ゆっくり行きましょう

気ままに生活してるシニアの残日録

名曲喫茶「ヴィオロン」に行く

2023年12月12日 | カフェ・喫茶店

中央線の阿佐ヶ谷にある名曲喫茶「ヴィオロン」に久しぶりに行ってみた。3年くらい前に一度来たことがある。この店の存在は以前から知っていたが、阿佐ヶ谷に用事がなく、訪問できていなかった。喫茶店文化を愛する者としてだいぶ前からその手の本を買って、紹介されている店には近くに用事があった際に寄るようにしてきた。

この店は、2002年刊行の「東京喫茶店案内」(沼田元気著、東京喫茶店研究所編集)に紹介されていた。あの高円寺の「ネルケン」も紹介されている。今では書店に行くとレトロ喫茶や洒落たカフェの紹介本はいっぱい出ているが、今から20年くらい前はそれほど注目はされていなかった。ヴィオロン(VIOLON)というのは仏語でバイオリンという意味のようだ。

さて、阿佐ヶ谷駅の北口から歩いて5分ちょっとで到着するこの店だが、店の近くに来ると大きな看板が出ているので直ぐにあそこだと気がつく。12時開店で、開店直後に訪問すると既にお客さんが若干名入っていた。入口を入り、正面に大きなスピーカーが2つ、ドンと鎮座している。その前の位置は入口より30㎝くらい低くなっており、そのまわりに木製の柵のような仕切りがあり、その周辺の一段高いところにも座席がある。入って直ぐに左手にも窓側の座席もあった。ネットの情報だとこのレイアウトはウィーンの楽友協会の大ホールをイメージして作ってあると出ている。

今日は、真ん中の一段低くなった位置、スピーカーの正面の一番離れた位置に腰かけた。入口から歩くと、木の板の床になっており、ミシミシと音がするのが趣があってよい。このエリアには帰るまで誰も入ってこなかった。注文はコーヒー500円。年配の店主らしき男性が注文を取り、運んでくれている。

正面のスピーカーからは比較的大きな音で曲がかかっている。知らない曲もあったが、チャイコフスキーの交響曲、モーツアルトのピアノ協奏曲、そして私が好きなグリーグのピアノ協奏曲(リパッティーのピアノ)などがかかっており、うれしくなった。CDではなくLPをかけているようだ。

ゆっくり寛いでいると、結構お客さんが入ってくる。駅から5分程度とはいえ、まわりは住宅街で若干のレストランがある程度のところである。知らない人が偶然通りがかって入ってくると言うよりは、私のようなクラシック音楽ファンが調べた上で訪問してきたか、常連客であろう。

内部は「お静かに」の注意書きがあり、基本的には話をするための場所ではないと言う考えの店であり1人で行くべき店であろう。また、この店は夜はほぼ毎日、ライブ演奏をしているようだ。

落ち着いた雰囲気でゆっくりクラシック音楽を2時間程度聴いて店を後にした。

ご馳走様でした。また来ます。


神保町「揚子江菜館」でランチを食べる

2023年12月11日 | グルメ

午後2時から新国立劇場で「こうもり」を観劇する日、どこかで昼食をとってから行こうと思い、初台に行くのに便利な神保町で探すことにした。

ネット情報で事前に調べて、靖国通りに面した有名なランチョンで食べようと思ったが、行ってみると行列ができていたので、パス。土曜日でちょうど12時過ぎのランチタイムなので仕方ない。もう1軒、あるうなぎやに行ってみたら今日はもう満員ですと言われ、ここもダメ。

あまり歩き回るのはいやなので、そんなに人気店でもあるまい、と思って揚子江菜館に行ってみた。建替え中の三省堂裏のすずらん通りにある。入ってみると1階は満席だが2階へ案内され直ぐに座れた。ただ、ほぼ満席だった。

この店は作家で食通の池波正太郎氏が贔屓にしていた店の一つで、そんなことが書いた雑誌か池波先生の書物のコピーだかが店の前や中に貼ってあった。池波先生はここに来ると、上海風やきそば(上海式肉焼きそば)とシュウマイを召し上がったそうだ。それにあやかって私もいつも上海風焼きそばをたのむので、今日もそうした。シュウマイまで食べるとちょっと食べ過ぎになるので、それは我慢。

