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「定年後にやっていること」です

茨城県陶芸美術館「ティーカップ・メリーゴーラウンド」展に行く

2025年05月24日 | 美術館・博物館

水戸でゴルフをした帰りに、笠間市の茨城県陶芸美術館で開催中の「ティーカップ・メリーゴーラウンド ヨーロッパ陶磁にみるモダンデザイン100年 ~ 岐阜県現代陶芸美術館コレクション」展に行ってみた、この美術館に来るのは2回目、前回もゴルフ帰りに寄ったものだ

この展覧会では、19世紀半ばから20世紀半ばまでの約100年間に焦点を当て、ドイツのマイセン、フランスのセーヴル、イギリスのミントン、デンマークのロイヤル・コペンハーゲン、フィンランドのアラビアなど、ティーウェアやコーヒーウェアを中心に室内装飾品などを加えた名品が展示されている、入場料950円

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順路に従い、観ていくと、ティーカップがメインであるが、皿や壺、花瓶などテーブルを飾る食器も多く展示されていた、展示作品の中から特に自分のセンスに合ったものを少し紹介したい、自分は王族が使うような装飾がきらびやかなものが必ずしも好きではない、落ち着いた絵柄や色合いのものから上品なセンスを感じられるものが好きだ


(ロースルトランド、スウェーデン)


(マイセン、ドイツ)


(ロイヤル・コペンハーゲン、デンマーク)


(ミントン、イギリス)


(アラビア、フィンランド)

この展覧会の入場券を買うと新所蔵品店、常設展も入れるので鑑賞してみた、その中から特に今回印象に残ったものを紹介したい


(エミール・ガレ)


(松井康成、昭和27年から茨城県に移住し陶芸家として活動)

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この美術館のある「笠間芸術の森公園」は茨城の新しい文化の発信基地として伝統工芸と新しい造形美術をテーマとして平成4年に完成したもの、笠間の中心部から近い小高い丘の上にある、美術館の他、野外コンサート広場や、イベント広場、陶造形物が屋外に展示されている陶の杜がある、また、公園には陶芸品を展示・販売するセンタープラザや眺めの良いカフェなどがあり休日は家族で来て楽しめる場所のようだ

楽しめました


北斎美術館「北斎×プロデューサーズ 蔦屋重三郎から現代まで」展を観に行く

2025年05月13日 | 美術館・博物館

開催中の展覧会「北斎×プロデューサーズ 蔦屋重三郎から現代まで」に行ってきた、場所は北斎美術館、65才以上700円、これで常設展と「常設展プラス:隅田川両岸景色図巻(複製画)と北斎漫画」展も観られる

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本年のNHK大河ドラマを見ている人はわかるでしょうが、浮世絵は北斎などの絵師だけでは成り立たず、企画から販売まで手掛ける板元(はんもと)、板木を彫摺する彫師と摺師が必要、中でも世の流行を見極め、売れ行きの伸びる企画を立案し、絵師の起用から彫師・摺師の指揮までを担う板元は、いわば浮世絵師の総合プロデューサーにあたる重要な存在だった、北斎の才能に早くから目をつけていた蔦屋重三郎、「冨嶽三十六景」をヒットさせた西村屋与八、『北斎漫画』を出版した永楽屋東四郎といった板元たちが江戸で活躍した

この展覧会は浮世絵の板元たちが北斎をどのようにプロデュースし、どのような作品を世に生み出したかを辿る展覧会、会場内は撮影禁止だったのが残念だ

展覧会の展示は次のような順になっていたので、順路に従い、説明を読みつつ、浮世絵作品をゆっくり鑑賞した

序章:浮世絵のプロデューサー 板元とは
1章:腕利きプロデューサー 蔦屋重三郎

1節 初代蔦屋重三郎
2節 二代蔦屋重三郎

2章:北斎と関わるプロデューサーズ

1節 京発祥の老舗 鶴屋喜右衛門
2節 蔦重最大のライバル 西村屋与八
3節 名古屋の雄 永楽屋東四郎と江戸の実力派 角丸屋甚助
4節 北斎最後の錦絵シリーズを出版した板元 伊勢屋三次郎
5節 幕末を代表する板元 森屋治兵衛

