弁当日記

ADACHIの行動記録です。 
青年海外協力隊で2006年4月からバングラデシュに2年間住んでました。

バングラデシュのニュース(2024/3/24) その3

2024年03月25日 | バングラデシュのニュース

■見出し(2024年3月24日) No2024-7
〇【巨人】元選手の球団職員がバングラデシュで野球指導 用具寄付、
 ストリートチルドレンとも交流
〇1日目:人口密度に驚き!親日の国バングラデシュ
〇2日目:バングラデシュ代表指導開始!
〇3日目:クリケット体験とエクマットラアカデミー訪問
〇4日目:涙の別れ、大渋滞、クラクションの嵐 
〇<プレスリリース>非感染性疾患対策に関わるバングラデシュ保健省関係者ら10名が、
 広島県呉市、千葉県船橋市を訪問 | 
〇国連、ロヒンギャ支援の強化要請 バングラデシュに退避


■1日目:人口密度に驚き!親日の国バングラデシュ
 https://www.giants.jp/column/bangladesh2024/bangladesh1/
 (読売ジャイアンツ(巨人軍)公式サイト 2024年3月11日)

 国際協力機構(JICA)と読売巨人軍との連携協力協定に基づく海外野球振興の一環で、ジ
ャイアンツアカデミーコーチの成瀬功亮、北之園隆生の2名がバングラデシュでの野球指導
のため3月4日から10日までの日程で現地に派遣されました。
 昨年就航した直行便により日本との距離が一気に縮まったバングラデシュの首都ダッカま
では8時間のフライト。世界一の人口密度を誇る都市だけあって、ダッカの国際空港を降り
ると道路を埋め尽くす車両の数、人の数に、早速一行は圧倒されていました。
 「常にクラクションの嵐(笑)。人生でこんなにクラクションを聞くのは初めて! 『ゆず
る』概念はないようで、気を抜くとすぐに車やバイクが横から入ってくる。車間距離はゼロ
で、今にも追突事故が起きそうな中の移動にはハラハラドキドキでした」と北之園。それで
もこの国で20年にわたり生活する、バングラデシュ野球ナショナルチームの渡辺大樹監督は
意に介さず。「これがバングラデシュでの日常」だそうです。

 この日は在バングラデシュ日本大使館公邸の食事会にご招待いただきました。
 岩間公典大使のほか、現地日本人会会長、野球ナショナルチームの監督、コーチとともに
、タイ人シェフの作る日本、タイ、バングラデシュの食を組み合わせたオリジナルメニュー
のコースをいただきました。タイ人シェフは日本の名店の指導を受け、懐石料理を作れる技
術を身につけているとのこと。ロブスター並みの大きな地元産エビを使ったトムヤムクンス
ープや、グリーンカレーのつけ麺風そうめん、わさび醤油でいただくベンガルビーフのステ
ーキなど、この場でしか味わえない料理を堪能しました♪

 岩間大使からはバングラデシュでの日本の関わりをお聞きしました。現在建設が進む新空
港は、JICA協力のもと日本企業がバングラデシュの人々に建設技術を教えながら、地元の素
材を使用して建設を進めています。ただ受注を取り建設してあげるのではなく、その後の発
展に繋がるように現地の人々に技術を伝えて残していく、その考え方が親日という関係性を
作っている一因とのことでした。

 国内での野球の認知度は低く、クリケットが一番人気のスポーツです。野球に似たスポー
ツですが、投手は肘を15度以上曲げてはいけないというルールがあるため、野球ナショナル
チームの選手にもクリケット投げになってしまう選手もいるとのこと。明日からの指導でで
きるだけ多くのものを吸収してもらいたいと思います!

 

■2日目:バングラデシュ代表指導開始!
 https://www.giants.jp/column/bangladesh2024/bangladesh2/
 (読売ジャイアンツ(巨人軍)公式サイト 2024年3月13日)

 バングラデシュの朝は鳥のさえずりと、野良犬の鳴き声で目覚めました。人口が多く、鉄
道が一部にしか通っていないため、朝から道路の渋滞が続きます。自動車のほか、オートバ
イ、三輪バイクのタクシー、「リキシャ」と呼ばれる三輪自転車タクシーで大混雑です。ま
た、なんと、国内には信号が1個のみ!我先にと交差点に向かうため、いたるところで「詰
まり」が発生していました。運転は急発進、急ブレーキが当たり前なので、すぐに車酔いし
てしまいそうです…。

 2日目はいよいよナショナルチームの練習に参加です。
 バングラデシュ野球代表チームは警察官が中心で構成され、ダッカ首都警察の駐屯地が活
動場所のひとつになっています。警察官選手は仕事として野球の練習をし、駐屯地内の寮で
集団生活をしているのだそう。監督、コーチはバングラデシュ在住の日本人で、監督の渡辺
大樹さんは大学卒業後から現地でストリートチルドレンの支援活動などをしている方です。
渡辺監督の活動については次回以降で詳しくご紹介できればと思います。

初回は29名の選手が練習に参加して、成瀬功亮、北之園隆生の2コーチから指導を受けまし
た。
 まずは、キャッチボールから。上半身の使い方や、パワーポジションの確認、クイックス
ローの練習をしました。「エグ(いち)、ドゥイ(に)、ティン(さん)」という母国語の
ベンガル語でタイミングを取りながら投球の基本動作を確認しました。

 次は守備です。最初に捕球姿勢の確認をし、捕球体勢のまま2分間キープします。1分ほど
たつと顔をゆがめたり、声をあげたりする選手たちでしたが、なんとか2分耐えきるとグラ
ウンド上に倒れ込んでいました。その後はノックでゴロ捕球の練習をし、腰を低く落とせて
いるかを確認しました。

 続いて投手と野手に分かれたメニューです。
 練習場が平らなため、投球練習は、マウンドの傾斜替わりになる器具を置いて行いました
。国際大会に出場した際に、マウンドに慣れていないバングラデシュの投手陣は対応できず
にいたそうです。傾斜を使いながら投球フォーム、体重移動などを成瀬コーチがチェックし
ます。1か所しか場所が取れないため「次は俺の番だ!」と競うように投げていく選手たち
でした。

 野手陣は外野ノックで、捕球のタイミングやバックホームの中継練習などをしました。練
習場は雑草が生えデコボコしているためイレギュラーが多いそうです。選手たちはバウンド
に対してどうタイミングを合わせるかを、北之園コーチから指導を受けました。打球のバウ
ンドの数を数えながらタイミングを合わせることを教わると、「とても分かりやすい!」と
納得したようで、充実の練習となったようです。

 最後は、フリーバッティング、守備、ウォーキングスイングをローテーションで行い、グ
ラウンドでの練習は終了となりました。その後、全員で教わったことを振り返ります。「投
球で、今まで腰が上手に使えていなかったのが分かった」「外野守備でタイミングが合うよ
うになった」などと、自身の成果もそれぞれ発表しました。
 成瀬コーチは「キャッチボールで、ただ投げるのではなく各ポイントを考えながら続けて
欲しい」、北之園コーチは「基本のステップなどを練習してできるように。各自テーマを持
って取り組むように」と、あらためてアドバイスを送りました。
 また、日本から持ってきたキャッチャー用具やスパイクなどの使用済み用具を、バングラ
デシュ野球ソフトボール連盟に寄贈しました。