しばらく待ち、焼きそばが出てきた。細麺の焼きそばをフライパンで炒め、その上にもやしを中心とした肉野菜炒めがどさっとかけてある。おいしそうだ。まわりを見るとみんなが上海焼きそばを食べているわけでもない、昼から飲んでいるグループもあった。

味はいつもの通りおいしかった。量も十分だ。2階には初めて案内されたが、雰囲気は悪くないと思った。今度、夜にゆっくり食べに来ても良いかなと思った。私は池波先生のライフスタイルにも憧れを持っている。小説を書き、よく銀座に出かけては映画の試写会を見て、好みの店に寄って食事をする。そんな先生の生活日記が「池波正太郎の銀座日記」(新潮文庫)だが、以前はよく読んだものだ。池波先生を偲んでここで一杯やりながらおいしい中華を頂くのも悪くないだろう。

ご馳走様でした。


新国立劇場で「こうもり」を観る

2023年12月10日 | オペラ・バレエ

新国立劇場でオペレッタ、ヨハン・シュトラウスⅡ世作曲の「こうもり」を観た。14時開演、17時15分終演。今日は、4階D席、6,600円。最近は夜の公演がキツくなってきたのでなるべく昼の公演を観に行っている。今日はS席のみ当日販売があったそうだが、最後は満席になったようだ。観ていると幅広い年令層が来ているように見えた。

【指 揮】パトリック・ハーン(墺、28)
【演 出】ハインツ・ツェドニク(墺、83)
【美術・衣裳】オラフ・ツォンベック
【振 付】マリア・ルイーズ・ヤスカ
【照 明】立田雄士
【舞台監督】髙橋尚史

指揮者のハーンは調べてみると何と28才、本当なのかと驚く。ピアニストでもあり、作曲家でもある。この若さで既にコンセルトヘボウ管弦楽団、ミュンヘンフィル、ロンドンフィルなど名だたる楽団の指揮をしている。指揮者コンクールで優勝したなどの受賞歴があるわけでもないのに、どうして有名楽団との共演ができたのか、日本ではとても考えられない。オペラも既に指揮している。カーテンコールの時にステージに上がってきたが、確かに若そうだ、すごいことだ。

逆に演出のツェドニクは83才、新国立劇場の解説では、ウィーン宮廷の名テノール歌手でウィーン気質を熟知したエレガントで洒脱な仕掛けがふんだんに用意された正統的な演出とのこと。2006年にこの「こうもり」の演出で演出家として世界デビューを果たし、09年、11年、15年、18年、20年に再演、今回が6度目の再演となるそうだ。もしかしたら、私も新国立で過去に1回、ツェドニクのこうもりを観ているかもしれない。

演出以外ではアール・デコ調の華やかな美術・衣裳も大きな見どころで、金色に輝く幾何学模様や官能的なラインの衣裳など、クリムトを彷彿させるデザインとなっていると劇場は解説している。

【アイゼンシュタイン】ジョナサン・マクガヴァン(英、※)
【ロザリンデ】エレオノーレ・マルグエッレ(独、45、※)
【フランク】畠山茂(ヘンリー・ワディントンの代役)
【オルロフスキー公爵】タマラ・グーラ(米、※)
【アルフレード】伊藤達人
【ファルケ博士】トーマス・タツル(墺、※)
【アデーレ】シェシュティン・アヴェモ(スウェーデン、50、※)
【ブリント弁護士】青地英幸
【フロッシュ】ホルスト・ラムネク(墺、※)
【イーダ】伊藤 晴

(※)新国立初登場

【合唱指揮】三澤洋史
【合 唱】新国立劇場合唱団
【バレエ】東京シティ・バレエ団
【管弦楽】東京フィルハーモニー交響楽団

ロザリンデ役のエレオノーレ・マルグエッレについては新国立劇場のホームページにインタビュー記事が出ていたので読んで見ると、

「自分はハイデルベルク生まれで、高校卒業後にマンハイムの劇場で実習を受け、すっかり劇場に魅せられた。演劇かオペラか、2つの道がありましたが、演劇だとその言語の国に限られるけれど、音楽なら世界に出ていけると考え、オペラを選んだのです。歌手になった最初はコロラトゥーラ・ソプラノの声で歌いましたが、30歳で息子を産んでからはドラマティックなコロラトゥーラ・ソプラノになり、その後リリック・ドラマティック・ソプラノの役の方向に進みました。新国立劇場で歌うロザリンデ役にはすべてが含まれています。中音域の良い声も必要で、チャルダッシュもあるし、低音から高音まであり、大好きな役です」と述べている。

