宇宙航空MBAブログ

Aerospace MBA(フランス・トゥールーズ)が考える宇宙航空マネジメントの進化系ブログ

価格の心理学

2006年11月20日 | MBA
 
僕達がデパートやスーパーで買い物をするとき、自分では気づかないうちに商品の価格そのものから何らかの意味を読み取っていることがある。それをまとめて学問として体系化したのがPsychology of Princing(価格心理学)だ。

具体的な例を挙げると、お店に複数の異なる商品が異なる価格で並んでいたとする。そして、ある商品を見て“Too cheap”(安すぎる)と感じたとする。その瞬間、僕達はその商品のことを“Poor quality”(品質が良くない品物)と無意識のうちに思い込んでしまうのだ。

逆に、ある商品のことを“Too expensive”(高すぎる)と感じた場合、僕達はその商品を“Over quality”(品質が良すぎる商品)と思い込む傾向にある。価格心理学ではこれを“価格のInternal Referrence効果”と呼ぶのだそうだ。

その他にも、同じような商品に同じような価格がついていた場合、僕達はそれらの商品を“Similar quality”(同じような品質の商品)だと自分で勝手に判断してしてしまう傾向にあるらしい。

確かにその通りかもしれない。どちらのケースも、自分の過去の行動を振り返ってみると、妙に納得してしまうほど当たっている気がする。

MBAに必要なのはStrategy(戦略)やFinance(財務)の知識ばかりではない。それらのスキルを行使した結果まわりの人がどう反応するかについても、Psychology(心理学)という学問を通して学んでおかなければならないのだ。本当に“広く浅く”を絵に描いたようなMaster(修士)だと思う。
 

後向きに、そして前向きに

2006年11月19日 | MBA
 
今日はMBAの授業で教授が紹介してくれたある言葉を紹介したい。哲学者Kierkegaardの言葉だ。

“Life can only be understood backward, but it must be lived forward.”
(人生は振り返ることでしか理解できない。しかし、それでも前を向いて生きていかねばならない。)

僕達がEconomics(経済学)やHistory(歴史学)を学ぼうとする時、その根底にはよりよき明日に繋げていこうという強い信念がある。しかし、どんなにそれらを深く学習したとしても、結局のところそれは過去を理解したということにすぎない。僕達はどんなに努力しても未来を理解することなどできないのだ。

Kali教授が授業の最後にこの言葉を紹介してくれた意味を、僕はしっかりとかみ締めておきたいと思う。

(写真は地中海岸に沈む夕日。車で2時間かけて見に行ってきました。)
 

Dismal Science

2006年11月18日 | MBA
 
Economics(経済学)を学んだことがある人なら少しは聞いたことがあるかもしれないけど、Economicsという学問は別名Dismal Science(気が滅入ってしまう科学)と呼ばれている。その一番の理由は、普通の人間の感覚からすればかなり常識からはずれた思考様式を強いられることになるからだ。

例えば、Economicsの基本的な考え方に忠実に従うとするならば、あらゆる行動を起こすべきか否かの判断基準は、それによって得られる利益がそのために投資するリソースの価値を上回っているかどうかにかかっている。すなわち、その行動が自分の人生にとって意味があるかどうかとか、社会にとってどんな価値をもたらすかどうかなんて全く関係ない。

これはEconomicsで最も大切とされるMarginal Benefit(限界利益)とMarginal Cost(限界費用)の考え方からきている。Marginal Benefit(MB)とは、ある商品を今の数よりも一つだけ多く生産したときに、その多く生産した一つの商品によってもたらされる利益のことだ。それに対してMarginal Cost(MC)とは、ある商品を今の数よりももう一つ多く生産したときに、その新たな一つを生産するために必要となるコストのことだ。

このMarginal Benefit(MB)とMarginal Cost(MC)を比較して、MB>MCとなるときにのみ行動を起こすべし!というのが経済学における基本的考え方なのだ。極めて単純な原理に見えるが、実際にはそんなに簡単に価値の比較考量ができるほどこの世の中はシンプルな構造になっていない。

Economics(経済学)のもう一つの基本的な考え方に、Sunk Cost(沈んだ費用)というのがある。すでに支払ってしまって今から変えようのないコストは、これから未来に向けた意思決定をする際には除外して考えるべきというものだ。

