弁当日記

ADACHIの行動記録です。 
青年海外協力隊で2006年4月からバングラデシュに2年間住んでました。

バングラデシュのニュース(2017/10/29) ◆ロヒンギャ難民につい

2017年10月29日 | バングラデシュのニュース
◆イベント情報◆
〇日本バングラデシュ協会 第21回行事のお知らせ 2017年11月4日(土)
 「57年前の東西パキスタンから受けた感動」
 https://goo.gl/z8FDsn
〇日本バングラデシュ協会 第22回行事のお知らせ 2017年11月11日(土)
「『エクマットラ』の渡辺大樹さんに聞く」
 https://goo.gl/4qw9cv
〇日本ベンガルフォーラム リサーチ部門懇話会1
 「シュンドルボン開発の歴史を繙く」 2017年11月11日(土)
 http://www.tufs.ac.jp/ts2/society/japanbengalforum/fevent.html
〇東京外国語大学 外語祭 ベンガル語劇『チャンパの7人兄弟と妹』
 2017年11月22日 10:00?10:50
 http://gaigosai.com/events/gogeki/bengal2/

■見出し(2017年10月29日) No2017-52
〇ロヒンギャがバングラデシュ人を斬殺、難民の大量流入で犯罪増加
〇ミャンマー政府、ロヒンギャの水田で収穫に着手
〇ロヒンギャ支援の日赤医療チーム さらなる支援訴え
〇米国務省、ミャンマーのロヒンギャ迫害は「民族浄化」と宣言を検討
〇米国務長官、ロヒンギャ迫害を懸念=ミャンマー軍総司令官と電話会談
〇ロヒンギャ難民が証言する虐殺の実態――MSF診療所にて
〇英仏、安保理にロヒンギャ決議案配布 中国は反発
〇ユニセフ、ミャンマーからの難民全員に、命を守る支援が届けられず
〇涙の川を渡って ロヒンギャの子供たち/上 迫る岸辺に不安
〇涙の川を渡って ロヒンギャの子供たち/中 亡き家族思う日々
〇涙の川を渡って ロヒンギャの子供たち/下 不明の父、待ちわびて
〇国連 ロヒンギャ問題でミャンマーに人権調査受け入れを
〇米政府高官 ロヒンギャ問題「最悪の残虐行為」
〇ロヒンギャ帰還 ミャンマーとバングラデシュ協力へ
〇米政府 ロヒンギャ人権侵害の関与者に制裁を検討
〇【飛び立つミャンマー】スーチー氏へのねじれた愛情、
 ロヒンギャへのナショナリズム問題
〇帰還条件、合意至らず バングラ・ミャンマーの内相が会談
〇ロヒンギャ支援に各国が390億円拠出へ
〇バングラ入りしたロヒンギャ難民、60万人超える 国連推計
〇日本は働き掛けを=ロヒンギャ帰還、政治力必要-赤十字国際委
〇【図解】ロヒンギャ難民数の推移
〇ロヒンギャ問題、軍がもたらした最速の難民危機  編集委員 飯野克彦
〇ロヒンギャ問題「ミャンマーは国際法違反」 国連幹部
〇ロヒンギャ難民、「帰還は1日100~150人」担当相
 迫害行為は否定

アメリカ政府は、ミャンマーの少数派のイスラム教徒、ロヒンギャの住民が大勢、
人権侵害を受けているとして、関与した者に制裁を科すことを検討していると明ら
かにし、ミャンマー政府に対して事態の収拾に取り組むよう強く促しました。
アメリカ国務省のナウアート報道官は23日に声明を出し、ミャンマー西部のラカ
イン州で、少数派のイスラム教徒、ロヒンギャの住民が大勢隣国への避難を余儀な
くされていることに重大な懸念を表明しました。
そのうえでナウアート報道官は「この残虐行為に関与した者や組織は責任を負わな
ければならない」と指摘して、住民への人権侵害に関与した人物に対してアメリカ
国内の資産の凍結や入国を禁止する制裁を科す国内法の適用などを検討しているこ
とを明らかにしました。
これは、ロヒンギャの人たちを迫害していると批判されている治安部隊の関係者な
どを念頭に置いていると見られます。
アメリカ政府はロヒンギャの問題でミャンマー政府に繰り返し懸念を表明してきま
したが、関係者への制裁の検討に踏み込んだのは今回が初めてです。
ただ声明は、ミャンマー政府がロヒンギャの人たちへの市民権の付与などに取り組
むのであれば支援する用意があるとも表明しており、事態の収拾に速やかに取り組
むよう強く促す狙いがあると見られます。