さて、今日の公演を観た感想を述べてみたい

  • 歌手陣はいずれも声量豊かで4階席の私にもよく聞える声で歌っていた、ロザリンデ役のマルグエッレは美人で高音もよく出て、チャルダッシュもうまく歌って素晴らしかった。アイゼンシュタイン役のマクガヴァンも音声豊かでアイゼンシュタインの性格をうまく演じておかしいくらいだった、今日の演技賞をあげたい。アデーレ役のアヴェモも大変よかった、役柄にピッタリの演技だったと思うし歌もうまかった、もう準主役級でしょう。刑務所長役のピンチヒッター畠山は刑務所長のイメージピッタリのコスチュームで笑えた。
  • パトリック・ハーン指揮の東京フィルの演奏もよかった、ハーンの指示だと思うが、今日の演奏ではところどころトランペットが旋律をリードするような吹き方をしていたのが興味深かった。また、場面が盛り上がる「雷鳴と電光」などの演奏の時も思いっきり大きな音を出すのではなく、抑制の効いた上品な演奏はさすがだと思った、ウィーン風の上品さというものを意識しているのだろうと思った
  • ツェドニクの演出は私が好きなオットー・シェンクの演出に似ていて好感が持てた。特に第2幕の「雷鳴と電光」の時の演出などはお祭り騒ぎの中にも華やかさがあり、ウィーンの社交場のダンスホールのようなイメージの舞台設定になっていたのが大変印象的で素晴らしいと思った。
  • この演目で私が好きな第2幕のワルツとかポルカで陽気に騒ぐところだが、今日はまず最初にシュトラウスの「ハンガリー万歳」が演奏され、そのあと「乾杯の歌」に続いて有名なポルカの「雷鳴と電光」が演奏された。私は「こうもり」でこの「ハンガリー万歳」というのは初めて聞いたが良い曲だった。
  • 私は自分の中で1986年のカルロス・クライバー指揮、オットー・シェンク演出版が一番好きで、これと比較して今日の演奏はどうかと判断することにしているが、今日の公演はほぼこの基準に達していたと思った。それだけ素晴らしかった。

本当に楽しいオペレッタだった。帰りにホワイエで、終演後のレストランの予約は満席となりました、と張り出してあったのを見た。楽しいオペラのあとで国立劇場のレストランで夕食とはきっと最高の年末の夜になるでしょう。また、今日は休み時間に12月下旬の演劇公演「東京ローズ」のチケット買って帰った。


すき家で「炭火焼きほろほろチキンカレー」を食べる

2023年12月09日 | グルメ

今日の昼食は、すき家で期間限定メニューの「炭火焼きほろほろチキンカレー」750円を食べてみた。

最近すき家にはあまり行ってなかったので、行ってみようと思った。何を食べようか迷う。松屋でもそうだが期間限定メニューがすき家にもあり、これが店として力を入れているメニューだろうと思い、その中から選んでみた。

すき家のホームページでこの「炭火焼きほろほろチキンカレー」の解説を見ると「炭火で焼きじっくり丁寧に蒸し上げることでスプーンで“ほろほろ”とほぐれるほど柔らかく香ばしい風味に仕上げた骨付きチキンを、クミンなど20種類以上のスパイスと玉ねぎやトマトの旨みが溶け込んだコクのあるカレーにトッピングした商品です」とある。また、今朝のテレビの宣伝ですき家のご飯は全部日本産の米を使っていると言っていた。

すき家では注文はテーブルにあるタブレット端末からやる方式だ。最近、ファミレスや回転寿司店などでこの方式を採用するところが増えているようだが便利なものだ。

しばらくしてカレーが出てきた。写真にするとそうでもないが、量は多いと思う。

早速食べてみると、おいしかった。確かにほろほろチキンは箸を使わなくてもスプーンで押せば崩れてカレーに混ぜて食べられた。カレーのルーもおいしかった。量も並盛りで十分出であった。

