ゆっくり行きましょう

気ままに生活してるシニアの残日録

2023年(令和5年)の大晦日

2023年12月31日 | その他いろいろ

今年の1月3日からブログを始めて、ミュンヘン旅行に行っていた8日間を除き、毎日欠かさず投稿して1年が経過した。

この1年(1月3日から12月30日の362日)の訪問者数の累計は12月30日で37,257人であり、1日平均103人であった。最初のうちは50人程度の日も多かったし、ミュンヘン旅行期間中はほとんど訪問者がなかったことを考えると、できすぎくらいであろう。

毎日100人以上の人が自分のブログを訪問して下さるというのはうれしいものである。訪問して下さった皆様には厚く御礼申し上げます。来年も頑張って投稿していきます。

さて、今日は大晦日、夜は夫婦で年越し蕎麦を食べた。私は民放を圧迫する紅白歌合戦は見ないで録画していた映画でも観て早めに寝るつもりである。

それでは良いお年をお迎え下さい。


神保町の学士会館の喫茶室で寛ぐ

2023年12月31日 | カフェ・喫茶店

ランチョンで昼食をとった後、午後から眼医者に行かなければならないが、まだ時間が早いので近くの喫茶店でゆっくりしようと思った。

さて、どこへ行こうか、年末なのでどこも混んでいるだろうが、学士会館が近くにあるのを思いだした。ここはレストランがいくつか入っているが穴場だ。喫茶室もあったと思い行ってみた。

神保町側の1階の入口から入ると、一番奥にThe Seven’s Houseというカフェ・ビアー・ワインを出す店があったので入ってみた。中は13時過ぎだけど混んでなく直ぐに座れた。一人なので窓側のカウンター席のようなところに案内された。

コーヒー550円を注文。席の前は窓になっており、レースのカーテンが掛かっているので外が薄らと見える。冬の午後の日差しがやさしい。学士会館自体が明治の洋風建築のように落ち着いた雰囲気があり、店内もその雰囲気を醸し出している。ゆっくりとくつろげる雰囲気が大変よい。みんな長居しているようだ。

学士会館のホームページを読むと、学士会館の再開発事業のために今月末でレストランの営業はしばらく休止するそうだ。建替えのプロジェクトが進んでいるようだ。これには驚いた、現学士会館を体験できるのも今月が最後になるとは。思いつきで来て見たけど、良かった。

学士会館は、関東大震災後に建築された震災復興建築、外壁が昭和初期に流行したスクラッチタイルで覆われた4階建ての旧館は1926(大正15)年6月に着工、1928(昭和3)年5月20日に開業した。総工費は約106万円。関東大震災の教訓をいかした、当時では極めて珍しい耐震・耐火の鉄骨鉄筋コンクリート造りとなっている。

建築推進の中心となったのは、日本の耐震工学を確立した佐野利器氏。設計者は彼の門下生でもあり、 日本橋高島屋や帝国ホテル新館などを手掛けた高橋貞太郎氏というからすごい。

ゆっくり寛いで、眼医者に向かいました。ご馳走様でした。


陸奥宗光「新訂蹇蹇録(日清戦争外交秘録)」を読む(その1)

2023年12月30日 | 読書

陸奥宗光著「蹇蹇録(けんけんろく)」(岩波文庫)を読んだ。なぜこの本を手に取ったかというと、今年読んだ東大の加藤陽子教授(近現代史)の著作「それでも日本は戦争を選んだ」の中で日清戦争開戦時の外務大臣陸奥宗光がさも好戦的な人のように書かれていたのを見て違和感を覚えたからだ。自分で実際に読んで見ようと思った。