■【飛び立つミャンマー】スーチー氏へのねじれた愛情、
 ロヒンギャへのナショナリズム問題
 http://www.sankeibiz.jp/macro/news/171023/mcb1710232215021-n1.htm
 (SankeiBiz 2017年10月24日)

 根本敬・上智大学教授のビルマ考現学(29)

 ■スーチー氏へのねじれた愛情
 バングラデシュへのロヒンギャ難民の流出は、いまや60万人に達する勢いであ
る。ロヒンギャ人口の5割以上が難民と化している。国際社会は非難の集中砲火を
ミャンマー政府に浴びせているが、アウンサンスーチー国家顧問へのミャンマー国
民の支持にはいささかの揺れも見られない。それどころか支持は強まってさえいる。
だだ、その支持の実態は、国家顧問に対する国民の「ねじれた愛情」のように映る。

 スーチー氏はやる気
 国民の多くは「私たちの大切なアウンサンスーチーさんを国際社会がいじめてい
る」と受け止め、その心情をもとに、彼女を守ろうとしている。そこには同時に
「ロヒンギャは民族ではなく不法移民集団、出て行って当然」という排他的なナシ
ョナリズムが影を落としている。そのため、国家顧問がやる気を見せているロヒン
ギャ問題解決への取り組みがかえって阻害され、いっそうやりにくくなっている現
状がある。
 確認しておきたいことは、ロヒンギャ問題解決に向けたアウンサンスーチー国家
顧問の前向きな姿勢である。前回(9月15日付)も書いたが、国際社会はメディ
アを含め、この点を過小評価し、彼女を批判しすぎている。しかし、現実のミャン
マーにおいて、彼女ほど、この問題の解決にやる気を見せている政治指導者は見当
たらないことを見落としてはならない。
 憲法上の制約のため、軍と警察と国境問題に関する事項に指揮権を持てない彼女
は、それでもシビリアン・コントロール(文民統制)の及ぶ範囲を最大限に活用し
て、昨年8月、コフィ・アナン元国連事務総長を委員長に据えた第三者委員会を設
置し、ロヒンギャ問題解決に向けた調査にあたらせた。1年間の調査を経て、今年
8月24日に委員会の答申が出され、ロヒンギャの国内移動の自由の保障と、国籍
付与に向けた指針が示された。
 答申は従来のアウンサンスーチー氏の考え方と一致する。彼女はこの答申を活用
して、問題の解決に向けた取り組みを具体化させようと決意した。しかし、答申が
出された直後、アラカン・ロヒンギャ救世軍(ARSA)を自称する武装集団によ
る襲撃がはじまり、それに対する軍の過剰な封じ込めが発生、多大な被害を受けた
一般ロヒンギャ住民が大挙して国境を越え隣国バングラデシュへと脱出した。

 世論も軍と同じ見解
 ミャンマー政府軍(国軍)の態度は明確で、「ロヒンギャなる民族は存在しない。
彼らはバングラデシュからの不法移民集団だ。テロリズムまで起こし、もはや出て
行ってもらうしかない」というのが本音である。
 一方、ミャンマーの国内世論も、ロヒンギャ問題についてだけは軍と同じ見解に
立っている。国民の多くは長く続いた軍政期へのネガティブな記憶から、政治や経
済への国軍の関与を極度に嫌い、2015年11月の総選挙でアウンサンスーチー
氏率いる国民民主連盟(NLD)を圧勝させた。だが、ロヒンギャ問題については、
軍と全く同じ見方をしているのである。

 国民の思いの最大公約数は次にようにまとめられよう。
 「長期に軍政を率い国民の人権を抑圧した軍は信頼できない。だからアウンサン
スーチー国家顧問の政府に期待する。しかし、ロヒンギャについては、彼らは連邦
内の民族ではなく、ベンガル系の不法移民集団なのだから、テロ事件まで起こした
以上、出て行ってもらうしかない。この点だけは軍の対応に間違いはない」
 国家顧問としては、ただでさえ軍と警察を動かせないことで苦労しているなか、
国内世論が自分を支持しつつも「反ロヒンギャ」という排他的姿勢を有しているた
め、より複雑な対応を迫られている。
 国際社会は何よりもコフィ・アナン答申に沿って彼女がこの問題の解決に取り組
めるよう、バックアップする必要がある。それすらも険しい道のりであることは事
実だが、私たちは政治的に優れた知恵を出し合いながら、ロヒンギャの状況のいっ
そうの悪化を防ぎ、彼らが安心してミャンマーに戻り暮らすことができる方法を生
み出す義務があろう。



