(1948/ハワード・ホークス製作・監督/ジョン・ウェイン、モンゴメリー・クリフト、ウォルター・ブレナン、ジョン・アイアランド、ジョーン・ドルー、シェリー・ウィンタース、ハリー・ケリー、ハリー・ケリー・Jr/133分)
71年のピーター・ボグダノビッチの「ラストショー」で、閉館となるテキサスの小さな町の映画館の、最後の上映作品がこの「赤い河」だった。“古き良き西部の終焉を象徴する映画”との解説がされていたが、さて、ハワード・ホークスの「赤い河」はどんな映画だったっけと35年前に思ったもんだ。
小学生の頃に『日曜洋画劇場』で見た作品で、キャトル・ドライブ(cattle drive)の雰囲気とスタンピード(stampede)の迫力、そして西部劇には似つかわしくないモンティ・クリフトが出ていたのが印象に残っていた。
「ラスト・ショー」の後に観るとどんな気分がするか、もう一度見なければと思いながら、そのままになってしまっていた。あれから35年。やっとこさ宿題に手をつけることが出来ました。
テキサス開拓史の伝説を紐解く・・・みたいな雰囲気で始まる。アメリカの歴史に詳しければ、伝説がどれくらい信憑性があるか分かっただろうに等と思いながら見始めた。
ちょっと長めの導入部は南北戦争の前で、後段は戦争後の話になる。
▼(ネタバレ注意 ~ あらすじ)
カリフォルニアに向かう幌馬車隊に途中から参加したダンソン(ウェイン)と連れのグルート(ブレナン)は、テキサスの真ん中で緑豊かな平地を見つけ其処に定住する事を決める。牛数頭を連れての旅で、ダンソンには、アメリカ一の牛牧場を作るという夢があったのだ。幌馬車隊で知り合い愛し合った女性もいたが、女には過酷すぎると考えたダンソンは、一緒に残るという彼女を無理矢理幌馬車隊と共にカリフォルニアへ向かわせる。後で迎えに行くという考えもあったので、彼女に母親の形見のブレスレットを渡した。
ところがこの後、幌馬車隊はインディアンに襲われ、その夜にはダンソン達の所にもインディアンがやって来る。インディアンの一人が、ダンソンのブレスレットをしていたので、彼女が殺されたことを察する。そして、幌馬車隊の唯一の生き残りの少年マシュー(クリフト)を見つけ、ダンソンは牛と共に彼を引き取ることにする。
それから14年後。大きく成長したマシューは拳銃の名手であり、ダンソンの優秀な右腕となっていた。南北戦争からも無事に帰ってきたところだった。
南北戦争で牛以外の財産を大きく失ってしまったダンソン。牛は一万頭にも登ろうかという数がいたが販路がなく、このままではにっちもさっちもいかなくなると考えたダンソンは、鉄道の通っているミズーリまで牛を運ぶ計画を立てる。それは誰も聞いたことのないビッグ・トレイル(big trail)だった。
マシュー、グルート以下、数十人のカウボーイを雇っての過酷な旅が始まる。
インディアンの襲撃。牛の暴走。そして、険しい道のり。
途中に入ってくる情報により、マシュー達は目的地を変更しようと進言するも、ダンソンは当初の計画を曲げようとしない。ついにはダンソンとの契約を破って逃げ出す者が出てくる。食料を持って脱走した者を捕まえたダンソンは、縛り首にすると言い出し、それまで命令には逆らわなかったマシューまでもが拳銃を向ける。
孤立無援になるダンソン。
マシュー達は全部の牛を連れて、新しい目的地に向かう。隊を離れたダンソンは、マシューへの復讐を胸に誓うのであった・・・。
▲(解除)
上記のあらすじを“ネタバレ注意”にしたのは、それ以上の複雑な内容がないからで、西部劇ファンならこのストーリーを読んだだけで大体の中身はわかるでしょう。ダンソンは唯我独尊を地でいく西部の頑固者で、ドラマとして唯一微妙だなと思わせるのはマシューとの関係くらいのもの。
ホークス監督は、女性に関しても12月に観た「ハタリ!」同様に定型的で、ありふれた描き方です。ダンソンとマシューの仲を取り持つヒロインも、大団円のために添えられたのではないかともいえる人物でした。