3章:現代に継承される浮世絵版画制作と北斎

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鑑賞した感想

  • 大河ドラマを見ていたので説明文などにある吉原の様子、新吉原細見、地本問屋、黄表紙などの用語がすんなりと頭に入ってきた
  • 浮世絵は版画であり、その版画の作成の仕方が会場内に展示してあった(「冨嶽三十六景 凱風快晴」のできるまで)のは参考になったが、本当のところはよくわからないとこともある、実演してくれると一番ありがたいと思うのだが・・・
  • 絵師は名を残すが彫師、摺師は名前さえ誰だか残っていないと説明文に書いてあった、報酬の配分などはやはり絵師が多かったのだろうか、また、絵師や彫師の報酬は固定なのか売れれば売れるほど増えたのかなども知りたかった
  • 展示されている作品に北斎の「百物語 しうねん」、「百物語 笑ひはんにや」があった、これは百物語を書いた錦絵、百物語とは「夜、数人が集まって順番に怪談を語り合う遊び。ろうそくを100本立てておいて、1話終わるごとに1本ずつ消していき、100番目が終わって真っ暗になったとき、化け物が現れるとされたもの」で、その模様を絵にしたもの、百物語とはどこかで聞いたことがあったなと思案したら、あとで鴎外の小説に「百物語」というものがあったのを思い出した
  • 展示作品に「貧福両道中之記」というのがあり、これは貧乏人と金持ちの旅の様子を対比的に描いた風刺的な黄表紙で、北斎のユーモアと観察眼・皮肉が光る挿絵が特徴であり、面白いと思った

ここまで一通り鑑賞して1時間かかった、これだけでも疲れたが、常設展と常設展プラス「隅田川両岸景色図巻(複製画)と北斎漫画」をざっと流して観た

常設展は以前も一度見に来たことがあり、北斎が絵を描いている様子などが再現された場所があり面白い

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また、常設展プラスでは、北斎の肉筆画の中で最長とされている「隅田川両岸景色図巻」の展示が圧巻だった、これは隅田川を真ん中に描き、その両岸の様子を絵巻物のように横長の紙(全長16メートル)に描いたもので、知っている地名もいっぱい出てくるので面白い、そして最後には吉原の座敷で花魁らと遊ぶ様子が描かれている

これと同じような絵巻のように長い絵は東京国立近代美術館に横山大観の「生々流転」という作品があったのを思い出した、こちらは長さ40メートルだから北斎より長く、「水の旅」として生命の起源から終末、そして再生へという流れを象徴的に描いたものだった

疲れましたが、勉強になった


ワグナー・ナンドール アートギャラリーに行く

2025年04月29日 | 美術館・博物館

芳賀郡でゴルフをした帰り、近くの益子にある「ワグナー・ナンドール アートギャラリー」に寄ってみた、雑木林に囲まれた丘の上の美術館で、 ハンガリー出身の彫刻家ワグナー・ナンドール(日本名:和久奈 南都留、1922年~ 1997)の作品を展示している、彫刻・絵画・陶器・テラコッタなど、また生前、創作活動の拠点であったアトリエや学生寮、茶室などもある、入場料1,500円、ちょうど「ワグナー・ナンドール春季展」開催中であった

このワグナー・ナンドール氏のことを調べると実に興味深い経歴だ、ハンガリー生まれ、ブダペスト国立美術大学で彫刻を専攻、同時に国立大学医学部で解剖学を学ぶ、志願兵となり第二次世界大戦に参戦、終戦後国立博物館に勤務し、美術史・考古学・民族学などを研究、スターリン時代に博物館の職を失い彫刻家として活動し始める、「ハンガリー動乱」の際、スウェーデンに亡命、秋山ちよと結婚しスウェーデン国籍取得、1970年に益子町に移住しアトリエを建築、その後日本に帰化、波乱万丈の人生と言ってもいいくらいだ

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先日行った益子焼き共販センターのすぐ近くに益子観光の駐車場があり、そこに車を停め、歩いて10分弱、坂を登って行ったところに美術館はあった、受付の人によればこの日の下野新聞でこの美術館が取り上げられたとのこと(こちら、冒頭のみ)

受付で案内図をもらい、順番に施設を見て歩く、アトリエ、展示室、学生寮、茶室・和室、哲学の庭など、益子の小高い丘の自然の中に溶け込むように佇む各施設、秋は紅葉がきれいだそうだ

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作品を観ていくと彫刻については大小さまざまなものがあり、古今東西の偉人をモデルにしているものが多い、釈迦、老子、キリスト、聖徳太子、ハムラビなど


(哲学の庭)

哲学の庭が一番のメイン作品のようだが、この庭は3つの輪が造形されており、それぞれの輪に意味があり、人類は異なる宗教、法律、文化などを有しているが、より相手に近づくことができるようになるためにプラス・マイナス・ワンの原点に立ち返ることが必要なことを示しているとのこと、難しくてよくわからないけど

