宇宙航空MBAブログ

Aerospace MBA(フランス・トゥールーズ)が考える宇宙航空マネジメントの進化系ブログ

ONERA

2006年10月21日 | 宇宙航空産業
 
今日はトゥールーズ郊外にあるONERA(Office National d'Études et de Recherches Aérospatiales)を訪問してきた。Wind Tunnel(風洞)で世界的にも有名な研究機関だ。一応、フランス国防省の管轄下にある組織で、元ドイツ軍の基地の跡地を利用して設立されたらしい。

念のため風洞(Wind Tunnel)がどんなものか知らない人のために説明すると、風洞とはその名のとおり“風のトンネル”だ。そのトンネルの中に航空機などの小さな模型を設置し、そこに人工的に発生させた高速の風を吹かせる。そうして機体の周りの空気の流れなどを検証し、機体のデザイン改良などに反映させていくのだ。模型の側を固定してそこに高速の風を当てるという、まさに航空機を実際に空で飛ばすのとは全く逆の発想だ。

そしてこのONERAには、小規模な実験用の小型風洞から世界最大の直径8mの風洞まで、実験の目的に合わせて大小様々な風洞が備わっている。マッハ20のスピードさえ再現できる極超音速風洞もある。

興味深いのは、ONERAはフランス国防省の管轄下にある研究機関にも関わらず、これらの風洞を使った試験が広く一般に開放され、民間航空機や自動車の開発などにも利用されていることだ。訪問したこの日もエアバスA380の模型を使った風洞試験が行われていた。実物はすでに空を飛んでいるのだけど、きっとまだシミュレーションしておきたい何かが残っているのだろう。

この日説明をしてくれたのは風洞技術エンジニアのJaque。彼はONERAのエンジニアであると同時に、実はAerospaceMBAでの僕のクラスメートでもある。とても気のいいフランス人だ。

そのJaqueが説明の中で何度も口にした言葉が“Client”(クライアント)だ。風洞設備はいくら性能が良くても存在するだけでは何の価値もない。何か新しいものを開発することに貢献してはじめて価値が出るのだと言っていた。

この世界最高水準の風洞を使って新しい何かを開発したいと希望するクライアントを、フランス国内だけでなく、世界各国から探して連れてこなければいけないのだそうだ。彼がMBAで学ぶことを決心した理由も、そのあたりにあるのかも知れない。

最後にJaqueに今まで風洞技術のエンジニアとして働いてきて一番嬉しかった瞬間を聞いてみた。彼の答えはこうだった。

『それはもちろんエアバスA380が初めて空を飛んだ日だよ!実はA380の開発にあたっては、ここONERAの風洞試験設備を使って何度も試験が行われて、そこで取得されたデータを使ってパイロット訓練用のフライトシミュレータが作られたんだ。A380初飛行の時のパイロット達ももちろんこのフライトシミュレータを使って訓練を受けたんだけど、そのパイロット達が初フライトの後にこう言ったらしいんだ。“あのシミュレータと全く一緒だった”と。風洞技術のエンジニアとしては、まさにそれ以上の喜びはなかったね。』

自分の仕事に誇りを持っている人は、本当にいつ見ても輝いている。

(写真はONERAのホームページより)
 

リストラクチャリング

2006年10月20日 | 宇宙航空産業
 
ついにエアバス社のリストラクチャリング(Restructuring)が始まった。以前に流れていたメディア情報のとおり、ドイツにある工場から雇用調整を開始するようだ。

今回リストラの対象となるのはドイツ工場で働く契約社員だそうだ。約7,000人の契約社員のうち、1,000人程度がエアバス社を去ることになるらしい。予想される今後の損害賠償額を考えれば、まだまだ序の口といったところだろう。

僕はフランスに来る前の数年間、日本でHuman Resource Mangement(人的資源管理)に関する仕事をしていたので、一人の社員の雇用非継続を決定し、実行することがどれほど重大で大変な仕事かを身をもって理解しているつもりだ。もちろん、日本とヨーロッパでは法律や手続き面でいろいろな違いがあるだろうが、それでも一人の人間の人生を大きく左右するような意思決定が極めて困難であることは、この世の中に普遍的な事実だと思っている。