荒野の広がり、青空にポッカリ浮かんでいる白い雲、幌馬車隊、牛の群、空き缶を使った射撃の腕試し、幌馬車を円形に組んでのインディアンとの銃撃戦等々。懐かしい西部劇の情景が好きな人にはたまらない映画でしょうな。
先月亡くなったシェリー・ウィンタースはこの時28歳。セリフもなく、一瞬しか出てきません。キャトル・ドライブの途中でダンソン達が助けた、インディアンに襲われた幌馬車隊の一員で、スッキリとスマートな体型でした。
「スミス都へ行く」のハリー・ケリーは、マシュー達が辿り着いた町で牛の買い付けをしてくれる商人の役。アゴに手を当てる仕草が“議長”と同じでしたな。
ハリー・ケリー・Jrの名は西部劇では有名ですが、実は私は顔は分からないんですよネ。
ウォルター・ブレナン。TVで観た時の、吹き替えの甲高い声を思い出すなあ。「リオ・ブラボー(1959)」にも出てましたな。
音楽は「リオ・ブラボー」と同じくディミトリ・ティオムキン。テーマ曲は、“リオ”でディーン・マーチンが唄っていた「♪ライフルと愛馬」によく似ているんだけど、これって同じものなの? ご存じの方、教えて下さい。
[2.21 追記]
<オールド・ムービー・パラダイス!>のFROSTさんが、テーマ曲について「リオ・ブラボー」の記事の中で答えを出されていました。やはり、同じモノだそうです。
71年のピーター・ボグダノビッチの「ラストショー」で、閉館となるテキサスの小さな町の映画館の、最後の上映作品がこの「赤い河」だった。“古き良き西部の終焉を象徴する映画”との解説がされていたが、さて、ハワード・ホークスの「赤い河」はどんな映画だったっけと35年前に思ったもんだ。
小学生の頃に『日曜洋画劇場』で見た作品で、キャトル・ドライブ(cattle drive)の雰囲気とスタンピード(stampede)の迫力、そして西部劇には似つかわしくないモンティ・クリフトが出ていたのが印象に残っていた。
「ラスト・ショー」の後に観るとどんな気分がするか、もう一度見なければと思いながら、そのままになってしまっていた。あれから35年。やっとこさ宿題に手をつけることが出来ました。
テキサス開拓史の伝説を紐解く・・・みたいな雰囲気で始まる。アメリカの歴史に詳しければ、伝説がどれくらい信憑性があるか分かっただろうに等と思いながら見始めた。
ちょっと長めの導入部は南北戦争の前で、後段は戦争後の話になる。
▼(ネタバレ注意 ~ あらすじ)
カリフォルニアに向かう幌馬車隊に途中から参加したダンソン(ウェイン)と連れのグルート(ブレナン)は、テキサスの真ん中で緑豊かな平地を見つけ其処に定住する事を決める。牛数頭を連れての旅で、ダンソンには、アメリカ一の牛牧場を作るという夢があったのだ。幌馬車隊で知り合い愛し合った女性もいたが、女には過酷すぎると考えたダンソンは、一緒に残るという彼女を無理矢理幌馬車隊と共にカリフォルニアへ向かわせる。後で迎えに行くという考えもあったので、彼女に母親の形見のブレスレットを渡した。
ところがこの後、幌馬車隊はインディアンに襲われ、その夜にはダンソン達の所にもインディアンがやって来る。インディアンの一人が、ダンソンのブレスレットをしていたので、彼女が殺されたことを察する。そして、幌馬車隊の唯一の生き残りの少年マシュー(クリフト)を見つけ、ダンソンは牛と共に彼を引き取ることにする。
それから14年後。大きく成長したマシューは拳銃の名手であり、ダンソンの優秀な右腕となっていた。南北戦争からも無事に帰ってきたところだった。
南北戦争で牛以外の財産を大きく失ってしまったダンソン。牛は一万頭にも登ろうかという数がいたが販路がなく、このままではにっちもさっちもいかなくなると考えたダンソンは、鉄道の通っているミズーリまで牛を運ぶ計画を立てる。それは誰も聞いたことのないビッグ・トレイル(big trail)だった。
マシュー、グルート以下、数十人のカウボーイを雇っての過酷な旅が始まる。