この考え方に忠実に従い、さらに上記のMB>MCの考え方を考慮に入れれば、我々は環境問題の解決を考える際に、既にやってしまった環境汚染のことは全く考えなくてよいということになる。

すなわち、過去にどれだけ大気を汚してしまったかとか、どれだけ森林を伐採してしまったかとか、どれだけ地球を温暖化させてしまったかとかは重要ではなく、これから起こすアクションの利益がコストを上回っているかどうかだけを考えればよいということになるのだ。実に“これからの人間”にとって都合のよい考え方だ。そして危険な考え方だ。

Economist(エコノミスト)的に考えることは複雑な問題を解決する際にとても役に立つ。しかし、決して万能ではい。そのことだけはしっかり心に留めておこうと思う。

(写真はシャルル・ド・ゴール空港でシラク大統領が通る道。飛行機まで赤絨毯を敷く作業が続いていた。しかも手作業で。。。)
 

Price Discrimination

2006年11月17日 | MBA
 
Price Discrimination(PD:差別化された価格)に関して面白い話を聞いた。実際にブラジルであった清涼飲料水の販売に関する話だ。授業中に笑いが止まらなかった。きっと考えついた人はEconomics(経済学)に精通している上に、相当なクリエイティビティの持ち主だと僕は思う。

まずPDがどんなものかを一言で説明すると、“1種類の同質な製品やサービスを異なる価格で販売する”という価格戦略のことだ。

例えば、同じ飛行機の同じフライトの同じクラスの座席なのに自分と隣の人とでチケットの価格が異なっていたり、映画館で全く同じ映画を同じシートで同時に観るのに大人と学生とでチケット代金が異なったりと、現代社会にはPrice Discriminationが実に溢れている。

これはセグメント(顧客の性質の違いによる大括りな区分)によって需要に対する価格のElasticity(弾力性)が異なるためで、企業は全く同じ商品やサービスであっても、それらを異なる価格で市場に提供しようとする。

具体的には、価格により敏感な顧客層にはより低い価格で商品やサービスを提供し、価格にあまり敏感でない顧客層にはより高い価格で提供する。そうすることで顧客の購買意欲を最大化し、利益の最大化につなげるのだ。

ブラジルで実際にあった話に話を戻すと、ある清涼飲料水メーカーが真夏のビーチに自動販売機を設置しようとした。担当者は経済学を学んだことがあり、かつ、顧客の需要が天気によって変化することを知っていた。

すなわち、天気がよい晴れの日は気温が上がってより多くの人が清涼飲料水を買いにくるようになるが、逆に天気の悪い日は気温が下がって清涼飲料水を買いにくる人の数が少なくなるという事実を経験的に知っていたのだ。

そこで担当者は考えた。そうだ、自動販売機に温度センサーをつけよう!そして、温度の上昇割合に従って清涼飲料水の販売価格が自動的に上下するようにセットしよう!そうすれば、暑い日にはより高い価格で売れてより儲かり、寒い日にも価格が安くなるのでよりたくさんの人が買いに来てくれてより儲かるはずだ。こう考えて、彼は温度センサー付き販売価格変動型の自動販売機を開発し、海にほど近いビーチに試しに設置してみた。

さて結果はどうなったか。答えから言うと、清涼飲料水メーカーはすぐにこの自動販売機を撤去したらしい。それはなぜか?理由は、毎日変動する価格に顧客からのクレームが絶えなかったからだそうだ。

想像してみてほしい。ジュースを買おうと思って自動販売機の前まで行く。昨日は120円で買えたジュースが、なぜか今日は130円出さないと買えない。今日は昨日よりちょっとだけ暖かい気がするけど、温度センサーというカラクリがあることを当人は知らない。当然フラストレーションがたまる。顧客の満足度も下がる。中には怒り狂って自動販売機を壊しかけた客がいたというのもちょっと納得できる。

ということで、アイデアとしては最高に面白いのだけど、あまり理論に頼りすぎると痛い目を見るという話でした。

 

エコノミスト

2006年11月16日 | MBA
 
Economist(経済屋さん)とAccountant(会計屋さん)の違いは何かともし聞かれたら、皆さんは何と答えるだろうか?