この蹇蹇録というのは、明治維新後、朝鮮で東学党の乱が発生してから日清戦争が起こり、講和条約、三国干渉に至るまでの外務大臣としての外交戦略の概要を記録したものだ。

巻末の解説で中塚明氏(奈良女子大名誉教授、日本近現代史)は、当時の日本の歴史について「日本はやっと不平等条約から解放される突破口をひらき、日清戦争に勝利し、朝鮮・中国を犠牲として帝国主義列強と並ぶのに決定的なみちを開いたのである」と、陸奥ら先人の苦労を顧みず、日本罪悪史観とも思える見方を示している。

そして、陸奥の「勝ちに乗じて窮寇を追撃する」風が蹇蹇録の随所に出ていると批判している。先人に対して失礼というべきであろう。個人の性格を批判するような人格攻撃を出版物で述べることが許されるのであろうか。学者だからといって何を言っても許されるわけではないだろう。

そして、蹇蹇録は日清戦争外交の全てを漏らさず書きしるした著作とする見解にクギを刺し、具体例を挙げずに、日本の不利を招くようなことや伊藤博文、山県有朋など関係者に累が及ぶようなことは書いてないと、している。これは1つの批判ではあるが、そんなことを言うなら聞きたい。日本の近現代史の権威たる大学教授たちは、日本の朝鮮統治には朝鮮のために良いことも多くやっていたという事実を著作において相当なスペースを割いて書いているのか。学者であるならば自己の見解に不都合な事実でもキチンと言及すべきであろう。それができていれば、先のような批判も許されようが、そうでないならば自らの行いを棚に上げて陸奥の本を批判する資格はないだろう。

現在、外務省の敷地内には陸奥宗光像が建立されているそうだ。これは明治期に外相として条約改正、日清戦争等の難局に果たした陸奥宗光の業績を讃え、明治40年に建立、昭和18年に戦時金属回収により供出、あらためて同外相の没後七十周年に当たる昭和41年に再建、今日に至る、と外務省は説明している。これは陸奥に対する一般日本人の抱くイメージでもあろう。

近現代史の権威である東京大学教授や奈良女子大名誉教授たちはこういった見方に批判的なご意見をお持ちのようだ。そこで、蹇蹇録を読んで陸奥が述べていることやそれに関するコメントを書いて見たい。個人的には、加藤教授も言及していた日清戦争の開戦の契機、経緯に関心がある。

(続く)

 


神田神保町「ビアホール・洋食 ランチョン」でランチ

2023年12月29日 | グルメ

今日は神保町のビアホール・洋食のランチョンで昼食をとった。ここ何回か店の前にきているが行列があって断念していた。今日は三度目の正直、12時40分くらいに来てみると行列はない、階段を上って2階に行くと、ホール入口前に3名が並んでいた。この程度なら直ぐに入れるだろうと思い、並んでみた。ここに来たのは2回目だが、以前来たのはだいぶ前だ。

5分も立たないうちに座席に案内される。店内は満員で、大きな団体の人たちが大声で話している。座席から見ていると、どうも今日が会社の年内最終勤務日、ワインを飲みながら食べている。明日から休みなのでみんな楽しそうだ。しばらく仕事から解放される喜びに満ちているので話し声も大きくなろう。私も何回も経験したのでよくわかる。

それ以外もみんな楽しそうに昼食を食べてるし、ビールを飲んでいる人も多い。昼間からおいしいビールが飲めるのがここの良いところだ。今日はうってつけの日だろう。従って、店内はとにかくうるさいし、店員も忙しそうだ。もうここではコロナやインフルは全然関係なしだ。

私は昨夜飲んだので、今日はビールはやめにして、日替わりランチ1,200円と季節の牡蠣チャウダー450円をたのんだ。

最初、クラムチャウダーがきた。クラッカーを割ってクラムチャウダーの中に入れて食べてみた。牡蠣の香りがしておいしい。ただ、牡蠣の大きさは小さかったが、仕方ない。

次に日替わりランチ。ハンバーグに魚のフライ、マッシュポテトとマカロニサラダ、野菜サラダが添えてある。野菜サラダにはオリジナルのドレッシングがついていたのでかけて見た。ハンバーグがちょっと冷めて温かくなかったが、だいたい合格点だ。料理はどんどんできているが、配膳が忙しくて間に合っていない、その間に料理が冷めてしまう、という感じだろう、これも繁忙期でやむを得まい。