 気温30度を超える中、14時までの長い練習を終えると一旦解散。我々はダッカ首都警察の
トップ、警視副総監ほか警察の方々と一緒にランチをいただきました。
 バングラデシュの主食はお米ですが、日本よりもパラパラしていて粘り気がありません。
カレー味の鶏肉を煮込んだもの、牛肉の煮込みなどと一緒に食べます。現地の料理は辛みが
強いものが多く、青唐辛子が入ったものは特に辛いそうです。成瀬、北之園両コーチはヒー
ヒー言いながらも「美味しい!」と、たくさんお代わりをしてお腹を満たしました。食後に
はコーヒーをいただきましたが、バングラデシュでコーヒーを頼むとミルクと砂糖が入った
とても甘い、コーヒーの存在感が薄いものが出てきます。紅茶もミルクティーがよく出てく
るそうで、食事が辛い分、食後の飲み物はとても甘いので、口の中と胃が混乱していました
(笑)

 食後は寮の近くにあるジムでトレーニング指導をしました。
複数のトレーニング器具を使いながら、バッティングやピッチングに生かせるトレーニング
を指導。成瀬コーチは「動きの連動性や瞬発力が課題だと思うので、それぞれのトレーニン
グがどういう動きに活かされるものか考えながら取り組んでほしい」と選手たちに伝えまし
た。バングラデシュの人口密度の縮図のように、ジム内の密度も高く、熱気ある時間となり
ました!

 

■3日目:クリケット体験とエクマットラアカデミー訪問
 https://www.giants.jp/column/bangladesh2024/bagladesh3/
 (読売ジャイアンツ(巨人軍)公式サイト 2024年3月17日)

施設の規模にビックリ
 バングラデシュ滞在3日目は、ダッカから北へ車で約1時間の場所にあるBKSP(
Bangladesh Krira Shikkha Protisthan)を訪問しました。BKSPは国立のスポーツコンプレ
ックス(複合)施設で、トップレベルの競技者を育成しています。国内8都市中7都市に同施
設があり、今回訪問したのはBKSP本部で7施設中一番の規模なんだそうです。施設内には21
種目のスポーツ施設のほか、700人が生活できる寮、小学校から短大までの学習施設もあり
ます。この施設へは約1年前に、会田有志ファームディレクター、円谷英俊スカウトも訪問
しています。

 まずは、食堂で朝食をいただきながら、施設スタッフの方々にお話しをうかがいました。
朝食後は東京ドーム約63個分という広大な敷地内を車で移動しながら施設を見学。南アジア
で最も大きいという室内サッカー場や、1000人規模の食事会が開催できるコミュニティーセ
ンター、4面ずつあるクリケット場とサッカー場など、その規模感に一同は何度「すごい」
と口にしたことでしょうか(笑)。
 他都市にあるBKSPからも選手が短期合宿先として訪れ、本部施設でのトレーニングを受け
ることもあるそうで、プール付きのリゾートホテルのような短期選手向けの宿舎もありまし
た。

クリケットでも体験交流
 各施設を見学した後は、クリケット選手としてBKSPでトレーニングを積む小学6年生から
高校1年生までの子どもたち15人と交流しました。成瀬コーチ、北之園コーチが野球につい
てレクチャーすると、普段クリケットをプレーしているだけあり、初めて野球をやったとは
思えない剛速球を投げる子どもたちに、二人はたじたじです! 一方、投げるのは得意でも
グローブで捕球するのは難しいようで、つい強く投げ返すコーチ2人に「優しく投げて!」
とリクエストする子どもたちの姿がありました。
 野球体験のあと、今度は、子どもたちからクリケットを教えてもらいます。クリケットは
助走をつけてワンバウンドボールを投げるのですが、速球タイプと変化球タイプがあり、速
球派の選手は助走が長いとのこと。野球と違い肘を15度以上曲げてはいけないので、投手出
身の成瀬コーチも慣れるまで苦戦していました。バッターは360度どこにボールを飛ばして
もOKで、ボートを漕ぐオールのようなバットでワンバウンドしたボールを打ちます。野球の
バットとは違う重さとバランスで、最初は戸惑う北之園コーチでしたが、徐々になれ、ホー
ムラン級の打球を見せると拍手が起こりました。クリケットは2028年のロサンゼルスオリン
ピックで実施されますので、ぜひご注目いただけたらと思います。

 その後、施設長の方と面会して、BKSPでの野球競技追加についての可能性や、コロナ禍で
ストップしていた日本からの指導者派遣再開についてなどの情報交換をしました。最後にお
土産としてBKSPのキーホルダーをいただき、視察は終了しました。

トラブルあり、象ありの長距離移動
 BKSPを後にし、首都ダッカから北へ約170km離れたインドとの国境近く、マイメンシン県
ハルアガット郡にある、「エクマットラアカデミー」を目指します。元ストリートチルドレ
ンが生活していて、バングラデシュ野球代表チームの渡辺大樹監督が共同代表を務め、2018
年に開校された全寮制リーダー育成施設です。路上で暮らす子どもたちが、生まれた環境に
関わらずチャンスを掴み、自分自身の人生を謳歌できるように長期的な視野で人材育成をし
ています。渡辺さんはダッカで路上生活をする子ども本人、家族と向き合い、彼らの意志を
確認しながら、今の環境を変えるチャンスを掴みたいと願う子どもたちの支援を続けていま
す。

 1台のバンに乗り込み、約4時間の旅へ出発です。
 いくつかの街を通過しながら進み、行程の半分ほど進んだ時に立ち寄ったガソリンスタン
ドで事件は起こりました。順番を待つ列に並び始めましたが、30分たっても順番が回ってき
ません。外に出て行った運転手は戻ってきませんでしたが、日本から来た我々は「バングラ
デシュではガソリンを入れるのも渋滞するんだな~」くらいにしか思っていませんでした。
、。すると、助手席でうたた寝をしていた渡辺さんが目覚めて車を飛び出しました。怒号が
聞こえてきます。ポンプが弱まって補給ができなくなっていたそうで、その状況に何の手も
打たずに立ち話をしていた運転手と店員に、渡辺さんが喝を入れたのです!他の乗物からも
人が集まり、すごい人だかりの中でベンガル語の怒号がしばらく響いていました。

 その後、予定より遅れて約5時間の長旅の末、ハルアガットに到着しました。到着直前、
前方に象が1頭いるではありませんか! 反対車線の三輪バイクにちょっかいを出し、通せ
んぼうをして「どいてほしかったらお金を出せ」と要求していたようです。なんと強引な!
 この辺りはインドから野生の象の群れが入り込んでくるそうで、毎年、象を追い払おうと
した人が犠牲になっているとのこと。2日前にも犠牲者が出たそうで、出会った象は野生で
はありませんでしたが、象の怖さを感じた瞬間でもありました。