理論重視のエコノミストに対して、実務重視のアカウンタントと答えるか。あるいは、未来を分析するエコノミストに対して、過去を分析するアカウンタントと答えるか。

答え方は無数にあってどれが正解というわけではないのだけれど、今日の授業でMurray教授から聞いた話はかなり興味深かった。

教授によれば、エコノミストとアカウンタントの違いはそれぞれのコストの認識の仕方にあるのだそうだ。すなわち、アカウンタントが“見える”(Exploit)ものだけをコストとして認識するのに対し、エコノミストは“見えない”(Inplicit)ものまでコストとして認識するらしい。

もっと具体的に言えば、もしある企業に使われていない保有資産(土地でもビルでもなんでもイメージしてください)があるとした場合、アカウンタントはその資産が現時点でどれだけの価値を有しているか(市場での売却価格や原価償却など)を評価して、その大きさをそのまま企業の資産として認識する。

それに対してエコノミストがこの資産を見た場合、まず考えるのは、この資産を使わなかったことによる“Opportunity Cost"(機会費用)はどれだけのものであったかということだ。言い換えれば、もしその資産を最大限有効に使える手段が他にあったとするならば、その手段によって得られたであろう価値は一体どれくらいのものになっていたかということなのだ。そしてエコノミストは、この価値の大きさをそのまま企業のLoss(損失)として認識する。

エコノミストとアカウンタント。マネージャーにはどちらのスキルも必要だと思う。しかし、考え方だけをとってみれば、僕はエコノミスト的に物事を見ていけるようになりたいと思う。

(写真は)
 

ヨーロッパの企業

2006年11月15日 | MBA
  
AerospaceMBAの授業は朝の9時30分に始まって夜19時まで続く。もちろん日によって長さは違うのだけど、朝から晩までぶっつづけで勉強するのは結構体力のいることだ。

アメリカのMBAであれば通常2年(正確には9ヶ月×2年なので合計18ヶ月)かけて学ぶ量を12ヶ月で凝縮して学ぼうというのだから、こんなにインテンシブになってしまうのも仕方のないことだ。逆に考えれば、短期間に集中して何かを吸収できる絶好の機会だともいえる。

今日の授業では、マクロ経済学の一環として、Foreign Direct Investment(FDI)について学んだ。国境を越えて行われる海外への直接投資のことで、その額は世界全体で9,160億米ドル(2005年)にも及ぶのだそうだ。

このFDIという経済活動、大きく分けると2種類のパターンがある。Greenfield Investment(GI)とMerger and Acquisition(M&A)だ。

Greenfield Investmentとは、投資先の国の企業に出資するという間接的な投資のスタイルではなく、自らその国で一からビジネスをスタートするような投資パターンを言い、その割合はFDI全体の25%を占める。

それに対してMerger & Acquisitionは、一から自分でビジネスをスタートするのではなく、その国に既に存在する企業を買収・合併することによってビジネスに参加するような投資パターンを言う。このM&Aが実際のFDIの75%を占めている。

面白いのは、国によってFDIの投資傾向が全く異なることだ。例えば、ドイツやフランス、イタリア、スペインなどの企業はGIを好むのに対して、イギリスやオランダ、スウェーデン、デンマークなどの企業はM&Aを好む。

なぜだろうか。ラテン系・ゲルマン系は農耕民族で、アングロサクソン系・ノルディック系は狩猟民族ということなのだろうか。

当たっていないこともないと思うけれど、そんな説明では経済学とは言えない。経済学的に説明すると、この違いは各国の企業が主に誰によって所有されている傾向が強いかから生まれている。

例えばドイツなどの国々では、大企業であっても未だに1つの家族が株式の大半を保有しているケースや銀行が企業の株式を大量に保有しているケースが多い。すなわち、これからの国の企業では、あまり外部からの影響を受けることなく安定的かつゆっくりと、長期的な戦略に基づいて企業を成長させていくことが可能なのだ。まずは種を撒くことから始めようとするのも納得できる。

それに対してイギリスなど(一番の好例はアメリカだと思う)の国々では、企業は不特定多数の株主によって保有されることが多く、結果として常に株式市場から迅速に企業価値を最大化することを求められる状況にある。そのため、多少のリスク(文化の違いや経営統合にかかる労力)を冒したとしても、迅速に外国でのビジネスをスタートアップできるM&Aはまさに最適の手段なのだ。