作品を観ていくとワグナーという人は彫刻だけでなく、絵画・陶器なども多く残しており多才な人だと思った

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楽しめた、館内の写真が撮れないのが残念だった、ゴルフ帰りなので丘の上の美術館はきつかったが来てよかった


アーティゾン美術館で「硲伊之助展」を鑑賞

2025年03月17日 | 美術館・博物館

アーティゾン美術館で開催中の「硲伊之助展」を鑑賞した、オンライン事前申し込み1,800円、このチケットで同時開催の他の展覧会も鑑賞できる、但し、いったん外に出ると再入場は不可、疲れたら地下のレストランで食事して再度の別の展覧会を見るのはOK


(美術館webページより引用)

硲(はざま)伊之助(1895–1977)は、フュウザン会や二科会で若い頃より注目された画家、一時は東京藝術大学等で後進の絵画指導にあたり、晩年は色絵磁器の創作に取り組んだ、また、クールベやゴッホなどの画集の編集や『ゴッホの手紙』の翻訳に携わるなど西洋美術の紹介にも尽力、師マティスの日本で初めての展覧会(1951年)実現にむけて作家との交渉に携わる実務家としての一面も持っていた、研究のために収集した作品の一部は現在石橋財団に収蔵されている

硲伊之助は、大正・昭和の洋画成熟期に画壇で一目置かれていたが、これまでその画業が広く紹介された機会は限られていた、本展は、東京で開催される初めての回顧展であり、初期から晩年までの絵画を一望できる

展覧会は次のように彼の取り組んだことに従って構成されていた

  • 画家、硲伊之助― 油彩画、版画、挿絵の仕事
  • コレクター、硲 伊之助― 西洋美術の紹介者として
  • 巨匠たちとの交渉役― 国内初のマティス展、ピカソ展、ブラック展
  • 陶芸家、硲 伊之助― 九谷吸坂窯での作陶

鑑賞した後の印象であるが、

  • 硲の絵画の特徴は、「色彩の豊かさ」であると感じた、自分としては素晴らしいと感じる絵が多かったのもそのせいだと思った


(色彩豊か、明らかにマティスの影響がある)

  • 会場内の説明に「硲はパリで、近代絵画がヴァルール(色価)とハーモニー(色彩調和)の2本の柱で成り立っており、前者を透視図法的遠近法に代わる、対象を明確な色の階調あるいは強弱対比で捉える近代絵画成立の核になるものと考えていた」と書いてあったが、それがまさに彼の絵に出ていると思った


(井伏鱒二の本の表紙と鱒二への手紙)

  • 彼はマティスなどの画家から多くを学び、多くの画家の絵画を収拾した、それらの画家や作品の影響が彼の絵に出ていると思った、マティス、セザンヌ、岸田劉生などの影響が出てるなと感じた絵が少なくなかった、逆に言えば彼独自の画風というものが確立されなかったのかな、とも思った
  • 昨年読んだ土方定一氏の「日本の近代美術」(こちら)をもう一度見て硲伊之助について言及しているか確認したところ、「6. 近代と造形」にフュウザン会や二科会の創設に関連した記述で名前が出ていただけで、彼の絵の説明はなかった、同時期の画家として梅原龍三郎、坂本繁二郎、安井曾太郎などの絵が紹介されていた


(クールベの影響ありと説明があったが、セザンヌを思わせる色彩と感じた)

  • 画家であるが油彩画のみならず小説の挿絵、パリで学んだ版画なども手がけ、また、陶芸家であり、翻訳家であり、西洋絵画の啓蒙家でありビジネスマンでもある実に多才で器用な人だった


(九谷呉須上絵 夏樹立大皿、真ん中の木の幹が茶色のアクセント)

  • 硲は「ゴッホの手紙」(岩波文庫)の翻訳をした、自分もその本(上・中・下)を読んだことがあり私のライブラリーの重要な蔵書の一つになっている、帰宅して改めてその本を出してみると確かに硲伊之助訳と出ていた

  • その本の「あとがき」を改めて読み直してみると、硲がいかに戦前から戦後の困難な時期に画家として修業を積み、かつ、マティスやピカソ、ゴッホ本人または関係者と折衝して彼らの作品を日本で展示することに苦労したかが書かれていた、そして「ゴッホの手紙」こそ我々画家が座右に置いて精読すべきものと書いてあるが全くその通りだと思った、ゴッホのみならずモーツアルト、ベートーヴェンの手紙も第一級の一次資料であり、彼らのファンであるならば精読すべき書物であろう