■帰還条件、合意至らず バングラ・ミャンマーの内相が会談
 https://www.nikkei.com/article/DGKKZO2266154024102017FF1000/
 (日本経済新聞 2017年10月25日)

 バングラデシュのカーン内相は24日、ミャンマーの首都ネピドーで同国のチョー・
スエ内相と会談し、イスラム系少数民族ロヒンギャの難民の帰還手続きなどを協議
した。ただ帰還条件など具体的な合意内容の発表には至らず、交渉は難航している
もようだ。
 難民帰還を巡る両国の閣僚級協議は、10月初旬にバングラデシュで開催されて以
来、今回が2回目。帰還手続きについての早期妥結も期待されたが、国境警備での
協力強化といった合意を発表するにとどまった。
 難民の帰還について、アウン・サン・スー・チー国家顧問は「前例があり、すぐ
にも開始できる」と述べていた。だがミャンマー側は、同国が持つ記録と照合し住
民だったと確認できることを条件に挙げた。受け入れも「1日100~150人」(ウィ
ン・ミャ・エー社会福祉・救済復興相)と、早期帰還を求めるバングラデシュの要
求と相いれなかったものとみられる。
 バングラデシュ政府関係者は会談後、日本経済新聞の取材に対し「1カ月以内に
両国で作業部会を設立し、帰還手続きについて検討する」と前回の閣僚級会議と同
じ内容に終始した。



■ロヒンギャ支援に各国が390億円拠出へ
 http://www3.nhk.or.jp/news/html/20171024/k10011195311000.html
 (NHK 2017年10月24日)

ミャンマーで起きている戦闘の影響で、隣国に避難している少数派のイスラム教徒、
ロヒンギャの人たちを支援するための会合が23日、スイスで開かれ、日本など各
国が合わせて390億円余りを拠出することを表明しました。
国連によりますと、ミャンマー西部のラカイン州では、少数派のイスラム教徒であ
るロヒンギャの武装勢力と、政府の治安部隊との戦闘の影響で、ことし8月からこ
れまでに60万人を超えるロヒンギャの人たちが隣国のバングラデシュに避難した
と見られています。
スイスのジュネーブでは23日、国連などが主催して、ロヒンギャの人たちを支援
するための会合が開かれました。
この中で、IOM=国際移住機関のスウィング事務局長は「この2か月近くの危機
は、早さや規模、範囲のどれを見ても人道上、前例のない非常事態だ」と指摘し、
各国に協力を呼びかけました。
会合では、合わせて35の国や機関が日本円にして合わせて390億円余りの拠出
を表明し、日本政府はことし1月から行っている緊急人道支援を18億円余りに拡
大したことを明らかにしました。
国連は、ロヒンギャの人々に食料や医薬品などを提供するため、来年2月までに日
本円にして490億円余りが必要だとしていて、引き続き支援を呼びかけるととも
に、ミャンマー政府に対しロヒンギャの人たちが安全に帰還できるよう対応を求め
ています。

避難先の状況は
国連によりますと、ミャンマーの隣国、バングラデシュには、ことし8月からこれ
までに60万人以上のロヒンギャの人たちが避難し、今も1日に数千人が逃れてき
ているということです。
多くの人たちは、簡素な木造の船で両国を隔てる川を渡っていますが、転覆事故も
相次ぎ、現地の警察によりますと、これまでに200人近くが死亡したと見られる
ということです。
国連やバングラデシュ政府は、逃れてきた人たちが滞在するためのテントの整備を
進めていますが、あまりにも多くの人たちが避難してきているため、整備が追いつ
かず、雨や風にさらされながら生活を送る人たちも少なくありません。
さらに食料品や医薬品も不足していることから栄養失調や下痢の症状を訴える子ど
もたちが相次ぎ、コレラなどの感染症の拡大も懸念されています。