エクマットラアカデミーの子どもたちに野球指導
 現地の中学校校庭では、エクマットラアカデミーの子どもたちが我々の到着を待っていま
した。到着してすぐに、低学年と高学年に分かれて「打つ」と「投げる」の指導を行いまし
た。「打つ」を担当した北之園コーチは、アカデミーの校長先生に英単語をベンガル語に通
訳してもらいながら、バットの持ち方、振り方、流れを説明します。順番を決めたはずが、
いつの間にか「次は僕の番だ!」とバットの取り合いが始まりました。「これも文化や国民
性の違いですかね」と、日本では見慣れない光景にあたふたする北之園コーチでした。
 「投げる」指導は、成瀬コーチが渡辺さんに通訳をしてもらいながら担当しました。クリ
ケットを知っている子どもたちは投げるのが得意で、初めて触れるであろう硬式球を上手に
投げてキャッチボールを楽しんでいました。
 最後に、子どもたちだけでも楽しんでもらえるよう、「バックホームゲーム」という野球
のルールを簡易化したゲームを紹介して、代表者に体験してもらいました。ルールを理解す
るのに時間はかからず、すぐに楽しみ、作戦も考える子どもたち。終わるころには見学して
いた子どもたちも前のめりになりながら夢中になっていました。

 日が暮れるまで野球体験を楽しみ、アカデミーの施設に向かう時間になりました。約6キ
ロの道のりを、子どもたちが「一緒に走ろう!」と誘ってきます。北之園コーチは途中まで
子どもたちとランニングを楽しみながら向かいましたが、成瀬コーチはちゃっかり、低年齢
の子どもたちと三輪バイクに乗り込んでいました(笑)。
 アカデミーに着くと、シャワーを済ませ、食堂で夕食会です。日本から持ってきたジャイ
アンツのオレンジタオルを食事前に1枚ずつプレゼントし、ジャイアンツの応援では点数が
入ったときや勝利した時に振り回して喜ぶことを伝えました。バングラデシュ対スリランカ
のクリケットの試合がたまたまテレビ中継されていたので、食後に全員で観戦。すると、ホ
ームランが出たとき、勝利の瞬間に、早速、オレンジタオルを振り回してくれたこどもたち
でした♪
 食事中、コーチたちは子どもたちから質問攻めにあい、ベンガル語を教わりながら、食事
の時間を楽しみました。今日は我々も施設内に宿泊し、明日の朝礼に参加した後、車でダッ
カへ戻ります。
帰り道では何事もないよう願うばかりです…。

 

■4日目:涙の別れ、大渋滞、クラクションの嵐 
 https://www.giants.jp/column/bangladesh2024/bagladesh4/
 (読売ジャイアンツ(巨人軍)公式サイト 2024年3月21日)

アカデミーで涙の別れ
 エクマットラアカデミーでは早朝に子どもたちが体操をしていると聞き、朝6時30分に施
設内の広場へ向かいました。早朝から元気いっぱいの子どもたち! まずは整列をして、ス
キップや腕回しなどの体操をしました。
 前日の打つ練習中もそうだったように、特に年齢の小さい子どもたちは、「順番通りに並
ぶ、列を作る」といったことが苦手なようでしたが、徐々に「規律を守る」「周りを見て行
動する」という点が身に付くようになり、その光景を見た渡辺大樹さんは大喜びです。最初
は数人だった子どもたちも、いつの間にか20人くらいが集まり、朝の運動は賑やかに行われ
ました。

 その後、食堂で朝食をいただきました。
 もちろん、朝からカレーです(笑)。朝食後は毎朝行っているという朝礼に参加しました。
広場に整列をして、校長先生のお話や、音楽の先生が奏でる伴奏に合わせて国歌を歌ったり
しました。
 我々も子どもたちへメッセージを送ることになりました。

 成瀬コーチは「プロに入って、もっと先輩たちにいろいろ質問すればよかったと後悔して
います。一時の恥を気にせず、知らないことを恥じずに、人に聞いてみたりして、好きなこ
とを見つけて頑張ってください」とエールを送り、
 北之園コーチは「小さなことでも積み重ねていくことで大きな力になります。僕も野球を
始めて、コツコツ続けることでプロ野球選手になることができました。みんなも自分の中で
、続けることを見つけて、一日一日を大切に楽しく過ごしてください」と訴えました。

 最後に、子どもたちが少しずつ編んでくれたというミサンガをもらい、つけてくれました
。子どもたち一人ひとりと別れを惜しんでいると、思わず北之園コーチの目に涙が。路上生
活という過酷な環境から、何かを変えたいと自らの意志でアカデミーに入り、勉強を頑張る
子どもたちに、改めて心を動かされたのでした。
 朝礼後、3年生以上の子どもたちは地域の学校に向かい、2年生以下の子どもたちはアカ
デミー内で授業を受けます。各教室の様子や、図書館などの設備を見学すると、図書館には
日本の団体から寄付された見慣れた絵本や、ベンガル語訳がついた本もありました。
 施設の奥には畑もあり、カボチャやキュウリなど食事で出てきた野菜が子どもたちの手で
大切に育てられていました。他にも、渡辺さんの妻の麻恵さんが、女性の働く場所と収入を
支援する工房もあり、麻を使ったバッグなどを製作して販売をしているのだそうです。

インド入国!?国境へ
 隣国インドとの国境が近いとのことで、向かってみることにしました。
 地元の警察がバイクで先導してくれ、10分弱車で進むと国境にある税関所が見えてきまし
た。さらに先を進むと小屋が見え、国境警備隊が2名駐留していました。渡辺さんが「これ
はラッキーかもしれない!」と子どもの様にはしゃいでいるのを不思議に思っていると、何
やら国境警備隊の方々と話をしています。普段は国境の手前の不毛地帯に入ることはできな
いのですが、国境警備隊の方たちがいることで本当の国境までは入れることになりました!
 数10メートルの砂利道を進むと、急に塗装された道が出てきます。この境がバングラデシ
ュとインドの国境です。道の脇にはバングラデシュ側にベンガル語で「バングラデシュ」、
インド側に「IND」と彫られた石が置かれていて、これが国境の目印になっていました。国
境をまたぎ半分バングラデシュ、半分インドと遊ぶコーチたち(笑)。
 貴重な体験をさせていただいた国境警備隊にお礼を言って帰路につきました。

一触即発、想像以上の大渋滞!
 往路はちょっとしたトラブルもありながら5時間かかった道のりです。往路は何時間で到
着するでしょうか?
 午前11時過ぎに出発。順調かと思われたのですが、やはりところどころ小さな渋滞が出始
めます。嫌な予感しかしません…。途中、予定よりも遅れているため飲食店に立ち寄ると、
お店の人が厨房を見せてくれました。大きな鍋で炊いたご飯、煮込み料理などが並んでいま
す。みんなでビリヤニと、牛肉の入った炊き込みご飯のようなものをいただきます。安定し
た辛さです。 
 
 食事をしていると、1人の青年が黒ヤギを連れてお店にやってきました。ベンガル語で何
か話をしています。すると渡辺さんが「そのヤギはいくらするの?」と冗談で尋ねると、「
これは売り物じゃない!」と急いで逃げ出す青年でした(笑)。そのやり取りを笑ってみてい
るお店のおじさん。バングラデッシュの日常を垣間見た気がしました。