正社員の雇用を確保するための措置とはいえ、正社員と共に一生懸命に働いてくれた契約社員にエアバスを去ることを促すのは、きっと経営者にとってつらい仕事だったに違いない。しかし、それでもあえて株主の利益最大化を第一に考え、企業価値を高めるために苦渋の決断を実行に移せるのが本物の企業経営者と言えるのだと思う。

MBA(Master of Business Administlation)の授業では、今回のエアバス社のリストラ問題と似たような具体的なケースを使って、幾度となく状況分析と意思決定の訓練を繰り返す。いくらケース上での仮想の意思決定であるとはいえ、今の僕に苦渋の決断をあえて実行に移すだけの強いメンタリティがあるだろうか。

知識や理論以上の何かを、まず僕自身が身に付けなければならないような気がしている。
 

恋愛トーク

2006年10月19日 | フランス
 
僕のフランス語の先生はFrederiqueという名前の女性だ。ここToulouseの近くにあるMontaubanの出身で、本当にフランス人形みたいに可愛い。でも残念ながら既婚者だ。

そしてこのFrederique、とにかくおしゃべりが大好き。女性だからという理由では説明がつかないくらいしゃべりまくる。フランス語の授業を忘れてトークに熱中してしまうこともしばしばだ。

内容は、買い物の話だったり、バカンスの話だったり、時には歴史や政治の話だったりすのだけど、僕はその国の文化を学ばずして語学を学ぶことはできないと思っているので、彼女の話はとても僕のためになっている。Merci, Frederique!

そして今日の彼女のおしゃべりのテーマは“恋愛”。彼女の考えるフランス人女性にとっての最高の恋愛とは、“Complique et Romantique”(複雑かつロマンティック)なのだそうだ。

男性から女性への告白も、誰にも知られないようにそっとさりげなく行うのがフレンチ女性の好むスタイルらしい。しかもエスプリの効いた、女性をロマンチックにさせる詩や言葉を伴うのがベストらしい。う~ん、ポエムか、難しい。。。

そして同じラテン系の国々でも、スペインやイタリアなどの男性の情熱的なスタイルは嫌いらしい。彼らは大っぴらだし強引すぎてフランス人女性の好みに合わないと言っていた。

『sérénade(セレナード)なんて歌われたら即効で窓を閉めてやるわ!』といったFrederiqueの言葉がとても印象的な一日でした。


※sérénade(セレナード):

セレナード(仏語:sérénade)又はセレナーデ(独語:Serenade)は音楽のジャンルの一つであるが、音楽用語ではない一般的な言葉としては、恋人や女性を称えるために演奏される楽曲、あるいはそのような情景のことを指して使う。ちなみに、イタリア語ではセレナータ(serenata)、英語ではセレネイド(serenade)となる。(Wikipediaより)

(写真はカルカッソンヌ城からの風景)
 
 

A380カンファレンス

2006年10月18日 | 宇宙航空産業
 
今日トゥールーズで開催された『エアバスA380カンファレンス』に参加してきた。エアバス社のテクニカルディレクター自らがまさに今話題のA380旅客機について語るとあって、前からぜひ参加したいと思っていた。

このカンファレンス、実を言うとIAS主催の研修プログラムではなく、フランス宇宙航空財団みたいな組織が数ヶ月に一度主催しているイベントだ。参加者も地元フランス人を想定しているので、資料もプレゼンも当然フランス語で行われる。僕にとってはかなりチャレンジングな2時間だった。

会場に入ってまず驚いたのが熱気。地元トゥールーズの人はここまでA380のことに興味があるのかというほどの超満員。というよりお立ち見状態。僕は早めに会場に到着したので運良く座れたのだけど、カンファレンスの開始10分前にはもうお立ち見状態だった。やはりA380のことは今一番の関心事なのだ。

今回講演をしてくれたのは、A380の元責任者で現在はエアバス社のテクニカルディレクターを務めるPatrick Tejedor氏。経歴だけを見ても、あの最高峰のグランゼコールのエコールポリテクニックを卒業した後、宇宙航空系のエリート校SUPAEROで学位を取得していて、超エリート中のエリートと言える。