店は満員になるほどではないが、結構お客さんも入ってきていた。

食べてみてコスパは良いと思った。牛丼屋はどこもおいしい。庶民の味方だ。牛丼屋はどんどん進化しているし、もう完全に日本のファストフード文化の担い手になったと言えるだろう。

ご馳走様でした。


映画「かもめ食堂」を再び観る

2023年12月08日 | 映画

テレビで放送されていた映画「かもめ食堂」を観た。好きな映画で、3回は観ているが、再放送していたのでまた観たくなった。2005年、監督荻上直子、原作は群ようこの同名小説。映画の中でかもめ食堂のウインドウにはフィンランド語で「ruokala lokki(食堂かもめ)」と日本語で「かもめ食堂」と書かれていた。

私は映画でも本でも、一度観たり読んだりして「これは良いな」と思ったものは2回、3回と繰り返し観たり読んだりすることにしている。映画でも一度観ただけでは気付かない部分は多いし、大筋は覚えていてもそれ以外の部分は忘れてしまう場合もある。また、全体の記憶がかなり怪しくなる場合もある。本の場合はなおさらである。これではもったいない。良いものは繰り返し観たり読んだりして自分の中にハッキリと記憶が残るようにしてこそ一生ものの価値があると思っている。

フィンランドの首都ヘルシンキにある小さな食堂を舞台に、3人の日本人女性(小林聡美、片桐はいり、もたいまさこ)が織りなす穏やかな日常をつづったドラマ。日本人女性サチエ(小林聡美)はヘルシンキの街角に「かもめ食堂」という名の小さな食堂をオープンさせるが、客は一向にやって来ない。そんなある日、サチエはひょんなことから日本人旅行客のミドリ(片桐はいり)と知り合い、店を手伝ってもらうことに。やがてサチエの店には、日本から来てロスト・バゲージになったマサコ(もたいまさこ)など個性豊かな人々が次から次へとやって来るようになる。アキ・カウリスマキ監督の映画「過去のない男」のマルック・ペルトラが共演している。

3人の女性の1人もたいまさこは、「バーバー吉野」(03)、「めがね」(07)、「トイレット」(10)と荻上直子監督作の常連女優だ。個性的な女優で、アキ・カウリスマキ監督映画の常連女優カティ・オウティネンのような存在だと思った。

私がこの映画が好きなのは、主人公のサチエが提示している次のようなライフスタイルに共感を覚えるからだ

  • 質素
  • 清潔
  • 健康的(プールでよく泳ぐ、就寝前に膝行という座り技の基本を行う、お酒はあまり飲まない)
  • 良い食材を使って丁寧に作る食事(日本食)
  • 他人にやさしい

また、映画の中でフィンランドの街並みが多く出てくるのも好きだ。サチエの住まいも多く出てくるが清潔感と簡素さがありあこがれる、簡素といっても決して殺風景ではなく、アキ・カウリスマキの映画でたびたび出てくるのと同じカラフルなインテリアと蛍光灯ではない灯りが良い。私は住居においては蛍光灯で明るすぎる部屋は好きではない。現地での生活が手に取るように想像できるのがよい。

私は先進国に海外旅行に行ったとき、団体ツアーに参加して世界遺産を見て回るような旅行は好みではない。なるべく現地の人と同じように過ごす旅行が好きだ。公共交通機関を使い、スーパーやコンビニ・デパートに行って買い物をし、ファストフード店にも入るしガイドブックに載っていない現地の人が利用するレストランにも入り、美術館や音楽の公演にも行く、街歩きもゆっくり散歩するようにするのが好きだ。映画を観ていて海外のそういった風景や生活が多くの場面で出てくるようなものが好きだ。この映画はまさにフィンランドの街が何となくイメージできるのでその点でも好きだ。

この映画の撮影にあたっては、実際に存在する現地の食堂「カハヴィラ スオミ(Kahvila SUOMI)」を使用したそうだ、そして、現在も「ラヴィントラ カモメ(Ravintola Kamome)」として実在し、日本人観光客の少ないフィンランドにおいて日本人の集中する観光スポットとなっているそうだ。Googleマップで検索してみたらちゃんと出てきた。ヘルシンキには一度旅行に行ってみたい。