インディアンの襲撃。牛の暴走。そして、険しい道のり。
途中に入ってくる情報により、マシュー達は目的地を変更しようと進言するも、ダンソンは当初の計画を曲げようとしない。ついにはダンソンとの契約を破って逃げ出す者が出てくる。食料を持って脱走した者を捕まえたダンソンは、縛り首にすると言い出し、それまで命令には逆らわなかったマシューまでもが拳銃を向ける。
孤立無援になるダンソン。
マシュー達は全部の牛を連れて、新しい目的地に向かう。隊を離れたダンソンは、マシューへの復讐を胸に誓うのであった・・・。
▲(解除)
上記のあらすじを“ネタバレ注意”にしたのは、それ以上の複雑な内容がないからで、西部劇ファンならこのストーリーを読んだだけで大体の中身はわかるでしょう。ダンソンは唯我独尊を地でいく西部の頑固者で、ドラマとして唯一微妙だなと思わせるのはマシューとの関係くらいのもの。
ホークス監督は、女性に関しても12月に観た「ハタリ!」同様に定型的で、ありふれた描き方です。ダンソンとマシューの仲を取り持つヒロインも、大団円のために添えられたのではないかともいえる人物でした。
荒野の広がり、青空にポッカリ浮かんでいる白い雲、幌馬車隊、牛の群、空き缶を使った射撃の腕試し、幌馬車を円形に組んでのインディアンとの銃撃戦等々。懐かしい西部劇の情景が好きな人にはたまらない映画でしょうな。
先月亡くなったシェリー・ウィンタースはこの時28歳。セリフもなく、一瞬しか出てきません。キャトル・ドライブの途中でダンソン達が助けた、インディアンに襲われた幌馬車隊の一員で、スッキリとスマートな体型でした。
「スミス都へ行く」のハリー・ケリーは、マシュー達が辿り着いた町で牛の買い付けをしてくれる商人の役。アゴに手を当てる仕草が“議長”と同じでしたな。
ハリー・ケリー・Jrの名は西部劇では有名ですが、実は私は顔は分からないんですよネ。
ウォルター・ブレナン。TVで観た時の、吹き替えの甲高い声を思い出すなあ。「リオ・ブラボー(1959)」にも出てましたな。
音楽は「リオ・ブラボー」と同じくディミトリ・ティオムキン。テーマ曲は、“リオ”でディーン・マーチンが唄っていた「♪ライフルと愛馬」によく似ているんだけど、これって同じものなの? ご存じの方、教えて下さい。
・お薦め度【★★★=西部劇ファンなら、一度は見ましょう】
[2.21 追記]
<オールド・ムービー・パラダイス!>のFROSTさんが、テーマ曲について「リオ・ブラボー」の記事の中で答えを出されていました。やはり、同じモノだそうです。
もうもうと砂塵が立ち込めているような、西部の風土感の捉え方も、実に見事だと思います。
"西部劇の王者"、ジョン・ウェインに絡む、若きモンゴメリー・クリフトが、西部男に似つかわしいとは言えないのですが、それが逆に"新鮮な魅力"となっているのが不思議です。
ジョン・ウェイン演じるダンスンと、モンゴメリー・クリフト演じるマットは義理の親子。
インディアンに襲われた幌馬車隊のたった一人の生き残りの少年をダンスが引きとって養子にしたのです。
カウボーイのダンスンは、恋人をインディアンに殺されるという悲惨な体験を踏み越えて、テキサスに一代で大牧場を築き上げる。
しかし、折しも南北戦争の敗戦のあおりをくらって、南部では牛が売れず、食糧不足の北部に売るにしても、鉄道のある町まで、牛の大群を運んで、延々数カ月の大旅行をしなければならず、途中には強盗団やインディアンもいて、危険極まりない状況になっている。
しかし、主人公のダンスンは、養子のマット以下、多くのカウボーイたちと、この冒険に踏み切ることに--------。
この途中の、牛の大群の暴走、インディアンの襲撃、男同士の友情など、勇壮でダイナミックな見せ場がいくつも用意されていて、堂々たる正攻法のリアリズムで、当時の開拓民の苦労やユーモアを再現しようとしているところが、実に素晴らしい。