良い絵がいっぱいあった、こんな素晴らしい絵を描いた硲伊之助が好きになった

さて、今回の展覧会を鑑賞して、展示していある絵画が透明なアクリル板で覆われている作品が大部分であったがそれが無い作品も若干あった、アクリル板がはめてある絵は鑑賞者の姿が照明に反射して絵に写ってしうので観にくい、同じ出展者であってもアクリル板のある作品と無い作品があった、どういう区別なのであろうか?そしてアクリル板のない作品には「これ以上近づかないように」という意味の仕切りが絵画の前に設定してあった(上の写真参照)

楽しめました


「MOTアニュアル2024こうふくのしま」を鑑賞(追記あり)

2025年03月04日 | 美術館・博物館

(2025/3/4 追記)

先日、東京現代美術館で現代画の川田知志氏の作品を鑑賞したが、その川田氏が最近、第2回絹谷幸二芸術賞(2024年度)で最高位の大賞となったと発表された(こちら参照)、おめでとうございます

絹谷幸二芸術賞は、若手芸術家を顕彰し芸術文化を発展させてほしいという絹谷氏の思いを込めて創設された賞、 絹谷幸二氏は1943年生れ、文化勲章受章、文化功労者、日本芸術院会員 独立美術協会会員、東京藝術大学名誉教授

(2025/2/10 当初投稿)

東京現代美術館で開催中の「MOTアニュアル2024こうふくのしま」を観に行ってきた、1,300円

この日は平日だったが、あさイチの開館10時過ぎに美術館に到着すると入口に続々と人々が入っていく、小学生などの課外事業かなと思ったら若い大人たちだった、何だろうと思ったら開催中の展覧会「坂本龍一 / 音を視る 時を聴く」展を観る人たちだった、館内に入場待ちをする行列があり、待ち時間40分と書いてある、ざっと見た感じでは200人くらいは行列に並んでいたのではないか

私はその展覧会ではなく「MOTアニュアル」展の方で、直ぐに入れた、展覧会の説明によれば、「MOTアニュアル」展とは現代美術から新たな側面を引き出すグループ展で今年は20回目の開催、副題にある「しま」は、今回出展する4名の作家が拠点を置く「日本」の地理的条件に対する再定義を含んでおり、自身の足元を起点にしながら、より大きな文脈や関係へと開かれており、多様なアプローチを通じて、現実の世界を視覚的に置き換え、描き出すことにより、身のまわりや自己の多義性や重層性と対峙する、彼らの作品は、作者の解釈や意図を超え、見る者がそれぞれの視点や感覚、経験を通して主体的に意味を見出すための装置として働き、それぞれに異なる見かたや感じかたを促す、と説明されている

現代美術はなんでこんな小難しい説明をしないといけないのか

展覧会場に入っていき、順路に従って観ていくと、展覧会場は4人の作家ごとに一部屋が割り当ててあった、各作家ごとの簡単な紹介と自分が鑑賞して一番気に入った作品を紹介したい、なお、すべての会場を観た後にエレベーターで下の階に降りると4人の作家へのインタビュー動画が見れるようになっており、それもじっくりと聞いて参考にした

清水裕貴(しみず ゆき、女性、1984)

写真とテキストで構成されたインスタレーションから、中国の大連と東京湾岸を舞台にした物語「星の回廊」を制作したもの、土地・海・湾の歴史や伝承、現実と幻想が混ざっている、これらの作品で作家が立脚する土地の輪郭をとらえようと試みている

川田知志(かわだ さとし、1987)

戦後の日本社会を特徴づける都市部と郊外の風景を主題として、フレスコ技法を軸とした全長約50メートルの壁画を描いた、四角い展示室のすべての壁面が一つの作品になっている驚きの絵画

臼井良平(1983)

日常の些細なものや状況を再現したインスタレーションを通じて、見る者に新たな視点を提示、特にプラスチック製品の形をガラスで繊細に再現するところに特徴がある

庄司朝美(1983)

描くこと/見ることの身体性を強く意識させる絵画により、作品内外の世界を結びつけようと試みた、アクリル板やカンヴァスに作者自身の内なる場が描かれている、画中には鳥や動物、亡霊などが交錯し、ホラー的な作品に見えた