おいしく頂いて店を後にした。出るとき階段には順番待ちの人が10名以上並んでいた。ちょうど列が短くなったときに来たようでラッキーだった。落ち着いて食べたい人には向いていないでしょうがビールを飲みながら仲間と食事したい人には良いレストランでしょう。

ご馳走様でした。


「是れはうまい!豊しま」で厚肉そばを食べる

2023年12月28日 | グルメ

テレビ番組に「ドランク塚地のふらっと立ち食いそば」という番組がある。これはタレントのドランク塚地が立ち食いそばやを訪ねて、店主の話を聞き、看板メニューのそばを食べて感想を述べる番組である。面白いので毎週見ている。

このような食べ物屋を訪ねて歩く番組は古くからあり、太田和彦の居酒屋関係や𠮷田類の「酒場放浪記」、松重豊の「孤独のグルメ」、「街中華で飲ろうぜ」など、私も以前はよく見ていたが、最近は飽きてきてどの番組も殆ど見ていない。

しかし、今回取り上げた「ドランク塚地のふらっと立ち食いそば」は従来にない分野である立ち食いそばを取り上げている点でユニークであり、最近面白く見ている。私も一時期立ち食いそばに凝ったことがある。その面の雑誌や本なども結構出ているので、そんな本を読んで都内各地の立ち食いそばやを食べ歩いたこともある。

しかし、あるときから遠ざかった。なぜなら、立ち食いそばやのそばはつゆが濃くて塩分が多めだと思われ、また、立ち食いそばに欠かせない天ぷらを作るのにあまり良い油を使っていると思えないためである。

そういう状況ではあるが、立ち食いそばというのは日本の食文化と言えるほど庶民の食生活に浸透しているものであり、そのなり手も段々少なくなってきて、店を閉鎖するケースも増えていることを知ると、この立ち食い食文化を維持・保存するためにも通わなくてはいけないと思うようになった。また、このテレビ番組を見ると店では相当な努力をして立ち食いそばを作っていることがわかるので、自分勝手な偏見で店を見てはいけないと思い始めた。

私の敬愛する食ブロガー「断腸亭料理日記」(https://dancyotei.hatenablog.com/)の作者断腸亭氏も、個人経営の立ち食いそば店を「路麺」と呼び、しばし下町の路麺店を訪ねている。私も可能な範囲で路麺店で食事をとるように心がけようと思うに至ったのである。

さて、「ドランク塚地のふらっと立ち食いそば」であるが、先週の番組で、飯田橋の駅近くの「是れはうまい!豊しま」を取り上げていた。ここの売り物は肉そばであるが、2代目がそれを進化させ、「厚肉そば」を作った。分厚い豚肉をそばのつゆでじっくり煮込んで柔らかくし、それをそばの上にドーンと乗せ、刻みネギと揚げ玉を乗せ、つゆをかけて出来上がり、ドランク塚地がそれを実にうまそうに食べていたので、思わず行きたくなった。

都心に用事があるとき、少し早めに出て、豊しまに11時過ぎに到着した、中はまだ余裕があり、直ぐに「厚肉そば」を注文した、680円だったか。出てきたものを見ると、テレビで見たのと同じだ。立ちながら肉を食べ、そばをすする。おいしい。肉がすごすぎる。肉の脂が多いのが気になるがたまには良いでしょう。一気にかき込み、完食した。本当においしかった。

ご馳走様でした。


映画「PERFECT DAYS」を観る

2023年12月27日 | 映画

日比谷シャンテで映画「PERFECT DAYS」を観た。2023年、日本、監督ビム・ベンダース。1,300円、シニア料金、座席は満席だったのには驚いた。シニアが圧倒的に多かった。