申し訳ないのだけど、講演で彼が話した中身についてはこのブログで紹介することができない。僕のフランス語が未熟なのもあって、彼が話した情報が正確に解釈できているかどうか自信がないからだ。(でもあの熱気だけは伝えたくて今日のブログのネタにしました)

唯一自信をもって紹介できるのは、Tejedor氏自身の今回のA380納期遅延問題に対する見方について。最後に参加者が質問をしてそれに彼が答えた内容なのだけど、ここだけは正確に理解しておきたくて一緒に行ったフランス人に後で英語で通訳してもらったのだ。

フランス語→英語→日本語と翻訳が3重になっているのが少し心配なのだけど、Tejedor氏の見方によれば、一番の原因は巨大すぎるA380の製造を国際分散体制にしてしまったことだという。大きな部品を特殊な飛行機や船やトレーラーに載せて、さらに特殊なルートで、特殊なオペレーションの下に運んでこなければならない。少々ぼやきにも聞こえたのだけど、コストも手間も時間も想像以上にかかるのだと言っていた。

開発コストの分担やそれぞれが得意な技術を生かすという意味では、国際共同開発には大きなメリットがあると僕も思う。しかし、研究開発段階が終わってA380旅客機が完成し、量産段階に入ってまであえて国際分散体制にする必要が果たしてあったのだろうか。各国における雇用の創出に配慮しすぎたために、アメリカのボーイングに勝てる飛行機を作るというエアバス社の本来の目的を見失っていたのではないだろうか。

今後エアバス社の新CEO(最高経営責任者)がどんな戦略をとるか分からないが、ぜひともヨーロッパらしく、競争するために徹底的に協力する姿勢を見せてほしいと僕は思う。

(写真はA380の機内ファーストクラス。とにかく広いから何でもアリらしい。)
 

EPNER

2006年10月17日 | 宇宙航空産業
 
今日はフランスを代表するテストパイロットスクールEPNER(Ecole du Personnel Navigant d'Essais et de Reception)に関する講義を受けた。ここはだいぶ前に紹介したアメリカ海軍のF-18戦闘機パイロットのGregが通っている学校だ。1946年に設立され、現在までに2,000名もの卒業生を輩出した、まさにフランスが誇る名門テストパイロットスクールなのだ。

このEPNER、フランス国防省の管轄下にあるので軍関係の学校であることには間違いはないのだけれど、世界中にある他のテストパイロットスクールとは異なった特徴を持っている。それは、①海外にも門戸を開いていること、そして、②商業フライトのパイロットをも訓練していることだ。

通常、軍の管轄下にあるテストパイロットスクールというのは、軍隊の戦闘機乗りを訓練するために設立されるケースがほとんどだ。従って、トレーニングの対象もその国の軍隊に属するパイロットやエンジニアに限られることが多い。しかし、EPNERでは外国の軍隊に所属するパイロットまで訓練しているのだ。アメリカ海軍所属のGregがここで訓練を行っているのもそのためだ。

実際、これまでにEPNERを卒業した2,000名のうち、約400名が世界24カ国から来たパイロットやエンジニアだという。もちろんフランスの友好国の出身者に限られるのだろうけど、それでも軍関係の機密情報が漏れることはないのだろうかと少し心配になるくらいの門戸の広さだ。

さらに驚くのは、このEPNERでは商業フライトのパイロットやエンジニアのトレーニングをも行っているということだ。エアバスの旅客機やボーイングの旅客機の操縦さえもこのEPNERで習うことができる仕組みになっている。

ここまでくると、フランスという国の懐の広さに正直驚いてしまう。その背景にある真の目的は一体何なのだろうか。日本から来た僕に多額の教育投資をする姿勢といい、本当にミステリアスな国だ。

最後にこの名門校EPNERへの入学基準を講師に聞いてみた。①実務経験は10年以上、②軍隊であればCaptain(大尉)かFlight Commander以上であること、③パイロットであれば1,200時間以上の飛行経験を持つこと、などが大体の条件だそうだ。