感想

  • みな若い作家で、ユニークで意欲的な作品だと思った
  • 清水氏の作品「星の回廊」の説明(作品解説の小冊子と会場の音声説明)には、作品に関連する遼東半島の歴史に触れ、「日露戦争で勝利した日本はロシア帝国から大連の租借権を継承し、関東州と称してその地を足がかりに満州全土を軍事支配、傀儡国家の満州国を建国した」とあるが、若者が戦前の日本の行動を悪とする戦勝国史観に感化されているのを見る思いがしていやな気分になった、芸術にこのような偏った史観を持ち込まないでほしいし、むしろ芸術を通じてこういう偏向思想から解放してほしいと思った
  • 運営面では、作品リストがないのが不満である、壁のある個所に作品番号と作品名が書いてあるものもあったが展示作品との結び付けがわかりずらい
  • 室内が暗すぎて文字が見えにくいし、配布される説明書が読みずらかった

約1時間20分くらい鑑賞した、勉強になった

さて、鑑賞後ちょうど昼時となったので、館内のカフェ&ラウンジ「二階のサンドイッチ」で昼食にした、1,370円とちょっと高めのカフェだった

坂本龍一の行列にはまだ100人以上並んでいた


河鍋暁斎記念美術館に行く

2025年03月02日 | 美術館・博物館

先日、澤田瞳子の直木賞受賞作「星落ちて、なお」を読んで河鍋暁斎、暁翠親子の日本画家を知ったのだが、ネットで調べて見ると河鍋作品を展示する美術館「河鍋暁斎記念美術館」があるのを知ったので行ってみたくなった、場所は蕨駅西口からバスに乗って美術館から徒歩10分くらいの停留所で降りて、訪問した

美術館周辺は住宅街で落ち着いた雰囲気がある、蕨は都心に通勤するには便利なところなので、この辺の住宅も買うとなればきっと高いでしょう

この美術館の外観は周辺の住宅街に溶け込むような落ち着いたものとなっており、センスの良さを感じた、入口から中に入るとチケット売場があり600円を払う

展示室は第1展示室、第2展示室と別館の第3展示室の3つがある、写真撮影は禁止、第1展示室から順番に観ていった、展示作品にはそれぞれ題名、解説がついていたが、スマホでQRコードを読み込めばそれらが見れるようになっていた

この日の展示は

  • 企画展「暁斎・暁翠 福寿の魁(さきがけ)」展(第1、第2展示室)
  • 特別展「『暁斎絵日記』に見る年中行事―新年―」展(別館第3展示室)

企画展は、2025年が巳年(みどし)にあたることから、暁斎・暁翠がヘビを描いた作品や、新春にふさわしく七福神や縁起物を描いたおめでたい作品の数々を展示してた

また、特別展では所蔵する『暁斎絵日記』から、明治18年正月の様子を描いた絵日記の部分を中心にパネル展示してあった

順番に観ていったところ、企画展では以下の三つが良いと思った、その他の干支の縁起物の絵はどうもあまり響いてこなかった、鍾馗(しょうき)は澤田瞳子の本にも出てきたので興味深く鑑賞できた

  • 暁翠「梅に雀」 紙本墨画淡彩 絵手本
  • 暁翠「竹に鶯」 紙本墨画淡彩 絵手本
  • 暁雲「鍾馗」 絹本墨画彩色 軸装

館内は光に弱い日本画のため薄暗くなっているが、これは仕方ないことでしょう

そして、特別展に行くと暁斎の明治18年正月の絵日記が展示してあり、一つ一つを見ていくと大変面白く鑑賞できた、特に絵日記に描かれている人物が「星落ちて、なお」を読んでいたせいか「ああ、あの人か」という感じでよくわかったので、面白かった

ゆっくり鑑賞し終わった後、ミュージアム・ショップに立ち寄った、暁斎親子関連の図書などがあったので、「画鬼 暁斎読本」1,100円を買ってみた

勉強になりました、この日に鑑賞できたのは暁斎、暁翠親子のほんのわずかな作品だけなので、今後も河鍋親子の作品は折に触れて鑑賞していきたいと思った


DIC川村記念美術館に行く(2025年)

2025年02月18日 | 美術館・博物館

閉鎖が発表されていた当美術館であるが、最終的には①美術館の規模を縮小して東京都内に移転、②佐倉市の現美術館については2025年3月31日を最終営業日として4月1日から休館することになった、見納めだと思って訪問した

この日は祭日、車で行ってみると開館時間の10時ちょうどに到着したが入口前の駐車場は満車、ちょっと離れたところにある第4駐車場に入れた、みんな出足が速いようだ

事前にオンラインチケットを購入したがチケット売場に長い行列ができるほどではなかった、入口からしばらく森の中を歩いていくと大きな池と広大な敷地、美術館の建物が見えてくる、この景色が素晴らしい