■バングラ入りしたロヒンギャ難民、60万人超える 国連推計
 http://www.afpbb.com/articles/-/3147688?cx_position=16
 (AFP通信 2017年10月23日)

 国連(UN)は22日、ミャンマー西部ラカイン(Rakhine)州で8月に軍の作戦が始
まって以降、隣国バングラデシュへと避難したイスラム系少数民族ロヒンギャ
(Rohingya)の住民が60万人を超えたと発表した。国境の川沿いでは渡河の機会を
うかがってなお大勢が立ち往生しているとみられ、バングラデシュ当局はさらなる
大量流入に警戒を強めている。
 人道支援を指揮している国連の部門間調整グループ(ISCG)の報告書によると、
8月25日以降にラカイン州からバングラデシュに入ったロヒンギャ難民は推計で60
万3000人となった。この1週間だけで1万4000人以上が越境したことが確認された。
 一方、国境を流れるナフ(Naf)川が流れ込むベンガル湾(Bay of Bengal)で22
日に一部の魚を対象とした禁漁が解かれることから、バングラデシュ国境警備隊は
漁業従事者らが金もうけ目的で難民を船に乗せて密入国させようとする恐れがある
と懸念を示している。



■日本は働き掛けを=ロヒンギャ帰還、政治力必要-赤十字国際委
 http://www.afpbb.com/articles/-/3147944
 (AFP通信 2017年10月24日)

 来日している赤十字国際委員会(ICRC、本部ジュネーブ)のシュティルハルト事
業局長は24日、ミャンマー西部ラカイン州に住むイスラム系少数民族ロヒンギャが
迫害を受け隣国バングラデシュに逃れている問題で「日本はミャンマーの友好国な
ので、友人として話ができる。(帰還に向け)建設的な役割を果たせる」と訴えた。
帰還に非協力的なミャンマー政府に対する日本の働き掛けに期待を示した。
 東京都内で、時事通信の取材に語った。ICRCはバングラデシュだけでなくラカイ
ン州でも国際人道支援組織として唯一活動し、食料や水、医薬品の支援などを行っ
ている。
 シュティルハルト氏は「心身共に疲弊し、家族がばらばらになるなど絶望的な状
況で難民は逃れている」と現状を説明。一方で「物質的な窮乏よりも、将来の見通
しが立たないのが最も大変だ。移動の自由、医療、教育を保障し、通常の生活に戻
れるようにすることが重要だが、帰還には政治レベルの解決が必要だ」と訴えた。
 問題はミャンマーだけに限らず、今や欧米をはじめ世界的に自国中心の排他的風
潮が強まっていると警告した。しかし「どんなに人々が国内だけに目を向けたいと
思っても、難民といった課題は決して消えることはない」と強調。「一国だけでは
解決できず、右派やポピュリズム政党が政権に就いたとしても国際的な関心、関与
が必要だ」と国境をまたいだ連携の重要性を呼び掛けた。



■【図解】ロヒンギャ難民数の推移
 http://www.afpbb.com/articles/-/3147871
 (AFP通信 2017年10月24日)

 ミャンマー西部ラカイン(Rakhine)州から隣国バングラデシュへ避難したイス
ラム系少数民族ロヒンギャ(Rohingya)難民の数の推移を示した図。
 人道支援を指揮している国連(UN)の部門間調整グループ(ISCG)の報告書によ
ると、ロヒンギャの武装集団がミャンマーの治安施設を急襲した8月25日以降、ラ
カイン州からバングラデシュに入ったロヒンギャ難民は推計で60万3000人となった。



8月25日、ロヒンギャの武装集団が警察施設や軍事基地を一斉に急襲

国連発表(万人)
8/25
9/ 1 3.8
9/ 7 16.4
9/12 37.0
9/24 43.6
9/28 50.18
10/ 3 50.7
10/ 6 51.5
10/12 53.6
10/17 58.2
10/22 60.3



■ロヒンギャ問題、軍がもたらした最速の難民危機  編集委員 飯野克彦
 https://www.nikkei.com/article/DGXMZO22498350Q7A021C1000000/
 (日本経済新聞 2017年10月22日)

 ミャンマーの実質的な最高指導者であるアウン・サン・スー・チー氏は、イスラ
ム教徒の少数民族、ロヒンギャの問題で板ばさみに追い込まれている――。このコ
ラムでそう書いたのは昨年12月でした。あれから10カ月。事態はいよいよ危機的に
なっています。ミャンマー軍の迫害を逃れようと、隣国のバングラデシュに流入し
たロヒンギャ難民が、50万人を超えたというのです。