う~ん、さすが名門テストパイロットスクール。入学への道は相当険しそうだ。

ちょうどよいタイミングなので、フランス語の勉強にと思って買っておいたDVD『トップガン』を今日はこの後観ようと思います。
  

Fete de la science

2006年10月16日 | フランス
 
先週から今週にかけて、トゥールーズの町ではFete de la science(科学祭り)なるものが開催されている。この周辺の研究機関や民間企業が、日頃の研究開発成果を皆に知ってもらうために施設を開放したり、簡単な発表会を行ったりするのだ。最終日の今日はCapitol(市内中心部)でオープン展示会が開催されていたので行ってみた。

僕の目当てはもちろん宇宙航空関係の展示だったのだけど、出展していた機関の中で特に目についたのはフランス宇宙機関のCNESぐらいだった。そのCNESでさえ展示スペースはテント2つ分しかなく、太ったおじさん2人がただ説明しているだけ。しかもとても面倒くさそうに。

確かに今日は日曜日でフランス人が働くべからざる日だけど、もう少し熱意を持って説明してくれよ~!と言いたくなる気持ちをぐっとこらえて、とりあえず全ての説明を聞き、ポスターを読んでおいた。もちろん、フランス語なのでかなり時間がかかったし、全部は理解できなかった。

しかし、せっかく子供達が興味津々な眼差しで人工衛星やロケットの展示に見入っているのに、説明者のあの態度は本当に残念だ。サービス精神に欠ける。日本語でよければ代わりに僕が説明してあげたかったくらいだ。(休日出勤には慣れている)

という感じで、本当は宇宙航空関係の展示についてレポートを書けたらと思って参加したのだけど、思った以上に“大人達”が働く気がなさそうだったので、気分を変えて学生の展示スペースを見学することにした。

こちらは研究機関や民間企業が展示しているスペース(=“大人達”)とは打って変わって熱気に満ち溢れていた。コレージュ(中学校)やリセ(高校)や大学の学生達が、研究成果を自慢げに町の人や観光客に説明しているのだ。とにかく自分達はこんなに頑張って調べたんだ!どうだ、すごいだろ!という気持ちが僕にも伝わってきて、これは本当に面白かった!

その中で一番僕の印象に残ったのは、あるリセ(高校)のEcology Carに関する研究発表だ。1リットルのガソリンで何km走れるかを競う大会があるのだけど、企業(シェル)の支援を受けながらその大会に向けて自分達で試作車を作るというチャレンジを発表したものだ。(写真参照)

この大会は世界的にも有名で、大学や企業レベルでも最高記録を目指して日夜研究開発が続けられている。頑張ってより上の大会に出場するのが夢です!と言っていた学生達の純粋な瞳がとても印象的だった。ぜひ頑張ってほしい。募金箱が置いてあったら10ユーロくらい寄付したかったくらいだ。

ということで、久々に夏休みの自由研究を思い出してしまった一日だったのでした。
 

語学の勉強方法

2006年10月15日 | 質問への回答
 
『どうすれば英語やフランス語が話せるようになりますか?』という質問がメールで送られてきたので、今日はそれについての回答。

フランス語に関しては僕も本格的に勉強し始めてまだ2ヶ月ちょっとなので、はっきり言って人にアドバイスできるようなレベルではない。でも、頑張ってなんとか英語を身に付けた経験を踏まえると、自信を持って言えることは、外国語を学ぶのに日本語を使うのはナンセンスだということだ。

すなわち、フランス語を学ぶのならフランス語で、英語を学ぶのなら英語で勉強しなければ、決して本物に近づくことはできない。日本の義務教育の英語が何年経ってもモノにならないのは、日本語を使って英語を学ぼうとしているからだと僕は感じている。

英語を使って英語を勉強するというのは、ただ英語圏の国に留学すればよいということではない。英語を使うあらゆる機会において、英語を使って考え、英語を使って書き、英語を使って話す努力をするのだ。