美術館の中に入ると館内マップが置いてあり、それを持って1階の展示室から順次鑑賞していった、館内は撮影禁止なのが残念だ

この日は「DIC川村記念美術館 1990–2025作品、建築、自然」と題し、庭園と館内全ての展示室を用いて、約180点のコレクション作品が展示されていた、「作品、建築、自然」の三要素はこの美術館の理想の姿として定義されたもの、コレクション展示はこの三要素の融合が最も純粋な形で現れる場として開館以来何よりも大切にしてきたとある

展示室の概要と、今回鑑賞して特によかったなと感じた作品

101室  印象派からエコール・ド・パリへ

  • 「姉妹」モイーズ・キスリング
  • 「薔薇と藤のある家」アンノール・シダネル
  • 「麦わらを積んだ荷馬車」ピサロ

102室  レンブラント・ファン・レイン
103室  抽象美術の誕生と展開
110室  版画、写真、ドローイング

  • 「青い床の室内が描かれた壁紙」ロイ・リキテンスタイン

104室  ダダ、シュルレアリスムとその展開
105室  ジョゼフ・コーネル
106室  ロスコ・ルーム〈シーグラム壁画〉

201室  フランク・ステラ
202室  抽象表現主義、カラーフィールド
203室  ネオダダからミニマリズム、日本の現代へ

エントランスホール  アリスティード・マイヨール
ホワイエ  エンツォ・クッキ、野口里佳

  • 「無題(黄色い壁)」エンツォ・クッキ

庭園  野外彫刻

ご覧の通り、展示作品で特に気に入ったもの、自分の感性に響いてきたものはわずかしかなかった、ただ、101室の展示作品は印象派とエコール・ド・パリの作品が中心なので全部好きだとも言える、当館が誇るレンブラント、マーク・ロスコ、フランク・ステラなどの作品、その他の抽象絵画はどうも苦手だ

順路の一番最後にあいさつ文が掲示してあり読んでみると、この美術館は作品説明を掲示してない(実は館内マップに作品解説のQRコードがついているが)、それは美術館側が一つの説明をしてしまうと観る人の作品解釈を制約してしまうからであり、「作品をして語らしめ、観る人がそれぞれ自由に感じてもらいたい」という趣旨の説明が書いてあった

さて、館内の鑑賞を終わってから庭園を歩いてみた、真冬なので花や緑がきれいというわけにはいかないが、天気が良かったのでゆっくり散策できてよかった

そして最後にギャラリーの建物があり、中を覗くと、過去に開催された展覧会のポスターが展示してあった

ゆっくり鑑賞できた、この素晴らしい美術館が縮小して東京に移転するのは残念だ、東京に移った後は「作品、建築、自然」という3要素はどうなるのだろうか

35年にわたり素晴らしい環境でいろんな作品を展示してきた努力を多としたい、有難うございました


「MOTコレクション展」を鑑賞

2025年02月11日 | 美術館・博物館

東京現代美術館のMOTコレクション展「竹林之七妍、小さな光、イケムラレイコ、マーク・マンダース Rising Light/Frozen Moment」も鑑賞した、料金は「MOTアニュアル2024こうふくのしま」展の料金に含まれている

場所は現代美術館の一番奥の展示室、1階と3階がコレクション展になっている、チケットを提示して内部に入ると直ぐにホールがあり、壁の高い位置に白の50㎝四方くらいのカンヴァスに英単語が書いてあるだけの8つの作品があるのに気づいた、これはオノヨーコの「インストラクション ペインティング」という作品(1952-2015)であり写真撮影禁止作品だった、書いてある文字は、FLY, IMAGINE, TOUCH, WATER, Forget, Reach, Yes, Rememberだった

なぜ、今回目についたのか、それはこの作品がミュンヘンに行ったときに知った河原温氏の作品とよく似ているからだ、河原氏の作品は日付だけが書いてあった(こちらの11室展示参照)

いくつかの展示室に分かれて展示してあるので順番に観ていった、特に印象に残った作品を紹介したい

「竹林之七妍」展

新収蔵作品を中心にこれまで紹介する機会の少なかった女性作家7人に焦点を当てた展示、「竹林之七妍」とは、当館所蔵の河野通勢の作品名に由来し、俗世を離れて竹林に集い清談を交わす古代中国の7人の賢者が7人の女性に変えて描かれており、その7人の女性を今回展示する7人に重ねたものと思われる