 ここからが長かった!
 最終的にダッカの滞在先に戻れたのは出発してから約8時間後でした。この日は木曜日で
、バングラデシュでは休日前、日本でいう「花金」です。都心部に近づくほど渋滞がひどく
なり、普段「プップ~」くらいのクラクションが「ブッブー!!」とイライラがこもってい
るのがよくわかります。少しでも前に動く列があると、そこに向かってバスからバイクまで
、様々な乗り物が我先にと突っ込んでいこうとするのです。
 信号がない、交通ルールが守られない、加えて殺意的なクラクションの嵐の中、一同唖然
とするしかありません。そんな中、渡辺さんは「ちょっと行ってきます」と車を降りると詰
まっている交差点へ行き、交通整理を始めて、渋滞を解消させてしまうんです! 本人いわ
く、「パズルゲームが完成するような楽しさがある」そうです(笑)。そんな渡辺さんが「今
日の都心部の渋滞は難易度レベル99」と言ったほど、どうにもできない状況でした…。20年
住む渡辺さんも「こんな渋滞は初めてです!」という大渋滞にもまれながら、なんとか午後
7時時過ぎにたどり着き、急いでトイレに駆け込むメンバーでした(笑)

 

■<プレスリリース>非感染性疾患対策に関わるバングラデシュ保健省関係者ら10名が、
 広島県呉市、千葉県船橋市を訪問 | 
 https://www.jica.go.jp/domestic/tokyo/information/press/2023/1532817_14651.html
 (JICA 2024年3月12日)

 非感染性疾患対策に関わるバングラデシュ保健省関係者ら10名が、広島県呉市、千葉県船
橋市を訪問 

 3月20日(水)から29日(金)までの間、バングラデシュの非感染性疾患対策に関わる保健省
および研究機関の職員ら10名が、東京、広島県呉市、千葉県船橋市を訪問します。
 バングラデシュでは、近年の急速な経済成長や保健医療水準の向上に伴い、社会環境や人
々の生活習慣の変化が進み、その結果、過去20年間で疾病構造は感染症から、心血管疾患や
糖尿病などの非感染性疾患中心へと移行しつつあります。非感染性疾患により命を落とす割
合は国の全死亡の70%に相当し、成人の5人に1人が高血圧、10人に1人が糖尿病に罹患してい
ると言われています。
 このような状況の中、バングラデシュは、非感染性疾患対策を国の優先すべき保健課題の
一つとして取組みを進めており、中でも予防対策の強化を重要視しています。国際協力機構
(JICA)は、2023年9月より技術協力プロジェクト「非感染性疾患対策強化プロジェクト」
を開始し、バングラデシュにおける非感染性疾患対策の強化への支援を開始しています。今
回の訪問は、同プロジェクト活動の一環として実施するもので、日本の非感染性疾患対策に
関する政策・制度について理解するとともに、実際の対策について見聞し、自国での対策に
活かすことを目的としています。
 今回の訪日研修では、広島県呉市においては、行政が実施している非感染性疾患対策と小
学校における健康的な生活習慣定着に向けた取組みの実践現場を視察します。特に、呉市保
健所の減塩対策事業については、教育委員会などと連携を取り、小学校などを巻き込んだ若
い世代からの介入が実施されており、全国的に高い評価を受けています。
 また、千葉県船橋市では、公園を活用した健康づくり事業など、コミュニティへの参画を
促すことによる非感染性疾患対策および、行政機関と医療機関の連携促進を深めるための取
組みについて学びます。取材をご希望の場合は、下記申込み先にご連絡ください。
 


■国連、ロヒンギャ支援の強化要請 バングラデシュに退避
 https://www.47news.jp/10648123.html
 (共同通信 2023年3月13日)

【ジュネーブ共同】国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)や国際移住機関(IOM)は13日、不
安定なミャンマー情勢により隣国バングラデシュに退避したイスラム教徒少数民族ロヒンギ
ャへの人道支援を強化するよう国際社会に要請した。逃れたロヒンギャと受け入れた地域の
住民を援助するため8億5240万ドル(約1260億円)が必要だと訴えた。

 2024年に南東部コックスバザールやベンガル湾の島バシャン・チョールで計約155万人が
食料や保健衛生、教育、職業訓練などの支援を必要とすると推計。うち135万人への支援を
目標とした計画を、バングラデシュ政府が国内の支援団体などと協力して策定した。

 

■バングラデシュ人民共和国に対する無償資金協力「コックスバザール県における
 ミャンマーからの避難民及びホストコミュニティのためのキャンプ整備計画
 (IOM連携)」に関する書簡の署名・交換|
 https://www.mofa.go.jp/mofaj/press/release/pressit_000001_00394.html
 (外務省 2024年2月26日)

 2月26日(現地時間同日)、バングラデシュ人民共和国の首都ダッカにおいて、岩間公典
駐バングラデシュ人民共和国日本国特命全権大使と、アブドゥサトー・エソエヴ国際移住機
関(IOM)在バングラデシュ事務所長(Mr. Abdusattor ESOEV, Chief of Mission, IOM 
(International Organization for Migration) Country Office in Bangladesh)との間で
、供与額4億円の対バングラデシュ無償資金協力「コックスバザール県におけるミャンマー
からの避難民及びホストコミュニティのためのキャンプ整備計画(IOM連携)」に関する書
簡の署名・交換が行われました。

バングラデシュのコックスバザール県(ウキヤ郡及びテクナフ郡)にあるミャンマーからの
避難民のためのキャンプでは、約93万人が暮らしており、過密化による人道状況の悪化のた
め、人間の安全保障に係る複数のセクターにおいて、迅速かつ継続的な支援が必要な状況で
す。また、キャンプ内には、ホストコミュニティの住民が避難民と共同で利用する土地や施
設もあり、避難民キャンプの整備は、避難民だけでなく、ホストコミュニティを支援するこ
とにもなります。
本協力は、IOMとの連携の下、コックスバザール県におけるミャンマーからの避難民キャン
プにおいて、水・衛生(トイレ・入浴・給水施設の維持管理、歯ブラシの配布等)、減災対
策(避難用施設の改修等)、シェルター整備(資材配布、建設等)、用地管理・整備(斜面
安定化、排水路・道路の整備等)及び避難民の保護(女性・子供が安全な空間の提供等)等
の複合的な支援を行うものです。本協力により、避難民の生活状況の改善及びホストコミュ
ニティの生活状況が改善し、もってバングラデシュの社会脆弱性の克服に貢献することが期
待されます。
(参考)バングラデシュ人民共和国基礎データ
 バングラデシュ人民共和国は、面積約14.7万平方キロメートル(日本の約4割)人口約1億
7,119万人(2022年、世界銀行)、人口1人当たり国民総所得(GNI)2,820ドル(2022年、世
界銀行)。

 

■日本政府、バングラデシュのロヒンギャ難民とホストコミュニティの
 生活改善支援のため、UNICEFに4億円の無償資金協力を供与
 https://www.unicef.org/tokyo/news/2024/unicef-and-japan-join-hands-improve-well-being-bangladeshi-and-rohingya-children-japanese
 (UNICEF東京事務所 2024年3月1日)

務所副代表のエマ・ブリガム。
2024年3月1日 ダッカ(バングラデシュ)発

日本政府は、コックスバザール県及びバシャンチャール島に身を寄せるロヒンギャ難民の子
どもや女性、ホストコミュニティのぜい弱な人々に対する命を守る支援を拡大するため、国
連児童基金(UNICEF)に4億円の無償資金協力を実施しました。本資金協力で行われる「コ
ックスバザール県及びバシャンチャール島におけるミャンマーからの避難民のための複合的
な人道支援計画」によって、両地域の難民キャンプに身を寄せる17万6,000人以上のロヒン
ギャ難民とホストコミュニティの人々に支援が行われます。