と言ってもそんなの最初からムリですっ!と言われそうなので、今すぐできるアドバイスを一つ。

英語を短期間に上達させたかったら、今すぐ家にある英和辞書を捨ててください。そして、英英辞書(あまりレベルの高くない、ペーパーバックの軽いやつがベスト)を本屋で買ってきて、可能ならば24時間携帯してください。

そして、何か英語の文字が目に入る度にその単語を英英辞書で引き、説明を読み、内容を覚えるのではなく、感覚として体に吸収させるようにします。決して覚えようとしないでください。覚えようとすると苦痛になって続けることが難しくなります。これを2~3ヶ月も続けていけば、そのうち何か英語で考えたり、話したりしなければならない時に、すっと言葉が英語で頭に浮かんでくるようになります。

短期間で英語を上達させたいと思っている人は、まず騙されたと思ってやってみてください。実際にトライしてみた人は結果報告も期待しています。

以上は僕が経験的に学んだ外国語の学習法なのだけど、これをメソッドとして確立して授業展開している機関が日本にもある。まだ東京(銀座と表参道)にしかないが、カプラン(Kaplan)というアメリカ系の英語学校だ。

どんなメソッドか知りたいという人は、カプランの日本校代表である石渡さんの特別セミナーが毎週のように開催されているのでぜひ参加してみてほしい。6,000円と体験トライアルにしてはちょっと高めだけど、朝から晩まで丸一日を使って“英語の学び方”を教えてくれるので、それだけの価値は十分にあると思う。

ちなみに僕もフランスに来る直前の2ヶ月間だけカプラン銀座校に通い、英語をブラッシュアップしておいた。何事もメンテナンスが大事ですから!

カプランの特別セミナーはこちら

僕のお勧めコースはコレ

P.S. 僕は決してカプランの回し者ではありません。
 

出張サービス

2006年10月14日 | フランス
 
日本人が海外に3ヶ月以上滞在する場合、基本的に滞在する国の大使館に在留届を提出しなければいけないことになっている。

僕もフランスに到着してすぐトゥールーズを管轄する在マルセイユ総領事館に在留届を提出したのだけど、今日そのマルセイユ総領事館から手紙が届いて、さらにその内容を見て驚いた。なんと、お堅いイメージのあるあの“総領事館”が、手軽で便利な“1日出張サービス”をしてくれるというのだ。

総領事館からの手紙によれば、わざわざマルセイユからトゥールーズまでやって来てくれる上に、以下に示す6つのサービスをやってくれるらしい。

 (1)在外選挙人名簿登録申請の受理
 (2)在留届の受理(住所変更を含む)
 (3)旅券の新規発給
 (4)各種証明等の発給、受理
 (5)婚姻届、出生届等、各種届出書の受理
 (6)困りごと相談等の受理

見てのとおり出張サービスの主な目的は各種届出や申請の受理だ。しかし、“婚姻届”まで出張して受理してくれるとはビックリだ。日本のお役所では有り得ない。ある意味で一生記念に残る婚姻届の出し方だと思う。

それより興味津々なのは(6)の“困りごと相談等”だ。一体どの範囲まで面倒を見てくれるのだろうか?もし『茶碗蒸しが食べたい!(僕の大好物BEST5)』と言ったら何か助けてくれるだろうか。それともやはり無視されるだろうか。

でも、「受理」と書いてあるからには、総領事館としてもちゃんと回答する義務を認識しているはずだ。ただ何かを受け取るだけの行為は、法律用語で「受領」と言うからだ。(行政法を学んだ人は分かるはず!)

とりあえず10月17日に会いに行ってみようと思います。

(写真は総領事館のあるマルセイユの風景)
 

コアモジュール

2006年10月13日 | MBA
 
MBA(Master of Business Administlation)の目的をあえて一言で表現すると、“経営を体系的に学ぶ”ということに尽きると僕は思っている。経営に関する課題は常に多様かつ複雑で、何か一つの分野の知識があれば解決できるといったものではない。だからこそ、特定の分野に特化したスペシャリストではなく、あらゆる状況に臨機応変に対応できるゼネラルマネージャーの存在が不可欠になってくるのだ。そしてそういった人材を育成するためにMBAはあると言ってもいい。