この映画は、2023年・第76回カンヌ国際映画祭コンペティション部門に出品され、主演の役所広司が日本人俳優としては柳楽優弥以来19年ぶり2人目となる男優賞を受賞した。東京・渋谷区内17カ所の公共トイレを、世界的な建築家やクリエイターが改修する「THE TOKYO TOILET プロジェクト」に賛同したベンダースが、東京、渋谷の街、そして同プロジェクトで改修された公共トイレを舞台に描いた。このトイレプロジェクトは偶然だがテレビの「新美の巨人たち」で取り上げていたので知った。

映画は主人公の平山の日常生活の模様を淡々と描いていく。東京スカイツリーの見える下町のアパートに一人で住む中年の平山、彼の過去は何も示されない、毎朝近所のお寺の坊さんのゴミ掃除の箒を掃く音で目覚め、歯を磨き、洗面し、仕事着に着替え、アパートの前にある自販機で缶コーヒーを買う。仕事道具を積んだ軽ワゴン車に乗り込むと缶コーヒーを飲み、カセットテープで古い音楽を聴きながらトイレ掃除の現場に向かう。相棒の若者(柄本時生)と分担して丁寧に仕事をこなすと、夕方には銭湯の一番風呂に入る。そのあと、行きつけの浅草駅地下の飲み屋で一杯やり、家に帰ると、文庫本を読んで眠くなると寝る。この繰り返しだ。テレビもないし新聞もない、パソコンもない。携帯だけは持っていたが。

変化と言えば、①あるとき姪が家出して訪ねてくる②仕事の相棒が彼女を遊びに連れて行くバイクが壊れたので軽自動車に同乗させてやる③行きつけのスナックのママのところに別れた亭主(三浦友和)が訪ねてきた場面に遭遇する④毎日公園で撮っている木漏れ日の写真を現像しに行き、新しいフィルムを買う⑤本を読み終わると新しい本を古本屋に買いに行く、などだけ。

ストーリーに劇的な展開があるわけでもなく、どんでん返しがあるわけでもない。監督はこの主人公の平和な、規則的な、何にも縛られない自由な生活を称えているのだろうか。平凡な生活こそ人間の最大の幸せである、ということを言いたいのだろうか。そのこと自体、反対する理由は全くないどころか同意見である。

現在の先進国における暖衣飽食に対する痛切な皮肉か、あるいはウクライナや中東のような人間同士で殺し合うバカさかげんに対する批判か。人間みんなこんな風に生きていけば幸せなのに、どうしてそれができないのか。映画の中で姪の娘が「お母さんは自分たちが住んでいる世界とおじさんの住んでいる世界は違うのと言っているのよ」と平山に話す場面がある。住んでいる世界が異なれば考え方も異なり、違う考えの人とは衝突も起こる。衝突を起こさないためには、違う世界の人とは接触しないし、接触しても自己の主張を押し付けたりしなければ良いわけだが、なかなかそうもいかないというのが現実だ。

そんなことを考えながらこの映画を観たが、何かすっきりした後味はなかった。それは映画としてはもう少し何かがあった方が良いのではと感じたからだ。しかし、感じ方は人それぞれで良いのだろう。

平凡な毎日を退屈と感じる人も多いだろう、特に若者は。それは仕方ない、この映画の良さがわかるのは中高年になってからで良い。平凡な生活の良さが身にしみてわかるのは、それを失ってからだ、不治の病におかされたときとか、家族を亡くしたときとか、いくらでもそんなことはあるだろうが普段それに気付かないことが多い。そんな点が少しストーリーに絡めば、更に観る人に考えさせるのではないかと思った。

