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気ままに生活してるシニアの残日録

関西テレビ「逆転裁判官の真意」を見る(その2)

2023年12月14日 | 映画

(承前)

これらの人たちへの取材の中で、いくつかの大事なコメントが出てくる

  • 裁判官は被告人を裁くとき、自分も裁いている、過去の自分を裁きながら判決を書いている
  • 逆転無罪の判決内容は真っ当だが、日本の裁判は真っ当な判断に行き着くとは限らない
  • 逆転無罪判決の内容が真っ当だと言うことになると、他の裁判官の有罪判決には実は無罪が同じくらいの件数あったはずではないかと思える
  • 裁判官は有罪を出す方向で被告人質問をしている、被告弁護側の資料や主張にはあまり関心を示さない
  • 裁判官は有罪慣れしているのではないか、刑事裁判の有罪率99%が裁判官に大きな影響を与えているのではないか
  • 裁判官は99%を有罪にする検察が公益のため働いているのだから、十分調べているはずで間違いないはずだ、という前提になっているのではないか
  • 福崎さんは新聞・テレビなどに忖度しない人だ、証拠に基づいて判断している人だ
  • 福崎さんの逆転無罪判決文を読むと、実に細かい所まで読み込んでいる、すごい労力であろう、普通の裁判官はそこまでやっていない、情熱がないとできないことだ、普通の高裁裁判官は1審の判決を読んで、特におかしくないからこれでいいか、になっている
  • ロス疑惑控訴審裁判では、裁判長だった秋山氏は、刑事裁判では第六感でこの人はおかしいと思っても、それだけで有罪にはできないとしている

以上のような経過をたどり、記者は退官後の福崎さんにインタビューを申込むと今度はOKが出た。そこで記者の仮説(逆転無罪判決は裁判官人生の集大成で出したのではないか)をぶつけてみると、絶対にそれはないと回答された。

そこで最後は、福崎さんが関与した裁判で福崎さんが逆転判決を出された裁判例に辿りつく、2009年最高裁の痴漢事件の判決だ。1審東京地裁の裁判官だった福崎さんの実刑判決が最高裁で逆転無罪になったのだ。この判決が福崎さんの裁判官人生に与えた影響が大きかった。インタビューで福崎さんはこの逆転判決を自分に対する「戒め」にしていると述べている。

以上を踏まえて、記者は、一番最後の方で、福崎氏のような裁判官がいたことに希望を見いだすのか、福崎氏が目立ってしまう現実に絶望するのかと自問する。そして、最後に記者の「逆転無罪を連発された真意は何でしょうか」という究極の質問に対する福崎氏の答えは・・・・

福崎さんの退官間際の逆転無罪判決の理由は、以上の通り、最後まで見れば、だいたい「そうか」と言うことがわかるようになっている。

なかなかよく取材して、有意義な番組であったと思う。そして、法律の専門家でもなく、刑事裁判をよく理解していない自分がコメントをするのも難しいと思った。が、あえて素人コメントを許してもらえるなら、

  • 元々刑事裁判というのは必ずしも真実が明らかになる制度ではなく、裁判官が出された証拠や証言の範囲で有罪か無罪かの判断を下す制度だと思っている。従って、判決は絶対的真実ではなく、証拠不十分で推定無罪もあり、冤罪もありうるものだが、その証拠や証言は十分に審理してくれていると思っていた。が、その裁判官の判断過程にいろいろ問題があるとは・・・。番組で問題提起されている諸点があまりも深刻すぎるので暗い気持になった。
  • 関係者へのインタビューの中で、福崎さんは新聞・テレビの論調に忖度しない人だと言われている、ロス疑惑裁判では世論とは真逆の判決を書いた当時の秋山規雄裁判長や福崎さんを含む裁判官はすごいと思う。立派なものだ。新聞世論などは間違えている場合があるからだ。
  • 有罪率99%の中には無罪も含まれている可能性があることがこの番組の一つの視点だが、逆に、本来有罪になるのに無罪になっている例も多いだろう。検察が事実上裁判所の役割をしていることになるのではないか、と常々疑問に思っている。そういった視点でも今後取り上げて深掘りしてもらいたいと思う。

国民は誰を頼ったよいのか。裁判にならないように気を付けるしかない。仮に最後に無罪になったとしても裁判の負担は大変だ。

(完)