 ■報告書、読むに堪えない蛮行を列記
 足元の危機の発端は、ミャンマーの西部に位置するラカイン州の北部でことし8
月25日、警察や軍の施設およそ30カ所が一斉に襲撃を受けたこと、と伝えられまし
た。アラカン・ロヒンギャ救世軍(ARSA)を名のる武装勢力が関与を示唆する
声明を出し、これを受けて軍が大々的な掃討作戦に乗りだしたのです。この掃討作
戦が荒っぽいものでした。当局が規制しているため現地からのナマの情報は多くな
いのですが、バングラデシュに逃げのびてきた難民たちからの聞き取りによって、
おぞましい実態が浮かび上がってきています。
 ロヒンギャの村民たちに無差別に発砲し、子どもや女性、高齢者もふくめ罪のな
い人たちを傷つけたり殺害したりした。村民たちの家屋を焼き払った。そのうえで、
他の村落で「すぐに家を出て行かないと同じような目にあうぞ」と脅迫したことも
あった。こうした迫害には、しばしばラカイン州の仏教徒たちが同行した。法的な
手続きなしに処刑を実施したりレイプなど性暴力をふるったりした。拷問や宗教施
設の破壊などもおこなった。家屋だけでなく、農地、たくわえた食糧、その倉庫、
樹木まで破壊した……。
 国連人権高等弁務官事務所(OHCHR)が10月11日に発表した報告は、読むに
堪えない治安部隊の蛮行を列挙しています。その根拠となった難民たちの証言には、
裏付けもあります。国際的な人権団体のヒューマン・ライツ・ウォッチ(HRW)
は衛星写真をもとに、ラカイン州の北部では8月25日以来228の集落が部分的また
は完全に焼失し、数万棟の建物が火災にあった、との報告を10月17日に発表しまし
た。
 同じ日に国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)は、8月25日以降にラカイン
州からバングラデシュ南東部のコックスバザールに流入した難民は58万2000人に達
した、と明らかにしました。難民の規模が2カ月足らずのうちに60万人ちかくに膨
れあがったのです。これは世界的にみても異例です。かつてUNHCRのトップを
つとめたこともあるアントニオ・グテレス国連事務総長が9月28日に「世界で最も
急速に深刻化した難民危機」と語ったのは、決して誇張ではありません。
 国連によれば、8月25日より前の段階でバングラデシュには20万を超えるロヒン
ギャ難民がいました。今回の危機によって事態はとてつもなく深刻になったといえ
るでしょう。ロヒンギャの人たちの正確な人口はわからないのですが、おおむね80
万~100万人と推測されています。とすれば、ミャンマーで暮らしていたロヒンギ
ャのうち、少なくとも8割ちかい人々が難民になったと考えられるわけです。「民
族浄化(エスニック・クレンジング)だ」といった声が上がっているのは当然です。
 これほど深刻な人道危機がなぜ起きているのか。ノーベル平和賞の受賞者でもあ
るスー・チー氏がなぜ有効な対策を打ち出していないのか。そんな疑問が浮かんで
きます。民族間のあつれきや宗教対立、あるいは軍の政治力といった構造的な要因
については10カ月前にここで取り上げましたので、くり返しません。今回しっかり
と考えてみる必要を感じるのは、ミャンマー軍の思惑です。

 ■「民族浄化の教科書的な例」
 軍によるロヒンギャ迫害には長い歴史がありますが、近年になって「実質的な民
族浄化を目指しているのではないか」との見方が国際的に浮上していました。これ
に対し、コフィ・アナン元国連事務総長をトップとするミャンマー政府の諮問委員
会はことし8月24日、1年におよんだ調査の結論として「民族浄化と呼ぶべき事態
は起きていない」との認識を示しました。いうまでもなく、アナン委員会の報告は
8月25日よりも前の情勢を踏まえていたわけで、その後の事態の展開は委員会の結
論を裏切ったといえます。日付に目をこらすと、軍はアナン委員会の報告が出るの
を待って掃討作戦に踏み切ったようにもみえます。



■ロヒンギャ問題「ミャンマーは国際法違反」 国連幹部
 https://www.nikkei.com/article/DGXMZO22470060Z11C17A0FF2000/
 (日本経済新聞 2017年10月19日)