私も平山のような質素な、質実剛健な生活にはあこがれる。平山のライフスタイルで良いと思ったのは読書の習慣だ。最初の方で彼が読んでいる本が画面に映る場面があったが、タイトルがよくわからなかった。途中、古本屋で買った本は幸田文の「木」と、もう1冊はパトリシア・ハイスミス(米、1995年74才没)の「11の物語」だ。古書店主の女性が「パトリシア・ハイスミスは不安を描く天才だと思うわ。恐怖と不安が別のものだって彼女から教わったの」と平山に語るシーンが印象的だが、彼女の本は読んだことがないので、その意味がわからなかったが。

自分がどんな経済的境遇になっても読書の習慣さえあれば心が豊かな生活が送れると思っている。文庫本1冊、古本屋なら500円以下で買えるだろう、それを毎日少しずつだが読む習慣があれば豊かな人生が手に入ると思う。もう少し余裕があればテレビでは多すぎるくらいのクラシック音楽番組もあるしテレビ映画も多くある。金がなくても心が豊かな生活は可能だ。質素で規則正しい生活の中にそういった金のかからない楽しみがあれば人生がどれだけ充実することだろうか。

良い映画でした。

ところで一昨日、24日のクリスマスイブは例年通り、シニア夫婦二人で鶏肉。このくらいの贅沢はあっても良いでしょう。

 


新国立劇場の演劇「東京ローズ」を観に行く

2023年12月26日 | 演劇

新国立劇場の小劇場でミュージカル「東京ローズ」を観てきた。今日は1階席の前から4番目の列、しかも前は通路になっているため広くなっているので楽だった。7,315円の高齢者割引。席は満席に近いのではないかと思った。若い女性が多いのが演劇やミュージカルの特徴だ。これは良いことだと思う。

【台本・作詞】メリヒー・ユーン/カーラ・ボルドウィン
【作曲】ウィリアム・パトリック・ハリソン
【翻訳】小川絵梨子
【訳詞】土器屋利行
【音楽監督】深沢桂子/村井一帆
【演出】藤田俊太郎
【振付】新海絵理子
【舞台監督】棚瀬 巧

キャスト

飯野めぐみ
シルビア・グラブ
鈴木瑛美子
原田真絢
森 加織
山本咲希

全ての出演者をオーディションで決定するフルオーディションで選ばれた6人の出演者である。このオーディションには936名が応募し、審査を経て決定そうだ。大変意欲的な企画だと思ったし、こんなに多くの若者が演劇の世界を希望しているというのも心強いし、うれしい。

今日の公演で面白いなと思ったのは、主人公のアイバ・トグリを誰か一人がずっと演じるのではなく、途中で何回か別の出演者と交替することだ。今日は誰と誰が務めたのかはわからないが、この狙いは面白いので、その狙いを聞きたいところだ。チラシを見ると6人全員がアイバを演じることができるようである。チラシを見ると、例えば飯野めぐみさんには8つの役が書かれているので、全ての役が途中で、あるいは日替わりで交替して演じているのかもしれない。複雑すぎてよくわからない。役者にとっては台詞を覚えたり、役柄になりきるのが結構難しいと思うがどうだろうか。

物語

この物語は2019年にイギリスのBURNT LEMON THEATREが製作したもの。BURNT LEMON THEATREは2017年に活動を開始した英国の女性を中心メンバーとした演劇集団。TOKYO ROSEの作者カーラ・ボルドウィン、英国版の演出を手掛けたハンナ・ベンソンをはじめ、メンバーの多くが演出と俳優、振付と俳優、作曲と俳優など公演においては色々な役割を兼任しながら作品創作を行っている、と説明されている。

アイバ・トグリ(戸栗郁子)は1916年にアメリカで生まれた日系二世。日本語の教育を受けることなくアメリカで青春を過ごした。叔母の見舞いのために25歳で来日し、すぐに帰国するはずが第二次世界大戦勃発によりアメリカへの帰国が不可能となってしまう。そこでアイバは、母語の英語を生かし、タイピストと短波放送傍受の仕事に就く。やがてラジオ・トウキョウ放送「ゼロ・アワー」のアナウンサーとなったが、その女性たちをアメリカ兵たちは「東京ローズ」と呼んだ。終戦後、アイバが行っていたことは、日本軍の連合国側向けプロパガンダ放送であったとされ、本国アメリカに強制送還され、国家反逆罪で起訴されてしまう。彼女は本当に罪人だったのか?