本事業は総合的かつ分野横断的な人道支援を提供することを目的としており、子どもたちと
その家族に、教育、水と衛生、保健、栄養サービスへのアクセスを提供します。また、避難
民を受け入れているコミュニティの社会・行動変容の促進にも重点を置いています。

「ロヒンギャの子どもたちが、彼らの権利を十分に行使できるようにすることが重要です。
教育がなければ、難民の子どもたちはより良い未来への希望を持つことができません。安全
な水や衛生サービスがなければ、子どもたちは命の危険にさらされ、生存の機会が脅かされ
てしまいます。」と、UNICEFバングラデシュ事務所代表のシェルダン・イェットが語ります

さらにイェットは、「日本政府と国民の皆様のバングラデシュのぜい弱なロヒンギャ難民の
コミュニティへの寛大なご支援に、心より感謝申し上げます。この度の貴重なご支援により
、UNICEFはロヒンギャの子どもたちとその家族に対し、命を守る支援を拡大することができ
ます。」と述べました。

岩間公典駐バングラデシュ人民共和国日本国特命全権大使は、日本政府の支援がロヒンギャ
難民とホストコミュニティ双方の生活環境の改善に寄与することを期待し、次のように述べ
ました。

「ロヒンギャ危機が長期化するにつれ、子どもたちの状況がさらに深刻化していることを懸
念しています。日本はミャンマーへの早期帰還を含む持続可能な解決に向け、UNICEFを含む
国際機関と協力して、難民とホストコミュニティの生活環境の改善のために引き続き取り組
んでいきます。日本の資金協力がロヒンギャ難民やホストコミュニティ、特に子どもたちが
直面する課題への取り組みに貢献することを期待しています。」

2017年8月にロヒンギャ難民危機が発生してから、日本政府は本資金協力を含めて計4,365万
米ドル以上をUNICEFの同国における難民支援事業に拠出。バングラデシュにおける難民対応
に揺るぎない支援を行い、影響を受ける何十万人もの人々の生活の改善に貢献しています。

 

■親子向けのロヒンギャ料理教室で、無国籍や難民について知る
 https://www.tbsradio.jp/articles/79641/
 (TBSラジオ 2024年01月27日)

 様々な事情で国籍がない「無国籍」の人は、世界で少なくとも430万人はいるとみられま
す。日本にも暮らす「無国籍」の人の存在を知ってもらおうと活動するNPO法人「無国籍ネ
ットワーク」が12月23日、親子で参加する、ロヒンギャ料理の教室を都内で開きました。
 ロヒンギャは、ミャンマーの少数民族で、主にラカイン州に暮らしていますが、国民とみ
なされず、不法移民として扱われています。差別から貧しい暮らしの人も多く、迫害され、
隣のバングラデシュほか国外に、難民として逃れる人も大勢います。
 料理教室の先生は、日本で暮らすロヒンギャの長谷川留理華さん。12歳で日本に来た長谷
川さんは、今は5人の子供を育てながら、通訳の仕事などをしていて、無国籍ネットワーク
の運営委員の一人です。手間や時間がかかるので、長谷川さんが先に用意しておいた料理が
「ビリヤニ」。南アジアと周辺の国々でよく食べられる、カレースパイスを使った、ちょっ
と辛い炊き込みご飯です。長谷川さんは「圧力鍋がない地域で作ってたので、空気がでない
よう鍋に入れて炊き込むのが普通ですが、最近は便利なので、炊飯器で作っています。皆さ
んも忙しい方がほとんどだと思います。子供がいると、いちいち何か、焦げてないかなとか
って気にするとか、忘れちゃう時あるじゃないですか。そういう時、助かります。あと、鶏
肉は骨ありを本来は使うんですが、きょうは骨なしを使いました。子供に食べさせたいとい
う時は、骨なしがおすすめです」と話しながら、作り方や使う香辛料などについて丁寧に説
明しました。

 参加者が作ったのは、多民族国家ミャンマーでは、どこでもよく食べられている「ラペッ
トゥ」。お茶の葉の漬物を使ったサラダのような料理です。テーブルには、材料のキャベツ
やトマト、豆に干しエビが並び、親子でそれを切ってゆきます。そこに、長谷川さんが用意
した「サラダの元」、お茶の葉をニンニクなどと一緒に漬け込み発酵させたものを、混ぜ合
わせます。長谷川さんは香辛料を調節して、辛いのと甘いの、二種類の「サラダの元」を用
意し、希望を聞いて配っていました。

 試食になると子供たちからは「ラペットウは豆が入っていて、カリカリする」とか「ビリ
ヤニは給食のカレーより辛い」といった声。親たちからは、「発酵したお茶の葉のうまみを
感じる」とか「ビリヤニはナッツやフルーツを上手く使ってるなあ」といった、様々な声が
あがっていました。

 食後は、無国籍の女性の体験を元にした、子供向けの絵本「にじいろのペンダント 国籍
のないわたしたちのはなし」(大月書店)の読み聞かせ。「無国籍ネットワークユース」の
ボランティアの大学生たちが、長谷川さんの子供たちと一緒に読みました。

 そして、長谷川さんが、ミャンマー国内でロヒンギャが置かれている状況や、無国籍とは
どういうことなのか、自身の体験を踏まえて説明しました。ミャンマーの民主化運動に関わ
り、軍事政権から迫害されて、日本に逃れた父親を追って、母親や兄弟と一緒に、12歳で日
本に移り住んだ長谷川さん。自分はパスポートを持たない、「国籍がない」ということにつ
いて色々と考えるようになったのは、高校卒業の頃からだったそうです。「最初は無国籍が
何かもわからないので、あってもなくてもいいと思って生きてきました。でも、実際、高校
とか大学とかに入る時に無国籍だからどうのこうのっていう壁にぶつかりました。高校から
、建築の専門学校に進んだんですけど、卒業のためには、ヨーロッパに留学して6ヶ月間勉
強しなければならなかったんです。でも、私は、無国籍なので、ビザが下りなくて、留学で
きなかったんです」と話しました。

 その後、苦労して日本国籍を取得した長谷川さんは、通訳の仕事のほか、ロヒンギャの状
況や難民、無国籍について知ってもらう活動を行っています。特に最近力を入れているのは
、この日のイベントのように、子供と子育て世代へ向けての発信です。
 イスラム教徒の長谷川さんは、中学校で、給食に信仰上食べられない食材が多く、1人だ
け、カレーの弁当を毎日持っていっていました。そのため、「カレーばっかり食べているか
ら、そんな肌の色なんだ」とひどいいじめにあいました。最近は、学校現場でも、異なる文
化で育った子どもへの配慮は普通になりつつありますが、長谷川さんは「給食をみんなで一
緒に食べる経験も楽しい」と考えています。なので、自分の子供の弁当は、学校と打ち合わ
せ、イスラム教徒が食べられる食材を使い、給食のメニューに近づけるなどの工夫をしてい
るそうです。
参加した一人の子供は「楽しかったし、学校では絶対習わないようなこと、聞かないような
ことを知って、いい機会になったかなと思います」と話し、その親は「美味しいものを食べ
て、かつ知識も得られて、本当に来てよかったと思います」と話しました。「サラダを作る
のが面白かった。苦手なトマトもまろやかな味になって、食べられました」と話す子供の親
は「子供にはすごく理解が難しいと思うんですが、味とか、作ったという体験は絶対に残る
ので、大人になった時に、もうちょっと理解できるようになった時に、すっと入ってくると
思うんです」と話していました。
 長谷川さんもイベント後に「小さい子がいつか、ロヒンギャとか無国籍という言葉を目に
した時に思い出す、そういう記憶にしてもらえればありがたいです」と話していました。

