギリスの画家たちを作品も広く所蔵しています。今回はルネサンス、バロック、グランドツアーの時代、19世紀の開拓者の四つのパートで展開されています。ルネサンスでは、何といってもエル・グレコのサルバトール・ムンディの図像、最近謎が深まるダ・ヴィンチのそれが思い浮かびますが、こちらは紛れもなくエル・グレコ作、タッチやキリスト像の容姿もまさに特徴を如実に表しています。

会場に入ると先ずフレデリック・エドウイン・チャーチの「ナイアガラの滝」の大作がお出迎え、この作品はアメリカで財をなしたスコットランド人による寄贈で当館を象徴する作品だそうです。流れ落ちる滝の豪快な水しぶきと光により作られた虹、美しさと壮大さを感じる作品です。

バロックでは、若きベラスケスの傑作「卵を料理する老婆」が初来日、宮廷画家で知られるベラスケスは若い頃には厨房画をよく描いているそうで、この作品はなんと18才の作品です。料理をする老婆の顔に当たる光と少年の背中こし差し込む光が印象的で18才にして天才の片鱗を表してます。

また、僕が印象に残ったのはレンブラントの「ベッドの中の女性」悪魔によって夫を次々と亡くした彼女の見つめる先には8人目の夫が。夫の姿は描かれていませんが彼女の瞳の奥に観る人は何を感じるでしょうか。また、フランス・ファン・三―リアスのリュートを弾く女性は、フェルメール作品と比べても劣らない美しさがありました。

グランドツアーの時代では、17世紀から19世紀初頭にかけて貴族の裕福な子弟が卒業旅行にフランスやイタリアを訪れたことに由来し、ヨーロッパの美しい自然と優美な世界を描かれたフランソワ・ブーシュの作品が並びます。

19世紀の開拓者たちでは、美術史の変化とは異なり、伝統的な絵画が根差し、そこから生まれたエジンバラやイングランド画家たちの肖像画や風景が展示されています。なかでもジョン・エヴァレット・ミレイの「古来比類なき甘美な瞳」であの名作「オフィーリア」とは異なる強い眼差しに惹かれました。


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