こういう説明になっているが、これは実話だそうだ、全く知らなかった。アイバ・トグリ(戸栗郁子)も実名である。

この物語は、戦争が国民の人生に与える大きな影響、日本の戦時プロパガンダ放送への協力、人種差別、2つの祖国を持つ人の悩み、女性の名誉回復ための長い闘い、などが論点となって展開されているように思う。そして最後は真実が勝つ、というのがアメリカらしい。

音楽

今回驚いたのは、舞台設定と音楽だ。舞台は大変雰囲気のあるユニークなセッティングとなっており、かなり考えたな、と言う印象を持った。そして、舞台後方は2階建てになっており、その2階部分には4人の演奏家(座席から見えたのは、うろ覚えだがピアノ・チェロ・バイオリンなど)が楽器と共に配置されており、劇の進行に合わせて生演奏をするのだ。それも場面に合わせてジャズだったりクラシックだったり変えていたようだ。よく考えている。これは素晴らしいと思った。通常の演劇ではこんな経験はしたことないが、本作はミュージカルだから有り得た設定なのかもしれない。

台本・作詞

台本は二人の外国人女性により作られたものだ。彼女たちと音楽の作曲家のウイリアム・パトリック・ハンソンに対するインタビューの動画がHPで見られるようになっているのは良いことだと思うし、鑑賞の参考になる。二人のいずれも若くて明るい雰囲気なのは好感が持てる。ウイリアムも音楽についてよく考えていることがわかる。

日本では戦争関係の演劇やドラマになると必ず日本軍や警察だけを悪者にするが、本作では、アメリカが日本に対して原爆を使って日本人にも多くの犠牲者が出たことを述べる場面がある。また、トグリの両親がカリフォルニアの日本人の強制収容所に入れられ、母はそれに耐えられずに亡くなったことも出てくる。戦争の勝者も非人道的な犯罪を犯していたのだ。それらについても触れるのは非常にバランスが取れた考えであり、今の日本に欠けている視点であると思うので、その意味でも良い台本だと思った。

その他

日本の演劇界では、役者が常に大声で怒鳴るように話す傾向があり、如何なものかと感じていた。これは劇場が役者の細かい声まで聞き取るには広すぎるからだと想像するが、今回は役者がマイクを使っていた(多分拡声用だと思うが)。そのためかが、話し方に無理がなく、日常会話のように舞台でも話していた。これはこれで良いやり方ではないだろうか。肉声にこだわる必要はないと思う。

この物語では、東京ローズという日本の連合国側向けプロパガンダ放送の女性アナウンサーたちが主役だが、日本がそんなことをしていたのか、というのが私には驚きであった。アメリカこそ、こういうことをもっとも得意としている国家だと思っていたからだ。

非常に良い演劇(ミュージカル)であったと思う。また、今回出演した6名の出演者の今後の活躍を期待したい。

 

 


神保町の「仙臺」で牛タンカレーを食べる

2023年12月25日 | グルメ

今日は新国立劇場で13時からの観劇があるので、いつもの通りランチは神保町でどこか探すことにした。いろいろ考え、先日の同じようにランチョンに来て見たら、11時半の開店時間直前にもかかわらず行列ができていた。並んでいれば開店時に入れたかもしれないが、それはやめにして、カレー屋の仙臺(せんだい)に行ってみようと思った。

仙臺は洋食屋であるがカレーをたのむ人が多く、種類もいっぱいある。今年、どこかのテレビ局でタレントが食レポをやっていたのを見て機会があれば行ってみようと思っていた。