良い映画だった。

 

 


松戸の人気パン店「Zopf」に行く

2023年12月07日 | グルメ

松戸近辺に用事があったため、帰りに松戸市小金原の人気パン店「Backstube Zopf(ツオップ)」に立ち寄ってみた。何回の来たことがある店だ。Backstubeとはドイツ語でパン焼き小屋という意味。名前はドイツ語だが商品は多国籍のパンだそうだ。朝や昼時などは行列ができて買うのにも時間がかかるようだが、今日は3時くらいに到着したところ、直ぐに店に入れた。買いに来るならこの時間帯が穴場だろう。

ツオップは決してアクセスのいい店ではない。商店街の中にあるわけでもなく、むしろ、住宅街の中にぽつんと一軒ある。車でないと時間がかかる。近くの駐車場は10台以上停まれる収容力、いかに多くの人が車で訪れるかわかる。

この店は1階がパンの販売店とパン工場、2階がカフェ・レストランになっている。2階のカフェは休業中だったので1階のパン屋さんに寄って明日の朝のパンを買った。店内は狭いが多くの種類のパンが陳列されている、どれを選んだらよいかわからないので適当に選んで2人分買ってみた。多分ドイツパンだと思う。

買ったあとも続々と人が訪れる。この店は東京駅構内に出店を作り、そこはカレーパン専門の店にしてある。以前そこに訪問したときのブログはこちら参照。今日も店内にはカレーパンが売っていたがなぜ東京の出店の方がカレーパンなのか知らなかったが、帰ってからネットで調べると、カレーパンはこの店の名物だそうだ。

翌朝、早速食べてみたら大変おいしかった。3つしか買わなかったが結構大きいのでシニア夫婦2人で十分な量だった。

こちらに来る予定があるときには必ず立ち寄りたい店だ。


月イチ歌舞伎「法界坊」を観る

2023年12月06日 | 歌舞伎

MOVIXで月イチ歌舞伎「隅田川続悌(すみだがわ ごにちのおもかげ)法界坊」を観てきた。初めて見る演目だ。2008(平成20)年11月、浅草の浅草寺境内に出現した仮設の芝居小屋平成中村座で上演され、NYでも拍手喝采とスタンディングオベーションの絶賛を浴びた串田和美演出の「法界坊」の録画。平成中村座は、中村勘三郎と演出家の串田和美が中心となって平成12年11月にスタートした芝居小屋。

今日はムビチケ3枚セット券を使い、1,900円(通常2,200円)で入った。30人くらいは入っていただろうか。シニア層が多かった。

出演
聖天町法界坊:中村 勘三郎
永楽屋手代要助・吉田宿位之助松若:中村 勘九郎
永楽屋権左衛門:坂東 彌十郎
永楽屋娘お組:中村 扇雀
道具屋甚三郎(実は吉田家の忠臣):中村 芝翫
花園息女野分姫:中村 七之助
仲居おかん・淡路七郎女房早枝:中村 歌女之丞
山崎屋勘十郎:笹野 高史
番頭正八:片岡 亀蔵

ストーリーは、お家騒動もの。お家は「𠮷田家」。簡単なあらすじは、

・お家乗っ取り派の悪人の陰謀で家宝「鯉魚の一軸(りぎょのいちじく)」が紛失
・お家断絶
・若君の松若丸は町人になって町中の店に手代要助として奉公しながら家宝を探す
・店の美しい娘お組と恋に落ちたり、悪い番頭(お組が好き)にイヤガラセされたりする
・この番頭は、お家騒動で出てきた悪い家来の仲間
・苦境に陥る若君を、昔の家来(道具屋甚三郎)やその関係者が陰日なたに助ける
・若君の元の許嫁の野分姫がやってきて、お組と険悪になったり若君と痴話喧嘩になったりする
・最後は家宝も見つかって悪い家臣も罰を受けて、お家再興になる