 「親子向けのロヒンギャ料理教室と絵本の読み聞かせ」を「無国籍ネットワーク」が企画
したのは今回が初めて。アジア福祉教育財団の後援で、次回は2月11日。定期的に開いて
いく予定です。

TBSラジオ「人権TODAY」担当 崎山敏也(TBSラジオ記者)

 

■ロヒンギャ危機から5年半、長期化する援助の現場を訪ねて
 難民への「支援疲れ」で揺れる地元コミュニティに寄り添う日本のNGO
 https://courrier.jp/news/archives/315274/
 (クーリエジャポン 2024年2月8日)

約800万人のウクライナ難民が逃れた欧州から支援に対する疲弊の声が聞こえてくる昨今、
国際協力の現場では難民の受け入れ国をどう支えるかが大きな課題となっている。

約90万人のロヒンギャ難民を5年半もの間、保護し続けるバングラデシュで、難民と地元住
民の双方を支援する国際NGO「世界の医療団 日本」の取り組みを取材した。
「油は1日スプーン3杯までと聞いて、びっくりしました。いまは2日で1リットルは使ってい
ますから」

バングラデシュ南東部コックスバザール県に暮らすモハマド・カーローさん(55)は、驚い
た様子でそう話す。

彼はこの日、日本の国際NGO「世界の医療団 日本」がおこなう非感染性疾患(NCDs)の啓発
ワークショップに参加していた。「こういう集まりに来たのは初めてですが、とても勉強に
なりました。持病の喘息を改善するため、食生活を改善したい」と語る。

支援の長期化で高まる「反難民感情」

世界一長い自然海岸線がある観光地として有名なコックスバザールは、近年、隣国ミャンマ
ーから逃れてきたイスラム系少数民族ロヒンギャが暮らす難民キャンプの存在で知られる。

もともとロヒンギャは、バングラデシュ国境に近いミャンマーのラカイン州北部に多く居住
していた。ところが、2017年8月にミャンマー国軍がロヒンギャを標的に大規模な軍事弾圧
をおこなったことから、数ヵ月間に70万人以上がバングラデシュに逃れた。それからすでに
5年半が経つが、コックスバザールの国境付近にある巨大な難民キャンプには、約94万人の
ロヒンギャが依然として避難生活を送る。


世界の医療団は危機が起きた当初から、難民キャンプで保健医療分野の支援活動をおこなっ
てきた。2018年8月には、難民のボランティアによる保健衛生の啓発活動をキャンプで開始
し、2019年5月から同様の活動を地元コミュニティにも展開する。

難民が来た当初、地元コックスバザールの住民は、同じイスラム教徒のロヒンギャに対して
同情的だった。ところが、月日が経ってもいっこうに本国への帰還が始まらないことから、
「ロヒンギャが来たせいで、家賃や物価が高騰している」「我々の雇用が奪われている」と
、難民に対する反感が高まっている。

コックスバザールのラム郡に暮らすモルジーナ・アクタルさん(35)も、「ロヒンギャ難民
が来てから、物価が上がって生活が大変。私たちにだって支援が必要です」と不満を漏らす

2021年2月にはミャンマーで軍事クーデターが発生し、ロヒンギャ難民がすぐに帰還する可
能性はさらに低くなった。難民キャンプを長く取材する地元記者は、「2023年末以降にバン
グラデシュでは大統領選が予定されている。反ロヒンギャ感情を政治利用しようと、地元住
民を扇動する政治家が出てくる可能性もある」と危惧する。

難民を受け入れたコミュニティの困窮は、世界共通の課題でもある。最近では、800万人以
上のウクライナ難民を受け入れた欧州の「支援疲れ」を伝えるニュースが頻繁に報じられる
。また国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)によれば、世界の難民の83%をコロンビアやパ
キスタンといった低中所得国が受け入れている。もともと経済や治安の面で不安がある国に
大勢の難民が移住することで、その国の社会情勢がさらに悪化し、新たな問題が起きるケー
スもある。

それゆえ近年、「国際協力の現場では、難民だけでなく彼らを受け入れている周辺コミュニ
ティも支援することが求められる」と、世界の医療団でバングラデシュ事業を担当する中嶋
秀昭さんは言う。

2018年に国連総会で採択された「難民に関するグローバル・コンパクト」でも、受け入れ国
やホストコミュニティへの支援を充実させ、負担と責任を軽減することの重要性が強調され
ている。

こうしたニーズの高まりを受け、世界の医療団はロヒンギャ難民キャンプと地元コミュニテ
ィの両方を対象に、糖尿病、高血圧、慢性呼吸器疾患といったNCDsの予防のための啓発活動
を実施している。


「気にかけてくれて嬉しい」

世界では毎年NCDsが原因で4100万人が亡くなっており、全死因の74%を占める(世界保健機
関、WHO)。日本でもおよそ8割の死亡がNCDsに起因する。NCDsの問題は中所得国でも深刻で
、バングラデシュでも全死因のうち67%を占める。

しかしながら、中嶋さんによれば、国際協力の医療支援では、感染症や母子保健などの緊急
性の高い分野が優先され、NCDsの問題に取り組む団体は少ない。だが、医療人材の少なさや
個人の医療費負担の高さ、大きな病院が都市部に集中していることから、バングラデシュで
は特に地方で医療へのアクセスが限られている。

それゆえ、NCDsを予防する食生活や運動習慣を身に着け、疾病を積極的に予防することが、
コックスバザールの農村地域に暮らす人たちには重要となる。

世界の医療団が実施する地元コミュニティでの啓発ワークショップでは、バングラデシュ人
の有償ボランティア2人が中高年のいる家庭を個別訪問し、生活習慣の改善方法を教える。

前出のモルジーナさん宅でのワークショップに参加させてもらうと、当人だけでなく、子供
たちや近所に住む人までもが集まっていた。聞けば、海外のNGOの啓発活動がこの地域でお
こなわれるは初めてだという。参加者のひとりゾレカ・ベゴンさん(32)は、「糖尿病を患
う兄に役立つ知識が得られないかと思い、やって来ました。近所に小さな診療所はあるが、
診察費の工面が難しい」と語る。

ワークショップを担当したボランティアのデルワー・ホシェンさん(25)と、ハフサ・アク
タルさん(32)は、モルジーナさんたちに「お米の食べ過ぎはよくないので、代わりに果物
や野菜をたくさん食べるようにしてください」「1日30分は運動するといいですよ」といっ
たことを明快に説明する。参加者は、イラストや写真がふんだんに使われた紙芝居のような
資料を熱心にのぞきこむ。

中嶋さんによれば、バングラデシュにおけるNCDs発症の主な原因は主食や油、塩を多く摂取
する食生活にあるという。課題のひとつは、習慣の改善をどう促すかだ。人々の行動を無理
なく変えるため、摂取すべき果物や野菜は地元でとれるものを紹介する。また、農作業など
の身体を使った労働も運動に含むなど、住民の生活スタイルに合わせて、柔軟にアドバイス
する。