高木敏子(1924-1987)
生誕100年、糸で織った作品を平面から立体へと展開してきた作家、京都西陣の機屋の生れ

間所(芥川)紗織(1924-1966)
生誕100年、作曲家芥川也寸志の妻、結婚を機に絵画を制作、染色の技法を用いる、彼女の絵は昨年行った東京国立近代美術館の常設展でも観た(こちらの8室展示参照)

福島秀子(1927-1997)
絵画を中心に制作した作家、映像作品「水泡(みなわ)」が印象的だった、それ以外では下の2点の作品だけが他と違った作風だったが印象に残った

漆原英子(1929-2002)
ドローイングやコラージュを制作

小林ドンゲ(1926-2022)
堀口大学と終生子弟関係、上田秋月「雨月物語」、エドガー・ア・ランポーの小説、オスカーワイルド「サロメ」等に着想した作品に特色

描かれている女性がなぜか神秘的で影がある、妖気を宿している、ただ、ワイルドのサロメの挿絵を描いたオーブリー・ビアズリーの絵よりは美女でセクシーだと思った

朝倉摂(1922-2014)
彫刻家朝倉文夫の娘、舞台美術家として知られるが初期には日本画も描いた

前本彰子(1957-)
巨大なドレスの作品が印象的、作品は女子供の手なぐさみだが、誰か人のために、心を込めて作ること、を重視した作品にしてる

「ちいさな光」展

オラファー・エリアソン、山本高之らの作品を紹介

山本高之の「Dark Energy:Tottori」が面白かった、40人の中学生を40個の段ボール箱にそれぞれ入れて行動させる、初めは自由に、その後2個、4個とテープでつないて行った時の動きが映像で流れている、それを観るとまるでカフカの「変身」に出てくる一匹の巨大な虫が頭に浮かんだ

展示作品が多く、じっくり見ていると時間が全然足りない、この日は1時間半くらい鑑賞したが疲れた


アーディゾン美術館「ジャム・セッション 石橋財団コレクション×毛利悠子—ピュシスについて」展を観た

2024年12月17日 | 美術館・博物館

アーディゾン美術館「ジャム・セッション 石橋財団コレクション×毛利悠子—ピュシスについて」展を観に行ってきた、チケット事前購入で1,200円、これで同時開催中の他の2つの展覧会も入れる

アーティゾン美術館は、2020年の開館以来、石橋財団コレクションとアーティストとの共演、「ジャム・セッション」展を毎年開催しており今回は第5回目、国際的なアートシーンで注目を集めるアーティスト毛利悠子とのジャムセッション、昨年の山口晃氏とのジャムセッションも観に来て面白かった(こちら)


(美術館HPより拝借)

主催者の説明によれば、「ピュシス」は、通例「自然」あるいは「本性」と訳される古代ギリシア語、今日の哲学にまで至る初期ギリシア哲学では、「ピュシス」が中心的考察対象となっていたそうだ、知らなかったけど

毛利悠子さん(1980年生れ)は、主にインスタレーションや彫刻を通じて、磁力や電流、空気や埃、水や温度といった、ある特定の空間が潜在的に有する流れや変化する事象に形を与え、立ち会った人々の新たな知覚の回路を開く試みを行っている、絶えず変化するみずみずしい動静として世界を捉える哲学者の姿勢は毛利さんのそれと重ねてみることができる、ということらしい、よくわからないけど

展示場所は6階のフロアー全体を使っていた、展覧会の入口の前に既に毛利さんの作品が2つ置いてある

入口を入ると登り坂の道になっており、インスタレーションと絵画が展示してある

そこを通り抜けると区切りのない広々としたスペースになり、いろんなオブジェというか作品が展示してある、光を発するものもあるので室内はけっこう薄暗い

毛利さんの作品は何かを暗示している抽象的なものが多く作者がそこで何を主張しているのかが全く分からない、作品番号だけが床や壁に書いてあるが、それを探すのが一苦労な作品もあった

作品名などの情報と簡単な作品解説が書いてある方がわかりやすいが、それをすると鑑賞者の自由な発想を邪魔すると作者は考えているのかもしれない、けっこう奇抜なものと感じた作品も多かった

絵画の方は藤島武二やパウル・クレー、マティス、モネなどが展示されていた、これが毛利さんの作品とどう結びつくのか、これもイメージできなかったのは私の想像力の貧弱さか、先日の古典音楽と現代音楽との時間を超えた共演(ランタンポレル)と同じような発想なのか、違うのか、芸術家というのは物事をちょっと難しく考えすぎなのではないかな