この演目は、奈河七五三助による狂言。お家騒動もので、法界坊という小悪党の坊主がからむ。法界坊は 町の乞食坊主だが、金と女が大好き、お組に惚れていて要助にいろいろイジワルをする。法界坊のインパクトが強いので、この人が実質上の主人公になっている。法界坊はお組の父親を殺し、さらに野分姫にも言い寄って抵抗されたので殺してしまったりするが、最後は道具屋甚三郎に殺されてしまう。法界坊は悪党ながらも愛嬌溢れる人間的な魅力がある人物として描かれている。

お家騒動解決の後は、所作(踊り、大切所作事)になり、本演目の大きな見どころのひとつ。法界坊の亡霊と、殺された野分姫の亡霊とが同じお姫様の扮装で出てきて踊る。この部分だけ独立して出すこともあり、そのときは「双面水照月」というタイトルで呼ばれる。勘三郎演ずる法界坊と野分姫の霊が合体したお組そっくりな葱(しのぶ)売りの女(「双面(ふたおもて)」と言われる)が、徐々に本性を現しながら変化に富んだ舞踊劇を見せる。

鑑賞したコメントを書いてみたい

  • 月イチ歌舞伎は亡き中村勘三郎の作品を多く取り上げているが、本演目も勘三郎が主役で八面六臂の活躍を繰り広げる、歌舞伎にかける情熱の熱さにいつも感動させられる
  • 歌舞伎は通常、終幕後のカーテンコールはないが、本作はカーテンコールがあった。それもその筈だ、最後の所作が終わって幕が閉じても拍手が鳴り止まないのだ。これは良いことだと思う。ニューヨークでこの作品を演じた時、スタンディング・オベーションにより拍手が鳴り止まなかったというのもわかるような気がする
  • 勘三郎の法界坊と橋之助(芝翫の甚三郎のかけ合いが面白かった。両者は10才違いだが、当時でも押しも押されぬ看板役者、自分たちが歌舞伎界を背負って立つ気概があったのだろう、アドリブをかなり入れたであろうセリフのかけ合いが素晴らしいと感じた
  • 15年前の上演だが、この当時から既に野分姫を演じていた女方の七之助の妖艶さが光った。最後の所作で勘三郎が野分姫と法界坊の合体した葱売りの女を演じていたとき、台詞は後ろで七之助が黒子になって話していた
  • 串田和美の演出だろうが、開演直後に主要な登場人物の紹介があったのはユニークであった。役者が一人ずつ順番に出てきて、その役をアナウンスで説明するのだ、これは良いことだと思う
  • 最後の場面、「双面水照月」の所作(踊り、大切所作事)が大仕掛けで楽しめた。所作と言えば、踊りだからおとなしい感じのものが多いと思うが、本作は派手な動きが多く、観客を十分楽しませる工夫がなされていた、これもあって閉幕後も拍手が鳴り止まなかったのだと思う

十分楽しめた演目だった。


映画「トーマス・クラウン・アフェアー」を観る

2023年12月05日 | 映画

AmazonPrimeで映画「トーマス・クラウン・アフェアー」を観た。1999年、米、監督ジョン・マクティアナン、原題The Thomas Crown Affair。

何を見ようかAmazonPrimeで探していたら、美術館での絵画の盗難を扱った映画で評価が高いこの作品を見つけ、美術ファンとして興味が持てたので観てみようと思った。

ニューヨークの美術館が舞台、観ているとメトロポリタン美術館のようだ。トーマス・クラウン(ピアース・ブロスナン)は投資ビジネスで成功した大富豪。彼は裏で名画を盗み出すことを道楽としていた。ある日、美術館からモネの絵画が白昼堂々盗まれる。保険会社の敏腕調査員キャサリン・バニング(レネ・ルッソ)は大胆にもクラウンに会い、真犯人がクラウンであることを確信し、ニューヨーク署のマッキャン警部(デニス・レアリー)に告げる。キャサリンはクラウンをデートに誘い出し、彼の屋敷の合鍵を手に入れて侵入、盗難されたモネの絵画を発見するがそれは贋作だった。はめられたと知ったキャサリンはクラウンに会い行くが、話しているうちにお互い惹かれ合うようになる。だが、クラウンには別の女アンナがおり頻繁に密会していた。それを知って本来の自分を取り戻したキャサリンに、クラウンは不動産を処分して一緒に逃亡しようと持ちかけるが・・・