こうしたワークショップは同じ世帯で数回おこなわれ、2回目以降は生活を改善するための
方法を参加者と共に考えていく。家庭訪問だと参加者が女性になる場合が多いため、病院や
集会所で男性を対象にしたワークショップを開催することもある。

モルジーナさんはワークショップ終了後、「米や油は体力がつくと思ってたくさん食べてい
たので、摂り過ぎないほうがいいと聞いて驚いた。海外の支援団体が、私たちの健康を気に
かけてくれて嬉しい」と語る。

「外で働くのは初めて」

こうした活動は、ボランティアの若者たちにとっても貴重な学びの場だ。バングラデシュは
コロナ禍前までは毎年6~7%の経済成長率を示す急速な発展を遂げていたが、農村ではまだ
教育や就業の機会は限られる。

国連世界食糧計画(WFP)によれば、コックスバザールでは人口の33%が貧困線を下回る生活
をしており、国内で最も貧しい地域のひとつだ。最近はコロナ禍やウクライナ戦争によって
国内経済が打撃を受けており、人々の生活はさらに苦しさを増す。こうした状況で、保健衛
生の知識を学びながら働ける世界の医療団の職場環境はありがたい、とボランティアたちは
口をそろえる。

デルワーさんは言う。

「世界の医療団の活動のおかげで、地元コミュニティに暮らす人たちがみな健康になりまし
た。この仕事を通して、自分の生まれ育った地域に貢献できることが嬉しいです」

世界の医療団で働きはじめるまでは主婦だったというハフサさんは、人生の新しい扉を開い
てくれたこの仕事に感謝しているという。

「私にとって、外で仕事をするのは初めての経験です。たくさんの出会いや学びがあるこの
仕事にやりがいを感じています」

15人いるボランティアたちは、わかりやすく説明する「話し方のスキル」も学ぶ。ボランテ
ィアを始めて2年近くたつジョイナル・ウディンさん(25)は、自身の成長を次のように語
る。

「この仕事をするまで、人にものを教える機会はありませんでした。話すスキルを磨いたお
かげで、病院でのワークショップやコミュニティの集まりなどで、大勢の人を前にしてもわ
かりやすく話せるようになりました」

また、バングラデシュ人ボランティアが難民キャンプに赴き、自分たちよりキャリアの長い
ロヒンギャのボランティアから啓発のためのスキルを学ぶ研修会もおこなわれている。草の
根のレベルで難民と地元住民の交流が進んでいるのだ。中嶋さんは言う。

「ボランティアの若者たちが、この活動を通して多くのことを学び、それに喜びを感じてい
ることが嬉しいです。彼らの成長を今後の活動に生かしたいと思います」

日本を含む多くの国で少子高齢化が進んでいることから、新たな労働の担い手として移民・
難民をどのように受け入れていくかは世界的な関心事だ。SDGsには、移民は持続的な開発に
重要な貢献ができるとあるが、対応を間違えれば、反難民・移民感情が受け入れ国の政情を
不安定化させる可能性もある。

国際社会に求められているのは、難民と地元住民が共生できる社会を作れるよう、受け入れ
国を支援し続けることだろう。当事国でなくても、その取り組みから多くを学べるはずだ。

 


■ミャンマーの少数民族ロヒンギャ130人がインドネシア・スマトラ島に漂着
 https://www.sankei.com/article/20240201-CXEFZJTUOJLIJBOXRYOMNULJFY/
 (産経新聞 2024年2月1日)

インドネシア・スマトラ島アチェ州の浜辺に1日、ミャンマーのイスラム教徒少数民族ロヒ
ンギャ約130人を乗せた船が漂着した。地元メディアが伝えた。国連難民高等弁務官事務
所(UNHCR)によると、昨年は漂着者が2288人に上り、2022年から約4倍に急
増している。

UNHCRは報告書で、不安定なミャンマー情勢に加え、バングラデシュの難民キャンプで
人道支援が後退していることや、密航業者の暗躍が急増の背景にあると指摘。22~23年
には海での死者・行方不明者が約千人に上ったとし「恐怖と絶望がまん延し、危険を承知で
船旅に出る要因になっている」と警告した。

昨年11月14日~今年1月22日に漂着した1752人のうち、74%は女性や子どもだ
という。

アチェ州では地元住民が漂着者の下船を妨げるなど反発が出ている。(共同)

 

■「人道上看過できない」「実情を無視」なぜ高裁は痛烈に国の姿勢を批判したのか?難民
 訴訟でミャンマー少数民族の男性が逆転勝訴
 https://newsdig.tbs.co.jp/articles/-/1010262?display=1
(TBS NEWS 2024年2月23日)

「世界人権宣言の趣旨にも反し人道上看過できない不相当な主張」「難民申請者の実情を無
視」「まったく意味のない的外れな主張」--ミャンマーの少数民族ロヒンギャの男性が、
国に難民認定を求めた裁判で、今年1月、名古屋高裁は男性の逆転勝訴を言い渡し、確定し
た。注目したいのは、判決が国(出入国在留管理庁)の姿勢を痛烈に批判していたことだ。
何が問題とされたのか。国際人権法の専門家とともに追った。(元TBSテレビ社会部長 
神田和則)

ミャンマーの国籍が認められないロヒンギャ
ロヒンギャは仏教徒が多数を占めるミャンマーでは少数派のイスラム教徒だ。西部ラカイン
州の出身だが、国籍法では、隣国バングラデシュから流入してきた不法移民とされ国籍を認
められていない。

民主化運動の指導者、アウン・サン・スー・チーさんが国家顧問に就任した後も状況は変わ
らず、2017年には国軍による大規模な武力弾圧で70万を超える難民がバングラデシュ
に逃れた。国連調査団は「ロヒンギャはジェノサイド(集団殺害)の深刻なリスクの下にあ
る」と報告書をまとめている。

国際人権法が専門で、法務省の難民審査参与員も務めた阿部浩己明治学院大教授は語る。
「ロヒンギャの人たちが、本来、持つべき国籍をはく奪され、激しい差別を受けてきたこと
は国際的な常識で、ロヒンギャであればまず問題なく難民と認定できるはず」

そのロヒンギャの男性を巡る裁判で、なぜ1、2審の判決が正反対になったのか。

「ミャンマー国内全域でロヒンギャの民族性を理由にジェノサイドが行われているとは認め
られない」(1審判決)
男性は2007年12月に来日した。ロヒンギャであり、ミャンマーで民主化運動にも関わ
ってきたことなどから、帰国すれば迫害を受ける恐れがあるとして、4回にわたり難民認定
を申請した。しかし、いずれも不認定となったため、裁判を起こした。

国は、男性がロヒンギャであること自体に疑問を呈するなど全面的に争った。主な主張を挙
げてみる。

▼ロヒンギャは範囲が極めて不明確。ロヒンギャと名乗る集団は近年形成されたもので、民
族が存在しているか疑問。
▼ミャンマーで国籍を取得できるかどうかは、国籍法の要件に当たるか否かで決められてい
る。それに当たらない者に国民としての権利を与えないのは当然。
▼強制労働、土地没収、イスラム教徒への迫害は、主にラカイン州北部でのことで、男性が
住んでいたヤンゴンについての状況は一切明らかにされていない。
▼男性がロヒンギャであると裏付ける証拠は、在日ロヒンギャ団体の会員証以外にはまった
くない。

