猿供養寺の人柱ー(3)
坊さんは、村のしょが今日まで助け合い、励ましあってきたことを思って、感心するばかりだったと。
「わしが人柱になろう。わしにその役めをさせてくれんか。
仲の良い村のしゅうだれひとりなくしてもいけねえ。わしは、仏につかえる身じゃ。こんなによい人たちのお役にたてれば本望じゃ」
坊さんは村のしょに話しだしたと。村のしょの心の美しさをほめて人柱を用意するようにいうたと。
The monk was filled with admiration for how the villagers had helped and encouraged each other.
"I'll be a human pillar. Let me take on that role."
The monk began speaking to the villagers.
"I don't want to lose any of these good people in this village. I'm a servant of Buddha. I really wish I could be of any help to such good people."
He praised the beautiful hearts of the villagers and told them to prepare to set up a human pillar.
その晩は、村のおさのうちに泊まり、次の日の朝げ、坊さんは身をきよめたと。真っ白いきものを着て、最後のお経をとなえたと。澄んだ声が村のしょの心のおく深くしみとおったと。村のしょにほほえみかけると、別れをいうて、ほってある穴に入ったと。ほうして静かに甕をかぶったと。村のしょは、涙ながらに、かたくかたく土をかぶせたと。
The monk stayed at the house of the vllage chief that night and purified himself in the next morning. He was dressed in a pure white kimono and chanted the last sutra. His clear voice penetrated into the hearts of the villagers. He smiled at the villagers, said goodbye, and went into the hole the villagers had dug. Then he quietly put himself in the urn. The villagers, in tears, covered the monk in the urn with hard, hard soil.
こんげして、たっとい人柱ができたんだと。
ふしぎなことに、それからなん日もしないうちに、大地の動きはすっかり止まったと。
その後、何百年もの間、この村には地滑りがなかったと。
ーお終いー
In this way, a precious human pillar was created.
Strangely enough, within a few days the earth stopped moving completely.
For hundreds of years after that, no landslides occurred in this village.
ーThe endー
そして今人柱になった旅の坊さんが通ってきた黒倉山の峠道は現在、里山ハイキングコース「信越トレイル」の一部になっています。
また、北陸新幹線の「はくたか」は、長野県側の飯山駅からこの峠下の「飯山トンネル」(22.25km)を抜けると3分で、新潟県側の「上越妙高駅」に到着します。
信越トレイル長野と新潟県境の1000m級の低山の尾根を巡る全長110kmの「信越トレイル」は、国内では稀なロングデイスタンス ハイキングコースです。
ここには今人柱供養堂と地滑り資料館もあります。
(上越市板倉区猿供養寺401 ℡0255-78-2681)
人柱になったお坊さんが通ってきた黒倉山麓に広がる「光が原高原キャンプ場」は、標高千メートルに位置し、眼下に日本海を望む抜群のロケーションで、「信越トレイル」の入山口でもあります。ぜひキャンプ&ハイキングにいらしてください。(ゆ~)