 国連のアダマ・ディエン事務総長特別顧問らは19日、ミャンマーのイスラム系少
数民族ロヒンギャが迫害を受けているとされる問題について、「ミャンマー政府は
国際法が求める義務を履行せず、ロヒンギャ住民を保護する基本的な責任を果たし
ていない」と非難する声明を発表した。ミャンマー政府に迫害行為の存在を認めて
停止するよう要求。国際社会にも「(ロヒンギャを保護する)責任を果たせていな
い」と指摘した。
 17日までミャンマーを訪問したフェルトマン国連事務次長(政治局長)は、アウ
ン・サン・スー・チー国家顧問と会談し、隣国バングラデシュに逃れた60万人近い
ロヒンギャ難民の帰還と、人道支援機関による立ち入りを認めるよう求めた。
 国際社会においては内政不干渉が原則だ。ただし、主権国家が自国住民を迫害す
る場合は、国際社会が人々を「保護する責任」を負い、強制介入できるとされる。
「保護する責任」は、1990年代にアフリカやユーゴスラビアで発生した民族虐殺を
教訓に国連の場で提唱された原則。国際社会が人道危機に際して武力行使を含めて
主権国家にも介入できることを示した。



■ロヒンギャ難民、「帰還は1日100~150人」担当相
 迫害行為は否定
 https://www.nikkei.com/article/DGXMZO22357950X11C17A0FF1000/
 (日本経済新聞 2017年10月17日)

 ミャンマーのウィン・ミャ・エー社会福祉・救済復興相はこのほど日本経済新聞
の取材に応じた。隣国バングラデシュに難民として逃れたイスラム系少数民族ロヒ
ンギャの帰還について、受け入れ可能な人数は「1日あたり100~150人だ」と言及。
難民は60万人近くに上るが、全員の帰還には単純計算で10年以上かかる見通しを示
した。帰還の遅れは、国際社会の非難を再び招きそうだ。
 ウィン・ミャ・エー氏は難民帰還を所管する閣僚。ロヒンギャ問題の解決に向け、
アナン元国連事務総長率いる政府の諮問委員会が8月末にまとめた勧告を実行する
責任者でもある。
 帰還について今月下旬にバングラデシュ政府と協議し、合意に至れば11月から難
民受け入れを始めるとの見通しを示した。村を焼かれた住民には「元の居住地や耕
作地から遠くない所に政府が家を提供する」と述べた。
 政府はミャンマー領内に住む住民だったことの確認を帰還条件とするが、多くの
難民は証明書類を持っていないとみられる。ウィン・ミャ・エー氏は仮に証明書類
がなくても「申告した名前や住所がミャンマー側の住民記録と一致すれば帰還を認
める」と説明した。
 だが、難民帰還は予断を許さない。ウィン・ミャ・エー氏は難民の全体数を「40
万~50万人とされるが正確な数字は分からない」としたうえで「過去の(難民帰還
の)経験からして1日に受け入れられるのは100~150人で、相当の時間が要る」と
した。
 アウン・サン・スー・チー国家顧問が先月19日の演説で難民の早期帰還を表明し
て以降も難民は増えている。スー・チー氏は帰還難民の安全確保を約束したが、難
民側は治安部隊が村への放火や住民殺傷を主導したとして「ミャンマーに戻りたく
ない」という人が大半だ。
 国軍など治安部隊への疑念払拭に向けた政府の動きは鈍い。ウィン・ミャ・エー
氏は、掃討作戦中の過剰な武力行使の可能性について「事実なら法律に基づき処分
する」と述べた一方、調査するのは国軍の影響下にある「国防省や内務省だ」と言
明した。そもそも政府は治安部隊による意図的な迫害行為は「全くない」(ウィン・
ミャ・エー氏)と否定する立場を崩していない。
 仏教徒など多数派の間ではロヒンギャの帰還自体に反発する雰囲気が根強い。ス
ー・チー氏は円滑な難民帰還に向け「国際社会の意見に耳を傾けるべきだ」と国民
に呼びかけたうえで、市民社会や企業を巻き込みロヒンギャ難民の帰還や人道支援
を進める組織創設を表明した。国内外でロヒンギャ問題の事態の改善に動いている
が、一筋縄では進みそうにない。
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