同じヨーロッパでもマクロな視点で見ればビジネススタイルに大きな違いが発見できるのだ。

(写真はパリのRenaultショールームで撮った一枚)
 

Opportunity Cost

2006年11月14日 | MBA
 
『Managerial Economics』(経営管理経済学)の授業がついにスタートした。今日は第1日目なので余裕を持って1時間前に学校に到着。車を駐車場に停めて教室に向かったら、すでに2人のクラスメートが先に来ていた。とりあえず最前列の席を確保することができた。

授業を担当するのはTracy Murray教授。アメリカのArkansas大学Waltonビジネススクールの教授で、ここESCでも教授として経営管理経済学を教えている。フランスが大好きな珍しいアメリカ人だ。車もシトロエンの2CVに乗っている。

Murray教授によれば、この授業の目的は僕達の“考え方を根本から変える”ことにあるのだそうだ。MBAの僕達に必要なのは、ノーベル経済学賞がとれるような高度な経済理論を発見することではなく、あくまでマネジャーとして経営課題に対し最適の解を導き出せることだからだ。

そのためにミクロ経済、マクロ経済、財政学、ゲーム理論などの科目を一通り学び、まずエコノミスト(経済学者)なら問題をどのような切り口で捉え、どのような手法で解決するかを学んでいく。

今日の授業で一番面白かったのはOpportunity Cost(機会費用)の話。マネージャーとして何か複数の選択肢の中から一つを選ぶ時、意思決定をする前にその選ばなかった選択肢の中で最高の価値を持つものは何かをしっかりと見極めなければならないということ。言い換えれば、自分がした選択肢は本当に選択肢の中で一番価値のあるものだったかどうかを事前にしっかり分析しなさいということだ。

当たり前といえば当たり前のことなのだけど、僕達はとかくこのOpportunity Costを無視しがちだ。その場の雰囲気や単なる好みだけで何かを選択し続けていると、最適な意思決定とはいえない何かを選んでしまうことにつながり、結果として利用可能な資源(ヒト、モノ、カネ等)が生み出す価値を最大化できないことになる。プロの経営者としてはそれは失格だ。

ひょっとしたら、このOpportunity Costの考え方は人生にも当てはまるかもしれない。今自分がやっていることは、本当に自分が望む人生の価値を最大化しているだろうか。もしも今の仕事をやらないでいいと仮定したならば、自分が心の底から一番やりたいと思う別の仕事は一体何だろうか?その別の仕事に自分が見出す価値の大きさこそが、まさに人生の“Opportunity Cost”だ。

人生のOpportunity Costがあまりにも大きいという人は、ぜひ早めに軌道修正することをお勧めします。

(写真はパリのルーブル美術館の前で)
 

勉強の毎日

2006年11月13日 | MBA

ついにパリから帰ってきました。トゥールーズは暖かいです。(パリに比べてだけど)

昨日はトゥールーズ空港に着いたのが午後3時くらいで、IASキャンパスに戻って洗濯物(パリでの1週間分を含む)を済ませた後、冷蔵庫の中が空っぽになっている(パンもご飯もチーズもない!)のに気づいて、慌ててカルフールに食料を買い出しに行った。

すると驚いたことに、なぜかMBAのクラスメートが同じカルフールに10人以上いるのを発見。みんな同じ境遇ということなのか。お互い頑張って生きていこう!

そして昨日の夜に夕食を食べて以降、今現在フランス時間の日曜日の午後10時に至るまで、ぶっつづけで“Managerial Economics"(経営管理経済学)のリーディングをしている。睡眠時間と食事とシャワーとジョギングの時間を除いたすべての時間が勉強時間だ。たぶんしばらくの間はこんな感じの生活が続くと思う。覚悟はしていたので大丈夫だ。

とにかく、こんなにも集中して勉強できる環境にいられることに感謝したい。では、また経営管理経済学の勉強に戻ります。

(写真はパリのシャンゼリゼ通りで撮った一枚)