そんなに期待しないで観たが、大変面白い映画だった。絵画を盗み出す手口や、その盗み出した絵画を最後に美術館に返還する手口など、観ていてなかなか面白かった。トーマスとキャサリンの駆け引きも面白かったし、話していくうちに何となく惹かれ合っていく過程などもよかった。それぞれの場面に、その後の事件等の伏線がはられており、「嗚呼、そういうことだったのか」と言うことが後でわかる仕掛けが面白い。

その上で2、3コメントをすれば、

  • モネのベニスの朝焼けか夕焼けの絵を美術館から盗むとき、アタッシュケースに絵を入れて、閉じるところがあるが、こんなことをしては絵の画布から絵の具が剥落するので、このようなやり方はあり得ないのではないか、筒に丸めて入れるのはあると思うが
  • 盗んだモネの絵の上に別の絵を水彩画で描き、それがスプリンクラーの水で洗い流されて、元の絵が見えてくる、こんなことも普通あり得ないのではないか
  • 盗んだ絵を戻すとき、ちょっとした爆発物が展示室の中で煙を吐いて火事のようになり、スプリンクラーが作動すると、展示作品を保護するために作品の横からシャッターのような壁が出てきて作品を被害から守る様子が映されるが、これは実際に取られている措置なのであろうか、そうだとすれば感心だが、多分映画向けのものでしょう

トーマス役のピアース・ブロスナンは1953年生まれのアイルランド人で5代目ジェームズ・ボンドになった俳優だ。「ゴールデンアイ」など4作品に出演して興行的に成功した。本作でも、若くして大富豪になった男をうまく演じていた。キャサリン役のレネ・ルッソは1954年生まれの米人、保険事故調査員としての辣腕ぶりにお色気が加わり、その両方を武器にトーマスに迫っていく演技をうまく演じ、また、大胆な脱ぎっぷりにも驚いた。

サスペンスであり、ロマンスであり、美術館や絵画を扱った作品として、興味が持てる人には観て損がない映画だと思う。楽しめました。


演劇「桜の園」を観る

2023年12月04日 | 演劇

テレビで放送していた演劇、アントン・チェーホフ原作、「桜の園」を観た。原作は読んだことがあったが、演劇で観るのは初めて。2023年8月にPARCO劇場で上演されたもの。太宰治の「斜陽」はこの原作に影響された作品と言われている。

英語版:サイモン・スティーヴンス
翻訳:広田敦郎
演出:ショーン・ホームズ
出演:
原田美枝子(ラネーフスカヤ、女主人)
八嶋智人(ロパービン、実業家)
成河(トロフィーモフ、学生)
安藤玉恵(ワーリャ、養女)
川島海荷(アーニャ、娘)
前原滉(エピホードフ、管理人)
川上友里(シャルロッタ、家庭教師)
竪山隼太(ヤーシャ、若い召使い)
天野はな(ドゥニャーシャ、メイド)
市川しんぺー(ピシーチク、地主)
松尾貴史(ガーエフ、兄)
村井國夫(フィールズ、老僕)
 
桜の園は、20世紀のの初頭、時代の変わり目に、農奴解放令によって没落していく貴族の領地「桜の園」が舞台。兄のガーエフに領地経営をまかせて自分は5年間フランス暮らしをしてたラネーフスカヤ夫人が戻ってきた。返済しきれない額に達した借金ができていたが、昔の生活が忘れられずに散在を続ける夫人に元農奴の息子で実業家として成功しているロパービンが、桜の木を切り倒し、別荘賃貸経営に転じるよう提案するが、桜の園を誇りとする夫人たちに無視される。結局、領地は競売にかけられ、夫人は桜の園を失う、そして落札したのはロパービンだった。
農奴解放という大きな時代の変革時に、そのの変化に適応して自分を変えられる人とそれができない人がいた。桜の園では、変化に対応できない人としてラネーフスカヤ夫人と兄のガーエフ、そして老僕のフィールズが、新しい時代に生きる人々としてロパーヒン、アーニャ、トロフィーモフ、ヤーシャ、ドゥニャーシャらが描かれている。
 