僕がMBAを取得するESC(Ecole de Superieure de Commerce de Toulouse)では、この“経営を体系的に学ぶ”という目的を達成するために、まず最初に“コアモジュール”と呼ばれるプログラムを受講することになっている。その名のとおり、あらゆる経営判断や事業分析を行うためのコア(核)となる知識を身に付けるためのプログラムだ。

このコアモジュール、以下のに示す6つの科目で構成されていて、まずはこの6科目を4ヶ月かけて集中的に学ぶことになる。

 ■Managerial Economics(経営管理経済学)
 ■Marketing and Sales(マーケティングと販売戦略)
 ■Strategy(経営戦略)
 ■Finance and Accounting(財務と会計)
 ■Human Resource Management(人的資源管理)
 ■Operation Management and Information System(オペレーション管理と情報システム)

昨年のMBA学生の話によれば、この最初の4ヶ月が最もハードで厳しい期間なのだそうだ。毎日の睡眠時間は2~3時間だったと言っていた人もいた。水を飲みたい(経営を学びたい)という者に対して、消防車の放水機を使って水を飲ませようとする(経営を学ばせようとする)のに等しい、というのが正直な感想らしい。とにかく短期間に集中して基礎を体に叩き込むのだ。僕もそれなりに覚悟はしておくつもりだ。

そして、4ヶ月かけて知識としての経営の基礎を身に付けた後、これを応用しながら様々な経営分析や戦略立案のトレーニング、そしてヨーロッパ企業でのインターンシップを行っていくというカリキュラムになっている。

コアモジュール以降のカリキュラムについてはまた今度紹介したいと思います。

(写真はMBAの授業が行われる校舎)
  

Money

2006年10月12日 | MBA
 
MBA(Master of Business Administlation)といえば、経営(business)
に必要な資源(ヒト、モノ、カネ、情報など)の管理(management)を学ぶ修士プログラムだ。その中でお金に関するマネジメントを学ぶために、ファイナンス(finance)やアカウンティング(accounting)といった科目が用意されている。

僕はこれまで営利企業で勤務した経験がない(アルバイトとしての勤務はある)ので、自分なりに独学でこれらの科目を理論として勉強している(本番に備えて予習!)のだけど、やはり時々現実感がなくて理解に苦労する時がある。

そんな時は元銀行勤めをしていたMBA仲間に話を聞くことにしているのだけど、今日彼から聞いた話はとても興味深かった。アメリカとヨーロッパとで、顧客に対する金融サービスの基本姿勢がどのように違うかという話だ。

彼の話によれば、もちろん例外はあるとした上で、アメリカの金融サービスは一般的に短期間における顧客の利益を最大化することを重視している。従って、短期的に利益の上がる金融商品を数多く開発し、それを不特定多数の顧客に対して大量に取り扱うことで手数料収入を稼ぐ、というのが一般的なアメリカ流の個人向け金融サービスの姿だそうだ。

それに対してヨーロッパの個人向け金融サービスにおいては、いかに長期間に渡って顧客の資産を安全に守っていくかに重きを置くのだそうだ。一族の資産をどうやって保全し、子孫へと受け継がせるのかがメインテーマという訳だ。従って、金融サービスとしても、インフレに備えて株式や不動産を保有資産に加えたり(現金資産だけでは価値変動のリスクが大きすぎるため)、予期せぬ災害に備えて保険に入ることを勧めたりするのだそうだ。

結果として、銀行と顧客との関係は、アメリカでは“お金”を媒介にした短期的関係となることが多いのに対して、ヨーロッパでは“信頼”を媒介にした長期的関係となることが多い。

実際、アメリカでは顧客がより利益の上がる金融商品を求めて銀行を頻繁に変えることも珍しくないのに対して、ヨーロッパでは、一族が関わる銀行が何十年、時には百年以上続くことも珍しくないのだそうだ。

このあたりの感覚がとてもヨーロッパ的だ。短期的視野で物事を考えるのではなく、長期的視野で物事を考えビジネスを展開していくヨーロッパの姿勢は、きっとこのあたりからきているのかもしれない。