東京芸術劇場で開催された東京都交響楽団第991回定期演奏会Cシリーズ(ブルックナー生誕200年記念)に行ってきた。今日はS席、6,600円。座席は若干の空席があったが、9割くらいは埋まっていたのではないか。
演目
モーツァルト/ピアノ協奏曲第24番 ハ短調 K.491
ブルックナー/交響曲第1番 ハ短調 WAB101(1891年ウィーン稿)
出演
東京都交響楽団
指揮:下野竜也
ピアノ:津田裕也
ピアノの津田裕也氏は、仙台市生まれ、05年東京藝術大学を首席卒業、10年東京藝術大学大学院修士課程を首席修了、11年ベルリン芸術大学を最優秀の成績で卒業。既に数々の賞を国内外で受賞しており、また、国内及びドイツの主要オーケストラとの競演、ソロリサイタルの開催、デュオやトリオを組み演奏やCDの発売などもしている。細身の体で繊細な感性をお持ちのように見えた。
さて、今日の演奏であるが、演奏開始前に能登半島の地震により亡くなった方々に捧げる追悼演奏をやりますとアナウンスがあり、バッハの管弦楽組曲第3番ニ長調BWV1068より「エア」(G線上のアリア)が演奏された。
モーツァルト/ピアノ協奏曲第24番、ハ短調 K.491。
モーツァルトのピアノ協奏曲の中で、ニ短調の第20番とともに短調をとるこのハ短調の作品は、1786年3月24日に完成したもの。私はモーツアルトの2つの短調のピアノ協奏曲はいずれも大好きだ。モーツアルトの短調の作品はただ暗い、もの悲しい、重いなどのイメージだけでは語れない、そういった中にも「美しさ」とか「やさしさ」を感ずるのである。本作品の第2楽章はホ長調であるが本当に素晴らしい癒やしのメロディーだ。今日の津田氏のピアノはその辺の所を良く演じていたと思う。
作家の百田尚樹氏は「この名曲が凄すぎる」(PHP)の中で、モーツアルトの短調はいずれも恐ろしいまでの傑作だとし、本当はモーツアルトの心の底から生まれる旋律は短調ではなかったかと述べている。そこまで私はわからないが、やはり24番は素晴らしいと感じた。
ブルックナー/交響曲第1番 ハ短調 WAB101(1891年ウィーン稿)
私はこの曲を聴くのは初めてだ。特に事前に予習としてCDを聴いてきたわけではないが、都響のホームページに出ている曲目の解説によれば、この1番交響曲は「全体の壮大な構成など以後のブルックナーの交響曲を特徴づけることになるいくつかの手法や性格が示されいる。初演は1868年5月、成功したとも失敗したとも評されているが、その後長らく演奏される機会がなかったが、1890年3月からこの第1番の改訂作業に入り、1年以上かけてこれに取り組む。こうして装い新たにされたのが改訂稿(ウィーン稿)だ、2つの稿の大きな相違点はオーケストレーションにあるため、当然ながら両稿の異同も主として響きの違いにある」とある。
この説明を読んだ上で本日の演奏を聴いてみたが、第一印象は良い曲だと感じた。後のブルックナーの交響曲を思わせる雄大さも感じた。演奏時間は50分の長さだったが、集中力を維持して聴けた。ただ、初稿(リンツ版)との違いなどはわかるわけもなく、指揮の下野竜也がウィーン稿をどう解釈して指揮するかが注目されるとホームページに書いてあったが、そこまでの知識はないのでこれ以上の感想は述べられない。
ブルックナーは今まで多く聴いてきたわけではない、CDで持っているのも4番、7番、8番だけだ。8番は朝比奈隆指揮の大阪フィル版とショルティ指揮のウィーンフィル版があるが、いずれも良い曲だと思っている。私の敬愛する宇野功芳氏もモーツアルトに加えブルックナーを絶賛しているので、今後もっとじっくりと聴いていきたい。
楽しめました。