1審名古屋地裁(日置朋弘裁判長)は、昨年4月、男性をロヒンギャと認めたものの、国側
の主張に沿って「ミャンマー国内全域で民族性を理由にジェノサイドが行われているとは認
められない」「男性の本国や日本での政治活動の程度に照らせば、帰国した場合に逮捕や収
容のおそれは認められない」などとして、訴えを退けた。男性は控訴した。

「難民申請者が置かれた実情を無視する国の主張は失当」(2審判決)
「難民の認定をしない処分を取り消す。法務大臣は難民の認定をせよ」
今年1月、2審の名古屋高裁(長谷川恭弘裁判長)は、男性の主張を全面的に認める判決を
言い渡した。最初の申請から実に16年。阿部教授は「難民条約の理念をまさに体現して“
難民認定はこうあるべきだ”と説いた判決、国際的な評価にも耐え得る内容だ。地裁判決と
対比してみると、そのゆがみが鮮明にわかる」と高く評価した。

高裁判決の考え方はこうだ。
まず最初に、難民が「自分は難民だ」と証明することの難しさについて述べる。
「難民は迫害を受ける恐れがある者で、一般的に非常に不利な状況に置かれているから、自
分自身に関する事実でも、難民であると証明する十分な客観的資料を持って出国することが
期待できない(持っていれば出国自体を阻止される可能性が極めて高い)。そればかりでな
く、出国した後も資料の収集は困難」

続いて裁判官の判断のあり方に言及する。
「裁判所が判決を出すにあたり、(本人の)供述を主な資料として、恐怖、国家機関や公務
員への不信感、時間の経過に伴う記憶の変容の可能性、置かれてきた環境の違いなども考慮
して、基本的な内容が首尾一貫しているか、(供述が)変遷した場合に合理的な理由がある
か、不合理な内容を含んでないかなどを吟味し、難民であると基礎付ける根幹の主張が認め
られるか否かを検討すべき」

そのうえで、国が「難民に当たると基礎付ける諸事情の有無および内容等は、申請者が正確
に申告することが容易である」と主張したことに対して「申請者が置かれた実情を無視する
もので失当」と強く批判した。

阿部教授が解説する。


「難民条約で国は、迫害を受ける国に難民を送り返してはならないという重い義務を負って
いる。国や地裁判決は『高いレベルで証明ができないならば難民ではない』と決めつけるが
、そうなると、本当は難民であるのに送還されてしまう事態が起きてしまう。高裁判決は、
細かい点で矛盾があったとしても、大事なところが一貫していれば難民と認めるべきだとい
うグローバルな考え方に立っている」

「(国の主張は)世界人権宣言の趣旨にも反し人道上看過できない」(2審判決)
高裁判決は次に、ミャンマーにおけるロヒンギャの状況(出身国情報)に言及し、過酷な現
状を認めた。
基になったのは国連、オーストラリア、アメリカ、イギリスなどの報告書や高官の発言だ。

「そもそも市民権が公的に認められていない」
「不法に出国したロヒンギャが帰国した場合、ヤンゴンに住んでいたか否かに関わらず、刑
務所や収容所に移送される可能性がある」
「(21年の軍事)クーデター前、ロヒンギャの虐殺は主にラカイン州で行われ、治安部隊
が関与。クーデター以来、超法規的殺害は国内各地で報告され、強制失踪は全国に拡大し、
件数も大幅に増えた」

そして、国の姿勢を強く批判した。
「国は、ロヒンギャが正常に国籍を取得できず、差別を受けている状況について、『要件に
該当しない者に国民としての権利を与えないのは当然』などと主張するが、世界人権宣言の
趣旨にも反する人道上看過できない不相当な主張を言わざるを得ない」

阿部教授は、「1、2審の決定的な違いは出身国情報の扱いにある。地裁は、難民認定をし
ない方向で情報の一部を切り貼りしているが、高裁はすべてをしっかりと読み込んで的確に
評価し、保護の必要性があると判断している」と述べた。

「国の主張はまったく意味のない的外れと言わざるを得ない」(2審判決)

以上の判断を踏まえて、高裁判決は、男性の「個別の事情」にふれる。
まず、男性はロヒンギャであり、裁判に提出された出生届の謄本から、ラカイン州で生まれ
たと認めた。
そして、2003年に民主化を求めるデモに参加して逮捕され、禁固2年6カ月の刑を受け
、受刑中にロヒンギャを理由に警官らから暴行された、▽出所の際には今後、政治活動に関
わった場合、厳しい処罰を受ける旨の誓約書を書かされながらも、民主化運動に関わった、
▽日本に来てからもミャンマー大使館前での抗議デモに加わり、新聞に自分の写真が掲載さ
れた--などから、「迫害を受ける客観的、現実的な危険があったと容易に認めることがで
きる」と難民性を認めた。

男性の供述の一部に変遷があるとされた点については、ミャンマー人通訳が「ロヒンギャに
対する民族的偏見や嫌悪から誠実さを欠いていた可能性」を指摘した。

さらに、ここでも判決は国の主張を強い言葉で批判した。
「国はクーデター後、男性が本国の政府当局から政治活動を理由に訪問を受けることがなか
ったなどと言うが、男性はミャンマーの主権が及ばない日本にいるのであって、帰国した場
合にどうなるかが問題とされる本件において、まったく意味のない的外れな主張と言わざる
を得ない」

付言しておくと、高裁は、国が男性の写った新聞記事を持っていながら証拠として提出しな
かったことにも「とうてい公正な態度とは言い難い」と述べた。

この記事を巡っては、入管当局が不認定とした後の2次審査で、難民審査参与員が男性に、
「重要な(写真が載った)新聞の紙名を覚えていないのか」「(日本のデモで)写った人を
、帰国して(軍が)わざわざ迫害するとは考えられないのではないか」と質問したことに対
しても、「難民申請者の置かれた状況に対する無理解を露呈、質問全体を見ても予断や偏見
がうかがわれ、公平な立場とは言い難い」と厳しく指摘した。

難民認定は国家の裁量ではない
日本は「難民鎖国」と批判されて久しいが、その原因は、入管当局が、今回の高裁判決とは
真逆の姿勢を取り続けてきたことにある。

阿部教授は述べる。
「難民認定は国家の裁量ではない。難民に該当しているから認定されるのであって世界人権
宣言に基づく人道的な措置だ。しかし入管は迫害の定義を狭く解釈し、立証のハードルを高
くし、迫害する側がその人を個別に標的にしていなければ難民と認めてこなかった。今回の
高裁判決は、司法が何のために存在しているのかを示した。この考え方が、入管庁の難民認
定でも、他の裁判所でも、生かされなければならない」

昨年、多くの反対を押し切って改定された入管法が、今年、施行されれば、3回以上の難民
申請者の強制送還は可能になる。

だが、入管当局はロヒンギャの男性の4回にわたる難民申請をすべて不認定にした。全国難
民弁護団連絡会議は「3回目以降の申請でも、裁判所によって難民と認められることが証明
された。高裁判決は法の施行に深刻な警告を発している。(問題の)条項の廃止を求める」
と声明を発表した。

あらためて言いたい。
入管法改定に際して、齋藤健法相(当時)は再三、繰り返した。

「保護すべき者を確実に保護する」

その言葉が、まさに問われている。

 

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