このような「桜の園」が問いかけている問題は、いつの時代でも当てはまるものだろう。時代の大きな変化についていけずに従来のやり方をかたくなに変えようとしない人と、時代の変化を感じ、いち早く自分を変えられる人の違い。ただ、現実問題として、今現在に当てはめれば、何が時代の大きな変化なのか、それを見極めるのは結構難しいと言えるかもしれない。
貴族の没落ならまだ良いが、国家の没落につながりかねない時代の変化への対応の遅れがあるのではないか、というのが一番心配なところだ。日本の安全保障環境の悪化は間違いなく時代の大きな変化だろう。
演出家のショーン・ホームズはTVのインタビューで「桜の園はさまざまな利害が対立する戦場であるということです、劇中に個人的、政治的、哲学的なたくさんの戦いがあり、時には穏やかに見えたり、ちょっと風変わりに見えたりはするが、その対立の意味するところは非常に重要で、それで人生の苦しみを表現している」と述べている。これは「桜の園」の一つの見方であろう。
 
舞台の美術、照明などでは、全4幕のすべてにおいて照明は暗く、没落貴族の運命を示しているような感じがした。
この演劇の出演者では、ロパービン役の八嶋智人(53)の演技が光っていたと思う。NHKの「チョイス@病気になった時」をたまに見ていて知った俳優であるが、演劇にも結構出演していたのは知らなかった。桜の園の競売の落札人がロパービンであったことが明らかになってから、彼の演技が俄然、物語の中心になってきて、彼の演技がみごとだった。
ラネーフスカヤ夫人役の原田美枝子(64)は最近の朝ドラの「ちむどんどん」に、管理人エピホードフ役の前原滉(31)と、ワーリャ役の安藤玉恵(47)はともに最近の「らんまん」に出演していたので、その限りで最近の演技は見ていたが、この演劇でも持ち味を活かした役作りをしていた。
演劇の場合、終演後のカーテンコール時に、通常、出演者はなぜか笑顔を見せずに真面目くさった顔をして挨拶する場合が多いが、今日の公演では原田美枝子はニコニコ笑顔で観客に挨拶していたのが印象的だった。これで良いと思う。
 
1回の鑑賞ではすべて理解することはできないので、折に触れて原作を読み直し、演劇も見直したい。

蔵前の「喫茶半月」に行く

2023年12月03日 | カフェ・喫茶店

蔵前に買い物に来たとき、どこかカフェで一休み使用と思い、以前来たことがある「喫茶半月」に行ってみることにした。

この店は、先日訪問したfrom afarと同じ会社が運営している喫茶店。以前は近くにある系列店の菓子屋シノノメの2階にあったが、最近、現在の場所に引越したようだ。以前、シノノメの2階に行く細い内階段の先にあったとき、店舗が半分隠れているから「半月」という名前にしたそうだ。

引越後の初訪問、訪ねて行ってみると、今度は1階の外からも見える場所にある。ここも普通に通り過ぎると喫茶店があると気付かない可能性がある。小さい扉を開けて中に入ると、先ずはカウンターのレジのところで注文して席で待つ方式。

いろいろメニューがあったが、普通のブレンドコーヒー、確か550円を注文した。ケーキも人気あるようだが、今日は我慢。中にはカウンター席、大きなテーブル席、2人掛け又は4人掛けのテーブル席がある。私は一人なので大きなテーブル席に腰かける。

内装はアンティーク家具調の木のしつらえ。落ち着いた感じは先日のfrom afarと同じだが、こちらの方が狭い。大きなテーブルの真ん中には大きな花瓶に紅葉したススキのようなものが活けてある。全体的に洒落た感じでセンスの良さを感じる。来ている客はすべて若い女性かカップルだ。おじさんが来るような店ではないようだが、写真は撮ってよいとのことなので、図々しく撮る。

出てきたコーヒーを飲むと、何か独特の味がする。何と表現して良いかわからないが嫌いな味ではなかった。別の場所で焙煎した豆も売っているようなので自家焙煎コーヒーなのだろう。

店には次々と女性客が入ってくる。先日のfrom afarは幹線道路から一つ入ったところにあるので客は少なかったが、ここは国際通りに面して目立つせいか、それなりに客は入ってくる。

30分くらいくつろいで店を出た。良い喫茶店であった。