神保町の交差点から歩いて5、6分。大通りから一筋内側に入った静かな一角にある。中はカウンター席だけのように見えた、入ると奥から詰めて座ってくれと言われ、腰かける。注文は牛タンカレー800円と決めていた。ライス300グラムが並盛りのようだがこれで十分だ。

しばらく待って出てきた牛タンカレー。店の名前が仙臺というのは、やはり仙台に何かゆかりがあるのか、仙台といえば牛タンが有名なのでここでも扱っているのか、その辺は全然知らないが、黒褐色のルーがたっぷりとかけられたカレーはうまそうだ。

食べてみると、カレーの味は最近はやりのスパイシーカレーとは全く異なり、どちらかといえばおとなしい、上品な味だ。ビーフシチューのような感じと言った方が良いかもしれない。店の外には欧風カレーののぼりがある。300グラムも食べられるかなと思ったが、全然問題なく食べられた。牛タンは大きくて柔らかかった。

私のとなりに座った若者は「ライス特盛り」を注文しており、すごい量をペロリと平らげていた。

店内の壁にはカウンター席からよく見えるところに「ご遠慮願います」として、スマホいじり・ゲーム・書類作成・長話など、書いてある。最近はスマホをいじりながら食事している人間もいるから、この店では許さんぞ、という年配の店主の教育的指導だろう。昔はこんなおやじがいっぱいいたものだ。

美味しかった、ご馳走様でした。

 

 


映画「小説家を見つけたら」を観る

2023年12月24日 | 映画

テレビで放映されていた映画「小説家を見つけたら」を観た。2000年、米、ガス・ヴァン・サント監督、原題Finding Forrester(フォレスターを探す)。

NYのブロンクス。黒人の高校生ジャマール・ウォレス(ロブ・ブラウン)はバスケットボールが大好きな16才の少年だが大変な文学少年でもあった。そんな彼が、バスケットボールの練習コートに隣接するアパートから練習の様子を望遠鏡で見ている老人の部屋に侵入を試みるという友人たちの肝試しに応じて老人の部屋を訪問する。やがて老人はウォレスの文学才能を見抜き二人は話をするようになる。この老人は40年前にピュリツァー賞に輝いた処女作(AVALON LANDING)一冊だけを残して文壇から消えた幻の小説家、ウィリアム・フォレスター(ショーン・コネリー)だった。二人の間にはやがて師弟関係のような友情が生まれる。

成績のいいジャマールは、有名私立高校へ学費免除で転校したが、教師のクロフォードは急速に上達していく文章力を疑っていた。学校の作文コンテスト用にフォレスターの部屋で書いた文章を提出するが、その文章はタイトルと冒頭部分が、フォレスターの古いエッセイの写しだったのだ。それに気づいたクロフォードは盗作と決め付け、ジャマールは退学の危機に追い込まれる。

作文コンテストの日、突然学校に現れるフォレスター。ジャマールを友と呼んで用意した文章を読み上げ、聴衆に感動を与え、危機を救う。実は、その文章はジャーマールが書いたものだった。そしてフォレスターはスコットランドに旅立つと宣言した。やがてジャマールの卒業が近づいたある日、弁護士(マッド・デイモン)がフォレスターの訃報と遺品を持って現れた。フォレスターは新作の小説「日没」を書き遺し、その序文はジャマールによって後日書かれる、と書いてあった。

あまり期待せずに観た映画だったが、面白い映画だった。特に主人公のジャマールが黒人で運動神経も良いが勉強家であるという設定が良いと思った。映画の最初の方でジャマールの部屋が映り、そこに何冊もの本が積まれている。その中に三島由起夫の本が4冊もあった。ただ、私はこのどれも読んでないが。

The temple of Dawn(暁の寺)
The Sound of Waves(潮騒)
The Sailor who fell from Grace with the Sea(午後の曳航)
After the Banquet(宴のあと)