パリを去る日

2006年11月12日 | MBA
 
Paris Visit最終日のパリは朝から雨。この1週間ほとんど雨が降らなかったので、いつもとはまた違ったパリの風景を見ることができて嬉しい。晴れた日のパリは華やかだが、雨の日のパリはしっとりとした趣があってまたいい感じだ。

今日は特に訪問する予定の企業もなく、まもなくAir France便でトゥールーズへ戻る。今はパリ郊外にあるオルリー空港(国内線がメイン)のカフェテリアで搭乗する飛行機(どうやらエアバスA318のようだ)のBoarding Timeを待っているところだ。

先週の日曜日にパリに到着したのだけど、本当に朝から晩までかなりタイトなスケジュールで行動したと思う。AerospaceMBAをスタートするにあたって、まず最初に宇宙航空ビジネスの最前線を実際にこの目で見ておくことは必要不可欠な経験だった今は思う。

航空会社や航空機製造メーカーをはじめ、航空エンジンの製造メーカー、ロケットの製造メーカー、空港マネジメント会社に航空貨物のロジスティクス会社、さらにはフランス軍の調達機関や超エリート養成学校のエコールポリテクニクまで訪問することができた。改めてヨーロッパにおける宇宙航空ビジネスの裾野の広さをこの目で確かめられた一週間だった。

各企業への訪問をアレンジしてくれたUBIFrance(フランスのJETRO)はもちろん、快く僕達AerospaceMBAの訪問を歓迎してくれたフランスの宇宙航空関係企業の皆様に心から感謝したい。あっと言う間の充実した1週間だった。

Home Sweet Homeのトゥールーズ(もうそんな気持ちになってる)に戻ったら、少しだけゆっくり休んで、それから月曜日に始まる“Managerial Economics”(経営管理経済学)の授業の予習をしよう。読まなきゃいけない教科書がまだ100ページくらい残っている。

それでは今から飛行機に乗ります~!

(写真はパリの街角で撮った人形)
 

Air France

2006年11月11日 | 宇宙航空産業
 
パリ6日目。今日は日本でもおなじみのエールフランス社(Air France)を訪問した。

午前中はシャルル・ド・ゴール空港にある本社において、まずはエールフランス社の今後の中長期戦略について話を聞く。この日話をしてくれたのは、CEOオフィスのディレクターだ。

ヨーロッパの航空業界、特に旅客部門においては、既存の航空会社(エールフランス、British Airways、ルフトハンザ航空など)と新規参入の格安航空会社(Easy Jet、ライアンエアーなど)との間で激しい顧客獲得競争が行われている。エールフランス社としては、格安航空会社に対抗してコストを最大限にカットしつつも、ビジネス客を主要ターゲットとして利益を生む企業体質を作り出していく戦略らしい。(特に目新しい戦略ではない)

しかし、旅客の輸送というのは、航空ビジネスの中で儲かるようで実は一番儲からない領域のようだ。利益率だけを比較すると、旅客輸送ビジネスが平均3%~5%程度なのに対して、航空機の製造ビジネスが8%程度、航空機のリースビジネスに至っては15%にもなる。それでもなおこの旅客輸送ビジネスに新規参入が耐えないのは、やはりマーケット全体が急速に拡大しつつある(特にアジア)ことに加え、既存の航空会社が顧客の真のニーズを十分に満たしていないことにも一因があるだろう。

そして午後からはエアフランスカーゴを訪問した。ヨーロッパ最大の航空貨物会社のひとつだ。完全に自動化されたロジスティクスセンターを見学した後、ディレクターのから基本的なビジネスモデルについて話を聞いた。

面白かったのは、エアフランスカーゴの所有する貨物航空機の数が、エアバス社製とボーイング社製とでちょうど半々になっているということだ。リスクを分散するという理由のほかに、コスト性能(燃費やメンテナンス費)に関してボーイング777が極めて優れているためだそうだ。ビジネスの観点からは、やはりエアバス社にばかりこだわってはいられない、とディレクターは言っていた。

最後に『最新鋭機のエアバスA380を大量購入せよ!といった感じのフランス政府からの圧力はないのか?』という質問をしたのだけど、『全くない。我々は独立した民間企業だ。』との回答が返ってきた。

今日もまた航空ビジネスの奥の深さを発見した1日だったのでした。

(写真はエールフランス社の本社にあるモニュメント)