帰宅してからwebサイトを見て毛利さんの展覧会の説明動画があったのに気づき見てみると、次のように述べていて、やはりそうか、と思った部分も少なくなかった

  • 展示室にはなるべく壁を作りたくない、自分の作品は音、光、動きがあるので、すべての作品か共存する大きな景色を作りたい
  • 海の近くに住んでいたので、海岸でボーっとするような展示を作りたい
  • 会場全体を見渡せて、それぞれの動きが波のような感じるようにした(そういわれればそうかな)
  • 今年、モネが実際に海を見ていたところに行って、そこで撮影したビデオをインスタレーションの中に組み込んだ(それで海のビデオと波の音、その横にモネの絵画「雨のベリール」があったのか)

  • サウンドインスタレーションを作ってきたが、これは音を介して自然について考えたということかもしれない
  • サウンドインスタレーションとしてピアノやオルガン、雨の音が鳴ってたりして、この空間全体が一つの作品のように考えた(そう言われてみればそうかもしれない)、また、どこから音が聞こえてくるのか探しながら作品を体験してほしい
  • あまり説明を残していないし、順路もないので、自由に鑑賞して何か感じてほしい(やっぱりそうか)

同じく、帰宅後、彼女のホームページを見たら、過去の業績は素晴らしいものがあるすごい芸術家だということがわかった、彼女の業績を見ていくと「2016年、ロンドンのヴィクトリア&アルバート博物館およびカムデン・アーツ・センターにてアーティスト・イン・レジデンス」、「作品はアシュモレアン美術館(オックスフォード)などに収蔵されている」とあるのを見てびっくりした

ロンドンのヴィクトリア&アルバート博物館はサウスケンジントンにあり、私が訪問したロンドン自然史博物館と並んである博物館であり、アシュモレアン美術館は私が訪問した美術館だ(こちら)。アシュモレアンにある彼女の作品に気付かなかったのは恥ずかしい限りだ(多分、訪問時は展示してなかったと思う)、もっとよく事前調査して臨むべきだった

なかなか1回観ただけで理解できるような簡単なものではないということがわかった


英国ナショナル・ギャラリー常設展を観る

2024年12月03日 | 美術館・博物館

ロンドン旅行中にナショナル・ギャラリーに行った、何度か訪問したことがある美術館、入場料は無料、旅行準備中にwebサイトを見ると時間予約制になっていたが、旅行直前に予約なしで行けるように変更されたようだ、ただ、入口には行列が並び、セキュリティーチェックを受けないと入れない

ナショナル・ギャラリーに関し失敗したのは、訪問時にゴッホ展を開催していたことを訪問直前まで知らなかったことだ、こちらの方は有料の予約制で、渡英の少し前に予約サイトを確認すると1か月先まで「売り切れ」であった

今回は効率的に見るため、事前に観たい絵をリストアップした、ギャラリーのコレクション検索機能を使い、観たい画家を特定して作品名、展示室番号を書きだした、今回リスアップした作家は、ゴヤ、フェルメール、モネ、マネ、ルノワール、マティス、スーラ、ゴッホ、ゴーギャン、セザンヌ、ピサロなどだ

さらにwebサイトでMust see paintingsとなっている作品を加えた、ダ・ビンチ、ルーベンス、ラファエル、レンブラント、ベラスケスなどの作品だ

展示室内はそれほど混んではいなかった、また、ところどこに椅子がある部屋があり助かった

今回驚いたのは写真撮影がOKであったことだ、ChatGPTで調べたら「2014年から美術館がより多くの人々にアクセスしやすい空間を提供し、文化的な体験を共有することを促進するための取り組みの一環」としてOKになったとのこと、これはもう世界的な潮流でしょう、日本の展覧会でもナショナル・ギャラリーの例などを出して出品者と交渉してもらいたい

今回改めて鑑賞した絵から素晴らしいと感じたものを少し紹介したい


(ルノワール、The Skiff)


(ピサロ、Portrait of Felix Pissarro、ピサロの三男の7才の時の肖像画)


(ゴッホ、Snowy Landscpe with Arles in the Barkground)


(モネ、Bathers at La Grenouillere)


(ピサロ、The Boulevard Montmartre at Night)


(フェルメール、A Young Woman standing at a Virginal)


(Peiter de Hooch、The Courtyard of a House in Delft)

絵画ファンなら是非訪問したい美術館の一つでしょう、出張で行く人も隙間時間に観に行ってほしい、金曜日は夜9時までやっている、Room 41から44までが印象派などの絵が集中しているので、時間がない人はそこだけでも見る価値は大きいと思う

良い絵が観れました