しかし、このダンスンは、力強く頼もしい男だが、独裁的で部下たちの気持ちを無視して、敢えて危険な道を選ぼうとし、逃げる部下を射殺しようとさえするのです。
そこで、養子のマットが、カウボーイたちの期待を担ってダンスンを退け、自らリーダーになるのです。
結局、最終的にダンスンとマットは、壮絶な殴り合いの末に和解し、ダンスンがマットを一人前の男として認めると共に、若い時の恋人を死なせたという心の傷のため、性格的に異常になっていた彼が、やっと心の健康を取り戻すという、実にいい場面で幕を閉じることになるのです。
このように、この映画「赤い河」は、勇壮でダイナミックな活劇シーンも素晴らしいが、強くて英雄的なジョン・ウェインの父と繊細で勇敢な養子・モンゴメリー・クリフトの"父と子の葛藤"という、愛憎が複雑に絡みあった危険な関係を軸に、時代の歩みと共に考え方の違う新しい世代が登場し、古い世代にとって代わってゆく、そのドラマが、一本がっしりとした背骨をこの映画に通しているのだと思います。
にありました
ソレと、「シェーン」、「荒野の決闘」、「駅馬車」などは是非とももう一度観たい西部劇です。
>viva jiji姐さんもそうしたブロガーさんについてお書きになっていましたね。
確かに、私の周りにも止められた方が昨年も何人かおられました。寂しいことです。
本作を初めて観たのは比較的最近で、20年くらい前ではないかなあ。他の西部劇の古典は全て70年代前半までに観ていましたが、それから遅れること十余年、しかし、遜色がなかったです。
ウェインとモンティの関係をウォルター・ブレナンとジョン・アイアランドが上手く彩り、ドラマとしても大変面白く観ましたよ。
確かに女性の描写は形式に落ちているかもしれませんね。ジョーン・ドルー自身は大変良かったですが。
ウェインの老け役はこの直後の「黄色いリボン」でもやっていましたね。
あっ、懐かしいFROSTさんだ!
現在休止中ですね。
僕の一番古いブログ仲間だけに早く復帰してほしい。
シュエットさんもまだまだ完調には程遠いようで、コメントを残すのも悪い気がする。
viva jiji姐さんもそうしたブロガーさんについてお書きになっていましたね。
メジャー・リーグ・ベースボール、NYヤンキースの試合終了後は今でもシナトラの歌(♪ニューヨーク・ニューヨーク)が流れるほど。私生活が黒々としているのが気に入りませんが、歌は皆さんよろしいですなぁ
ルイスとのコンビ作品は確か「底抜けシリーズ」と言ってましたネ。
ダーリンの書いた曲は「初恋の並木路(Things)」。タイトルには覚えがあるけど、メロディーが出てきませなんだ
「リー・ブラボー」じゃ確かにアル中の役でしたけど、実生活はどうだったんでしょ? 限りなく黒い気はしますが・・・。
ちょっとレトロですけどマーチンやサミー・デイビス、ボビー・ダーリン系いわゆるナイトクラブ系歌手って私好きなの~。
ダーリンが書いたナンシー・シナトラとデュエットした曲もゴキケン♪
マーチンとA・マーグレットが共演したお色気スパイ映画「サイレンサー殺人部隊」なんか好きでした~。
ジェリー・ルイスとのコンビもありませんでした~?
やっぱりマーチンってアル中だったのかしらん?^^
アレっていい歌ですよね。
ディーン・マーチンもいい声だし
「リオ・ブラボー」。今回のウェイン特集に入ってなかったみたいで、残念だったなぁ。
調べましたら・・・
all cinemaの↓情報の“コメントその1”の方が
言及してらっしゃるわ。
http://www.allcinema.net/prog/show_c.php?num_c=446
主題歌の件宜しくお願いします。良く似てるだけかも知れませんが・・・。
ジョン・ウェインが既に老け役をやっていたのが面白かったです。この後、70年代まで西部劇に出ているのに・・・(20年以上!)。
西部劇の“すべて”が詰まってますよね。
牛が川を渡るシーンは圧巻でした。
あと、ラスト近く、こちらに向かってジョン・ウェインが歩いて来る時のカットバック、痺れました!