また、フォレスターは最後に故郷のスコットランドに旅立つが、フォレスター演じたショーン・コネリー(2020年、90才没)自身もスコットランド人で、スコットランド独立運動を熱烈に支援していたとのこと。

この映画では、この老小説家と若者との交流を通じて孤独だった小説家が心を開き、若者も小説家に学び、救われるといういい話だが、ショーン・コネリーの演技はさすがであると感じた。

落ち着いた映画で楽しめました。

 


バレエ「くるみ割り人形」を観る

2023年12月23日 | オペラ・バレエ

テレビで放送されていたニュー・アドベンチャーズ公演、マシュー・ボーンのバレエ「くるみ割り人形」を観た。やはりクリスマスシーズンなので一度は観なければと思った。

振付・演出:マシュー・ボーン
音楽:チャイコフスキー

<出演>
クララ:コーデリア・ブレイスウェイト
くるみ割り人形:ハリソン・ドウゼル
シュガー/プリンセス・シュガー:アシュリー・ショー
フリッツ/プリンス・ボンボン:ドミニク・ノース
ドロス婦人/クイーン・キャンディー:デイジー・メイ・ケンプ
ドロス博士/キング・シャーベット:ダニー・ルーベンス
  

管弦楽:ニュー・アドベンチャーズ管弦楽団
指揮:ブレット・モリス

収録:2022年1月21日 サドラーズ・ウェルズ劇場(ロンドン)

このくるみ割り人形は通常のものとは違ってマシュー・ボーンが描くオリジナル・ストーリーとなっている。そのあらすじをテレビを見た範囲で書くと(正確ではない)、

  • クララは孤児院で暮らす少女、クリスマス・イブの夜に孤児院の寄付者からかクリスマスプレゼントの人形をもらう
  • しかし孤児院を運営しているドロス夫妻は寄付者が去るとプレゼントを取り上げ捨ててしまう
  • 夜12時になると人形が人間大の動く人形になって戻ってきてクララたちと踊り、ドロス夫妻が出てくるとみんなで夫妻を懲らしめる、そして人間になった人形とクララは冒険の旅に出る
  • 旅の行き先はポップでカラフルな夢の世界で、最初は凍った池の場面、次にスウィートランドに行く、そこで孤児院にいたドロス夫妻やシュガー、フリッツといった人たちが別の人物になって表れ、クララたちと踊る
  • クララは人間になった人形に惹かれるが、その人間になった人形はプリンセス・シュガーと結婚してしまいショックを受ける
  • 最後にクララは孤児院に元の姿になって戻ってくる、そこでベッドに寝ていたのは人間になった人形であった、2人はそこで結ばれ旅立っていく

このバレエを観た印象を述べてみよう

  • ストーリーが通常のものと違うが特に違和感はなかった、それなりに面白いと思った
  • サドラーズ・ウェルズ劇場というのはちょっと調べてみるとダンス、特にコンテンポラリーダンスなどを上演する劇場であり、このバレエの振付けを見てもバレエというよりダンスという感じがしたので上演劇場もROHなどではなく、このような劇場になったのだと思った
  • 演出のマシュー・ボーンはウィキによればダンスやミュージカルの演出家であり、バレエの古典作品にも新解釈を加えているとなっている、このくるみ割り人形もまさに新解釈を加え、バレエとダンスの境界線を行く作品に仕上げていると言えよう、また、ニュー・アドベンチャーズというのはマシュー・ボーズが作った会社でダンス公演を主な事業としていたが現在は解散しているとのこと
  • 演出、証明、衣装など全てカラフルで良い、楽しめる
  • 出演者では、前半の孤児院の場面でのドロス夫妻が目立った活躍をしていたと思った、コスチュームなど尖った特徴を出しており非常に良かった

上演時間も2時間程度で長くなく、クリスマスに楽しむには良い演目でしょう。