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花咲く丘の高校生

平成時代の高校の授業風景を紹介したり、演歌の歌詞などを英語にしてみたり。

煽てられれば

2025-03-31 | 高校生
ー平成時代中期の『花咲く丘の高校』でのエピソードですー
煽てられれば木に登る
 納税の申告を済ませて、午後から学校に行くと、二年生の絵里香(えりか)に出会った。
「ゆ~先生は午前中どこへ行っていたの?」
「ちょっと野暮用(やぼよう)があってね。大人ってさ、いろいろ突発的(とっぱつてき)な所用があるんだよ」
「だって、ゆ~くんは大人じゃないでしょう。もう暇なおじいちゃんだよね」
「まあね、年齢(とし)相応にいろいろあるよ。絵里香が『クン』づけで呼んでくれるからさ、このごろは昔返りしているしね」
「むかし返り?ウケるう。てか、みんなが『ゆ~くん』って言っているから、あたしだけじゃないよ」
「そうかあ。おかげで、一句ひらめいたよ:
『クンづけで 呼ばれるたびに 歳が減り』
『クンづけで 呼ばれてオレは 木に登る』」
「なかなかですね。『友蔵』みたい。ゆ~くん、木から落ちないでくださいね」
にはは~、頼りにしてて!
 明日から学年末試験が始まる。二年生の美羽(みわ)が私に尋ねた。
「ゆ~くん、明日は『同和教育』ってあるの?」
「よくは知らないけど、テストの初日にやるかなあ?」
 実は、教員のための同和研修会だったのだが、非常勤講師の私は知らなかったのだ。
「なんで教師のゆ~くんが知らないの?ま、いいや。ありがとうございました」
「頼りにならない教師もいるのさ。ゴメンよ!」
「ウケる~。ゆ~くんは面白いから、頼りにならなくてもいいんだよ」
「美羽を頼りにしてまっせ!」
「にはは~、頼りにしててね!そいじゃあ、帰って勉強します」

       『花咲く丘の高校生』(2016年 悠光堂)より